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コラムの一覧

身近な病気や気になるテーマに関する、医師監修のコラム。
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新着記事

新型肺炎、日本国内での「ヒト-ヒト感染」にどう備える?(最終更新:1月29日)

1月29日、中国内陸部の武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の死者が132人になり、患者数は5974人に増加しました。感染者は日本を含め17の国と地域で83人が確認されており、日本でも武漢滞在歴のない感染者が初めて確認されました。ここでは新型肺炎に関する現時点での情報と、今からでもすぐにできる対策についてまとめました。新型肺炎になるとどんな症状が出るの?中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱・全身倦怠感・乾いた咳(せき)・入院患者では呼吸困難も多い・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されているこれらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。今すぐできる対策は?現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、下記の2点になります。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、風邪・インフルエンザが流行する季節でもありますから、以下のような通常の感染症対策を続けることが大切です。・手洗い・「咳エチケット」を守る・マスクを着用する・むやみに人ごみに出かけない「咳エチケット」と「正しい手洗い」とは?咳やくしゃみの飛沫(ひまつ)による感染を防ぐため、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、服のそでを使って口や鼻をおさえることです。発熱などの自覚症状がなくても、電車や職場、学校など人が集まる場所では必ず実践してください。■3つの正しい「咳エチケット」・マスクを着用する(マスクは鼻からあごまで隙間がないように覆いましょう)・ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う(使ったティッシュはすぐに捨てましょう)・上着の内側やそでで覆う悪い事例としては、・せきやくしゃみを手でおさえる(その手でさわったドアノブや電車のつり革などにウイルスが付着し、他人に病気を移す可能性があります)・せきやくしゃみをするとき何もしない(病原体を含む飛沫が飛んで他人に病気を移すことがあります)■正しい手洗いの仕方・流水で手を洗います。・石けんなどを使って指から手の甲、手首まで洗います(30秒間は洗いましょう)。・2回洗うとより効果的です。・十分に流水で洗い流して清潔なタオルやペーパータオルなどで拭き取ります。流水で手洗いできない場合は、アルコールが含まれた速乾性の手指消毒剤で代用できます。感染の対策としては、インフルエンザに対する対策と同様で、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。新型コロナウイルス感染症の疑いがあるときは?武漢に滞在歴があり、日本に入国後2週間以内に発熱や気道症状が出た場合、新型コロナウイルス感染症の疑いがあります。厚生労働省は、住んでいる地域の保健所に連絡をした上で、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけています。その際、武漢に滞在していたことを申告してください。また、不要な外出を避け、「咳エチケット」を守るようにしてください。現在までのところ、無症候性(症状がない)感染例や軽症例の感染性についてはよくわかっておりませんので、武漢に渡航歴のある人と接触したあと、発熱や気道症状が出た場合も、上記同様にすみやかに医療機関を受診してください。新型コロナウイルス感染症が重症化すると肺炎になります。65歳以上の高齢者、あるいは心臓や肝臓に病気を持つ人、糖尿病患者などは命にかかわることがあります。しかし、まだ肺炎の発症や死亡のリスクについてはまだわかっていないことも多くあります。ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。新型コロナウイルスに関するコールセンター編集部追記(1月29日):1月28日、厚生労働省が新型コロナウイルスに関するコールセンターを設置しました。・厚生労働省の電話相談窓口: 03-3595-2285・受付時間:9時00分~21時00分(週末や祝日を含め、毎日午前9時~午後9時まで対応)【解説】コロナウイルスとは?コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。参考サイト・新型コロナウイルスに関するQ&A - 厚生労働省・新型コロナウイルス(2019-nCoV) - NIID 国立感染症研究所・咳エチケット – 厚生労働省・新型コロナウイルスに係る厚生労働省電話相談窓口(コールセンター)の設置について – 厚生労働省・Coronavirus - World Health Organization: WHO・特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.1.29

胸部X線検査(胸のレントゲン)で何が分かるの?

胸部X線は、心臓の大きさや血管の太さ、肺に影がないかなどを調べています。これにより、肺の病気や心不全などの心臓の病気など、色々なことがわかるのです。心不全とは、心臓のポンプ機能が何らかの原因で破綻したり、弱まったりして、全身の臓器に必要な血液を送り出せなくなった状態のことを指します。心不全の原因としては、弁膜症、虚血性心疾患、心筋症、先天性心疾患などの心臓の病気や高血圧など、さまざまなものが挙げられます。胸部X線では心臓は白く、肺は黒く写ります。なぜなら、X線は「空気→水→骨」の順で「黒→白」という風に写るからです。骨が白く写って、空気は黒く写るわけですが、肺は空気をたくさん含んだスポンジみたいなものなので、ほとんど黒く写ります。一方、心臓は血液を入れた袋のようなものなので白っぽく写ります。心不全になると心臓のポンプとしての働きが弱くなり、どんどん血液が渋滞して、心臓のほうにも血液が溜まっていき、心臓が大きくなってしまいます。胸部X線によって心臓の白いシルエットが大きくなっていれば、可能性の一つとして、心不全が疑われるのです。胸部X線を横から撮ることもありますが、これは心臓などに異常があった場合、前から見たときにわからない位置関係を側面から調べるために行っているのです。ちなみに、「肺がん」というと「胸部X線で肺に影がある」と思われるかもしれませんが、初期の肺がんはCT検査や喀痰検査(かくたんけんさ:吐き出した痰を調べる検査)などで詳しく調べないと見つからないこともありますので、胸部X線写真が「異常なし」という結果でも、注意が必要です。

梅村 将就

2020.1.23

止まらない感染拡大。新型肺炎、今できる対策は?(最終更新:1月27日)

本記事の最終更新日は1月27日ですこの記事の内容は古くなっています。最新情報はこちらの記事でご確認いただけます。新型肺炎の症状、今すぐできる対策は? 感染症専門医が解説(最終更新:1月30日)2019年12月以降、中国内陸部の湖北省武漢市で、新型コロナウイルスによる肺炎患者が相次いでいます。現時点でわかっている情報と対策を整理しました。編集部追記(1月27日):中国の保健当局は、患者の数は中国国内で2744人になったと発表しました。患者のうち重症者は461人にのぼっており、死者は合わせて80人となりました。中国本土以外では、これまでに13の国と地域で57人の感染者が確認されています。現時点で、パンデミック(世界的大流行)を起こす可能性は?今後パンデミック(世界的大流行)に進展するリスクは「持続的・効率的なヒトからヒトへの感染が起こるかどうか」によります。これまでのSARS、MERSでは持続的・効率的な「ヒト-ヒト感染」は起こっておらず、あくまで濃厚接触による限定的な「ヒト-ヒト感染」にとどまっていました。新型コロナウイルスについても、感染性の程度をもう少し詳細に評価することが必要です。現時点では、夫婦間での感染や中国国内の医療従事者の感染が確認されています。これは、「ヒト-ヒト感染」が起こっている可能性を強く示唆しています。しかし、いずれも患者に濃厚接触をした者が発症しているのみであり、現状ではヒトからヒトへの感染性は高くないと考えられます。家庭・病院内での濃厚接触など、特定の状況では感染しうるということを示唆しており、「持続的・効率的な『ヒト-ヒト感染』が起こっている」とは言えない状況です。新型コロナウイルスはどれぐらい危険?また「かかったらどれぐらいの人が亡くなってしまうのか」といった、「ウイルスそのものの怖さ」もまだ詳しくわかっていません。コロナウイルスというものは、もともと軽症で済むものから重症になるものまで幅がとても広いので、おそらく軽症者はもっといると思われますが、SARSコロナウイルスに類似しているとすればこれらの数は限定されるかもしれません。どのくらいの数が感染して、その中でどのくらいが肺炎を起こすか、そのうちのどのくらいが致命的なのかということがわかるまでは、ニュースなどで今後の状況の変化に注意しつつ、以下の対策を取り続けてください。現状、日本国内では地域内の感染伝播はありませんので、国内で暮らされている方々が心配されるようなことはありません。新型肺炎になると、どんな症状が出る?中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱・全身倦怠感・乾いた咳(せき)・入院患者では呼吸困難も多い・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されているこれらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。今すぐできる対策は?現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、・武漢市への渡航歴があって発熱と気道症状(咳やのどの痛みなど)のある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。・武漢市への渡航歴があって、発熱と気道症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。この2点になります。武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。感染の対策としては、現在はインフルエンザや風邪のウイルスも地域に存在していますので、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。【解説】コロナウイルスとは?コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。参考サイト・中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について(第5報) - 厚生労働省・Coronavirus - World Health Organization: WHO・中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策 - NIID 国立感染症研究所・特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.1.27

新型肺炎の症状、今すぐできる対策は? 感染症専門医が解説(最終更新:1月31日)

サイト改善に向けた5分程度のアンケート実施中。回答はこちらから。本記事の最終更新日は1月31日です1月31日、新型コロナウイルスについてWHO=世界保健機関は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。中国では患者数が9000人を超え、死者は213人となりました。ここでは新型肺炎に関する現時点での情報と、今からでもすぐにできる対策についてまとめています。新型肺炎になるとどんな症状が出るの?中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱・全身倦怠感・乾いた咳(せき)・入院患者では呼吸困難も多い・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されているこれらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。今すぐできる対策は?現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、下記の2点になります。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、風邪・インフルエンザが流行する季節でもありますから、以下のような通常の感染症対策を続けることが大切です。・手洗い・「咳エチケット」を守る・マスクを着用する・むやみに人ごみに出かけない「咳エチケット」と「正しい手洗い」とは?咳やくしゃみの飛沫(ひまつ)による感染を防ぐため、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、服のそでを使って口や鼻をおさえることです。発熱などの自覚症状がなくても、電車や職場、学校など人が集まる場所では必ず実践してください。■3つの正しい「咳エチケット」・マスクを着用する(マスクは鼻からあごまで隙間がないように覆いましょう)・ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う(使ったティッシュはすぐに捨てましょう)・上着の内側やそでで覆う悪い事例としては、・せきやくしゃみを手でおさえる(その手でさわったドアノブや電車のつり革などにウイルスが付着し、他人に病気を移す可能性があります)・せきやくしゃみをするとき何もしない(病原体を含む飛沫が飛んで他人に病気を移すことがあります)■正しい手洗いの仕方・流水で手を洗います。・石けんなどを使って指から手の甲、手首まで洗います(30秒間は洗いましょう)。・2回洗うとより効果的です。・十分に流水で洗い流して清潔なタオルやペーパータオルなどで拭き取ります。流水で手洗いできない場合は、アルコールが含まれた速乾性の手指消毒剤で代用できます。感染の対策としては、インフルエンザに対する対策と同様で、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。新型コロナウイルス感染症の疑いがあるときは?武漢に滞在歴があり、日本に入国後2週間以内に発熱や気道症状が出た場合、新型コロナウイルス感染症の疑いがあります。厚生労働省は、住んでいる地域の保健所に連絡をした上で、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけています。その際、武漢に滞在していたことを申告してください。また、不要な外出を避け、「咳エチケット」を守るようにしてください。現在までのところ、無症候性(症状がない)感染例や軽症例の感染性についてはよくわかっておりませんので、武漢に渡航歴のある人と接触したあと、発熱や気道症状が出た場合も、上記同様にすみやかに医療機関を受診してください。新型コロナウイルス感染症が重症化すると肺炎になります。65歳以上の高齢者、あるいは心臓や肝臓に病気を持つ人、糖尿病患者などは命にかかわることがあります。しかし、まだ肺炎の発症や死亡のリスクについてはまだわかっていないことも多くあります。ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。新型コロナウイルスに関するコールセンター編集部追記(1月29日):1月28日、厚生労働省が新型コロナウイルスに関するコールセンターを設置しました。・厚生労働省の電話相談窓口: 03-3595-2285・受付時間:9時00分~21時00分(週末や祝日を含め、毎日午前9時~午後9時まで対応)【解説】コロナウイルスとは?コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。参考サイト・新型コロナウイルスに関するQ&A - 厚生労働省・新型コロナウイルス(2019-nCoV) - NIID 国立感染症研究所・咳エチケット – 厚生労働省・新型コロナウイルスに係る厚生労働省電話相談窓口(コールセンター)の設置について – 厚生労働省・Coronavirus - World Health Organization: WHO・特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEBアンケート調査にご協力くださいOpenDoctorsではみなさまの声を元にサイトを改善するため、5分程度でできる匿名のアンケートを実施中です。アンケート回答はこちらから。

