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【特集】新型コロナウイルス感染症

シリーズ別記事一覧

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】「検査しても無意味」は間違い? 自宅待機中に亡くならないためにチェックすべきこととは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、コロナ)の疑いがあり、自宅待機している間に容態が急変してしまう例が出ています。重篤な状態になる前に受診しなければいけません。重症化の前兆を見逃さないためにできること4月29日、厚生労働省は「緊急性の高い13の症状」のリストを発表(※)しました。コロナに感染して陽性だと診断されても、入院できずに自宅で療養している人のために、重症化の前兆となる症状をまとめたものです。(※)軽症患者 緊急性高い13症状のリスト公表 厚労省 新型コロナ - NHKニュース「顔色が明らかに悪い」「息が荒くなった(呼吸数が多くなった)」「急に息苦しくなった」「胸の痛みがある」「肩で息をしている」「ぼんやりしている(反応が弱い)」「もうろうとしている(返事がない)」などです。これらに該当する項目が1つでもあれば、重症化してしまうおそれがあるので、すぐに受診すべきです。検査を受けていない人でも同じです。これらの基準に関連する呼吸数や心拍数などは、自宅などで療養している場合でも簡単に自分で測定することができます。呼吸数・心拍数などの目安やバイタルチェックの方法はこちらの記事にまとめていますので、参考にしてみてください。【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】重症化を見逃さないためにチェックすべき3つの数値とは?容態が急変するのは肺炎の急速な進行が原因と考えられており、実際に突然死した例では、肺に多数の新型コロナウイルスが見つかったという報告がありますが、一方では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、血管内皮に感染し、血液が固まりやすくなるような血液凝固メカニズムにも変化が起こることがわかってきました。まだ、急激に重症化するメカニズムは十分には解明されていませんが、急速に悪化することがありうる病気ということは知っている必要があります。感染が疑われる人にPCR検査を行ったほうがよい理由私が、重症ではなくても臨床的に疑われる患者さんに検査を行う意義があると考えるのは、診断がついていれば、その後の経過をある程度予測し、発症から7~10日くらいで急速に悪化するかもしれないことに注意できるからです。自宅で経過を見るにしても、呼吸数や心拍数の変化に気をつけて、特に軽快/重症化の分かれ目である7~10日くらいで体調に異変があったらすぐに病院に来てくださいと言うことができるわけです。また、当然のことながら、診断が確定すれば、濃厚接触者の管理をすることによって、感染の拡大を防止し、クラスタを形成することを予防することにつながります。「軽症の人を検査しても治療法は変わらない」というのは事実です。また、現時点では軽症の人は新型コロナウイルス感染症ではない確率の方が高いでしょう。しかし、検査して陽性であれば、その時点での治療方法は大きく変わりませんが、管理方法が変わります。私たちが病原診断(病気の原因となったウイルスや菌をつきとめること)をしようとするのは、患者さんの状況からある特定の感染症を疑ったときに、病原診断によって患者の経過観察と注意すべき事柄が変わってくることがあるからです。たとえば、RSウイルス感染症というのは特効薬的な治療はありません。しかしながら、6か月の乳児が最初は鼻水と咳だけであっても、RSウイルス感染症であった場合には重症化のリスクが高く、その後、急速に呼吸困難になることがあるので、あらかじめ注意を払うことができます。そのためには病原診断が必要なのです。たしかに、コロナの有効な治療法は見つかっていません。しかし、注意をすることはできます。自宅待機をしている間に亡くならないためにも、臨床的に新型コロナ感染が疑われる場合には検査を行って、陽性であれば診断が付きますし、陰性であっても強く疑う場合には、注意深く経過を観察して行く必要があります。コロナに限らず感染症は、どのような病原体が、どんな体調の人の、どの臓器に感染したかを考えて診断と治療を行います。少なくとも医者が疑ったら検査は行ってほしいと思います。医者はそれなりに理由があって、「病原診断がしたい」と考えています。症状を疑うようならすみやかに保健所に連絡をもちろん、大した症状もないのに心配だからという人に検査を受けさせるのは資源の無駄遣いです。症状があっても元気な場合には別の病原体によるものであることが多いでしょう。また、そのような場合に企業が社員に「陰性証明」を求めて検査を受けさせようとするのも困ります。新型コロナ感染を疑う合理的な症状があり、経過を見ていく必要があって、検査が必要だと医者が判断したら、その検査は行うことができるようにするべきだと思います。私どもの病院では、保健所からの指示がなくても、「疑い例」の方が直接病院に来て、検査を行うケースがあります。普通の外来に来ている患者を診察したところ、コロナの疑いがあるという場合、検査を行っています。決して推奨しているわけではありませんが、熱が4日続く人や、一年中咳をしている人はたくさんいるわけです。そういう人たちが病院に来た際には、医者がおかしいと判断すれば検査を行う、ということです。今後、コロナは一般化していくと思いますので、このようなケースは増えていくと考えられます。症状を見てコロナの疑いを感じたときは、まずは保健所に連絡して相談してみてください。保健所に電話をかけてもつながらないときもありますので、事前に地域の連絡先を調べておくことも大切です。今後は地域での医療体制や検査体制が整備され、地域外来・検査センターなどが設置されてきますので、かかりつけの医療機関に相談されてもよいと思います。まとめ自宅待機中に急変する可能性も。異変を感じたらすぐに受診を。「検査しても意味がない」は間違い。コロナを疑ったらすぐに検査を。事前にコロナについて相談する連絡先をチェックしておこう。参考サイト軽症患者 緊急性高い13症状のリスト公表 厚労省 新型コロナ - NHKニュース新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養・自宅療養における健康観察における留意点について - 厚生労働省新型コロナウイルス感染症策推進本部

谷口 清州

2020.5.25

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】親が、あるいは子が感染したら?親子が感染したときの病院の対策は?

