【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】自宅療養中でもすぐ相談が必要な症状とは?
最終更新日:2020.5.14

「いつもの風邪とちょっと違う」症状に注意
まず、風邪症候群(上気道炎)と同じような症状が長く続いたときには、コロナを考えておく必要があります。その他、これまでにわかっている特徴としては、風邪症候群のときよりも強いだるさ、倦怠感、普段は感じない嗅覚障害、味覚障害などがあります。全体の感染者の6割に味覚障害があったという報告もあります。このような変わった症状を覚えておくといいと思います。「二峰性発熱(にほうせいはつねつ)」と呼ばれる症状もよく見られます。発熱があって、一度下がった後、また熱が上がることです。ウイルス感染症の場合、ときどき見られる症状ですので、コロナに限った症状ではありませんが、疑うときの参考にしてください。
コロナ患者との明らかな接触歴があればわかりやすいのですが、今は地域内感染伝播があったり、無症候性感染があったりするので、非常にわかりにくいのが現状です。
医療現場では、だるさと発熱が長く続く、味覚・嗅覚障害、二峰性発熱などの症状に注意しています。これらの普段の風邪とはちょっと違う症状が見られた場合はコロナを疑ってもいいと思います。
ただし、人間は精神に左右される動物なので、「自分はコロナかもしれない」と疑いはじめると、余計にだるくなったりすることもあります。過剰な心配は禁物です。
ちなみに、ニュージーランドでは発熱や上気道症状があるだけでコロナを疑うことになっており、PCR検査をすべしとされています。今後地域に広がってくれば、このような考え方も必要になるのかもしれません。
肺炎の兆候は「息切れ」に注意
コロナに感染してから5日、6日と症状が続くと、重症化して肺炎になることがあります。乾いた咳がひどくなるのが肺炎のわかりやすい症状ですが、あまり強くないこともあります。また、肺炎の兆候として、息切れと呼吸数の多さが挙げられます。ウイルス性の肺炎は間質性肺炎と呼ばれるもので、肺胞の壁に浮腫(むくみ)が生じて乾いた咳が多くなります。また、肺での酸素交換がしにくくなるので、いつもは息切れしないようなところで息切れが起こります。普段より呼吸数も多くなります。さらにひどくなると、肺胞に浸出液が溜まってきて、痰となって出てくるようになります。
胸痛も肺炎の特徴として挙げられますが、マイコプラズマやその他の細菌が原因の肺炎にも見られる症状です。ただ、普段、胸痛を感じたことのないような人が胸痛を感じるのなら、それは注意したほうがいいと思います。
症状があっても4、5日は自宅待機が必要?
発熱した場合でも4、5日は自宅で待機をしたほうが良いと言われていましたが、37.5℃以上の発熱が5日以上続くのは明らかにおかしいです。一般的な医師は、発熱が3日以上続いた時点で「これは風邪ではないのではないか」と考えます。厚生労働省は受診の目安をこれまで「37.5℃以上の発熱が4日以上」としてきましたが、5月6日にこれまでの内容を見直すことを発表しました。諸外国では、このように何日と決めている国はありません。
現在のコロナの状況を考えたら、まずは家族や基礎疾患を持つ人に感染させないようにしなければいけません。発熱があって、息切れや味覚障害や倦怠感があったら、その時点で受診のために「帰国者・接触者相談センター」などに相談の連絡をしてください。医療機関で感染することもありますので、症状がひどくなければ、2日ほど自宅で様子をみたほうが賢明です。高齢者や基礎疾患のある人は、発熱や咳など比較的軽い風邪の症状でも相談できます。
「医療崩壊につながるのでは?」と心配される方もいるかもしれませんが、現在いろんなところで地域のPCR検査センターが整備されつつありますので、今後早期診断が進んでくると思われます。検査のキャパシティに余裕のある地方は、症状が4日未満でも臨床的に疑わしいと思えばPCR検査も実施しています。我々が「この人はコロナではないだろう」と思う患者さんでも、少しでも疑いがあれば検査を行っています。私は今三重の病院に勤務していますが、たくさんの人が検査を断られているという状況ではありません。
地方は東京と比較すると、まだまだコロナの症状が出ている方が少ないですが、かなり敏感になっている方も多く、危機意識は都会の方たちよりも高いと思います。これは、もともと地方都市では総合病院が一つしかないところも多く、「なにかあったら大変なことになる」という思いがあるのだと思います。そういうことからすると、さすがに最近は少なくなったようですが、東京の繁華街に人が集まっている様子は信じられませんでしたね。
若いから軽症で済むとは限りませんし、高齢者だからといって必ず重症化するとも限りません。今のところ、コロナについて詳しいことはまだわかっていません。私どもの病院に入院している患者さんの中にも、すごく軽症なのにウイルス量が非常に多い方がいらっしゃいます。これまでのデータを見ると、症状の重さとウイルス量は比例しないようなのです。
大切なのは自分の症状をしっかりと見ることです。症状がひどくて、どうもいつもの風邪と異なると思えば、相談して受診するようにしてください。
まとめ
- 「長く続く発熱」「強い倦怠感」「味覚・臭覚障害」「二峰性発熱」があったら受診相談を。
- 「息切れ」と「胸痛」は肺炎の兆候なので注意。
国立病院機構三重病院 臨床研究部長
国立病院機構三重病院 臨床研究部長。国立感染症研究所客員研究員。専門は小児感染症学、感染症疫学で、2003年にはSARSコロナウイルスの世界流行の対策を経験。三重大学医学部小児科学教室、ガーナ国野口記念医学研究所、国立三重病院小児科、国立感染症研究所感染症情報センター、WHO感染症対策部などを経て2013年より現職。