谷口 清州

2020.1.31

これってインフルエンザ……? 初期症状と、かかった場合の治療方法を解説

毎年冬になると流行するインフルエンザ。「ただの風邪だと思っていたら、インフルエンザだった!」なんてことになったら、子どもやお年寄りであれば症状が重くなるリスクもありますし、ウイルスをまき散らすことにもなりかねません。そこで今回は、風邪とインフルエンザの症状の違いを知り、もしインフルエンザにかかっていた場合はどんな治療が必要なのか、おさらいしましょう。風邪とインフルエンザの違いって何?風邪はさまざまなウイルスによって引き起こされる、基本的に自然治癒傾向のある疾患です。多くは、発熱・のどの痛み・鼻汁・くしゃみ・咳などの症状が中心です。一方、インフルエンザはインフルエンザウイルスにより引き起こされる感染症です。38℃以上の発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・全身倦怠感などの症状が比較的急速に現れます。普通の風邪と同じように、のどの痛み・鼻汁・咳などの症状が見られる場合もありますが、特徴的なのは気道の症状だけではなく、全身的な症状が強いということです。「インフルエンザかも」と思ったら?急激な高熱など「インフルエンザかも」と疑いを感じたとき、症状が強い場合やインフルエンザが重症化するリスクのある場合(注)などは、状況に応じて医療機関を受診しましょう。抗インフルエンザウイルス薬の投与により、発熱期間を1日短縮することと、合併症を減らす効果が認められています。インフルエンザの治療方法医療機関でインフルエンザと診断されたら、以下の2つの治療をおこなうことになります。水分・睡眠を十分にとり、安静にするもともと健康な人にとっては、インフルエンザは風邪と同様に自然治癒する疾患です。水分を十分にとり、しっかり眠って安静に過ごしましょう。症状やリスクに応じて薬の服用も高齢者や幼児、妊婦、持病のある人は、健康な人と比べて症状が重くなりやすい傾向にあります。そういった人々や、発熱・頭痛などの症状が重い人などに対しては、医師が必要と判断した場合に抗インフルエンザウイルス薬や解熱鎮痛薬などの薬が処方されます。薬が処方されたら、その効果を最大限に発揮させるために、用法・用量・服用する日数をきちんと守りましょう。抗インフルエンザウイルス薬のもっとも効果的な服用時期は?インフルエンザウイルスは増殖のスピードが速く、発症後48時間以内にウイルス増殖のピークがおとずれます。したがって、抗インフルエンザウイルス薬は“発症から48時間以内に服用”することが望ましいとされていますが、この期間を過ぎても効果がないわけではありません。適切な時期に服用を開始した場合、発熱期間が通常1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少することが分かっています。処方される主な抗インフルエンザウイルス薬インフルエンザに処方される治療薬は、下記に挙げた抗インフルエンザウイルス薬が代表的なものです。投与する薬は医師が選択しますが、薬の形状や服用回数など、希望があれば伝えておきましょう。タミフル一般名:オセルタミビルリン酸塩。カプセル剤もしくはシロップで、1日2回、5日間投与します。今シーズンからはジェネリック薬(後発薬)も選べるようになりました。リレンザ一般名:ザナミビル水和物。専用の吸入器を用いて吸入し、1日2回、5日間投与します。イナビル一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物。専用の吸入器を用いて吸入し、1回のみ投与。今シーズンから、より吸入しやすいように、使用する際に生理食塩液を加え、ジェット式ネブライザで吸入するタイプも使用可能になりました。ゾフルーザ一般名:バロキサビルマルボキシル。錠剤で、規定量を1回のみ投与します。小児(12歳未満)へのゾフルーザの投与については慎重に日本感染症学会は2019年10月24日、抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」について、「12歳以上については臨床データが乏しく推奨/非推奨は決められない」「12歳未満の小児に対しての投与は慎重に検討するべき」との提言を発表しました。12歳未満の子どもにゾフルーザを投与したところ、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現頻度が高いという報告が上がっているためです。日本感染症学会は以下の提言を行っています。(1)12~19歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。(2)12歳未満の小児:低感受性株(※編集部注:低感受性株=薬の効きにくい耐性ウイルスのこと)の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。(3)免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的な投与は推奨しない。投与が規制されているわけではありませんが、耐性ウイルスにより症状が長引いたり、またその薬の効きにくいウイルスが他の人に移ったりしますので、上記のような提言が出されています。治療薬を服用していなくても現れる?子どもの「異常行動」インフルエンザにかかった際、「急に走り出す」「部屋から飛び出そうとする」などの異常行動が見られる場合があります。これらは、抗インフルエンザウイルス薬を服用しているか否かにかかわらず、発熱から2日以内に見られやすい症状であることが、近年の研究で明らかになっています。また、就学以降の小児・未成年の男性に多く現れることも分かっています。重度の異常行動は、転落事故につながる恐れもあります。小児・未成年者がインフルエンザと診断されたら、事故の危険が少ない場所に寝かせ、少なくとも2日間は1人にしないようにしてください。参考文献・厚生労働省 インフルエンザQ&A・日本感染症学会 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」文:Open Doctors編集部

谷口 清州

2020.1.8

どのタイミングで打てばいいの?インフルエンザの予防接種の正しい接種法

毎年冬になると猛威を振るうインフルエンザ。今年は季節性インフルエンザの流行の開始が過去10年で最も早いと言われています。厚生労働省の発表によると9月の時点で昨年同時期より患者数が8.7倍となっており、全国の小中学校では学級閉鎖が急増中。早急な対策が必要とされています。インフルエンザの予防手段といえば、もっともポピュラーなのが予防接種。ここでは、予防接種の正しい接種時期や回数、効果などをご紹介します。インフルエンザワクチンの正しい接種時期は「流行前」日本において、インフルエンザは例年12月~4月頃にかけて流行し、1月末~3月上旬にピークを迎えます。予防手段としては、インフルエンザワクチンの接種がポピュラーな方法の1つです。いわゆる予防接種は、「流行前」に行うのが望ましいとされています。理想は10月中、それが難しい場合も12月中旬までに接種しておくのがよいでしょう。今年は、流行期間が前倒しになっている傾向にあります。なるべく早めに予防接種を受けることをおすすめします。一方で、みなさんが早めに受けようとすると、需要の集中とワクチン在庫の偏りが生じて、一時的にワクチンの不足が起こることがあります。予防接種がまだの方は、近くの小児科に電話で在庫の確認をしておきましょう。昨年予防接種を受けたから、今年は必要ない?前年に予防接種をしたからといって、今年もその効果が持続するわけではありません。一般に、ワクチンの効果は6カ月程度たつと落ちてきます。また、流行するインフルエンザウイルスは毎シーズン少しずつ変異しているので、そのシーズンに流行が予想されるウイルスを用いて、インフルエンザワクチンも毎年作り変えられています。そのため、前年に予防接種を受けた方も、今シーズンの予防のためには今年の予防接種が必要です。予防接種をすれば、インフルエンザにはかからないの?予防接種をしたからといって、インフルエンザに絶対かからないわけではありません。しかし、発熱やのどの痛みなど、発病後の症状をやわらげることはわかっています。(*1)じつは、予防接種のもっとも大きな効果は、症状の重症化を防ぐことなのです。予防接種を受けた方がいい人は?とくにインフルエンザの予防接種が推奨されているのは、症状が重症化しやすい以下の方々です。65歳以上の高齢者ワクチンを接種した場合、死亡の危険が5分の1に、入院の危険が約3分の1から2分の1にまで減少することが期待できるとされています。(*2)生後6カ月~5歳未満の乳幼児予防接種をすると、おおむね20~60%の発病防止効果があるとされています。(*1)妊婦や心疾患、免疫不全など合併症リスクが高い方妊娠している方や、慢性心疾患、慢性肺疾患、糖尿病のある方、免疫不全状態にある方などは、インフルエンザによる合併症リスクが高くなっているため、とくに予防接種しておくことが望ましいとされています。(*3)インフルエンザワクチンの効果的な接種回数は?インフルエンザワクチンの適切な接種回数は、年齢によって異なります。13歳以上の方1回接種が原則です。ただし、医師が2回接種を必要と判断した場合はその限りではありません。13歳未満の方日本では2回接種が原則です。1~4週間隔で接種可能ですが、免疫効果を考慮すると4週間あけて接種するのがもっとも効果的と言われています。「任意接種」と「定期接種」の違い予防接種の受け方には以下の2種類があります。任意接種希望者が接種費用を自己負担して受けるものです。定期接種インフルエンザにかかると重症化しやすい方を対象にした、公費(一部自己負担あり)で受けられる予防接種です。対象者は以下のとおりです。(*1)(1)65歳以上の方。(2)60~64歳で、心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当)。(3)60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当)。予防接種が受けられる医療機関については、お住まいの市区町村(保健所・保健センター)、医師会、医療機関、かかりつけ医にお問い合わせください。参考文献(*1)インフルエンザQ&A - 厚生労働省(*2)インフルエンザ(総合ページ)65歳以上の皆様へ - 厚生労働省(*3)重篤化しやすい基礎疾患を有する者等について - 厚生労働省文:Open Doctors編集部

谷口 清州

2019.11.27

濃厚接触による家族内での感染も。医師が語る髄膜炎

前回のコラムでは、日本では珍しい、しかし海外では多数の死者を出している「狂犬病」についてお伝えしました。今回も、国内ではあまり話題にのぼらない「髄膜炎」がテーマです。海外で流行するさまざまな感染症のなかから、谷口先生が髄膜炎を取り上げた理由とは?2020年の東京五輪を控えた今、髄膜炎をめぐる諸問題についても伺います。致死率が高く、ショック状態に陥ると数時間で死亡も━━ 谷口先生は海外に行く前にどんなワクチンを打っていますか?A型肝炎、B型肝炎、破傷風のワクチンは打っています。B型肝炎は医療従事者など血液に触れる可能性のある仕事をしている人はこれまでに接種していると思います。麻疹(はしか)・風疹は自然感染したことがあり、私は十分な抗体を持っていますので打っていません。今は狂犬病感染のリスクのあるところには行かないので打っていませんが、20年前にアフリカに行ったときには狂犬病ワクチンも打っていきました。私は年に4回ほどガーナに行くので、もちろん黄熱病のワクチンは接種しています。また、髄膜炎菌ワクチンも打ちます。アフリカ大陸の西部にあるガーナは「髄膜炎ベルト」と呼ばれる範囲に含まれていまして、流行性脳脊髄膜炎(りゅうこうせいのうせきずいまくえん)の流行地域ですからね。━━ 流行性脳脊髄膜炎というのはどんな病気なのでしょうか?髄膜炎というのは脳の周りにある脳脊髄膜の炎症を指します。膜につつまれている脳にも同時に炎症が起こるので、脳脊髄膜炎と言うのです。この病気を引き起こす病原体にはいろいろありますが、そのうちのひとつである髄膜炎菌は人から人からへ感染するので地域的な流行を起こすことがあります。流行性脳脊髄膜炎と呼ばれており、極めて重症になります。髄膜炎菌が原因なので、髄膜炎菌性髄膜炎とも呼ばれます。原因菌である髄膜炎菌というのは、感染するとヒトの鼻から喉(のど)のあたりにすみつき、飛沫感染によって人から人へ感染します。保菌していても発症する人としない人がいるのですが、何らかの理由でこの菌が血中に入り、増殖して、脳脊髄膜に到達すると、脳脊髄膜炎を発症します。抗菌剤による治療を行っても患者の10~15%は亡くなり、運よく生き残っても10%くらいの人には後遺症が残るという、怖い病気です。━━ そんなに怖い病気なのに、日本で定期予防接種対象に含まれていないのはなぜですか?今の日本では、髄膜炎菌に感染して髄膜炎になる人は年間30人程度だからです。昔は日本でも法定伝染病に指定されており、年間に何千人という方が亡くなっていましたが、今の日本人の保菌率は1%以下です。保菌率が減った理由について、よくわかっていませんが、一般的な衛生状態がよくなったこと、一方では長年国内で抗菌薬が濫用されてきたことと関係しているのではないかという指摘もあります。一方、アメリカやイギリスなどの、日本を除くほとんどの国々は、保菌率が10~20%。10人に1人くらいは菌を持っていることになります。よって、アメリカでは髄膜炎菌ワクチン接種を義務化している州が多いですし、イギリスでも定期接種の対象になっています。寮生活の予定があるなら予防接種の検討を━━ 髄膜炎になるとどんな症状が出るのでしょうか?最初は熱が出て、咳・鼻水・全身倦怠感・頭痛など、風邪のような症状で始まります。やがて血液中に菌が増えると、足や全身の節々がひどく痛み、手足が冷たくなり、紫色の出血斑(しゅっけつはん)が出ます。電撃的なショック状態に陥り、発症してから数時間で亡くなることもあります。以前、宮崎県の高校で、髄膜炎の集団発生がありました。4人が入院し、そのうち1人は亡くなっています。亡くなった子は夕方に発熱して、「ちょっと調子が悪い」と言っていただけだったのに翌朝倒れて、その夜に亡くなってしまいました。ちなみに、アメリカやイギリスにおける予防接種の主な目的は、寮生間での流行を防ぐことです。向こうの学生はほとんどが寮生活なので、飛沫感染が懸念されます。海外留学はもちろん、国内であっても、お子さんが寮生活などをされる場合は接種を検討してください。━━ 2020年の東京五輪では、髄膜炎菌のワクチンを義務化する必要はないのでしょうか?髄膜炎菌ワクチンの接種については、今回のオリンピック・パラリンピックでも議論になっています。例えば会場を案内するボランティアなど、海外からの参加者と濃厚に接触する場合には飛沫感染のおそれがありますから。2018年開催の平昌(ピョンチャン)オリンピックではスタッフに全員打ったそうですから、日本も2020年の東京五輪のときは対策を徹底すべきではないか?という議論がずっと続いています。予防接種は渡航者ワクチン外来やトラベルクリニックで━━ 髄膜炎菌のワクチン、日本ではどこで打てるのでしょうか?一定規模の病院ならば打てるようになっていますので、お近くの渡航者ワクチン外来やトラベルクリニックなどを検索してみてください。私が勤務する三重病院には渡航者ワクチン外来があるので接種可能ですが、1本あたり2~3万円ほど費用がかかります。原価が高く使用期限もあるので、予約制にしている病院が多いと思います。受診の際は事前に確認するようにしてください。家族内での感染も。谷口先生が髄膜炎ワクチンに思うことグローバル化が進んだことにより、海外出張に行かれる方も髄膜炎菌のワクチンを打ちに来られます。でも「会社からお金が出ないから打てない」「費用が高すぎるから打てない」と接種をあきらめて帰る方もいて、複雑な気持ちになることがあります。なぜ私がこんなに髄膜炎菌を気にするかと言うと、過去に悲しい事例を目の当たりにしたことがあるからです。1歳のお子さんが髄膜炎菌性髄膜炎で亡くなってしまったということがあり、調査を行ったところ、亡くなったお子さんと同じ型の髄膜炎菌が、ご家族のお一人から見つかりました。この方は海外へ出張されていたようです。もちろん実際のところはわかりませんが、あちらで保菌して、帰国後に家族内で感染したのかもしれません。そういう事例を見ているので、ワクチンで防げるものなら防ぎたい、という気持ちがあるんです。病原体というのはヒトにくっついて移動しますから、旅行や出張に行けば、その土地の感染症を持って帰ってきてしまう危険がある。ワクチンを打つか打たないかというのはリスクマネジメントで、「めったにないことにどれぐらいお金をかけて備えるか」という話になるのですが、自分の健康とともに、周りの人の健康も考えないといけないというのが難しいところです。参考文献(*1)髄膜炎菌性髄膜炎とは - 国立感染症研究所(NIID)(*2)髄膜炎菌性髄膜炎(ファクトシート) - 厚生労働省検疫所(FORTH)(*3)感染症についての情報「髄膜炎菌性髄膜炎」 - 厚生労働省検疫所(FORTH)