小さな子どもを持つ親が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)になってしまったらどうすればいいのか、心配になっている方も多いと思います。「子どもが感染しにくい」というわけではないまず、これまでの研究では、子どもも大人と同じ確率で感染することがわかっています。つまり、子どもと大人の感染率は同じです。子どもの感染者数が少ないからといって、子どもが感染しにくいわけではありません。また、大人から子どもへの感染率は高いのですが、子どもから大人への感染率は低いです。これらの理由はわかっていません。一方、最近小児では鼻粘膜のウイルス受容体である「ACE2」が少ないという報告があり、これによって子どもは感染しにくいのではないかと議論されています。子どもの感染者が少ないと思われているのは、症状が出にくいのと、軽症者が多いということもあります。ですから、大人が感染したら、当然一緒に住んでいる子どもに感染するリスクがあります。コロナは発症の2日前から感染性があるとされているので、発症した時点ですでに感染している可能性はあります。まだ感染していない場合、それ以上の接触を減らすために離れて住むことができれば感染リスクは低くなりますが、小さなお子さんの場合はそれも難しいでしょう。祖父母が面倒を見ようとしても、お子さんがすでに感染していて潜伏期にあるとすれば、祖父母に感染してしまったらもっと大変なことになってしまいます。誰かに預けるにしても、預かる方も多少なりともリスクがあるわけです。重症化リスクが高くない人で、いざとなったら子どもを預けられる人がいないか、リストアップしておくことも一つの方法です。親が防護服を着て付き添いも親がコロナに感染したときの、お子さんの面倒を誰が見るかについては、いろいろな形の対策を考えていかなければいけません。たとえば、私たちの病院では医療的ケア児をはじめとする在宅療養児の診療を行っていますが、彼らの両親がコロナに感染した場合、レスパイト(一時的な入院)という形でお子さんをお預かりすることも考えています。他の病院でも同じような対策を講じているところはあるでしょう。これについては、日本小児科学会が指針を示しています。両親ともに入院することになった場合、あるいは母子家庭、父子家庭で親御さんが入院しなければいけなくなったときは、児童相談所などが一時保護を行っている地域もあります。事前に調べてみてください。一方、子どもが感染したとき、感染していないご両親の付き添いをどうするかという問題もあります。1歳や2歳の子の場合、親が一緒にいないとどうしようもありません。でも、親がその時点で陰性なら付き添いをすることによってこれから感染するリスクもありますし、子どもは軽症でも親の方が重症化するリスクも高いかも知れません。これは大きなジレンマです。日本小児科学会は、小児が入院した場合について、保護者の同室付き添いが考慮されるという見解を示しています。その理由として、保護者によるケアは小児の精神的な安定につながり、医療従事者の負担も大きく軽減されること、小児に基礎疾患がある場合や乳幼児においては病態を最も理解し急変の徴候を早期に気付くことができるのも保護者であること、保護者が小児の介護を可能な状態であると判断できた場合には、入院する小児の介護者として同室してもらうことには大きな意味があることを挙げています。注意すれば外遊びさせても大丈夫コロナに感染していないお子さんは、全国で休校措置が続いているため、ずっと家にいることになると思います。感染リスクがあると思ってお子さんに外遊びを我慢させている親御さんもいるかもしれませんが、感染しない、感染させないように注意さえしていれば大丈夫です。コロナはヒトからヒトへしかうつらないので、ヒトとの距離が離れていれば感染することはありません。人の少ない大きな公園や、海、山などに行けば、感染することも感染させることもほとんどないと考えられます。よくこのような質問を受けますが、「精神衛生」という言葉もあるように、精神のバランスを保つことも非常に大切です。ただ、地域によっては、遊びに外に出ると白い目で見られてしまうこともあるようです。このウイルスは人との距離をとっていれば感染しないことを、みなさんに理解してほしいですね。隣の家に感染者がいると自分の家族にもうつる、なんてことを言う人もいますが、そんなことはありません。大気の拡散能力は膨大なもので、飛沫はせいぜい2メートルほどしか飛びませんので、隣の家からウイルスが飛んでくる、なんてことはありえないのです。世間の雰囲気が非常に神経質になっていると感じますが、必要な注意を払いながら、子どもを外に遊びに連れていくことは、けっして悪いことではないと思います。まとめ「子どもはコロナに感染しにくい」は間違い。子どもの感染率は大人と変わらない。親が感染したときのシミュレーションをしておくこと。感染しない、させないように注意すれば、外遊びも大丈夫。心のバランスも大事。参考サイト在宅療養児介護者のCOVID-19感染判明時等の支援について - 公益社団法人 日本小児科学会小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制に関する見解 〜入院や付き添いの考え方も含めて〜 - 公益社団法人 日本小児科学会Bi Q , Wu Y , Mei S , et al. Epidemiology and transmission of COVID-19 in 391 cases and 1286 of their close contacts in Shenzhen, China: a retrospective cohort study. Lancet Infect Dis. 2020;S1473-3099(20)30287-5. doi:10.1016/s1473-3099(20)30287-5Wong GW, Li AM, Ng PC, et al. Severe acute respiratory syndrome in children. Pediatr Pulmonol 2003;36:261-266.

