止まらない感染拡大。新型肺炎、今できる対策は?(最終更新:1月27日)
最終更新日:2020.1.27
本記事の最終更新日は1月27日です
この記事の内容は古くなっています。最新情報はこちらの記事でご確認いただけます。新型肺炎の症状、今すぐできる対策は? 感染症専門医が解説(最終更新:1月30日)
2019年12月以降、中国内陸部の湖北省武漢市で、新型コロナウイルスによる肺炎患者が相次いでいます。現時点でわかっている情報と対策を整理しました。

現時点で、パンデミック(世界的大流行)を起こす可能性は?
今後パンデミック(世界的大流行)に進展するリスクは「持続的・効率的なヒトからヒトへの感染が起こるかどうか」によります。これまでのSARS、MERSでは持続的・効率的な「ヒト-ヒト感染」は起こっておらず、あくまで濃厚接触による限定的な「ヒト-ヒト感染」にとどまっていました。
新型コロナウイルスについても、感染性の程度をもう少し詳細に評価することが必要です。
現時点では、夫婦間での感染や中国国内の医療従事者の感染が確認されています。これは、「ヒト-ヒト感染」が起こっている可能性を強く示唆しています。
しかし、いずれも患者に濃厚接触をした者が発症しているのみであり、現状ではヒトからヒトへの感染性は高くないと考えられます。家庭・病院内での濃厚接触など、特定の状況では感染しうるということを示唆しており、「持続的・効率的な『ヒト-ヒト感染』が起こっている」とは言えない状況です。
新型コロナウイルスはどれぐらい危険?
また「かかったらどれぐらいの人が亡くなってしまうのか」といった、「ウイルスそのものの怖さ」もまだ詳しくわかっていません。コロナウイルスというものは、もともと軽症で済むものから重症になるものまで幅がとても広いので、おそらく軽症者はもっといると思われますが、SARSコロナウイルスに類似しているとすればこれらの数は限定されるかもしれません。
どのくらいの数が感染して、その中でどのくらいが肺炎を起こすか、そのうちのどのくらいが致命的なのかということがわかるまでは、ニュースなどで今後の状況の変化に注意しつつ、以下の対策を取り続けてください。現状、日本国内では地域内の感染伝播はありませんので、国内で暮らされている方々が心配されるようなことはありません。
新型肺炎になると、どんな症状が出る?
中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱
・全身倦怠感
・乾いた咳(せき)
・入院患者では呼吸困難も多い
・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されている
これらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。
今すぐできる対策は?
現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、・武漢市への渡航歴があって発熱と気道症状(咳やのどの痛みなど)のある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。
・武漢市への渡航歴があって、発熱と気道症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。
この2点になります。
武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。感染の対策としては、現在はインフルエンザや風邪のウイルスも地域に存在していますので、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。
【解説】コロナウイルスとは?
コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。
国立病院機構三重病院 臨床研究部長
国立病院機構三重病院 臨床研究部長。国立感染症研究所客員研究員。専門は小児感染症学、感染症疫学で、2003年にはSARSコロナウイルスの世界流行の対策を経験。三重大学医学部小児科学教室、ガーナ国野口記念医学研究所、国立三重病院小児科、国立感染症研究所感染症情報センター、WHO感染症対策部などを経て2013年より現職。