谷口 清州

2019.8.1

発症したら打つ手なし。100%の確率で命を落とす狂犬病

前回のコラムでは、東南アジアなどへ旅行する際に注意したい感染症や、渡航前に打っておきたいワクチンについてご紹介しました。今回のテーマは「狂犬病」。現在、日本では発生していないため、なじみのない方のほうが多いかもしれません。しかし、今も世界では年間5万5000人もの人が命を落としている怖い病気なのです。予防と対策について、国立感染症研究所での勤務経験もある谷口清州先生にお話を伺いました。発症したら100%の確率で死に至る━━ 谷口先生が国立感染症研究所で診た、一番珍しい感染症は何ですか?十数年前 、フィリピンより帰国した男性が、現地で犬に咬まれて狂犬病ウイルスに感染し、国内で発症したことが確認されました。私が直接診たわけではありませんが、国立感染症研究所にて病原体診断が行われました。━━ 狂犬病になった人には、どんな治療が行われるのですか?狂犬病を発症したら、有効な治療はありません。残念ながら亡くなりましたね……。狂犬病の実態は脳炎なのですが、発症するとほぼ100%死に至ります。感染した動物に噛まれると唾液からウイルスが侵入し、神経に入ります。神経をずーっと伝って、脳に到達したウイルスは脳炎を引き起こします。現代の医学では、狂犬病ウイルスによる脳炎になった人を救う方法はありません。噛まれても発症前なら「予防」ができる━━ 狂犬病ウイルスに感染している動物に噛まれたら、もう打つ手はないのでしょうか?いいえ、ウイルスが脳に到達するまでに食い止めればいいので、発症する前であれば噛まれてからでも予防ができます。これを医学用語では「曝露後予防(ばくろごよぼう)」と言います。まず、噛まれたら可能な限りはやく、できれば24時間以内に、狂犬病ウイルスに対する抗体(抗狂犬病ウイルス免疫グロブリン)を咬まれた部位に注射します。抗狂犬病ウイルス免疫グロブリンというのは、狂犬病ウイルスに結合してウイルスを不活化する働きのある血液製剤なので、これによってとりあえずウイルスの動きを封じ込め、それから狂犬病ワクチンを6回接種します。そうすると、脳に到達するまでに自分の体のなかにも抗体ができるので、脳炎の発症を食い止めることができます。狂犬病ウイルスを持っている動物に噛まれる危険性が高い場合は、「曝露前予防(ばくろぜんよぼう)」が必要です。渡航前に3回のワクチン接種を受けてください。狂犬病の動物に噛まれる危険性があるなら予防接種を━━ 市街や観光地を散策するだけであっても、曝露前予防は必要でしょうか?途上国であっても、ごく普通の観光地であれば狂犬病の犬はいないと思います。しかし、野外でキャンプをするとか、野生動物がいるところへハイキングに出掛けるとか、狂犬病の動物に噛まれる危険性があるなら、渡航前にワクチン接種をしてください。アメリカでは、野生のコウモリに噛まれて狂犬病ウイルスに感染したという人もいますから。━━ 犬以外の動物からも感染する危険があるのですか?狂犬病を持っているのは犬だけとは限りません。狂犬病ウイルスは哺乳類に感染しますから、ネコやサル、キツネ、アライグマなどもウイルスを持っている可能性があります。野生動物はもちろん、飼われている動物であっても、不用意に近付かないようにしてください。━━ 狂犬病のワクチン、日本ではどこで打てますか?一定規模の病院ならば打てるようになっていますので、お近くの渡航者ワクチン外来やトラベルクリニックなどを検索してみてください。予約制にしている病院が多いと思いますので、受診の際は事前に確認するようにしてください。まとめ:狂犬病の予防・対策・治療現在、日本は狂犬病発生のない国。一方、今も世界では年間5万5000人もの人が狂犬病によって命を落としていると言われている。狂犬病を発症したら、有効な治療はない。発症するとほぼ100%死に至る。狂犬病ウイルスに感染している動物に噛まれても、ウイルスが脳に到達するまでに食い止めればよい。発症する前であれば「曝露後予防」ができる。狂犬病ウイルスを持っている動物に噛まれる危険性が高い場合は、「曝露前予防」が必要。渡航前に3回のワクチン接種を。市街や観光地を散策するだけという場合、ごく普通の観光地であれば、狂犬病の犬はいないと考えられる。しかし、野外キャンプ、野生動物がいるところでのハイキングなど、狂犬病の動物に噛まれる危険性がある場合、渡航前にワクチン接種を。狂犬病ウイルスは、犬以外の動物からも感染する危険がある。ネコやサル、キツネ、アライグマなどもウイルスを持っている可能性があるため、野生動物はもちろん、飼われている動物であっても、不用意に近付かないようにする。ワクチン接種は渡航者ワクチン外来やトラベルクリニックで受けられる。取り扱いや予約については事前に電話などで確認を。参考文献(*1)狂犬病とは - 国立感染症研究所(NIID)(*2)狂犬病に関するQ&Aについて - 厚生労働省(*3)感染症についての情報「狂犬病」 - 厚生労働省検疫所(FORTH)

谷口 清州

2019.7.25

「旅行者下痢症」って? 海外で気をつけたい感染症

海外の旅行先で体調を崩すと、せっかくの旅行も楽しめません。今回のコラムでは、よくある下痢症を防ぐために現地でできることや、日本ではめったにかからない感染症から身を守る方法をご紹介します。今回は日本からの渡航者が多い東南アジアの感染症について、国立病院機構・三重病院 臨床研究部長の谷口清州先生にお話を伺いました。感染症のプロでも完全に防ぐのは難しい「旅行者下痢症」━━ 谷口先生が診ることの多い渡航者の病気は何ですか?私がよく診るのは、やっぱり下痢症ですかね。一般的に、海外旅行でかかる下痢症を「旅行者下痢症」といいます。硬水(ミネラル分がたくさん含まれた水)が身体に合わないこともありますし、香辛料など食べ物によるものもありますが、病原体に汚染された水や食品の摂取によって起こる感染性の下痢には注意をしておくべきでしょう。これらの病原体は腸管病原性大腸菌・サルモネラ・ノロウイルス・赤痢・コレラなど多種にわたりますが、一番多いのは腸管病原性大腸菌によるものでしょうか。東南アジアなんかでは屋台で食事をとることもありますよね。私はベトナムで屋台のフォーを食べていて、上にのっけてもらった香草にイモムシがついていて、スープに沈めたらそれが浮いてきたことがあります。しっかり洗っていなかったということでしょうから、他の病原体が付いていても不思議はないですね。━━ 現地で食事をする場合には、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?本気で下痢を防ぎたいなら、非加熱のものは一切口にしないほうがいいでしょうね。生水はもちろんダメですし、飲み物にいれる氷も避けた方がよいと思います。必ずミネラルウォーターなど、ボトルに入ったものを飲むようにしてください。ミネラルウォーターでも、ビールやジュースであっても、目の前で栓を抜いてもらうのがいいでしょう。あと、ベトナムの屋台でフォーを注文するとき、現地のことをよく分かっている人は「(トッピングの)香草も湯通しして」と言っていましたね。どこで何を食べるにしても、ちゃんと中まで火が通っているものを食べるようにしてください。━━ 非加熱のものを一切取らないようにすれば、下痢を完全に防げるのでしょうか?加熱したものであっても、加熱後や盛り付け後、あるいは徐々に冷めていく途中で、病原体が混入することもありますし、ミネラルウォーターを注いだグラス、お箸や自分の手など、非加熱のものを食べる以外にも病原体が体に入ってくるルートはありますから、下痢症を完全に防ぐのは難しいと思います。基本を守って、危ういものは避けておくことだろうと思います。それでも下痢をした場合、本当にたまたま当たったとしか言いようがありませんね。楽しいことにはある程度のリスクも伴うものでしょう。━━ 谷口先生も旅行者下痢症に悩まされた経験はありますか?もちろんありますよ。私は仕事上、ガーナに行くことが多いのですが、向こうで欧米人と同じように生野菜のサラダを食べたら、「これはどう考えてもコレラだな」という症状が出ましたね。いわゆる米のとぎ汁状の、大量の水溶性下痢症です。ミントと氷の入った「モヒート」というカクテルで、発熱と下痢に悩まされた後輩もいます。幸い周りはみんな感染症の医者だったので、「これはどう考えても感染性の下痢だから、抗菌薬で様子を見よう」と。それで無事に治って帰ってきました。あとで本人は、きっとミントの葉が汚染されていたのだろうと言っていました。━━ 下痢症になったとき、現地で病院に行ったほうがよいと判断する目安は?水溶性の下痢が続くときや脱水・嘔吐(おうと)が激しいとき、血の混じった下痢が出るときは、病院に行かれたほうがよいと思います。下痢は重症になると一日に何リットルも出ます。そういうときに水分が十分とれない、水分をとってもすべて出てしまうという場合、脱水によって命を落とすこともあります。また、下痢に血が混じっているような場合は抗菌薬が必要ですから、きちんと医療機関にかかって治療を受けてください。途上国からの帰国者に多い感染症は、マラリア・デング熱・腸チフス・A型肝炎━━ 東南アジアなどの途上国では、下痢症以外にどんな感染症が多いですか?やはり風邪、つまりウイルス性上気道炎(ウイルスせいじょうきどうえん)のような、一般的なものが最も多いです。ただ、風邪であれば数日で自然に治ってしまうので、病院にはあまり行きませんよね。病院に来るのは、一向に熱が下がらないとか、発疹が出てきたとか、「いかにも重症感のある場合」だと思います。一般的に、東南アジアやアフリカなどの途上国から帰ってきて熱が下がらないというときは、マラリア・デング熱・腸チフス。この3つは考えておくべきです。これらの病気の潜伏期間は数日のこともありますが、非常に長いときもあります。デング熱の潜伏期間は長いと約2週間、マラリアや腸チフスでは約4週間になることもあります。潜伏期間が長いといえば、A型肝炎も東南アジアの渡航者に多い病気です。こちらも症状が出るまでに約1カ月かかることがあります。帰国してしばらくたっていても、病院を受診した際には、いつごろ、どこへ渡航し、どのような行動をとったかをお伝え頂くことが重要です。━━ マラリア・デング熱・腸チフス・A型肝炎はどんな病気なのでしょうか?マラリアは蚊が媒介する感染症で、38~39度台、時には40度の高い熱が出て、不定期に上がったり下がったりします。かかった人はみな「これまで経験したことがないほど体がだるい」と言いますね。何度もかかれば次第に症状は軽くなっていくのですが、初めてかかったときは重症になりがちなので、とても苦しいようです。デング熱も蚊が媒介する感染症です。症状としてはまず発熱、そしてこの病気は別名「骨折熱」と言われるほど、手足の関節が痛みます。あとは頭痛、特に目の奥が痛くなります。しばらくすると発疹や、出血疹が出てくることもあります。腸チフスも同様に40度近い熱が続きます。チフス菌に汚染された食べ物や水から感染し、おなかが痛くなったり、食欲がなくなったりしますが、どちらかというと便秘気味になり、必ずしも下痢になるわけではありません。途中で「ばら疹」という発疹が出てくることもあります。A型肝炎は『まんがカルテ』の「海外旅行から1カ月後、発熱があり全身だるい(10歳男児)」でも取り上げましたが、症状としては全身のだるさ・発熱・食欲不振・嘔吐・黄疸(おうだん)などです。腸チフスもA型肝炎も、屋台や市場などで菌やウイルスに汚染された食べ物を口にして感染することが多いと思います。━━ どの病気も初期症状は風邪やインフルエンザに似ていますが、受診のタイミングは?そうですね、なかなか熱が下がらないと言って受診される方や、あるいはマラリアなどを心配して受診される方が多いです。海外に渡航された後に体調を崩し、3日以上発熱が続く場合や、体がとってもだるい、咳が激しい、呼吸が苦しい、眼が黄色いなど、いつもの風邪と違うなというときには早めに受診されるのがよいと思います。それから、意外に思われるかもしれませんが、夏の海外旅行でインフルエンザに感染することも結構あります。亜熱帯気候の地域では、雨季にインフルエンザが流行します。雨季は11~1月と6~8月の2回あるので、インフルエンザの流行も1年に2回。そのため、日本の真夏に東南アジアへ行った場合、帰ってきたらインフルエンザだった、ということがあるわけです。出発前にできる対策は? リスクに応じて必要な予防接種を━━ マラリア・デング熱・腸チフス・A型肝炎を予防する方法はありますか?マラリアとデング熱は蚊が媒介する感染症ですから、とにかく蚊に刺されないよう防御することが大切です。できることなら長袖や長ズボンを着用して、なるべく肌を露出しないようにしてください。虫よけスプレーも有効ですが、効果が持続する時間は商品によってまちまちなので、こまめに塗りなおす必要があります。また、マラリアには予防薬がありますので、マラリア流行地へ渡航する際は、医師の診察を受け、リスクを勘案して予防薬を処方してもらってください。腸チフスとA型肝炎に関しては、旅行者下痢症と同様に、汚染されている可能性がある水や食べ物を非加熱のまま口にすることは避けてください。A型肝炎にはワクチンがありますので、感染リスクの高い流行地域に行かれる場合は接種が勧められます、特に1カ月以上滞在される場合は接種された方がよいでしょう。腸チフスには国内で承認されたワクチンはありませんが、特に感染リスクの高い地域、滞在・生活形態の場合には、輸入ワクチン接種を検討することが可能です。━━ A型肝炎以外に、出発前に打って行ったほうがよいワクチンはありますか?今(2019年6月時点)だと、どこへ行くにしても麻疹(ましん/はしか)と風疹のワクチン(通常「麻しん・風しんワクチン」という一つのワクチンです)は、小学生未満では年齢に応じた回数、小学生以降であれば2回接種されていることを確認してください。麻しんになったことがない方、麻しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方、または予防接種を受けたかどうかが分からない方には、ワクチン接種をお勧めします。また、A型肝炎ワクチンは2~4週間隔で最低2回の接種が必要ですので、渡航前に余裕をもってワクチン接種ができるように計画してください。ワクチン接種後に発熱することもありますので、渡航直前にワクチンを接種することはお勧めできません。とはいえ、渡航先によって受けておいたほうがよい予防接種は異なりますから、『厚生労働省検疫所(FORTH)』などの情報を確認してください。まずは『国・地域別情報』で渡航先を選び、気をつけたい感染症や打っておきたいワクチンに関する情報を入手したら、『予防接種実施機関の探し方』から、お住まいの地域で予防接種が可能な医療機関を探すこともできます。これまでお話してきた感染症に対するリスクは個人個人で異なります。最近は渡航者外来や予防接種外来を設置している医療機関も多いので、そこで相談されることが一番です。ワクチンが必要な病気に感染するというのは、そんなに頻繁に起こることではありません。しかし、起こったときは長い治療が必要になり、命にかかわることもあります。リスクに応じて必要な対策を講じるには、まず「相手を知る」こと。行く先で、今まさにどんな病気が流行しているのかなど、最新情報をつかんでください。参考文献(*1)厚生労働省 検疫所 FORTH(*2)NIID 国立感染症研究所