谷口 清州

2020.5.21

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】重症化を見逃さないためにチェックすべき3つの数値とは?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、コロナ)では、どんな人が重症化するのでしょうか? また、どうすれば重症化しないのでしょうか? あらためておさらいしたいと思います。誰にでも重症化リスク、前兆となる症状に注意重症化するリスクが高いのは、高齢者、基礎疾患のある人、妊婦、1歳未満の乳児などといわれています。とはいえ、若い人が重症化しないかというとそんなことはありません。若い人でも重症化して亡くなった人はいます。今のところ、なぜ軽症で済むのか、なぜ重症化するのかは、科学的にわかっていません。ウイルスの曝露量(ウイルスを浴びた量)によるとも言われています。ただ、現象として上記のような人たちが重症化しやすいことはわかっています。それを知った上で、誰にでも重症化するリスクはあると覚えておくといいでしょう。4月29日、厚生労働省は軽症患者が注意すべき「緊急性の高い13の症状」 を発表しました。「顔色が明らかに悪い」「唇が紫色になっている」「息が荒くなった(呼吸数が多くなった)」「急に息苦しくなった」「胸の痛みがある」など、重症化の前兆となる症状を一つでも感じたら、すぐに保健所などに連絡してください。また、一般的には、発症後5~10日くらいで重症化することが多いので、特にこの時期は注意してください。自宅待機中は「バイタルサイン」をチェックしよう重症化しないために一番大事なことは、規則正しい生活をして、3食しっかり食べて、夜はちゃんと寝て、なるべくストレスをためないことです。健全な生活をすることが一番大事だと思います。実はインフルエンザにも同じことが言えます。インフルエンザが重症化して入院する中学生や高校生は、クラブの試合のために体が疲れきっていたり、受験勉強のストレスがあったりします。重症化するかしないかは、体調やストレスも大きくかかわっているようです。軽症と診断されて自宅で過ごすときは、重症化を早期に発見するために「バイタルサイン」を計測するといいでしょう。「バイタルサイン」とは「生命の兆候」という意味で、呼吸数、脈拍(心拍数)、血圧、体温の4つを指します。医師はこれらの数値情報で患者の状況を把握します。コロナの場合、特に注意しておきたいのは呼吸数、心拍数、体温の3つの数値です。たとえば、安静時の呼吸数が時とともにだんだん増えていったら、それは異常な兆候です。医師に連絡して相談してみてください。なお、この際には、普段の自分の状況を把握しておくと変化がよくわかりますから、今何も気になる症状がなければためしに測定してみるのもいいでしょう。記録するコツは、病院でもらえる「熱計表」を使うことです。インターネットで検索すれば、ダウンロードもできます。熱計表は記録をグラフにできるので、1日3回測って、数値が上がり傾向か下がり傾向かなどをチェックしてみてください。なお、呼吸数は年齢によって異なります。成人は1分間に16~18回ですが、幼児は20~30回、乳児は30~40回と多くなり 、逆に高齢者は少なくなるので目安にしてください。受診の目安として挙げられていた倦怠感や息切れなどは自覚症状なので、個人の感覚によって異なることがあります。一方、呼吸数、心拍数、体温は、感情などに左右されないので、信頼度が高い数値だと言えます。病院のような機器がなくても、1分間当たりの心拍数や呼吸数ぐらいなら簡単に測ることができます。コロナに限らず病気になったときは、経過観察をすることが大事になります。よく、医者が「様子を見てみましょう」と言いますが、これは要するに「症状の経過を観察しましょう」ということです。そのためには必要な数値は見ておかなければいけません。「自宅で安静にする」ときに最も大切なのは「何もしない」ではなく「経過を見ること」なのです。コロナは後遺症があるのか?コロナの後遺症について、詳しいことは今のところわかっていません。重症になった人は間質性肺炎を起こすわけですから、肺に一定の傷あとを残すことはありえます。わからないといえば、このウイルス自体もよくわかっていないので、検査で2回陰性が出たからといって本当にウイルスが体内から排除できているのかわからない部分があります。実際、PCR検査で2回陰性になって退院し、自宅に戻ってから急激に悪化して亡くなった方の肺からウイルスが検出されたという報告もあります。このウイルスはかなり人間に適応していて、人間の世界と共存できるようになりつつあるようです。すでに共存できるようになっているのかもしれません。最近、このウイルスが血管の内皮細胞に感染することもわかってきており、これが急激に重症化する原因とも考えられています。まだまだよくわからないウイルスに対して、われわれが今できることは、いかに感染しないかを考えることです。手洗いと密接・密集・密閉の「3密」を避けることを徹底しましょう。まとめ重症化しやすいのは高齢者、基礎疾患のある人、妊婦、乳児。若い人も重症化しないとは限らない。大切なのは、3食しっかり食べて、夜はちゃんと寝て、なるべくストレスをためないこと。自宅療養中の経過観察では呼吸数、心拍数、体温の3つに注意。異常な兆候があれば医師に相談を。コロナにはまだわからないことが多い。大切なのは「手洗い」と「3密」を避けること。参考サイト新型コロナウイルス感染症について - 厚生労働省新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養・自宅療養における健康観察における留意点について - 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部特設サイト 新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.5.15

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】自宅療養中でもすぐ相談が必要な症状とは?

