感染症予防、マスクは「二度づけ」禁止? 再利用する方法は
最終更新日:2020.2.12
新型肺炎の影響で品薄の状態が続いているサージカルマスク。
在庫がもったいないからと再利用している人も多いようですが、専門家によると「基本的に外したマスクの再利用はおすすめできない」とのこと。
「そもそもマスクに予防効果はない」って本当? マスクが買えない状況になってしまったら、本当に再利用する方法はないの?
マスクをめぐる誤解や疑問について、感染症の専門家でもある谷口医師に聞きました。

マスクに「予防効果」はない?マスクの効能をめぐる誤解
最近「健康で何の症状もない人が、予防のためにサージカルマスク(不織布でできたマスク)を着用しても、飛沫感染を予防する効果はない」という記事が散見されます。しかし、100%予防できるわけではありませんが、サージカルマスクが一定程度飛沫感染を予防することは、科学的に証明されています。世界保健機関(=WHO)などが言いたいのは「マスクを装着することが必要なとき(=感染リスクがある場合)に装着することは有効な使用法であるが、リスクが低い、または全くないときに使用するのは意味がない」ということです。飛沫感染に対する効果の有無と、装着することによるメリットの有無は別物なのです。
現在の日本は、武漢とは違って地域内感染伝播(※注1)がありません。よって、新型コロナウイルスの予防という点では、マスクを装着する必要はありませんし、そのメリットはありません。もちろん、インフルエンザの流行期にインフルエンザを可能な限り予防したい、花粉症の予防をしたいと言う場合にはマスクは有効です。
(※注1)地域内感染伝播:ある地域のなかに、病原体を保有していて感染性を持つヒトが一定程度存在し、その地域内で生活しているとその病原体に感染すること。冬季のインフルエンザウイルスやかぜのウイルスのように、地域の人たちの間で病原体が循環している状態を指す。
マスクは「2度づけ」禁止! 正しくつけなければ意味がない
まず、マスクの正しいつけ方についてですが、マスクは鼻筋から顎までをしっかりカバーするようにかけます。たまに鼻を出したまま口にだけマスクをかけている人を見かけますが、意味がありません。また、顔の大きさに合ったサイズのマスクを使い、マスクと顔の間にすき間ができないように密着させてください。一般的に使われているサージカルマスク(不織布でできたマスク)は、内部の3次元的な網目構造を利用して病原体を吸着しています。そのため、不自然な形で折りたたんだり、洗ったりすると、この3次元構造が破壊され、効果がなくなってしまいます。ゆえに、一度外したマスクは再使用しないというのが基本です。
医療関係者はマスク管理について徹底的な教育を受けています。マスクの外側、特に中心部位には吸着された病原体が付着している可能性があるので、もしマスク表面に触ってしまったら必ず手洗いをしますし、マスクを外したら捨てるようにしています。それだけ厳格に取り扱っているからこそ効果があるのです。
マスクを何度も使いまわしたり、サイズが合っていないものを使っていたりしていれば、残念ながらウイルスの侵入を防ぐのに有効な方法とはいえません。
マスクが在庫切れ!再利用する方法はないの?
全国的にマスクが不足している今、買い占めなどが続くと、本当にマスクが必要な時に手に入らないという可能性もあります。そんな場合に備えて、推奨はできませんが、再利用する方法を伝えておきます。マスクの効果を保持するためには形を崩さないことが大切なので、マスクを静かに外したら、外した形のまま清潔な紙袋などの中に保管します。形を崩さず、湿気のない状態で保存することがポイントです。再び装着するときはマスクのひもを持ってそっと取り出し、やはりマスク表面には触れないようにつけてください。
しかし、この方法は「最終手段」であって、二度、三度と使いまわすのはおすすめできません。何らかの症状がある人や、その看病をする人たちにマスクが行き届くよう「必要な分だけを購入し、買い占めをしない」ということも大切だと思います。
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国立病院機構三重病院 臨床研究部長。国立感染症研究所客員研究員。専門は小児感染症学、感染症疫学で、2003年にはSARSコロナウイルスの世界流行の対策を経験。三重大学医学部小児科学教室、ガーナ国野口記念医学研究所、国立三重病院小児科、国立感染症研究所感染症情報センター、WHO感染症対策部などを経て2013年より現職。