谷口 清州

2019.7.18

死の危険もある熱中症。早めの対策意識でシャットアウト

毎年、話題になる熱中症。「症状」と「対策」を知り、実践することで、防ぐことが可能です。自分自身だけではなく、家族など周囲の人を守るためにも、熱中症のことをもっと詳しく知っておきましょう。命の危険も。熱中症ってどんな病気?熱中症とは、高温多湿の環境で汗をかいて体内の水分量・塩分量のバランスが崩れたり、暑さで体温調節機能が乱れたりすることによって起こる臓器の障害、体の不調を指します。環境省の熱中症予防情報サイト(*1)では、「重症化すると死に至る可能性のある病態」とも表記されています。熱中症は、命の危険を伴う病気なのです。ただし、予防を実践すれば防ぐことができ、もし発症したとしても、適切な応急処置により重症化を防ぐことが可能な病気でもあります。「3つの工夫」で熱中症予防熱中症予防の基本は「脱水と体温の上昇を抑えること」です。気温が高くなると予想される日は、行動・住まい・衣服の3つの観点で工夫(*2)して生活するよう心掛けてください。その1:行動の工夫①こまめに水分・塩分を補給する②頑張らない、無理をしない③日なた(直射日光)を避けるたとえば、炎天下でのバーベキューなどの際は注意が必要です。タープなどで日陰を作っておくとよいでしょう。意識して「無理をしない」行動が必要です。その2:住まいの工夫①風通しをよくする②カーテンなどで日光を遮断する③エアコン・扇風機を使う単に窓を開けるだけではなく、風の通り道を作ることが大切です。また、「暑い」と感じたら我慢せず、エアコンで室内温度を下げるようにしてください。その3:衣服の工夫①ゆったりした服を着る②襟元をゆるめる③吸汗・速乾素材を活用する④黒色系の素材を避ける⑤日傘や帽子を使う衣服の中や体の表面に風を通すことで汗を冷やし、体から出る熱を逃がします。帽子は熱がこもらないようにときどきはずして、汗を蒸発させてください。重症度別にみる症状と応急処置どんなに対策をしっかりしたとしても、高温の日や日光の下に長時間いたあと、もともと体調がすぐれない場合などは、つねに熱中症の疑いをもって体の調子を確認することが必要です。症状によって重症度はI度~III度の3段階に分けられますので、段階ごとに適切な処置をしましょう。症状と必要な処置(I度)■必要な処置①水分・塩分を補給する②涼しい場所へ移動する③安静にする室内であれば扇風機や冷房を使って室温を下げ、屋外の場合は風通しのよい日陰に移動します。横になり、脚を心臓よりも高い位置に上げることで、心臓に戻る血流を増やすことが大切です。症状と必要な処置(II度)■必要な処置重症度I度の処置を行ったあと、衣服をゆるめて体を冷やします。■適切な体の冷やし方・衣服のボタンをはずし、ベルトやネクタイ、女性の場合は下着もゆるめて風通しをよくする  ・露出させた皮膚に濡らしたタオルやハンカチをあて、うちわや扇風機で扇ぐ・冷たいペットボトルなどを首の付け根の両脇、脇の下、太ももの付け根の前面、股関節部にあてる重症度 II度は緊急度が高まっています。症状が強い場合は医療機関の受診も検討してください。症状と必要な処置(III度)■必要な処置重症度 III度の症状がひとつでも確認できた場合は、すぐに救急車を呼んでください。特に、呼びかけに応えないようであれば、かなり危険な状態です。救急車を待っている間に、涼しい場所に移動させ、体を冷やしてください。水分補給に関しては、意識障害が起こっている場合は気道に流れ込む可能性があるので、救急隊の到着を待ちましょう。暑さのピークとなる8月は意識も高くなりますが、それまでは油断しがちな熱中症対策。事前にしっかりと知識をつけて、突然の猛暑にも慌てないようにしたいですね。参考文献(*1)厚生労働省 熱中症による死亡者数(人口動態統計)(*2)環境省 熱中症予防サイト内「熱中症環境保健マニュアル2018」文:Open Doctors編集部