自分の症状が新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、コロナ)なのかがわからないという声を聞くことがあります。様子を見ている間に重症化してしまうことを避けるためにも、また余計な不安に駆られないようにするためにも、コロナの症状を正しく知っておく必要があります。「この症状が出たらコロナ」という決まったものはありませんが、ここでは注意しておくべき症状についてお伝えします。「いつもの風邪とちょっと違う」症状に注意まず、風邪症候群(上気道炎)と同じような症状が長く続いたときには、コロナを考えておく必要があります。その他、これまでにわかっている特徴としては、風邪症候群のときよりも強いだるさ、倦怠感、普段は感じない嗅覚障害、味覚障害などがあります。全体の感染者の6割に味覚障害があったという報告もあります。このような変わった症状を覚えておくといいと思います。「二峰性発熱(にほうせいはつねつ)」と呼ばれる症状もよく見られます。発熱があって、一度下がった後、また熱が上がることです。ウイルス感染症の場合、ときどき見られる症状ですので、コロナに限った症状ではありませんが、疑うときの参考にしてください。コロナ患者との明らかな接触歴があればわかりやすいのですが、今は地域内感染伝播があったり、無症候性感染があったりするので、非常にわかりにくいのが現状です。医療現場では、だるさと発熱が長く続く、味覚・嗅覚障害、二峰性発熱などの症状に注意しています。これらの普段の風邪とはちょっと違う症状が見られた場合はコロナを疑ってもいいと思います。ただし、人間は精神に左右される動物なので、「自分はコロナかもしれない」と疑いはじめると、余計にだるくなったりすることもあります。過剰な心配は禁物です。ちなみに、ニュージーランドでは発熱や上気道症状があるだけでコロナを疑うことになっており、PCR検査をすべしとされています。今後地域に広がってくれば、このような考え方も必要になるのかもしれません。肺炎の兆候は「息切れ」に注意コロナに感染してから5日、6日と症状が続くと、重症化して肺炎になることがあります。乾いた咳がひどくなるのが肺炎のわかりやすい症状ですが、あまり強くないこともあります。また、肺炎の兆候として、息切れと呼吸数の多さが挙げられます。ウイルス性の肺炎は間質性肺炎と呼ばれるもので、肺胞の壁に浮腫(むくみ)が生じて乾いた咳が多くなります。また、肺での酸素交換がしにくくなるので、いつもは息切れしないようなところで息切れが起こります。普段より呼吸数も多くなります。さらにひどくなると、肺胞に浸出液が溜まってきて、痰となって出てくるようになります。胸痛も肺炎の特徴として挙げられますが、マイコプラズマやその他の細菌が原因の肺炎にも見られる症状です。ただ、普段、胸痛を感じたことのないような人が胸痛を感じるのなら、それは注意したほうがいいと思います。症状があっても4、5日は自宅待機が必要?発熱した場合でも4、5日は自宅で待機をしたほうが良いと言われていましたが、37.5℃以上の発熱が5日以上続くのは明らかにおかしいです。一般的な医師は、発熱が3日以上続いた時点で「これは風邪ではないのではないか」と考えます。厚生労働省は受診の目安をこれまで「37.5℃以上の発熱が4日以上」としてきましたが、5月6日にこれまでの内容を見直すことを発表しました。諸外国では、このように何日と決めている国はありません。現在のコロナの状況を考えたら、まずは家族や基礎疾患を持つ人に感染させないようにしなければいけません。発熱があって、息切れや味覚障害や倦怠感があったら、その時点で受診のために「帰国者・接触者相談センター」などに相談の連絡をしてください。医療機関で感染することもありますので、症状がひどくなければ、2日ほど自宅で様子をみたほうが賢明です。高齢者や基礎疾患のある人は、発熱や咳など比較的軽い風邪の症状でも相談できます。「医療崩壊につながるのでは?」と心配される方もいるかもしれませんが、現在いろんなところで地域のPCR検査センターが整備されつつありますので、今後早期診断が進んでくると思われます。検査のキャパシティに余裕のある地方は、症状が4日未満でも臨床的に疑わしいと思えばPCR検査も実施しています。我々が「この人はコロナではないだろう」と思う患者さんでも、少しでも疑いがあれば検査を行っています。私は今三重の病院に勤務していますが、たくさんの人が検査を断られているという状況ではありません。地方は東京と比較すると、まだまだコロナの症状が出ている方が少ないですが、かなり敏感になっている方も多く、危機意識は都会の方たちよりも高いと思います。これは、もともと地方都市では総合病院が一つしかないところも多く、「なにかあったら大変なことになる」という思いがあるのだと思います。そういうことからすると、さすがに最近は少なくなったようですが、東京の繁華街に人が集まっている様子は信じられませんでしたね。若いから軽症で済むとは限りませんし、高齢者だからといって必ず重症化するとも限りません。今のところ、コロナについて詳しいことはまだわかっていません。私どもの病院に入院している患者さんの中にも、すごく軽症なのにウイルス量が非常に多い方がいらっしゃいます。これまでのデータを見ると、症状の重さとウイルス量は比例しないようなのです。大切なのは自分の症状をしっかりと見ることです。症状がひどくて、どうもいつもの風邪と異なると思えば、相談して受診するようにしてください。まとめ「長く続く発熱」「強い倦怠感」「味覚・臭覚障害」「二峰性発熱」があったら受診相談を。「息切れ」と「胸痛」は肺炎の兆候なので注意。参考サイト新型コロナウイルス感染症について - 厚生労働省特設サイト 新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.5.14

【マンガで分かる!】新型コロナ対策 ~おうち編~ いま私たちにできること

大切なのは身体の抵抗力を保つこと収束の気配を見せない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。私たちが新型コロナウイルスに感染しないようにするには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?感染症の専門家で国立病院機構三重病院臨床研究部長の谷口清州医師にあらためて教えてもらいましょう。外出時に注意したいことは、こちらの記事をチェック!【【マンガで分かる!】新型コロナ対策 ~おそと編~ いま私たちにできることDr.タニグチのひとこと次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤(濃度6%のもの)を薄めて使用する場合は、水3Lに対して液25mLを目安に入れてください。まとめ外出から帰ったら、まずは石けんで手洗いしましょう。身体の抵抗力を保つために、早寝早起き、3食バランスよく食べて、禁煙しましょう。3密(密集・密接・密閉)を避けて適度な運動をしましょう。文:Open Doctors編集部作画:ぐっちぃ監修:国立病院機構三重病院 臨床研究部長 谷口 清州外出時に注意したいことは、こちらの記事をチェック!【マンガで分かる!】新型コロナ対策 ~おそと編~ いま私たちにできること

谷口 清州

2020.4.23

【マンガで分かる!】新型コロナ対策 ~おそと編~ いま私たちにできること

ウイルスは公共物と考えよう不要不急の外出を避けたいのに、仕事などでどうしても外出しなければいけないことがあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を避けるには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?感染症の専門家で国立病院機構三重病院臨床研究部長の谷口清州医師にあらためて教えてもらいました。おうちで過ごすときに注意したいことは、こちらの記事をチェック!【マンガで分かる!】新型コロナ対策 ~おうち編~ いま私たちにできることDr.タニグチのひとこと感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染することを「飛沫感染」と言います。まとめ外出するときは「自分も感染している」と想定してマスクをしましょう。ウイルスは公共の場であれば、どこについていてもおかしくありません。外出先ではウイルスが手につく機会を減らすことを意識してください。文:Open Doctors編集部作画:ぐっちぃ監修:国立病院機構三重病院 臨床研究部長 谷口 清州おうちで過ごすときに注意したいことは、こちらの記事をチェック!【マンガで分かる!】新型コロナ対策 ~おうち編~ いま私たちにできること

