死の危険もある熱中症。早めの対策意識でシャットアウト
最終更新日:2019.7.11

命の危険も。熱中症ってどんな病気?
熱中症とは、高温多湿の環境で汗をかいて体内の水分量・塩分量のバランスが崩れたり、暑さで体温調節機能が乱れたりすることによって起こる臓器の障害、体の不調を指します。環境省の熱中症予防情報サイト(*1)では、「重症化すると死に至る可能性のある病態」とも表記されています。熱中症は、命の危険を伴う病気なのです。
ただし、予防を実践すれば防ぐことができ、もし発症したとしても、適切な応急処置により重症化を防ぐことが可能な病気でもあります。
「3つの工夫」で熱中症予防
熱中症予防の基本は「脱水と体温の上昇を抑えること」です。気温が高くなると予想される日は、行動・住まい・衣服の3つの観点で工夫(*2)して生活するよう心掛けてください。その1:行動の工夫
①こまめに水分・塩分を補給する②頑張らない、無理をしない
③日なた(直射日光)を避ける
たとえば、炎天下でのバーベキューなどの際は注意が必要です。タープなどで日陰を作っておくとよいでしょう。意識して「無理をしない」行動が必要です。
その2:住まいの工夫
①風通しをよくする②カーテンなどで日光を遮断する
③エアコン・扇風機を使う
単に窓を開けるだけではなく、風の通り道を作ることが大切です。また、「暑い」と感じたら我慢せず、エアコンで室内温度を下げるようにしてください。
その3:衣服の工夫
①ゆったりした服を着る②襟元をゆるめる
③吸汗・速乾素材を活用する
④黒色系の素材を避ける
⑤日傘や帽子を使う
衣服の中や体の表面に風を通すことで汗を冷やし、体から出る熱を逃がします。帽子は熱がこもらないようにときどきはずして、汗を蒸発させてください。
重症度別にみる症状と応急処置
どんなに対策をしっかりしたとしても、高温の日や日光の下に長時間いたあと、もともと体調がすぐれない場合などは、つねに熱中症の疑いをもって体の調子を確認することが必要です。症状によって重症度はI度~III度の3段階に分けられますので、段階ごとに適切な処置をしましょう。症状と必要な処置(I度)

①水分・塩分を補給する
②涼しい場所へ移動する
③安静にする
室内であれば扇風機や冷房を使って室温を下げ、屋外の場合は風通しのよい日陰に移動します。横になり、脚を心臓よりも高い位置に上げることで、心臓に戻る血流を増やすことが大切です。
症状と必要な処置(II度)

重症度I度の処置を行ったあと、衣服をゆるめて体を冷やします。
■適切な体の冷やし方
・衣服のボタンをはずし、ベルトやネクタイ、女性の場合は下着もゆるめて風通しをよくする
・露出させた皮膚に濡らしたタオルやハンカチをあて、うちわや扇風機で扇ぐ
・冷たいペットボトルなどを首の付け根の両脇、脇の下、太ももの付け根の前面、股関節部にあてる
重症度 II度は緊急度が高まっています。症状が強い場合は医療機関の受診も検討してください。
症状と必要な処置(III度)

重症度 III度の症状がひとつでも確認できた場合は、すぐに救急車を呼んでください。特に、呼びかけに応えないようであれば、かなり危険な状態です。
救急車を待っている間に、涼しい場所に移動させ、体を冷やしてください。水分補給に関しては、意識障害が起こっている場合は気道に流れ込む可能性があるので、救急隊の到着を待ちましょう。
暑さのピークとなる8月は意識も高くなりますが、それまでは油断しがちな熱中症対策。事前にしっかりと知識をつけて、突然の猛暑にも慌てないようにしたいですね。
文:Open Doctors編集部
横浜市立大学 副学長/大学院医学研究科教授
横浜市立大学・副学長/大学院医学研究科・教授。Open Doctorsの監修医師。
エール大学医学部留学を経て横浜市立大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院科研究員、コロンビア大学、ハーバード大学医学部助教授、ラトガーズ大学医学部教授・同附属病院指導医などを経て現職。