石川 義弘

2019.7.11

手足口病が流行中。子どもの三大夏風邪を解説

「真夏であっても、ちょっと油断すると子どもが熱を出してしまう」と悩んでいる親御さんも多いのでは? お子さんの目が赤く充血していたり、 「喉(のど)が痛い」と食事を拒んだりする場合は、もしかしたら冬にかかった風邪とはちょっと違うウイルスに感染しているかもしれません。夏に流行する「子どもの三大夏風邪」について、感染症の専門家である国立病院機構・三重病院 臨床研究部長の谷口清州先生に伺いました。「夏の風邪」と「冬の風邪」の違い━━ 夏に流行する風邪と冬に流行する風邪には、どんな違いがあるのでしょうか?一般的に「風邪は冬にひくもの」というイメージが強いですからね。風邪を引き起こすウイルスと流行時期について大まかに説明すると、9月から増加し始めるライノウイルス、それに続いて冬はRSウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどが流行します。そして、春にかけてヒトメタニューモウイルスが地域的に流行します。アデノウイルスやエンテロウイルスは一年中みられますが、夏から秋にかけてしばしば流行します。このアデノとエンテロ、2つのウイルスによる感染症が、いわゆる「夏風邪」と呼ばれるものです。「子どもの三大夏風邪」の特徴と共通点━━ 「子どもの三大夏風邪」とはどんな病気を指すのでしょう?多くの親御さんが悩まれる夏風邪というと、大きく分けて「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」「ヘルパンギーナ」「手足口病」の3つになるでしょう。・咽頭結膜熱咽頭結膜熱は、アデノウイルスによる感染症です。年間を通して発症しますが、初夏に流行することが多い疾患です。主な症状は高熱と、のどの痛み(咽頭炎)と目の充血(結膜炎)で、数日間続くことが特徴ですが、目の充血がないこともあります。アデノウイルスには60種類以上の型があり、それぞれで症状が異なることが知られています。例えば8・ 19・ 37型は流行性角結膜炎を起こします。・ヘルパンギーナヘルパンギーナの名前の由来は、口蓋垂(こうがいすい)、いわゆる「のどちんこ」の周囲の炎症を「アンギーナ」といい、そこにヘルペスのような水疱ができるので「ヘルパンギーナ」と呼ばれるようになりました。主にエンテロウイルス属の一種であるコクサッキーウイルスの感染により発症します。症状としては、突然の高い熱、次に喉の痛みがでます。水分も、ごはんも摂取しにくくなり、特に子どもの場合には痛みのため水分をとらなくなると、脱水症のリスクもあります。・手足口病手足口病というのは、発熱とともに、口周囲や口の中の粘膜、手のひら、足の裏や足の甲などに2~3mmの水疱性発疹(水ぶくれ)が出現します。時に肘(ひじ)、膝(ひざ)、おしりなどにも出現することもあり、特に最近流行することの多い、コクサッキーウイルスA6に感染すると、手・足・口だけではなく、背中やお尻、大腿部(太もも)に水疱疹がでることもあります。発熱は約3分の1で見られますが軽度であり、38℃以下のことが多いとされています。━━ 三大夏風邪の共通点や、特徴について教えてください。共通点は、夏の流行が多いこと。それから、感染後に症状が消えてもウイルスを排出し続けること、つまり感染期間が長いということも共通点ですね。ウイルスは咽頭から3~4週、便中には5~6週以上にわたって検出されることが知られています。ウイルスが最も急速に増え、大量に排出されるのは急性期(病気になりはじめた時期)です。その後、回復期(症状がおさまり快方に向かう時期)になると排出されるウイルスの量は減ってきますが、便からはまだまだウイルスが排出されているため、一見治ったように見えても、便を介して感染が広がってしまうのです。例えばアデノウイルスに感染して治った人は、症状がなくなっても便中にまだたくさんウイルスがでています。かつてはこの疾患がプールでよく広がったので、プールに入る前に腰まで消毒液の入った洗体槽に浸かるという予防策が行われていました。一定以上の年齢層の方は経験したことがあるかもしれません。現在はウイルスが広がらないように、プールの水の塩素濃度は1ppm以上という基準ができています。便以外でも、これらのウイルスは、咳やくしゃみ、唾液や鼻水が付着した手指を介して広がります。症状がおさまってからもウイルスは出ますので、患者との接触後は手洗い・手指の消毒が大切になってきます。夏風邪で注意したい合併症━━ 「夏風邪は長引く」とも言われますが、本当ですか?特に冬に比べて長引くということはないと思いますが、合併症のために長引くということはあります。手足口病の原因となるウイルスのひとつにエンテロウイルス71型というのがあり、これは髄膜炎や脳炎などの合併症を起こすことがあります。今シーズンは、これまでのところ、このウイルスはあまりみられていません。(2019年7月時点)2016年にエンテロウイルスD68型が流行して、喘息発作や呼吸困難、さらに弛緩性麻痺(しかんせいまひ:筋肉を動かすことができず、麻痺している箇所がダランとしている状態)などを引き起こしたことは記憶に新しいと思います。エンテロウイルスのなかには中枢神経に感染するウイルスがおり、最初は夏風邪の症状だけであっても、場合によっては合併症を引き起こす可能性があります。ただ、これらのウイルスに感染した人の90%以上は、無症候性感染(病原体に感染しても症状が出ず、健康にみえる状態のこと)あるいは軽症の発熱性疾患に終わります。━━ 症状が出ない方も多数いらっしゃるんですね。そういう方から感染が拡がるのでしょうか?そうですね。多くは軽症例あるいは無症候例の便を介して感染が広がりますが、一般的に症状が出るのは5歳までの小児が多いですね。赤ちゃんがかかると重症になります。とくに新生児は抵抗力が弱いですから、注意が必要です。━━ 手足口病では髄膜炎や脳症になることもあると伺いましたが、ほかに注意が必要な合併症はありますか?手足口病の原因となるコクサッキーウイルスB群の場合は筋肉に炎症が起こることがあります。ときに、先にも述べた無菌性髄膜炎や脳炎・肝炎・心筋炎や心膜炎を引き起こすことがあります。心筋炎を起こして心臓のポンプ機能が悪くなると心不全の状態に陥ります。そうすると、心臓で十分な循環ができないために浮腫(むくみ)が出てきたり、おしっこの量が減ってきたりします。心筋の収縮力が落ちるために、心拍数が早くなることもあり、それに伴い息もはやくなります。場合によっては不整脈が出るときもあり、突然死の原因にもなり得ます。見た目では元気がなくなります。普段ならば熱があっても遊ぶのにぐったりしているとか、親の感覚で「おかしい、普段と違う」という気付きは大切です。赤ちゃんは熱があっても興味のあることには積極的ですから、いつものような動きがなければおかしいと考えて注意しなければなりません。特に夏は、暑くて汗をかきやすいですから、脱水状態になることがあります。自分の熱をコントロールする方法は汗をかくことです。しかし、体内の水分がもともと少ない状態で汗をかくことができないと熱がどんどん高くなるリスクもあります。━━ 夏は風邪をひいた子が熱中症になることもあるということですか?風邪による発熱は体が自ら「体温を上げろ」と命令した結果なのですが、熱中症というのは自分で体温が調節できなくなって体温が上がってしまう状態を指すので、異なる概念です。しかしながら、風邪による発熱も熱中症も「脱水が伴う」という状況は似ています。ただでさえ気温が高くて、脱水により熱があがりやすい環境ですから、十分な水分補給を心掛けたいところです。予防の基本は「手洗い」「接触を避ける」こと━━ 夏風邪はどう予防すればよいのでしょうか?基本的には患者と接触しないようにすることです。しかし、実際のところ家庭内で接触しないようにするというのは難しいでしょうから、家族内感染率は結構高いです。例えば上のお子さんが保育園でもらってきて、お母さんにうつして、さらに下の子にうつして……というケースはよくあります。多くは患者の糞便を介しての直接・間接接触による感染ですが、咳やくしゃみによってウイルスが飛んで感染することもあります。風邪予防に「うがい」は必要?日本では古来より「風邪の予防にはうがい」と言われてきましたが、実際の予防効果はほとんどないということが分かっています。うがいをしすぎることで、喉にある種々の感染を防御する物質が少なくなり、感染しやすくなるということも言われています。風邪の予防にうがいを推奨するのは世界中で日本だけなのですが、昔からの習慣なので、なかなか変えることは難しい面もあるのかもしれません。治療の基本は「よく休み」「よく食べる」こと━━ 夏風邪に対する治療薬はあるのでしょうか?夏かぜのウイルスに効果がある治療薬はありません。もちろん、「抗生物質」と呼ばれているような抗菌薬のたぐいも、ウイルスには効きません。ウイルスを自分で排除する、免疫力を高めるということ以外に有効な対応方法はないというのが現状です。感染症というのは、基本的に病原体(ウイルスや菌)とヒトとの戦いです。病原体が弱いものであっても、身体の免疫力が弱ければ病原体の方が勝ちます。治療には、「いかにして身体の状態をよくするか」ということも含まれるわけです。例えば相手が細菌であれば有効な抗菌薬で叩くこともできますが、アデノウイルスやエンテロウイルスなどのウイルスにはその方法がありません。市販の解熱薬、口内炎の薬、目薬などを使用される方も多いと思いますが、あくまでも症状を鎮める薬であって、ウイルスに直接作用するものではありません。よく睡眠をとって、身体を休めて、栄養のあるものを食べるという方法が一番なのです。━━ 休息や栄養をとることが大切ということですが、もしも自分の子どもが夏風邪にかかったら、何を食べさせればよいのでしょうか?まずは水分を十分に飲ませて、次にタンパク質をとらせてください。食べられるならば、バランスの取れた普通のごはんがよいのですが、ヘルパンギーナは喉が痛くて食べられないことも多いですから、水やジュース、あるいはヨーグルトやプリンなど、喉を通りやすいものになるでしょう。ただ、酸っぱいとしみますのでオレンジジュースなどは避け、冷たいスープなどを飲ませるのもよいと思います。基本的には3~4日で治ることが多いので、その間に体力を落とさないよう、しっかり休ませることも大切です。━━ 3日以上熱が続くときは、もう一度病院を受診したほうがよいのでしょうか?そうですね。そして、頭が痛いとか、嘔吐(おうと)する、水分がとれない、咳が強くなる、熱が一向に下がらずにむしろ高くなってしまうなど、新たな症状がでるような場合は病院へ行ったほうがよいでしょう。保育園や学校、解熱後48時間は連れて行かないで━━ ウイルスが長い間排出されるというお話がありましたが、保育園や学校へ行かせても大丈夫なのでしょうか?症状がなくなっても4~6週間程度は体からウイルスがでてきます。三大夏風邪のどれも同様です。症状があるときのウイルス量は多く、症状がなくなればだいぶ減ります。ですから熱が下がってから48時間は保育園などの施設には連れていかないよう、親御さんに伝えます。一般的に症状がおさまってから48時間経過するとウイルス量が少なくなることがわかっているからです。また、咽頭結膜熱は、主要な症状が消えたあと2日経過するまで出席停止、手足口病とヘルパンギーナに関しては、急性期は出席停止ですが、回復期は全身状態が改善すれば登校可となっています。(学校保健安全法による)もちろん仕事などの事情があることもわかりますが、お子さんの体力も十分回復していない状況で保育園などに連れて行くのは避けたほうがよいと思います。体力が落ちているので、別の感染症をもらってくることもありますし、オムツを取り替えるときに手などに付着して、それがきれいに洗い落とせていなかった場合、保育園などで集団発生するということもあります。繰り返しになりますが、特効薬がない現状では「手洗い」「接触をさける」という予防が大切で、かかってしまった場合はよく休み、睡眠をとり、栄養を十分にとるということが一番です。参考文献(*1)手足口病に関するQ&A – 厚生労働省(*2)ヘルパンギーナとは – 国立感染症研究所(*3)手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱が増加しています -【感染症エクスプレス@厚労省】Vol.303(2017年06月30日) - 国立保健医療科学院(*4)咽頭結膜熱とは – 国立感染症研究所(*5)学校保健安全法施行規則 - e-Gov [イーガブ](*6)エンテロウイルスD68型流行期における小児気管支喘息発作例の全国調査(IASR Vol. 37 p. 31-33: 2016年2月号) - 国立感染症研究所

谷口 清州

2019.7.25

つらい花粉症。セルフケアの方法と治療の選択肢

「鼻水が止まらない」「目がかゆい」今の時期、花粉症に悩む人も多いのではないでしょうか。今年の花粉の飛散量は例年より多い(*1)ようです。花粉症を学んでセルフケアをしっかりと行うとともに、来年の対策についても考えておきましょう。基本情報:花粉症とは?花粉症とは、花粉に対して人間の体が起こすアレルギー反応のこと。鼻水や涙が出るのは、花粉に過剰に反応してしまうためです。地域により特徴的な花粉の種類は異なりますが、スギ花粉症は2〜3月、ヒノキは4〜5月、シラカンバは4〜6月、カモガヤは5〜8月、ブタクサやヨモギは8〜10月ごろとされています。(*2)(*2.1)対策で大事なのはセルフケア人によっては複数の強い症状が現れることもあり、重症化しているようであれば専門機関の受診をお勧めしますが、そうでない場合はアレルギー対策の基本は「抗原回避」です。つまり、できるだけ花粉に触れないこと。外出時などは特に下記のことに注意しましょう。花粉の飛散情報をチェックテレビやインターネットで花粉の飛散情報を知ることができます。花粉が多い日や雨上がりのときには花粉が着きにくい衣類にするなどして外出しましょう。マスク(+メガネ)マスクやメガネは花粉の量が多いときは特に効果を発揮する防御策です。マスク・メガネの有無で鼻の中の花粉量に6倍の差が確認されたというデータもあります。(*3)ただし、お子さんの場合は花粉用のメガネをしたまま運動すると、転倒したときに危険ですので注意が必要です。自宅の環境整備帰宅時には家の中に入る前に花粉を払う、カーペットよりはフローリングにして掃除しやすくする、窓を開けない、布団を外に干さない、などして家の中に花粉が入らないようにしましょう。ただし、いずれも効果には個人差があり、厚生労働省の花粉対策でも「症状の緩和が期待される」とされています。花粉症の薬に関して花粉飛散前や症状が軽いうちに服薬を始めるとあまり強い症状にならずにすむと言われています。内服の抗ヒスタミン薬が代表的ですが、第二世代といわれる、眠気の少ないものを選ぶとよいでしょう。最近、「貼る」抗ヒスタミン薬も発売されました。内服のロイコトリエン受容体拮抗(きっこう)薬は、いわゆる鼻づまりに効果があると言われていますが眠気はありません。局所療法としては、鼻症状に対して鼻噴霧用ステロイド薬、眼症状に対して抗ヒスタミン薬の点眼があります。それでも治りにくい場合には、ステロイドの点眼薬、免疫抑制薬の点眼薬なども用いられます。根治を目指す免疫療法もスギ花粉症で困っている方には治療法の一つに根治を目指すアレルゲン免疫療法があります。これは、皮下免疫療法と舌下免疫療法があり、いずれも5歳くらいから受けることができます。「皮下免疫療法」は、アレルギー反応が起きないところまで濃度を下げた花粉の抽出液を注射して、その後少しずつ濃度を上げていくことで花粉抗原の免疫を獲得させる方法です。3年以上続ける必要がありますが、軽症化や無症状化などの改善例が8割以上と報告されています。「舌下免疫療法」は治療薬を舌の下に投与するとすぐに溶けるため、定められた時間保持したあとに飲み込むものです。毎日、自宅で服用するのですが症状がない季節にも根気よく続ける必要があるため、よく理解してから始めましょう。こんな対策も:インナーマスク環境省が使用を推奨しているインナーマスクはご存じでしょうか。市販のマスクの内側に装てんすることで、どんなマスクでも99%以上の花粉除去率になります。(*4)インナーマスクの作り方と使い方必要なもの・市販のガーゼ・化粧用のコットン手順① ガーゼを縦横10cm程度に切り、2枚用意② 化粧用のコットンを丸めて、1枚のガーゼでくるむ(インナーマスク)③ 市販の不織布のマスクにもう1枚のガーゼを4つ折りにしてあてる④ 鼻の下にガーゼでくるんだコットン(インナーマスク)を置く⑤ ③のガーゼをあてたマスクを装着する⑥ 息が苦しい場合にはコットンの厚さを半分にする参考文献(*1)日本気象協会 2019年 春の花粉飛散予測(第4報)(*2)厚生労働省 花粉症Q&A集(平成22年度)(*2.1)アレルギーポータル(*3)的確な花粉症の治療のために(PDF)(*4)環境省 花粉症環境保健マニュアル 2014(PDF)文:Open Doctors編集部監修医師独立行政法人国立病院機構 三重病院 院長藤澤 隆夫 先生独立行政法人国立病院機構 三重病院 アレルギー疾患治療開発研究室長長尾 みづほ 先生

2019.3.27

「風邪という病気はない」って本当?