谷口 清州

2020.4.23

新型コロナ、大都市圏では「感染しているかも」の前提で行動を。地方も他人事ではない

もはやコロナウイルスの感染伝播を止めることは難しい新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は瞬く間に世界に広がり、世界保健機関はパンデミックを宣言しました。4月2日時点では、世界中で88万人を超える感染者が報告され、死者は4万人を上回っています。当初中国の湖北省に始まったアウトブレイクは徐々に中東とヨーロッパに広がり、ヨーロッパで急激な拡大とともに北米と南米に広がりつつあります。一方で、日本は地域封鎖や外出禁止令などの出ている欧米に比べて、患者の増加速度は緩やかです。図.国別の累積感染者数の推移(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」[ 2020年3 月19日 ]より)この理由は明確にはわかりません。おそらくですが、幸か不幸かダイヤモンド・プリンセス号でのアウトブレイクがあったため、早くから意識が高まったこともあると思いますし、なによりも、各地方自治体の保健所の方々のアウトブレイク対応、すなわちCOVID-19の患者さんが1人見つかったら、すみやかにその濃厚接触者を特定して、そこから先への感染伝播を防いでいる、ということが大きいと思います。そして、ほとんどの濃厚接触者の方が、人との接触を避けて自宅待機をくださったということにも感謝したいと思います。また、Social Distancing(社会的に距離をとる、人ごみを避けること)と言われるような、人と人の距離を離して接触頻度を軽減するために、学校閉鎖、大規模イベントの中止、外出自粛や自宅勤務の奨励なども行われました。みなさんがこれに非常に協力的であったということも大きな要因だと思います。しかしながら、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、人類にかなり適応していることには間違いないようです。ウイルスというものは、生きた細胞の中でしか増殖できませんので、生きた細胞から生きた細胞へ、人から人へ感染することによってその生命を維持します。次の人に感染できなくなると、ウイルスはそこで止まってしまって死滅してしまうのです。エボラ出血熱のように感染すると非常に重篤になり、ほとんどの人を殺してしまうようなウイルスは、自分もそこで絶えてしまうので、ヒト世界では生き残れません。一方、このウイルスは、多くの人では軽症です。不顕性感染といって、ほとんど症状がないのにウイルスを保持している人が見つかっています。また、一度ウイルスが陰性になった人が再び陽性になったということが報告されています。このようにウイルスに感染していて、かつ症状の軽い人がたくさんいれば、すなわち人間と共存できれば、この人が歩き回ってウイルスを広めてくれるので、ウイルスにとってはその生存にとっても都合が良いわけです。このような特性から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は効率よく、ヒトからヒトを渡り歩いて生存しているようで、今後もその感染伝播を止めることは難しそうです。大都市圏の人は「感染しているかも」の前提に立った行動を実際、東京を含む大都市圏では、感染伝播経路がよくわからない患者さんが多くなってきており、徐々に地域内での広がりを見せています。現状では見えていない感染伝播経路がどのくらいあるのかわかりませんが、軽症例が多いと、患者の発生状況が見えませんので、知らないうちに地域に広がることがあります。そのなかで、時に出る症状の比較的強い人が発見されて、患者として認識されることがあります。以前には1968年に新型インフルエンザとしてパンデミックを起こした「香港」インフルエンザは、当初は似たような流行形態をとり、「くすぶり流行」として、大きな流行をおこさずに全国にばらまかれ、その後一気に大流行となっています。東京都では外出自粛の要請が出され、電車や繁華街などが閑散としている様子も報道されています。感染伝播経路がわからない場合には、クラスタ対策は徐々に難しくなるので、このようなSocial Distancing戦略を取るしかありません。東京都を含む首都圏では、症状がなくとも「自分は感染しているかもしれない」という考え方に切り替える必要があります。若い方であっても重症化するリスクがないわけではありません。まずはご自分の身体を守るために、3つの「密」(密閉空間、密集場所、密接場面)の重なりを避けてください。しかし、うつされない方法を考えるだけではもう不十分です。感染経路不明の症例がこれだけ多く出ている今は、自分が感染していてウイルスを排出しているかもしれないという前提に立って、地域に広げない方法を考える段階に入っています。大都市圏以外に住んでいる人も決して「他人事」ではない一方で、お住まいの地域ではすべて伝播経路が追えており、誰から感染したかが不明な症例は見つかっていないので、そこまで不安には思っていないという方もいらっしゃるでしょう。少しマスクをつける人が増えたものの、日用品の買い物にも行くし、友人との集まりがあれば顔を出す。まだどこか新型コロナウイルスの感染を「他人事」ととらえている方も多いのではないでしょうか。たしかに感染伝播の経路が追えている地域では、知らない間に感染が広がっているという状況ではないと思われます。そのようなことから、そろそろこの「自粛ムード」を打破してもよいのではとの議論も聞こえてきますが、はたしてそうでしょうか。今お住まいの地域が、東京・大阪・愛知を含む、感染が広がっている地域との交流を絶って鎖国をするというのであれば話は別ですが、現実的にはそういうことはできないでしょう。そうであれば、遅かれ早かれ、あなたがお住まいの地域にも感染者は入ってきます。たくさん入ってくるようになれば、現在の東京のように誰から感染したかわからない患者も増えてくるでしょう。現在「オーバーシュート」と呼ばれているような、患者数が急激に増加するような事態になれば、医療費削減などでどんどん病床数を減らされている昨今の医療体制など、簡単に破綻してしまうと考えられます。ほんの数週間後、病院に人があふれ、人工呼吸器や人工心肺装置が足りなくなり、「残念ですが治療はできません」と言われる可能性はゼロではないのです。そして、こうなってしまえば、地域封鎖を行っても患者数はどんどん増加します。これは社会全体に、そして日本の未来に、大きく影響を与えます。現在は、「私の住んでいるところは大丈夫だから、イベントなどもすべて解禁しよう」ということではなく、毎日の報道で見られているイタリアやスペイン、ニューヨークの状況を考えて、自分たちはいま何をすべきかを考えていく時期だと思います。今後はどんな心構えで、どんな対策をすればよいのか地域内で感染がまん延しつつあるときに接触頻度の軽減政策を行うことは、実際に感染を減少させる効果があります。これについては、過去の1918年のスペインインフルエンザのときの米国の経験が、学術論文として報告されています。フィラデルフィア市では人口の10%程度が感染してはじめて教会・学校・劇場・公共娯楽施設を1週間閉鎖しただけでしたが、ここでは人口10万当たり死亡率は13,000を記録しました。一方、セントルイス市では、人口の2.2%が感染した時期、最初の死亡例が報告された時点で、劇場・映画館・学校・プール・ビリヤード場・日曜学校・キャバレー・ロッジ・社交場・ダンスホール・野外での集会を即座に閉鎖・中止し、それを2カ月続けました。ここでは人口10万当たり死亡率は1,800程度であったと記録されています。セントルイス市では、封鎖を解いた後若干の死亡率の上昇がありましたが、それでも全体の死亡率はフィラデルフィア市の10%程度ですんでいたわけです。この論文は、外出自粛・学校閉鎖などのSocial Distancingは感染伝播を遅らせるのには十分な効果があるということを示しています。いま、いろんなことをすべて解禁してしまってよいという時期ではありません。「これから少しずつ広がるところかも知れない」と思って、慎重にゆっくり一歩を踏み出すことが求められます。状況によっては、すぐに足を引っ込めなければならないかも知れないのです。また、上述の論文は、今後感染が爆発的に広がっていくことを予防するためには、このような接触頻度の軽減政策は、早ければ早いほど、厳密であればあるほど効果は大きいということも示しています。ゆえに、オーバーシュートすることが予見される場合には、早期に完全な封鎖を行うことが必要になります。当然のことながら、すでに爆発してしまってからでは遅いのです。早期に完全に地域を封鎖して外出禁止としてしまうことは、社会経済的にはかなり大きなインパクトがあり、日常生活にも大きな影響がありますが、それによって多くの命が救われることになります。「分からないことだらけ」で当たり前、臨機応変に対応をもともと風邪のウイルスだから、暖かくなれば自然に減っていくのではないかと思われるかもしれません。確かに季節性のインフルエンザは冬季に流行し、暖かくなると減少します。しかし、アジアの亜熱帯地域や熱帯地域ではインフルエンザは暑くてジメジメした雨季に流行することをご存知でしょうか。2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1pdm09)は、夏から流行が始まりました。気温や湿度は、感染症流行の絶対条件ではなく、人の免疫状態によるところが多いと考えられています。実際、このSARS-CoV-2は現在暑い南半球やアフリカでも広がっていますし、このウイルスに対して人類のほとんどが免疫を持っていないということが影響していると思われます。しかしながら、暖かくなると落ち着くのではないかという意見には全く根拠がないわけでありません。動物実験では、気温が30℃を超えると飛沫の中のウイルスの安定性が落ちて、感染性が低くなると言う報告があります。また、気温や湿度が低いと人の喉の上皮の繊毛運動が低下し、より感染効率が良くなるために、寒いときに流行しやすくなるというデータもあります。これにより、暖かくなると感染伝播効率が落ちると考えるのは決して的外れでとも言えないのです。このウイルスは発見されて数カ月ですから、まだまだわからないところも多いので、今後どうなるかは実際に経過をみてみないとわかりません。もちろん、人類にははじめての経験ですから、わからないのが当たり前であって、注意深く状況をみながらいろんなことを進めていく以外に方法はないのです。参考サイト新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)令和2年4月1日時点版 - 厚生労働省感染症対策特集~様々な感染症から身を守りましょう~ - 首相官邸Q&A on coronaviruses - WHO新型コロナウイルス(2019-nCoV) - NIID 国立感染症研究所特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.4.2

