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Open Doctorsは病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介。
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produced by市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会

梅村先生の『健康診断を10倍面白く受ける方法』

シリーズ別記事一覧

新型コロナウイルス対策は「持病」の把握と生活習慣の改善から始めよう

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大が止まりません。私たちは「どうやって感染しないか」ということと同時に、「どうすれば感染したときに重症化しないか」を考える必要があると思います。そこで重要になるのが、日常の体調管理です。そのためには、まず自分の持病の状態について知る必要があります。生活習慣病などの持病があることで、免疫力が下がっていることが懸念されます。その場合、ウイルスに感染しやすかったり、感染した後に悪化しやすくなったりする可能性があります。呼吸器疾患や膠原病、皮膚疾患などを持病にしている人の中には、免疫力を下げるステロイドや免疫抑制剤などのお薬を飲んでいる方もいます。糖尿病の方は、血糖値のコントロールが悪いと感染しやすくなるといわれているので注意が必要です。「症状がない」=「持病がない」ではない症状がないからといって、持病がないとは言い切れません。たとえば、「サイレントキラー」と呼ばれる高血圧は症状がほとんどありません。糖尿病も初期はほとんど症状が表れません。高血圧も糖尿病も持病といえるでしょう。健康診断の結果などを見直してください。また、動脈硬化が進んでいてもほとんど症状がありませんが、動脈硬化が進んでいるということは何か原因があるはずです。動脈硬化の進行を遅くするためにもその原因となっている持病に対してしっかり対策をして下さい。薬を飲んでいなくても、持病のある方は大勢います。定期的に病状を監察するために通院している人もいますし、健康診断だけでは評価できない病気もたくさんあります。「自分は通院していないし、持病がないからウイルスに感染しても大丈夫」と油断しないことです。新型コロナウイルスが怖いなら喫煙はやめるべき持病について把握したら、生活習慣も改めていきましょう。たとえば、新型コロナウイルスに感染してしまった際に少しでもそのダメージを減らすためにも、喫煙の習慣は一刻も早くやめるべきです。長期的に喫煙を続けていると、肺の機能が低下します。元気なときにはそれでも日常生活には問題ないこともありますが、新型コロナウイルスに感染するなどして肺炎を発症すると、正常な人より肺の機能(予備力も)が低下しているので、炎症によって肺での酸素交換が不十分になります。つまり、肺の予備力(余力、言い換えれば、いざというときに踏ん張る力)がない人は、新型コロナウイルスに感染した場合、感染の影響が肺の機能が正常な方と比べて、より大きくなると考えられます。自宅待機や在宅勤務が続くと運動不足になります。そのため、体重が増加したり、血圧が高くなったりする傾向があります。インスタント食品などを食べる機会も多くなるかもしれません。野菜をなるべく摂取する、バランスのいい食事に努める、減塩の食事に努める、家でやれる運動を毎日行う、ストレスをためないなど、日ごろの身体のメンテナンスが重要です。新型コロナウイルスに打ち勝つには、持病の把握とその治療、そして生活習慣を見直していくことが大切だと言えるでしょう。