「実は風邪という疾患はない」今回のコラムは、そんな「!」から始まり、改めて「風邪」についてのウソ・ホントに迫る内容となっています。お話ししてくださるのは、感染症の専門家で、国立病院機構・三重病院 臨床研究部長の谷口清州先生です。「風邪は万病の元」と言われるわけ一般的に「風邪をひく」とは、どのような状態を指すのでしょうか?実は、「風邪」という疾患はありません。一般的に私たちが普段「風邪」と呼んでいる疾患は「風邪症候群」というもので、自然治癒傾向があるウイルス性の上気道(※1)炎をまとめてそのように呼んでいます。(※1)上気道:鼻から鼻腔(びくう)、鼻咽腔(びいんくう)・咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)までの呼吸器をいう。通常、医師は、鼻水や喉(のど)の痛み、咳(せき)、発熱といった上気道炎の症状がそろっているかどうか、それらの経過はどうなのかに加え、全身状態をみて風邪(症候群・以下風邪)と診断します。これは先ほど申し上げた通り、ウイルス性の上気道炎ですから、本来は抗菌薬などを使うことなく自然に治癒する疾患です。ですから、自然に治らない場合は風邪ではないということです。風邪と同じような上気道炎の症状をきたす疾患には、マイコプラズマ感染症、麻疹(はしか)などをはじめとして、川崎病や伝染性単核症など多くの疾患があります。初期症状は風邪と区別がつきませんが、徐々にそれぞれの疾患の特徴が出てきて、診断がつくようになります。昔は、これらの病気にかかっても原因が特定できず、風邪がひどくなったように見えたのでしょう。それで「風邪は万病の元」「風邪をこじらせる」などと言われるようになったのかもしれませんね。「風邪」が治らない場合に初めて、別の疾患を疑うわけですね。もちろん、最初が風邪症状であっても、ほかの症状や身体所見によって最初から別の疾患が疑われることもありますが、最初は風邪症状しかなく、全身状態が良好であれば、経過をみて考えていきます。「風邪であれば3日程度で熱は下がる」ということで、小児科には「風邪3日」ということばがあるんです。ですから、発熱が3日以上続く場合には、必ずほかの病気を考えてみます。それぞれの疾患によって経過が違いますから、それをみて診断するということですね。例えば、マイコプラズマ肺炎の場合は、最初は高熱が出て、ほとんど咳は出ません。しかし、2日目、3日目と時間が経過するとともに、だんだん咳が強くなるという特徴があります。マイコプラズマにはマクロライド系の抗菌剤が効果的ですが、自然治癒傾向もありますので、全身状態に応じてこの抗菌薬を使用します。また、患者さんの喉をのぞいてみたときに、扁桃(へんとう)が真っ赤に腫れて、膿(うみ)がつき、軟口蓋(なんこうがい)、いわゆる「のどちんこ」の上のあたりに赤い発疹がいっぱいあれば、溶連菌感染症と診断します。風邪であれば抗菌薬は処方しませんが、この疾患は溶連菌による感染症であり、きちんと治療しないと後遺症を残すことがありますので、必ず抗菌薬による治療を行います。風邪を治す薬はない?風邪のときは抗菌薬を処方しないのですか?ええ。大前提として、抗菌薬は細菌に効果があるのであって、ウイルスが原因の風邪には効きません。効果がない抗菌薬を飲み続けて、アレルギーや肝障害などの副反応が出たり、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう。いわゆる「腸内フローラ」)が乱れて下痢などが起こったりすれば、かえって免疫力が落ち、風邪も治りにくくなります。そのうえ、その人の体内にいる細菌が、投与された抗菌薬に対して耐性を持つようになってしまうリスクがあります。耐性菌が出現すれば、それが新たな感染症の原因になることもありますし、それが地域にまん延すれば、抗菌剤の効かない病原体が増加してしまって、将来「感染症の治療に使う抗菌剤がない」という状況になってしまうことが危惧されます。では「風邪に効く薬」とはどんなものなのでしょうか?世の中で「風邪に効く」と言われている薬の効果は、あくまでも症状の緩和にすぎません。例えば、チペピジンヒベンズ酸塩(商品名アスベリン)という成分の入った咳止め薬を飲めば咳を緩和することができますが、風邪が治ったわけではありませんから、薬の効果が切れればまた咳が出てきます。たとえ薬を飲まなくても、風邪であれば3日ほどでそういった症状は治まってくるでしょう。ただ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)という観点から考えると、症状を抑えることで身体が楽になるのであれば、薬を使うという選択肢もあるかもしれません。重要な会議のときに咳をしていては、周りの人も嫌でしょうし、何より集中できませんからね。ドラッグストアなどで売られている「風邪薬」はどう活用すればよいのでしょうか。ドラッグストアなどで気軽に買える風邪薬は、基本的に症状を抑えるための薬です。ですから、市販薬で症状を抑えているあいだに十分な食事と睡眠をとって、自分の自然治癒力を高めるという考え方を持ちましょう。3日たっても症状が悪化傾向にあればすぐ病院へ風邪をひいたら、どのタイミングでお医者さんに行くのがいいでしょうか。風邪は自然治癒が前提ですから、そんなに心配して病院に駆け込む必要はありません。大切なのは、風邪なのか別の疾患なのかを見極めることです。お医者さんに行く判断の目安となるのは、3日以上高熱が持続するとか、他の症状も含めて悪化傾向にあるときです。5日以上発熱が続くようなら、絶対におかしいと思ってください。市販薬などの対症療法薬を使うかどうかに限らず、症状が悪化傾向にあったり、いつもの風邪と違う症状が出てきたりしたときは、必ず病院に行ってください。咳や鼻水がしばらく続くことはありますが、全身状態が悪くて、発熱が3日以上続くのは要注意です。病院に来てくれた患者さんにも「熱が続くようならほかの疾患や合併症も疑わなくてはなりませんから、そのときはもう一度来院してください」と伝えています。3日過ぎても症状が変わらない、逆にどんどん強くなっていくとなれば、風邪以外の病気を考えておかねばなりません。子どもで高熱が続けば川崎病や伝染性単核症、咳が2週間以上続けば、肺炎や百日咳、成人では肺結核の可能性も考えなければなりません。感染症専門医の風邪予防と対策感染症の専門医だからといって、私も特別なことをしているわけではありません。インフルエンザや風邪が流行する冬季に患者さんと接するときは、常にマスクをして、手洗いを徹底しています。でも一番大事なのは、日頃から、ビタミンを多く含む食品やヨーグルトなどの乳製品を取り入れつつバランスのよい食事を心掛けたり、適度な運動、睡眠をとったりして、規則正しい日常生活を送ることですね。風邪をひいてしまったら、本来ならゆっくり寝て身体を休めたいところなのですが、そうはいかないこともありますよね。私の場合には、自分の体力で治せるように漢方系の栄養ドリンクを飲んだり、身体を温める作用のある葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)などを使ったりすることもあります。それでも症状が強くてつらいときは、解熱鎮痛剤や咳止めなどの対症薬を飲みつつ、ほかの疾患の可能性を考慮するようにしています。このとき、最も気をつけているのは、もちろん「ほかの人にうつさない」ということです。

谷口 清州

2019.2.18

インフルエンザ(後編)抗ウイルス薬・解熱剤は使うべき?

感染症の専門家である谷口清州先生に、身近な感染症についてやさしく解説していただくこのコーナー。前編「【谷口先生の感染症講座】インフルエンザ(前編)A型とB型、何が違う?」では、インフルエンザウイルスの型の違いについてご紹介しました。後編はワクチンや治療薬についてのお話です。インフルエンザにかかる人、かからない人世の中には「ワクチンを打っていないけれど、インフルエンザには全くかからない」という人が確かに存在します。一方、「毎年必ずかかって5日間寝込む」という人もいます。この違いは、それぞれがこれまでに獲得した免疫の内容によるものです。インフルエンザウイルスに対する免疫はピラミッドのように積み重なっていきますから、かかればかかるほど、いろいろなウイルスに対する抗体ができて、かかりにくくなります。となると、毎年インフルエンザにかかる人のほうが、より強固な免疫機構を持っているはずです。それなのに、なぜ毎年のようにインフルエンザに感染してしまうのでしょうか?もちろん、毎年流行するタイプが違うことに加え、ウイルスが少しずつ変異するために「完璧な免疫」を作れないから、ということもありますし、これまでに獲得した免疫が邪魔をして、流行中のウイルスに対して十分な免疫を作れないということもわかっています。また、人間はひとりひとりが違いますので、生まれ持った免疫の反応性、そのときの体調(栄養状態が偏っていたり、睡眠不足だったり)によって、免疫の働きが低下していることもあります。もちろん、流行中のウイルスに接触する機会の多さや、個人の手洗い・マスクなどの予防習慣も影響します。そのほか、「ワクチンを打っても抗体ができにくい人」というのも存在します。ヒトの免疫反応は受け継いだ遺伝子によって大きく異なり、例えば麻疹(ましん、はしか)ワクチンの場合、日本の人口の3%は抗体ができません。つまりこの人たちはワクチンを打っても、麻疹にかかってしまうことになります。インフルエンザウイルスに対しても、同じように個人の反応性の違いというものも想定されており、もともと抗体ができにくいという可能性もあります。インフルエンザワクチンは「ハズレ」でも意味がある?現行のインフルエンザワクチンには、A型とB型それぞれのウイルスで、その年に流行しそうな4種類が入っています。はずれることはもちろんありますが、もしはずれたとしても、その人が持っている抗体で対処できるようなウイルスが流行すれば防御が可能となり、軽症化が期待できます。最近のアメリカのデータによれば、多少流行とマッチしていなくても、ワクチンを打った人は、打たない人に比べて肺炎や心筋梗塞・脳梗塞など、重い合併症のリスクを軽減できるということが報告されています。つまり、「はずれたとしてもワクチンには意味がある」と言ってよいでしょう。抗インフルエンザウイルス薬との付き合い方「インフルエンザに感染したら、病院で抗ウイルス薬をもらって飲んだほうがいいか?」という話題は、感染症関連の学会でもよく議論されます。少なくとも欧米では、本来インフルエンザというのは、健康であれば自然に治る疾患と考えられています。そのため、やたらに薬を使わず、外出を控えて家で寝ていればよいと言われています。これまでのところ、抗ウイルス薬の効果というのは、「使わないときに比べて熱を1日早く下げること」とされています。薬を飲むことによって、3日間続くはずだった熱が、2日で下がるということです。つまり、「薬を飲んだほうがいいか」というのは、この「1日の発熱期間の短縮」をどう考えるかということになります。とはいえ、子どもや高齢者など一定数の人たちには重症化のリスクがあります。アメリカのデータによれば、基礎疾患がなくても、5歳以下の子どもであればインフルエンザ発症による死亡リスクがあると言われていますし、インフルエンザウイルスに対する免疫は、ある程度の年齢になると急激に衰えることも知られています。子どもや高齢者、基礎疾患がある方などに対しては、薬を使うメリットはあると言えるでしょう。一方、薬を使うことによるデメリットもあります。タミフルやリレンザなどを服用すれば熱は2日で下がりますから、お勤めされている人は仕事に出掛けたくなるでしょうし、子どもであれば外で遊びたいと言い出すかもしれません。しかし、熱が下がったからと言って人の多い場所へ出掛けると、ほかの人にうつしてしまう可能性があります。症状が治まってもウイルスはまだ体の中に存在しているからです。また、当然のことながら、抗ウイルス薬を使用することによって薬の効かない耐性ウイルスが出現するおそれがあるということも、頭に入れておくべきでしょう。熱が高いと脳炎・脳症になる? 解熱剤は飲むべきなのか特に子どもがインフルエンザウイルスに感染すると、「熱が高いと脳炎や脳症になるかもしれないから、解熱剤を飲ませたい」とおっしゃる親御さんが多くいらっしゃいます。しかし、「高熱が原因で脳炎や脳症になる」という認識は誤りで、「脳炎・脳症になったから高熱が続く」のです。脳炎というのは、ウイルスが脳細胞に侵入・増殖して、脳の中枢神経に障害が出て、けいれんや意識障害などの神経症状がでることを言います。例えば日本脳炎などのウイルスは脳で増え、脳の中枢をダメにしてしまいますから、体温の調節ができなくなり、42度を超える熱が出ることもあります。「熱が高いと脳炎になる」のではなく、「脳炎になったから熱が高くなる」のです。一方、脳症というのは、脳以外で起きている感染によって、炎症作用や生体機能の調節などに関わる伝達物質が過剰に分泌されることにより、間接的に脳に障害が起こることを指します。この過剰な防御反応により、必要以上の高熱が出るのです。すなわち、脳炎・脳症の原因というのは、発熱していることではなく、その発熱を起こしている疾患や病原体なのです。そもそも、熱が出るのは体の防衛反応です。免疫を活性化して、ウイルスの増殖を抑制するために、免疫機構が自ら発熱を引き起こしているのです。だからといって、子どもが高熱でつらそうにしていても解熱剤を使ってはいけない、ということではありません。解熱剤は病気を治すわけではなく、あくまでも一時的に症状を抑えるだけ。しかしながら、高熱のためにとてもつらい思いをしているとき、あるいは水分や食事がとれないときは、解熱剤で少しでも楽になって水分などが取れれば、それは決して悪いことではないのです。もちろん、お子さん自身が元気なら、熱が38.5度あったとしても無理やり下げる必要はありません。ただし、熱性けいれんを起こしたことがあるとか、発熱が悪影響を及ぼすような疾患がある場合には、この限りではありません。もし、インフルエンザで解熱剤を使う場合、アスピリン製剤を使用するとライ脳症という重篤な神経疾患を引き起こすことがありますので、アスピリンは決して使ってはいけません。通常、解熱剤にはアセトアミノフェン製剤を使用するよう勧告されています。ただし、お子さんの場合は体重によって使用量が異なりますので、以前に処方されたものなどを安易に使用するべきではありません。

谷口 清州

2019.2.1

インフルエンザ(前編)A型とB型、何が違う?

