健康診断の一番の目的は「動脈硬化の進行を遅らせる」こと
最終更新日:2020.3.26

健康診断では身体のいろいろな部分を検査しますが、もっとも重要な目的は「動脈硬化の進展を遅らせる」ことです。
動脈硬化とは、動脈が肥厚して硬くなった状態のことを言います。動脈硬化によって引き起こされるさまざまな病態を動脈硬化症と呼びます。
動脈をチクワのように縦切りにしてみましょう。動脈硬化がひどくなると、血管の内側にコレステロールが溜まってコブになります。これをアテローム硬化と言います。

コブはだんだん内側にせり出してくるので、血液が流れにくくなります。川幅が狭くなると川の水が流れにくくなるのと一緒です。
今度はチクワ(動脈)を輪切りにしてみます。血管の内側にコレステロールが溜まっているのがよくわかると思います。血液が流れるところが、これぐらい細くなってしまうこともあるのです。

動脈は体中にはりめぐらされている血管です。ということは、身体のどこで動脈硬化が起こってもおかしくありません。
動脈硬化が心臓の表面にある冠動脈で起こり、血液の流れが悪くなれば狭心症、コレステロールを覆っている膜が何かの拍子に破れて血液が固まり、冠動脈が詰まれば心筋梗塞になります。これが頭で起こると脳梗塞です。足の血管に動脈硬化が起これば、閉塞性動脈硬化症になります。足の血流が悪くなるため、長時間歩くと足が痛くなってしまい、休み休みでないと歩けなくなります。これらの原因はすべて、動脈硬化なのです。
脳梗塞や心筋梗塞は命にかかわる病気です。リハビリも大変ですし、生活の質が低下する可能性も大きくなります。
健康な生活をおくるには、動脈硬化を防がなければいけません。そのために非常に役に立つのが健康診断なのです。
健康診断で行う、心電図、眼底検査、上腕動脈と足関節上部で測定する血圧の比、脈拍の触れ方、左右差、頸動脈エコーなどの検査結果によって、動脈硬化の進展具合がわかります。これらの検査については、あらためて別のコラムで説明していきますので、ぜひお読みください。
また、動脈硬化の危険因子(原因)についても、あらためて解説します。健康診断とこの健診コラムを活用して、動脈硬化を防ぎましょう。
横浜市立大学 医学部 講師・医学博士
横浜市立大学医学部医学科 循環制御医学教室・講師。
医学博士、日本内科学会 総合内科専門医、日本循環器学会認定 循環器専門医。
大学病院や市中病院での勤務を経て、ラトガース大学留学後、現職。
医学部生・理学部生及び大学院生(修士・博士課程)への講義、実習及び研究指導を行っている。
横浜市立大学医学部・ベストティーチャー個人賞を3年連続受賞(2018年、2019年、2020年)。