梅村 将就

2020.4.16

病気をしたら「100%の身体」には戻れない理由

まず重要なことをおさえておきたいと思います。病気になったら、身体が100%元の状態に戻るということはほとんどないと思ってください。表面上は戻ったように見えても、定期的な通院や服薬など、色々大変なことがついて回る場合が多いです。これは覚えておいてください。ですから、「病気になってからお医者さんに行けばいいや」とか「病気になってから治せばいいや」という考え方は間違っています。完全に治る場合もないわけではありませんが、一般的には100%戻ることはありません。心筋梗塞を例に挙げてみましょう。心筋梗塞は、心臓の血管が詰まり、心臓の筋肉などに酸素が届かなくなって栄養不足になり、どんどん腐って壊死していく病気です。血管が詰まってから心筋が壊死するまで、たったの20分しかありません。20分で病院に行き、カテーテル治療を行って、血管の詰まりをなくすことは不可能です。我々医師はなるべく頑張って治療しますが、壊死した筋肉は生き返ることはありません。100%の身体には戻らないことがおわかりでしょう。また、病気になったら通院する必要があります。時間もお金もかかります。心筋梗塞になると、血管にステントという金属の網を入れる治療をすることがあります。ステントは人工物なので、放置しておくと血の塊ができて血管が詰まりやすいため、血液をサラサラにする薬を長期間飲み続ける必要があります。場合によっては一生のこともあります。その薬の作用で、身体をどこかにぶつけたらすぐに内出血するようになったり、歯を抜いたら血が止まりにくくなったりすることもあります。胃カメラや大腸カメラの時には、お薬をやめないと組織を摘まんで組織検査もできません。肺気腫といって、肺の組織が壊れて、呼吸が苦しくなる病気があります。一度壊れた肺の組織が元に戻ることはありません。肺気腫が重症化すれば、鼻から酸素を吸入するための酸素ボンベが必要になります。この治療を在宅酸素といいます。酸素ボンベは家の中でも使いますし、外出の際にはボンベが入ったカートを引いて歩かなければなりません。定年して第二の人生を楽しみたいと思っていたのに、これでは飛行機に乗ってハワイなどの海外旅行に行こうと思ってもなかなか難しいでしょう。つまり、病気にならないようにするのが一番なのです。そのためには、事前にある程度の知識をつけて、準備をしておく必要があります。健康診断は、そのための第一歩です。とはいえ、悪いところを探すばかりが健康診断の目的ではありません。人気医療ドラマ『コード・ブルー』で、山下智久さん演じる藍沢先生はこんなことを言っていました。「検査は何か発見できる場合にだけ意味があるんじゃない。 何もないと証明できれば患者は安心して家に帰れる。 気になったら答えが出るまでやれ」カッコいいこと言いますね。健康診断も同じで、異常がないことを確認し、安心するのも一つの目的です。検査や数値の意味を知り、健康と病気に対する意識を高めていきましょう。病気にならないために、ぜひ健康診断を有効活用してください。

梅村 将就

2020.4.10

健康診断の一番の目的は「動脈硬化の進行を遅らせる」こと

健康診断では身体のいろいろな部分を検査しますが、もっとも重要な目的は「動脈硬化の進展を遅らせる」ことです。動脈硬化とは、動脈が肥厚して硬くなった状態のことを言います。動脈硬化によって引き起こされるさまざまな病態を動脈硬化症と呼びます。動脈をチクワのように縦切りにしてみましょう。動脈硬化がひどくなると、血管の内側にコレステロールが溜まってコブになります。これをアテローム硬化と言います。コブはだんだん内側にせり出してくるので、血液が流れにくくなります。川幅が狭くなると川の水が流れにくくなるのと一緒です。今度はチクワ(動脈)を輪切りにしてみます。血管の内側にコレステロールが溜まっているのがよくわかると思います。血液が流れるところが、これぐらい細くなってしまうこともあるのです。動脈は体中にはりめぐらされている血管です。ということは、身体のどこで動脈硬化が起こってもおかしくありません。動脈硬化が心臓の表面にある冠動脈で起こり、血液の流れが悪くなれば狭心症、コレステロールを覆っている膜が何かの拍子に破れて血液が固まり、冠動脈が詰まれば心筋梗塞になります。これが頭で起こると脳梗塞です。足の血管に動脈硬化が起これば、閉塞性動脈硬化症になります。足の血流が悪くなるため、長時間歩くと足が痛くなってしまい、休み休みでないと歩けなくなります。これらの原因はすべて、動脈硬化なのです。脳梗塞や心筋梗塞は命にかかわる病気です。リハビリも大変ですし、生活の質が低下する可能性も大きくなります。健康な生活をおくるには、動脈硬化を防がなければいけません。そのために非常に役に立つのが健康診断なのです。健康診断で行う、心電図、眼底検査、上腕動脈と足関節上部で測定する血圧の比、脈拍の触れ方、左右差、頸動脈エコーなどの検査結果によって、動脈硬化の進展具合がわかります。これらの検査については、あらためて別のコラムで説明していきますので、ぜひお読みください。また、動脈硬化の危険因子(原因)についても、あらためて解説します。健康診断とこの健診コラムを活用して、動脈硬化を防ぎましょう。