例年1月から3月頃にかけて流行するインフルエンザ。「今期はA型が流行している」とのことですが、そもそもインフルエンザのA型とB型って、何が違うのでしょうか?そんな疑問を解決するべく、感染症の専門家である国立病院機構・三重病院 臨床研究部長の谷口清州先生にお話を伺いました。インフルエンザのウイルスの型・亜型A型とB型の違いについてお話しする前に、まずはウイルスの型(タイプ)と亜型(サブタイプ)についてご説明しましょう。わたしたちがよく耳にするA型、B型などのいわゆる「型」は、インフルエンザウイルスの内部構造によるものです。さらにA型は、「亜型」により細かく分類されていきます。B型はA型に比べて多様性に乏しいので亜型はありませんが、山形系統とビクトリア系統に分類されています。インフルエンザウイルスの表面には、HAタンパク、NAタンパクという2つのスパイク(突起)があり、そのうちHAタンパクのスパイクが喉(のど)の受容体(シアル酸)にくっつくと、インフルエンザに感染します。感染すると、ウイルスは細胞の中でどんどん増えて、最後に細胞から外へ出ていこうとしますが、このときにもHAタンパクは表皮細胞上のシアル酸にくっついてしまい、ウイルスは細胞から離れることができません。それを切り離すのが、NAタンパク。NAタンパクによってHAタンパクとシアル酸の結合が切り離されると、ウイルスは遊離し、次の細胞に感染することができます。このようにして、どんどん気道の中で広がり、インフルエンザのさまざまな症状が出てくるというわけです。NAタンパクを阻害する薬が、皆さんご存じのタミフルやリレンザです。A型インフルエンザウイルスのHAタンパクは16種類、NAタンパクは9種類あるので、H1N1からH16N9まで16×9通りの抗原性の異なる亜型があります。これらすべての亜型はカモなどの水禽類(すいきんるい)の世界に存在しますが、それらがときどき人間の世界に侵入して感染するのです。これまでにH1N1(Aソ連型)やH3N2(A香港型)、H2N2(アジア風邪)が進入、流行したことが知られています。ちなみに、2009年には同じくA型の「H1N1pdm09」が人間界に入っています。当初、メディアでは「豚インフルエンザ」として騒がれたので、覚えておられる方も多いかもしれませんね。インフルエンザウイルスの「保有動物(リザーバー)」ウイルスは、基本的に生き物に寄生して生存していますから、必ずそのための保有動物(リザーバー)がいます。A型インフルエンザウイルスは水鳥(水禽類)界で循環・維持されているので、このウイルスのリザーバーは水禽類をはじめとする鳥たち、ということになります。そのほかの例を挙げると、サルモネラ菌やカンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O157)などは、有袋類(ゆうたいるい)の動物が保有していますが、ヒトに感染すると食中毒を起こします。このように、もともと動物がもっていた病原体が人間に感染して起こるものを「人獣共通感染症」といいます。例えば、水禽類の鳥は、鳥インフルエンザの原因となるA型インフルエンザウイルスを腸管にもっていますが、症状が現れることはありません。しかし、鶏などの家禽類(かきんるい)や人間の世界に侵入して何代か経ることで、症状が現れるようになるといわれています。人間の腸管内にも、例えばビフィズス菌や大腸菌などのさまざまな細菌が生息していますが、それらは腸の中で共存関係を作っているため、多くの場合、病原性はありません。しかし、共存できない細菌、例えば腸管出血性大腸菌O157などが人間の体内に侵入すると、感染症をもたらすことになります。病原体にしてみれば、自分たちが生存するために人間の体内で増殖しているだけなのでしょうが、結果として感染症状を引き起こしてしまうのです。A型は大きな変異で免疫を逃れ、パンデミックを起こす型や亜型についての話が済んだところで、いよいよA型とB型の違いについてお話ししていくことにしましょう。繰り返しになりますが、A型インフルエンザウイルスには、HAタンパクとNAタンパクの組み合わせにより、144通りの抗原性の異なる亜型があります。A型インフルエンザは、数十年に一度、亜型が変わるという大変異を起こすことが知られています。突然別の亜型ウイルスが出現して、従来の亜型ウイルスにとって代わることがあるのです。もしそれが、人間が接したことのないウイルスだった場合、人間界の誰も免疫をもっていないので、たくさんの人が急速に感染、重症化し、パンデミック(世界的大流行)に陥ります。パンデミックが起こるのは、大きな変異を起こしやすいA型インフルエンザウイルスだけです。今のところ、これら144通りのA型インフルエンザ亜型のうち、人間界でパンデミックを起こしたのは、H1N1(Aソ連型)、H2N2(アジア風邪)、H3N2(A香港型)、H1N1pdm09などに限られています。ちなみに、ソ連型や香港型というのは、最初に流行した地名に由来しており、H1N1pdm09の「pdm」は「パンデミック」、「09」は「2009年」という意味です。また、先ほど「突然出てきた亜型ウイルスが、従来の亜型ウイルスにとって代わることがある」と言いましたが、突然現れたH1N1pdm09が人間界に定着してからは、不思議なことにH1N1(Aソ連型)の流行は見られなくなりました。人間界に適応したB型は、治りかけたころ他人にうつしやすい一方、B型インフルエンザは、50年くらい前に人間の世界に侵入し、今では完全に人間に適応しています。なぜなら、B型インフルエンザウイルスは、通常ヒトにしか感染しないからです。その点がA型と大きく異なります。「A型とB型と何が違うのか?」という質問をときどき受けることがありますが、その症状を見ただけではA型とB型を区別することはできません。しかし、データを読み解いてみると、A型は「熱が出るときに一番ウイルス量が多く」、B型は「症状がおさまってくる後半にウイルスが多い」ことが報告されています。つまり、他人にうつさないように、より注意が必要なのはB型なのです。なぜなら、ちょうど治りかけて、活動を始めるころにウイルス量が多くなるから。「もう治った」と思っていても、周りの人にうつしてしまう可能性が高いということです。ヒトからヒトに感染しなければ自分たちが生きられないことを、ウイルスはわかっているのでしょうか。こうした性質から、B型インフルエンザはよりヒトとの共存に適応したウイルスだといわれます。インフルエンザは根絶できるか? ウイルスたちの生存戦略A型インフルエンザは何十年かに一度大変異を起こすと言いましたが、A型であってもB型であっても、インフルエンザウイルスは毎年小さな変異を起こして、わたしたちの免疫機構を逃れています。だから毎年、たとえワクチンを打ったとしても、インフルエンザにかかる人がいるのです。それだけにとどまらず、彼らは自分が生存するためにヒトの免疫を抑制する遺伝子をもっているので、何度インフルエンザにかかっても、「完璧な免疫」というのはできません。すばやく変異し、ヒトの免疫を抑制し、何度も感染するというのが、インフルエンザウイルスの生存戦略です。わたしたちの免疫機構は、今のところインフルエンザウイルスの生存戦略を超越できるようなものではありません。つまり、人間界からインフルエンザを根絶することはできない、ということです。続く後編ではワクチンや治療薬について取り上げ、そんなインフルエンザとうまく付き合っていくためにはどうすればよいかを考えていきたいと思います。消えたウイルス「インフルエンザウイルスは根絶できない」と言いましたが、ヒトに感染するもので、今までに人類が根絶に成功したウイルスが1つだけあります。それが天然痘(痘そう)です。紀元前から「死に至る病」と恐れられ、生きながらえても顔にひどい瘢痕(はんこん)が残ってしまう天然痘。このウイルスはワクチンによってすでに根絶され、自然界には存在しません。しかし、実はアメリカやロシア(旧ソ連)の研究施設に、今もウイルスは存在します。もしもそのウイルスが、外部に流出するようなことがあったら……。今や、誰も免疫をもたない天然痘ウイルスは、バイオテロに使われる危険性をも秘めているということです。天然痘は非常に症状が重く死亡者も多い疾患でしたから、当時根絶は「絶対に必要なこと」だったのでしょう。しかし、病気を根絶するということは、免疫をもつ人がいなくなるということ。こうした側面があることも、忘れてはいけないと思います。

谷口 清州

2019.2.7

ノロウイルスに感染。消毒薬の作り方

食中毒を起こす原因には、ウイルス・細菌・自然毒・化学物質などがありますが、最も多いのがノロウイルスによるものです。1年を通して発生し、例年11月くらいから件数が増え始めます。ピークは12月から1月頃となり、学校や職場などで集団発生につながることがありますので注意が必要です。症状は? 子どもや高齢者は重症化のおそれも主な症状は吐き気・おう吐・下痢・腹痛であり、発熱は軽度です。潜伏期間は24~48時間で、発症から1~2日で症状はおさまります。(*1)健康な人は軽症で回復しますが、子どもや高齢者などは重症化しないよう注意が必要です。また、間接的ではありますが、おう吐物を誤って気道に詰まらせて死亡する例もみられます。感染経路は「人→人」「食品→人」の2つ感染経路は大きく分けると2つ。1つは、人から人への感染です。感染者のおう吐物や便の中に含まれるウイルスが手などに付着して起こる経口感染や、おう吐物による飛沫(ひまつ)感染にも注意が必要です。もう1つは、食品から人への感染です。感染者の調理したものを食べる、もしくはウイルスに汚染された二枚貝を、加熱が不十分な状態で食べるといったことによって感染します。予防のポイントはトイレのあと、調理の前便からのウイルスの排出は2週間以上続くことも。感染を防ぐためにも手洗いを徹底するようにしましょう。トイレを使用したあと、調理の前などは必ず手を洗ってください。石けんを使い30秒ほどこすり洗いし、水で流すことにより、ウイルスは大幅に減少します。(*2)指先や爪の間・手のしわは洗い残しの多い箇所なので、特に注意して洗いましょう。また、共用タオルで手を拭くのも避けてください。食品中のウイルスの感染力をなくすには一般的にウイルスは熱に弱く、85~90度で90秒間以上加熱すると感染力を失うとされています。(*3)感染報告の多い二枚貝でも、しっかりと加熱すればウイルスの脅威はなくなります。ワクチンはない 脱水症状に注意を現状、ノロウイルスにはワクチンがなく、治療は症状を軽減する対症療法のみです。つまり、下痢・嘔吐による脱水を補うための「水分補給」、そして「安静」により、症状がおさまるのを待つしかありません。おう吐物の正しい処理方法室内でおう吐などがあった場合は、二次感染を防ぐためにも必ず消毒が必要です。ただし、ノロウイルスの消毒は、殺菌目的の石けん(逆性石けん)はもちろん、アルコール(消毒用エタノール)では十分な効果が得られません。適切な道具をそろえ、正しいやり方で消毒しましょう。また、廃棄用のビニール袋にも塩素消毒液を入れておくとさらによいでしょう。なお、おう吐物は想像以上に遠くまで飛び散るので、広い範囲を消毒してください。消毒に必須となる「塩素消毒液」の作り方は次項で解説します。「塩素消毒液」の作り方次亜塩素酸ナトリウムを含む「塩素系漂白剤」と水で「塩素消毒液」を作ることができます。配合は、作りたい消毒液の濃度や、使用する漂白剤の濃度によって異なります。表を参考に漂白剤を希釈してください。台所用塩素系漂白剤(塩素濃度6%)を使う場合哺乳瓶用塩素系漂白剤(塩素濃度1%)を使う場合(*4)すみやかな特定が二次感染を防ぐおなかを下しただけでは深刻に考えずに学校や会社に行ってしまいがちですが、吐き気・おう吐・下痢・腹痛などの症状が強い人や、集団生活をする必要がある人、あるいは調理に従事する人などは、状況に応じて医療機関に相談しましょう。医療機関では「ノロウイルス抗原検査」が可能ですが、感染者の30%は無症候性とされていますので、流行期には常に手洗いを心がけてください。感染者を増やさないことが、巡り巡って自分の身を守ることにもなります。参考文献(*1)厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A(*2)東京都福祉保険局 防ごう!ノロウイルス感染(*3)厚生労働省 冬は特にご注意! ノロウイルスによる食中毒(*4)消毒液(塩素系漂白剤)の作り方 目黒区文:Open Doctors編集部