マンガで解説! 外出中・帰宅後の感染リスクを減らす行動

感染拡大が止まらない新型肺炎。自分と家族の健康を守るためには「基本の感染症対策」を徹底することが大切です。外出先で気をつけることは?家に帰ったらどんな行動をとればいい?感染症の専門医でもある谷口医師に聞きました。新型コロナウイルス、現在の日本国内の状況は?現時点で、国内で新型コロナウイルスの地域内感染伝播(※注1)が起きているという証拠はありません。(※注1)地域内感染伝播:ある地域のなかに「病原体を保有していて感染性を持つヒト」が一定程度存在し、その地域内で感染が伝播していくこと。武漢で起きているような、ヒトからヒトへの感染連鎖が追跡できない状態過剰に心配する必要はありませんが、一方では、地域内感染伝播が疑われるような事例が出てきています。まだ詳細は不明ですが、次の局面に備えて自分でできる感染対策を考えていきましょう。冬は風邪やインフルエンザが流行する季節でもあります。新型コロナウイルスへの対応も基本は同じです。自分と家族の健康を守るために、基本の感染症対策を徹底しましょう。帰宅したらまず何をすべき? 感染リスクを減らす行動順序は家に帰ったら、まずはマスクをはずして捨てます。表面にはウイルスなどの病原体がついている可能性があるので、紐の部分をもって外してください。マスクを外した後は、手をしっかり洗ってください。新型コロナウイルスはもちろん、かぜを引き起こすウイルスやインフルエンザウイルスには、アルコール消毒も有効です。アルコール消毒をする場合、1プッシュだけでは十分な量が出ていないこともありますので、2プッシュを目安に使用するとよいでしょう。手を洗った後は、洗濯・交換済みの清潔なタオルで拭いてください。特に感染症が気になる今の時期だけは使い捨てのペーパータオルを使うとか、ミニタオルを複数枚用意して、手を拭いたら都度洗濯するというのもよいでしょう。以上を実践していれば、外で拾ってきたウイルスなどの病原体を体内に取り込んでしまう可能性は低くなります。それでも気になるという方は、一日中着ていたコートなどは玄関前ではたき、玄関のドアノブやスマートフォンなど、日常的に外出先や電車内などで取り出して触れる機会があるものについては、アルコールの入った除菌ティッシュなどでふき取るという方法もあります。病院や公共の場所など、いろいろな病原体がいる可能性が高い場合、あるいは不特定多数の方が触れるものにはこういった対策も行いますが、自宅であれば普通の掃除をしておけばよいと思います。アルコールを使うと、材質によっては、変色・脱色することもありますから、目立たない場所で試してからにしてください。自宅は病院と異なり、さまざまなウイルスや細菌が行きかうような場所ではありません。もちろん、外界でいろいろな病原体と遭遇しているとは思いますが、それらをすべてシャットアウトすることは不可能です。上記の行動により外から持ち帰ってきたウイルスなどの病原体を減らすこと、そして何よりも大切なのは、鼻・のど・目などの粘膜に病原体が付着しないように手を洗うことです。日中もこまめに実行したほうがよい感染症対策は?やはり、石けんでの手洗いとアルコール消毒です。外出先から帰ったときや、電車のつり革やエレベーターのボタン、ドアノブ、お札や硬貨などの公共物に触れた時は、積極的に手洗い・消毒をするようにしてください。なんといっても大切なのは「口・鼻・目」などの粘膜から病原体を入れないことです。ウイルスがついた手で食事をとったり、鼻や目をこすったりすれば、ウイルスの侵入を許すことになってしまします。食事の前だけでなく、知らずしらず顔の粘膜などに触れる癖のある人などは、手洗い・消毒を徹底してください。参考サイト新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)令和2年2月11日時点版 - 厚生労働省Q&A on coronaviruses - WHO

谷口 清州

2020.2.14

新型肺炎、今後注意が必要なニュースは?