梅村 将就

2020.3.26

酒好きなら健康診断で確認を! 肝臓へのダメージが分かる3項目

アルコールの飲み過ぎによって、いろいろな臓器に病気が発生しますが、なかでも多いのが肝臓の病気です。肝臓は、いろいろな物質の分解と合成を行っている臓器です。たとえば、アルブミンという体に必要なタンパク質を合成したり、アンモニアという体に悪いものを尿素という体に悪くないものに変えたりしています。アルコールは身体にとっては毒のようなものなので肝臓で分解しています。しかし、分解しきれないほどのアルコールを摂取すると、肝臓に負担がかかってアルコール性肝炎、脂肪肝などの病気になります。治療せず放置していれば進行し、肝硬変や肝がんにつながることもあります。しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、異常が出てもほとんど症状が出ないので注意が必要です。健康診断では、採血によって肝臓の検査を行います。ALT(GOT)、AST(GPT)は、いずれも酵素の一種で、それぞれ2種類の呼び方があります。肝臓にアルコールや肝炎などで負担がかかって肝臓の細胞が壊れると、細胞の中にあったALTとASTという酵素が血液の中に漏れ出てきます。つまり、採血して血液中のALTやASTを測れば、破裂してしまった肝細胞の数がわかるということです。お酒に関する値としてよく知られているのが、γ-GTP(ガンマ-ジーティーピー)です。これも酵素の一種で、タンパク質を分解する役割があります。γ-GTPは胆管(肝臓から十二指腸まで胆汁を運ぶ管)でつくられる酵素ですが、肝臓や胆管が傷つけば、γ-GTPが胆管細胞から血液の中に漏れ出てきます。特にアルコールに鋭敏に反応するので、肝障害を起こしていなくても普段からよくお酒を飲む人は数値が上昇します。一般的なγ-GTP検査値の基準値は、男性が50U/L以下、女性が30U/Lとされています。基準値を超えるようでしたら、お酒をやめるか、量を控えなければいけません。肝臓は1時間に日本酒1/3合のアルコールしか分解できません。つまり4合飲めば12時間かかるということです。大量の飲酒がいかに肝臓に負担をかけているかよくわかりますね。くれぐれも飲み過ぎに注意して、肝臓を大切にしましょう。

梅村 将就

2020.3.19

健康診断の3日前から断酒する人が「残念」な理由

身体が元気でも、健康診断の結果、数値に異常が見つかったら、かかりつけのお医者さんに相談したり、精密検査を受けたりしてください。健康診断は、車検と一緒です。愛車を車検に出して、業者の人から「エンジンが壊れていましたよ」とか「タイヤがすり減っていましたね」と言われたのに、「直しませんでした」と言われてそのまま車が戻ってきたら、みなさんどう思いますか?「検査で異常が見つかったのに、どうして直さないの?」と思うのではないでしょうか。健康診断で数値に異常が見つかったのに精密検査に行かないのは、車検で異常が見つかった車にそのまま乗っているのと同じことです。また、健康診断は「自分の身体の通信簿」です。毎年もらえる通信簿と考えてください。自分の子どもには通信簿を見せろというのに、パートナーには自分の健康診断の結果を隠す、なんて人はいませんか? 数値といえば、健康診断のとき、「3日前から断酒してコンディションを仕上げてきました」とドヤ顔をする方がいます。これは二重の意味で残念です。まず、健康診断は数値を競うオリンピックではありません。その日に良い数値を出せばいいというわけではないのです。日頃の身体の状態を知ることが重要なので、良い数値を出そうと3日前から努力しても意味がありません。もう一つ、3日前からでは数値は変わりません。特にお酒に関係する項目のγ-GTPは100だった値が50になるまで3週間かかります。だから、飲んでいるのはバレバレなのです。数字は嘘をつきません。γ-GTPの値を下げたいなら、日頃から断酒、節酒したほうがいいでしょう。健康診断は身体の悪いところを見つけて治すために行うものです。ぜひ活用してください。