谷口 清州

2018.12.26

ヒートショックによる突然死にご用心

突然ですが、浴室のヒートショック対策、していますか? もし「自分には関係ない」と思っているなら大間違い。実は、ヒートショックに関連した入浴中の急死者数は、交通事故による死亡者数の4倍とも言われています。(*1)(*2)亡くなる大多数は高齢者の方ですが、寒くなるこれからの季節、高血圧や脂質(コレステロール)異常・糖尿病など、動脈硬化が進行しやすい持病がある方は特に注意が必要です。「ヒートショック」とは一体何なのかヒートショックとは、急激な温度の変化によって血圧が大きく変動するために起こる健康被害のことです。冷たい脱衣所・浴室から熱い湯船に入ったときになどに多く発生しますが、トイレでも下半身が外気にさらされるため注意が必要です。高齢者に多く、浴槽内で失神して溺死することもあれば、不整脈や心筋梗塞・脳梗塞などが起こって突然死につながることもあります。お風呂でヒートショックが起こるメカニズムまず、暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動して裸になることで、血管が収縮し、血圧が上昇します。次に、浴室に入って熱いお湯につかり身体が温まると、血管が拡張して血圧が下がります。最後に、温まった身体で寒い脱衣所へ移動することで、血管が収縮し血圧が上昇。このジェットコースターのような激しい血圧の変化が、ヒートショックを引き起こします。当然、夏よりも冬のほうが脱衣所と湯温の温度差は大きくなり、激しい血圧変動を起こします。今日からできる! ヒートショック対策入浴前に脱衣所や浴室を暖める火気には十分に注意しながら、入浴前には暖房器具などで脱衣所を暖めておきましょう。浴室を暖めるには、高い位置に設置したシャワーから給湯し、湯船にお湯をためるのがおすすめです。シャワーの蒸気で浴室全体を暖めることができます。湯温は41度以下、湯船につかる時間は10分まで(*3)寒い冬は熱い湯船が恋しくなりますが、これは急激な血圧低下を招き、ヒートショックの危険性を高めてしまいます。半身浴であっても、長時間入浴すれば体温が上昇する可能性があるので、気をつけましょう。飲酒直後・食後すぐの入浴を控える飲酒直後や食後1時間以内は血圧が下がります。入浴中も血管が拡張して血圧が下がるので、二重に血圧が下がりやすい状態になってしまいます。血圧が下がりすぎると浴槽内で意識を失い(脳貧血)、そのまま溺れてしまうこともあります。忘年会シーズンとはいえ、お酒を飲んでからの入浴はやめましょう。一人での入浴を控えるか、家族に見回ってもらう特に高齢者の場合は、可能であれば一人での入浴を控えたほうがよいでしょう。公衆浴場や日帰り温泉などの入浴施設を活用するのも一案です。高齢者が入浴している間、同居の家族が定期的に見回って、声掛けなどをするのも有効です。ヒートショック予報の活用日本気象協会が運営する天気予報専門メディア「tenki.jp」では、全国の市区町村ごと約1900地点の7日先までの「ヒートショック予報」を提供しており、標準的な戸建住宅における「ヒートショックのリスク目安」を3ランク、5種類のアイコンで表示しています。自身の体調とも相談しつつ、こうした情報をうまく活用するのもよいでしょう。参考文献(*1)(*3)消費者庁 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!(*2)警察庁 平成29年中の交通事故死者数について e-Statより文:Open Doctors編集部

石川 義弘

2018.12.19

インフルエンザが流行中。感染経路・潜伏期間・症状は?

例年12月から3月にかけて流行するインフルエンザ。感染経路、潜伏期間、症状、予防策などについてまとめました。インフルエンザの感染経路・潜伏期間・症状は?インフルエンザは「インフルエンザウイルス」に感染することで起こる病気です。主な感染経路は、咳(せき)やくしゃみの際に口から発生する小さな水滴による飛沫(ひまつ)感染。1~3日間ほどの潜伏期間を経て、38度以上の発熱、頭痛や関節・筋肉痛などの症状が急に現れるのが特徴です。子どもではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人では肺炎を伴うなど、重症化することがあります。(*1)「うつさない、もらわない」3つの予防策インフルエンザウイルスの感染を予防する主な方法として、以下の3つが挙げられます。1つ目は「流行前のワクチン接種」高齢者では死亡の危険が5分の1に、入院の危険が約3分の1から2分の1にまで減少することが期待できるとされています。(*2)2つ目は「手洗い」の励行流水・せっけんによる手洗いは、手や指などについたウイルスを物理的に除去する方法として有効です。アルコール製剤による消毒も効果があります。3つ目は「咳エチケット」を心がけることほかの人に向けて咳などをしない。咳やくしゃみが出るときはマスクをする。手のひらで受け止めたらすぐに手を洗う。飛沫を浴びないようにすれば、感染の機会は大きく減少します。去年も予防接種を受けたから、今年は必要ない?インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行が予想されるウイルスを用いて、毎年作り変えられています。前年にワクチン接種を受けた人でも、改めて接種を検討したほうがよいでしょう。重症化しやすい65歳以上の人などは、定期予防接種の対象となっていますので、希望する方は医師に相談しましょう。ちなみに、インフルエンザウイルスには大きく分けてA型・B型・C型の3つの型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。「インフルエンザワクチンは打っても意味がない」は本当かワクチン接種をすれば絶対にインフルエンザにかからない、というわけではありません。しかし、発病や発病後の重症化を予防することには一定の効果があり、「打っても意味がない」というのは誤解です。最も期待される効果は、重症化の予防。特に基礎疾患のある人や高齢者では重症化する可能性が高いと考えられています。肺炎や脳症などの重い合併症を防ぐためにも、ワクチン接種の意義は大きいと言えるでしょう。抗インフルエンザウイルス薬は、早めの服用が効果的本来、インフルエンザは自然治癒傾向のある疾患ですが、これまでの研究では発症から2日(48時間)以内に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、発熱期間は1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少することが報告されています。(*3)抗インフルエンザ薬には、内服薬のタミフルや吸入薬のリレンザなどがあります。発症から2日以内に服用を開始するのが効果的ですので、慌てることはありませんが、特に乳幼児や基礎疾患のある人などは早めの受診を心がけましょう。薬を飲まなくても注意! 子どもの「異常行動」以前、抗インフルエンザウイルス薬の服用後に、急に走りだす、部屋から飛び出そうとするなどの異常行動が報告されていましたが、最近の調査により必ずしも抗インフルエンザウイルス薬を服用していなくても異常行動が現れることが判明しており、服用の有無にかかわらず注意が必要です。小児・未成年がインフルエンザと診断されたら、少なくとも2日間は1人にさせないようにしてください。件数はわずかですが、転落等による死亡事例もあります。参考文献(*1)国立感染症研究所 インフルエンザとは(*2)厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ) 65歳以上の皆様へ(*3)厚生労働省 インフルエンザQ&A文:Open Doctors編集部

谷口 清州

2019.1.30

急増する梅毒。感染経路や症状、検査や治療の方法は?

「梅毒」と聞いてみなさんはどんなことを想像するでしょうか? 「昔の病気でしょ?」「風俗店へ行かなければ大丈夫」そんな風に思っている人が多いかもしれません。しかしこの梅毒、じわじわと感染者数が増えていることをご存じでしょうか? そんな梅毒から身を守るため、感染経路や症状、検査、治療についてまとめました。梅毒の原因は? 主な感染経路は性的接触梅毒とは「梅毒トレポネーマ」という病原菌による感染症です。主な感染経路は性行為など粘膜同士の接触で、性感性症のひとつでもあります。性感染症とは性的接触によって感染する病気のことで、ほかにクラミジアや淋病(りんびょう)などが知られています。また、妊婦が感染すると胎盤を通して胎児に感染し、流産や死産になるおそれがあります。生まれた場合でも、臓器の異常などさまざまな障害を抱えることになります(先天梅毒)。なお、梅毒という病名の由来は、症状に見られる赤い発疹が楊梅(ようばい。ヤマモモの漢名)に似ているからだとも言われています。(*4)第1~4期へじわじわ進行。気になる症状は?梅毒は、感染してすぐには症状が現れません。その経過は第1期から第4期に分けられ、長い月日をかけて徐々に全身を侵していきます。まず、感染から3週間ほどの潜伏期間を経て、感染が起きた箇所にしこりができます。これが第1期で、特に治療をしなくても数週間で症状は消えてしまいます。感染から3カ月ほど経過すると第2期となり、全身に赤い発疹が出たり、性器や肛門の周辺に平らなできものが現れたりします。第2期でも症状だけは再び消えてしまいます。感染から3年ほど経過すると第3期となり、ゴムのような弾力のあるできものが、皮膚や筋肉、骨などにもできます。さらに進むと第4期になり、血管や神経まで侵され歩行が困難になるなど、日常生活にも支障を来す可能性があり、場合によっては死に至ることもあります。早期発見のキーワードは「約4週間」梅毒に感染しているかどうかは、血液検査で分かります。しかし、感染から3週間ほどは抗体検査をしても陽性反応が出ないこともあります。症状が出ても、感染したと思われる日から約4週間経過してから検査を受けるようにしてください。梅毒に感染していた場合、自分のパートナーも感染している可能性があります。必要に応じて、一緒に治療を行うことが重要です。治療は抗菌薬(ペニシリン系)の内服第1期や第2期の場合は、抗菌薬(ペニシリン系)の内服で完治します。梅毒は治療しなくても一時的に症状が消えるという特徴があるので、「もう治った」などと自己判断せず、処方された薬をきっちり飲みきることが大事です。また、一度完治しても感染を繰り返す可能性があります。適切な予防策を取らなければ、再感染の危険は十分にあります。自分もパートナーも守る。梅毒の予防策まずは不特定多数の人との性行為を避けること、そして、性行為の際はコンドームを使用することです。しかし、キスやオーラルセックスなどでも感染する可能性があるため、コンドームだけで100%予防できるわけではありません。皮膚や粘膜に異常が出た場合は性的な接触を控え、早めに泌尿器科や婦人科を受診しましょう。参考文献(*1)性感染症報告数 – 厚生労働省(*2)梅毒患者の増加で注意喚起 – 日医on-line(*3)感染症発生動向調査で届出られた梅毒の概要(*4)梅毒に関するQ&A – 厚生労働省文:Open Doctors編集部

石川 義弘

2019.1.30

流行が続く風疹。ワクチンを受けたほうがよい人は

流行が続く風疹。子どもの病気と思われがちですが、患者の多くは30~50代の男性や20~30代の女性。まさしく予防接種を受けていないか、免疫を十分に獲得できていない可能性のある人たちです。(*1)最も注意が必要なのは妊婦の感染で、障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性があります。ですが、風疹はワクチンで予防できる病気です。風疹にかかったことがない人や予防接種を受けたことがない人、特に妊娠を希望する女性やそのパートナーは積極的に抗体検査を受け、十分な免疫がなければ予防接種を受けましょう。感染の自覚ない人も。風疹の感染経路と症状風疹は、せきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)を吸い込むことで感染し、症状が出るまでの潜伏期間は2~3週間です。発熱や発疹、リンパ節の腫れなどが現れます。また、大人が感染すると、子どもよりも重症化することがあります。一方で、症状が出ない感染者も15%~30%程度いると言われています。(*2)つまり、感染者の中には「風疹にかかった」という自覚がない人がおり、知らないうちに家族や職場の同僚などにうつしてしまうことも少なくありません。感染力はインフルエンザの数倍風疹の感染力はインフルエンザの2~4倍あり、1人の感染者から、免疫がない5~7人に感染させる可能性があります。(*3)風疹は「三日ばしか」という別名のとおり症状は軽めですが、まれに脳炎などの合併症が起こることがあり、決して軽視できない疾患です。なお、自然に感染したりワクチン接種をしたりすることで生涯続く免疫が体内につくられるため、その後は風疹に感染することはないとされています。妊娠中の感染で赤ちゃんに障害も妊婦が感染すると、赤ちゃんが難聴・心疾患・白内障などの障害をもって生まれるおそれがあり、これらの障害を先天性風疹症候群(CRS)といいます。妊娠初期ほどその確率は高くなり、妊娠1カ月で50%以上と言われています。(*4)妊娠したら風疹ワクチンは接種できない妊娠中は予防接種を受けられません。最も大切なことは、妊娠前に風疹ワクチンの接種を受け、免疫を獲得しておくことです。妊娠を希望している女性はもちろん、パートナーや家族、職場の同僚といった周囲の人たちも、ぜひ積極的に予防接種を受けてください。生まれた年で予防接種の機会が違うワクチン接種によって95%以上の人が免疫を獲得することができると言われています。2回の接種を受ければ、1回の接種では免疫がつかなかった人にも免疫をつけることができます。1990年(平成2年)4月2日以降に生まれた男女は、2回の予防接種を受ける機会がありましたが、それより年齢が上の人は受けていても1回だけ。十分な免疫がついていなかった場合、感染の可能性があります。1979年(昭和54年)4月1日以前に生まれた男性にいたっては、接種の機会すらありませんでした。(*5)また過去に風疹にかかったと思っていても、「はしか」など別の病気だったのを勘違いしている可能性もあります。記憶があいまいな場合は、採血による抗体検査を受けてみましょう。抗体検査はどこで受けられる?多くの自治体では、先天性風疹症候群(CRS)の予防のために、妊娠を希望する女性を主な対象とした抗体検査を無料で実施しています。検査といっても簡単で、採血検査のみで抗体価が分かります。無料で受けられるかどうか、どのクリニックで受けられるかなどについては、自治体のホームページでご確認ください。参考文献(*1)風疹急増に関する緊急情報:2018年9月26日現在 – NIID 国立感染症研究所(*2)風疹とは– NIID 国立感染症研究所(*3)風しん・先天性風しん症候群とは?|風しんの感染予防の普及・啓発事業|厚生労働省(*4)先天性風疹症候群とは – NIID 国立感染症研究所(*5)風しんについて|厚生労働省文:Open Doctors編集部

石川 義弘

2019.1.30

Open Doctors

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市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会