次から次へと新しい事実が報道される新型肺炎。どのニュースがどんな意味を持つのか、次に「節目」となるニュースは何なのか?SARS対策も経験した感染症専門医・谷口医師に聞きました。節目となるニュースは「国内における地域内感染伝播の成立」今、日本国内で新型コロナウイルスの問題に対峙している人が一番恐れていることは、これまでに判明している患者さんとの接触がない感染者が見つかること、すなわち日本国内での地域内感染伝播です。地域内感染伝播というのは文字通り、ある地域のなかに「病原体を保有していて感染性を持つヒト」が一定程度存在し、その地域内で感染が伝播していくことを指します。冬季のインフルエンザウイルスやかぜのウイルスのように、地域の人たちの間で病原体が循環している状態をイメージしてください。2019年12月末から2月にかけて、中国湖北省武漢市で起こっている集団感染、そして今話題になっているクルーズ船での集団感染も、誰から誰へ感染が広がったのか明らかにすることが難しい状況です。このように、ヒトからヒトへの感染連鎖が追跡できない状態を、地域内感染伝播といいます。逆に、ヒトからヒトへの感染連鎖が追跡できる状態を「濃厚接触による限定的なヒト-ヒト感染」といいます。これが起こっているのが現在の日本の状況です。国内で感染が確認されている人たちは少なくとも渡航歴のある方からの二次感染で、「誰から誰に感染したか」が分かっているため、現状のところ、日本では新型コロナウイルスの地域内感染伝播はないと言えます。現状維持のためには、患者さんがでたときの疫学調査(1人の患者さんがどこからどのように感染したか、その感染の原因となったリスク因子はなにかを調べる実地調査)が極めて重要です。もし今後、とある地域で「誰から感染したかわからない患者さん」が次々と出てきた場合には、地域で感染伝播が進行している状況を考えねばなりません。国内の新型コロナウイルス対策は、新たなフェーズに突入することになるでしょう。地域内感染伝播が起こっても個人ができる対策は変わらない新型コロナウイルスの地域内感染伝播が起こったら、通常の季節性インフルエンザと同じ状況になるということです。電車の中や職場、保育園、娯楽施設など、いろいろなところで感染しうるリスクがあるので、季節性インフルエンザと同様の対策が必要です。つまり、日常的に手洗いをし、状況に応じてマスクを使用して自分を守り、特に高齢の方や基礎疾患(高血圧・糖尿病などの持病)のある方は、人混みを避けておくことが大切です。今までにも新型コロナウイルスの予防として基本の感染症対策をおすすめしてきましたが、われわれ個人にできることは変わりません。新型肺炎の症状、今すぐできる対策は? 感染症専門医が解説(最終更新:1月31日)https://opendoctors.jp/news/detail/77cfd718bf72d85bd60bf6acfa7b0eea/ただし、予防するワクチンがないこと、治療する薬剤がないことは、インフルエンザと異なります。状況によっては、不特定多数の人が集まる場所、学校や事業所での感染拡大防止対策をとることも必要になるでしょう。ただ、現在ワクチンが急ピッチで開発されていますし、治療薬については何種類かの抗ウイルス薬の治験が進められています。正確な情報の把握と感染までの「時間稼ぎ」が命を救う通常、地域内感染伝播が起こる場合には「感染者が地域で歩き回れる程度に元気である」ということが条件です。感染者がすべて重症化して肺炎になれば、外を出歩くことは難しくなってくるはずだからです。新型コロナウイルスに関しては、今のところ「重症者がでるものの、軽症者もかなり多い」という状況で「かかれば必ず重症になる」というわけではありません。しかし、今後ウイルスが変異を起こして重症化率が高くなる可能性もありますし、無症候性(症状がない)感染例・軽症例の割合や、そういった感染者が感染を広げる力(感染性)についても徐々に明らかになってくることでしょう。新たなフェーズを乗り切るためには、今までと同様、正確な情報をいち早く知る力が試されます。SNSなどではデマが飛び交い、正しい情報と不確かな情報が混在しています。テレビ・新聞などで報じられるニュースはもちろん、国・自治体や研究所・病院などの公的機関が発信する情報を常にチェックしておきましょう。また、地域内感染伝播地域が起こった場合、多数の死者が出るのを防ぐ方法として「できるだけ感染しないようにして時間を稼ぐ」ことが有効だと考えられます。重症になる患者の割合にもよりますが、患者が一度にたくさん発生すれば、病院は患者であふれて、ひとりひとりが十分な治療を受けられない状況になります。また、不安になった人たちが感染していないのに病院に行けば、病院で新型コロナウイルスにかかってしまいます。武漢では現在なこのような状況が起こっているという報道もされています。このような場合、軽症であれば「周囲に感染させないように留意し、自宅で安静して十分な栄養と水分を補給して経過をみる」ことが、自分と周りの人々、そして医療機関を守ることにつながります。これによって、一時に多数の患者がでることを防げれば、病院が患者であふれることもなく、感染した人をきちんと診ることができ、重症になった患者さんに十分な治療ができます。これを被害低減戦略(Mitigation strategy)と言います。国の対策、個人の対策は「今のまま」で大丈夫なのか現在、国および地方自治体の公衆衛生行政は、可能な限り地域内感染伝播を防ぐ努力をしています。つまり、患者さんを早期発見し、きちんと医療機関で感染対策を行って治療することにより感染の拡大を防ぎ、その方の濃厚接触者を特定して、健康状態を監視して、発症すればすぐに医療機関に収容して、それ以上の感染の拡大を防いでいます。2003年のSARSの際には、このような戦略によってSARSコロナウイルスを封じ込めることに成功しています。その当時はまだわかっていませんでしたが、実はSARSコロナウイルスの無症候性感染例は非常に少なく、軽症例や発症した早期には感染力が極めて低かったのです。そのため、熱や咳がでて、肺炎を起こした人を医療機関できちんと治療していれば、それ以上の感染伝播を防ぐことができたわけです。封じ込めがうまくいくかどうかは、新型コロナウイルスの特性によるところも大きいので、どんなに努力をしても、最終的には地域内感染伝播が樹立されるかもしれません。現状では、今回の新型コロナウイルスには軽症例、無症候性感染者がいることがわかっていますが、この人たちがどれぐらい感染を広げる力があるかについては十分にわかっていません。現在行っているような対策によって、封じ込めができるかもしれませんし、できなかったとしても、少なくとも感染の拡大を遅延させる効果があります。繰り返しますが、今のところ、新型コロナウイルスは日本国内で地域内感染伝播を起こしてはいません。つまり、普通に生活していて感染するリスクは低い状況です。ただ今も国内には、海外で感染した人と、その人との濃厚接触により感染した人が存在します。ひょっとしたら、まわりにいわゆる「無症候性感染者」がいるかもしれません。しかしながら、現状ではこの無症候性感染者の感染性については、まだよくわかっていない段階です。第一線にいる専門家たちが「まだ確実なことがいえる段階ではない」と言っていることについて、心配しても仕方がありません。今私たち一人ひとりにできることは、日常的に手洗いをして自分を感染から守り、症状があれば咳エチケットで周囲に広げないようにし、状況に応じてマスクで防御しておくことです。現段階で、普通に街を歩くのに新型肺炎予防のためと言ってマスクをつけても、メリットはありません。それどころか、何らかの症状がある人やその看病をしている人、そして最前線で働く医療者たちにマスクが行き渡らないのではないかと危惧しています。なお、マスクにまつわる誤解と疑問についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。感染症予防、マスクは「二度づけ」禁止? 再利用する方法はhttps://opendoctors.jp/news/detail/debc9015572dd18bd1050daf1281007c/参考サイト新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)令和2年2月11日時点版 - 厚生労働省感染症対策特集~様々な感染症から身を守りましょう~ - 首相官邸Q&A on coronaviruses - WHO新型コロナウイルス(2019-nCoV) - NIID 国立感染症研究所特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.2.13