梅村 将就

2020.3.12

健康診断と人間ドックはどう違うの?

健康診断と人間ドックはどう違うのかといいますと、実はあまり大きくは変わりません。違いがあるとすれば、人間ドックのほうが検査の項目が多いことでしょうか。たとえば、腹部エコー(腹部に超音波をあてて調べる検査)は、人間ドックでは行うことが多いです。あとは眼圧検査という緑内障などを調べる検査があります。さらにオプションを付けて、いろいろ細かな検査を受けることができます。とはいえ、検査の項目が多くても、それがどういう意味を持つ検査なのか知らなかったり、検査結果を見ても意味がわからなかったりしたら、人間ドックも健康診断もあまり変わらないということになります。人間ドックは自分の意思で受ける「任意型健診」ですが、健康診断は雇用形態にもよりますが、一般には会社員の方なら会社によって年に1回受けることが義務付けられています。また、人間ドックの費用は自己負担ですが、健康診断はほとんどの場合、費用は会社負担です。人間ドックでも、会社がある程度お金を負担してくれることがあるので、興味がある方は総務部などに問い合わせてみてください。人間ドックに比べると、健康診断の方が受ける機会が多く、費用面から見ても受けやすいということは言えると思います。大切なのは、健康診断にせよ人間ドックにせよ、その結果がどういう意味を持つのか、知ろうとすること。せっかくお金をかけてもらったフィードバックを改善に生かさず、ただ捨ててしまうのでは、あまりにもったいないと思いませんか?このコラムでは、健康診断の結果でみなさんが疑問に思われるであろうことを詳しく解説していきます。次回も続けて読んでくださいね。

梅村 将就

2020.3.5

胸部X線検査(胸のレントゲン)で何が分かるの?

胸部X線は、心臓の大きさや血管の太さ、肺に影がないかなどを調べています。これにより、肺の病気や心不全などの心臓の病気など、色々なことがわかるのです。心不全とは、心臓のポンプ機能が何らかの原因で破綻したり、弱まったりして、全身の臓器に必要な血液を送り出せなくなった状態のことを指します。心不全の原因としては、弁膜症、虚血性心疾患、心筋症、先天性心疾患などの心臓の病気や高血圧など、さまざまなものが挙げられます。胸部X線では心臓は白く、肺は黒く写ります。なぜなら、X線は「空気→水→骨」の順で「黒→白」という風に写るからです。骨が白く写って、空気は黒く写るわけですが、肺は空気をたくさん含んだスポンジみたいなものなので、ほとんど黒く写ります。一方、心臓は血液を入れた袋のようなものなので白っぽく写ります。心不全になると心臓のポンプとしての働きが弱くなり、どんどん血液が渋滞して、心臓のほうにも血液が溜まっていき、心臓が大きくなってしまいます。胸部X線によって心臓の白いシルエットが大きくなっていれば、可能性の一つとして、心不全が疑われるのです。胸部X線を横から撮ることもありますが、これは心臓などに異常があった場合、前から見たときにわからない位置関係を側面から調べるために行っているのです。ちなみに、「肺がん」というと「胸部X線で肺に影がある」と思われるかもしれませんが、初期の肺がんはCT検査や喀痰検査(かくたんけんさ:吐き出した痰を調べる検査)などで詳しく調べないと見つからないこともありますので、胸部X線写真が「異常なし」という結果でも、注意が必要です。

梅村 将就

2020.1.23

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