感染症予防、マスクは「二度づけ」禁止? 再利用する方法は

新型肺炎の影響で品薄の状態が続いているサージカルマスク。在庫がもったいないからと再利用している人も多いようですが、専門家によると「基本的に外したマスクの再利用はおすすめできない」とのこと。「そもそもマスクに予防効果はない」って本当? マスクが買えない状況になってしまったら、本当に再利用する方法はないの?マスクをめぐる誤解や疑問について、感染症の専門家でもある谷口医師に聞きました。マスクに「予防効果」はない?マスクの効能をめぐる誤解最近「健康で何の症状もない人が、予防のためにサージカルマスク(不織布でできたマスク)を着用しても、飛沫感染を予防する効果はない」という記事が散見されます。しかし、100%予防できるわけではありませんが、サージカルマスクが一定程度飛沫感染を予防することは、科学的に証明されています。世界保健機関(=WHO)などが言いたいのは「マスクを装着することが必要なとき(=感染リスクがある場合)に装着することは有効な使用法であるが、リスクが低い、または全くないときに使用するのは意味がない」ということです。飛沫感染に対する効果の有無と、装着することによるメリットの有無は別物なのです。現在の日本は、武漢とは違って地域内感染伝播(※注1)がありません。よって、新型コロナウイルスの予防という点では、マスクを装着する必要はありませんし、そのメリットはありません。もちろん、インフルエンザの流行期にインフルエンザを可能な限り予防したい、花粉症の予防をしたいと言う場合にはマスクは有効です。(※注1)地域内感染伝播:ある地域のなかに、病原体を保有していて感染性を持つヒトが一定程度存在し、その地域内で生活しているとその病原体に感染すること。冬季のインフルエンザウイルスやかぜのウイルスのように、地域の人たちの間で病原体が循環している状態を指す。マスクは「2度づけ」禁止! 正しくつけなければ意味がないまず、マスクの正しいつけ方についてですが、マスクは鼻筋から顎までをしっかりカバーするようにかけます。たまに鼻を出したまま口にだけマスクをかけている人を見かけますが、意味がありません。また、顔の大きさに合ったサイズのマスクを使い、マスクと顔の間にすき間ができないように密着させてください。一般的に使われているサージカルマスク(不織布でできたマスク)は、内部の3次元的な網目構造を利用して病原体を吸着しています。そのため、不自然な形で折りたたんだり、洗ったりすると、この3次元構造が破壊され、効果がなくなってしまいます。ゆえに、一度外したマスクは再使用しないというのが基本です。医療関係者はマスク管理について徹底的な教育を受けています。マスクの外側、特に中心部位には吸着された病原体が付着している可能性があるので、もしマスク表面に触ってしまったら必ず手洗いをしますし、マスクを外したら捨てるようにしています。それだけ厳格に取り扱っているからこそ効果があるのです。マスクを何度も使いまわしたり、サイズが合っていないものを使っていたりしていれば、残念ながらウイルスの侵入を防ぐのに有効な方法とはいえません。マスクが在庫切れ!再利用する方法はないの?全国的にマスクが不足している今、買い占めなどが続くと、本当にマスクが必要な時に手に入らないという可能性もあります。そんな場合に備えて、推奨はできませんが、再利用する方法を伝えておきます。マスクの効果を保持するためには形を崩さないことが大切なので、マスクを静かに外したら、外した形のまま清潔な紙袋などの中に保管します。形を崩さず、湿気のない状態で保存することがポイントです。再び装着するときはマスクのひもを持ってそっと取り出し、やはりマスク表面には触れないようにつけてください。しかし、この方法は「最終手段」であって、二度、三度と使いまわすのはおすすめできません。何らかの症状がある人や、その看病をする人たちにマスクが行き届くよう「必要な分だけを購入し、買い占めをしない」ということも大切だと思います。参考サイト新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)令和2年2月11日時点版 - 厚生労働省Q&A on coronaviruses - WHO

谷口 清州

2020.2.12

Open Doctorsは病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介。お医者さんとの間にある情報の差を解消することで、あなたの意思決定を支援します。

produced by
市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会