新型肺炎、日本国内での「ヒト-ヒト感染」にどう備える?(最終更新:1月29日)
最終更新日:2020.1.29
ここでは新型肺炎に関する現時点での情報と、今からでもすぐにできる対策についてまとめました。

新型肺炎になるとどんな症状が出るの?
中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱
・全身倦怠感
・乾いた咳(せき)
・入院患者では呼吸困難も多い
・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されている
これらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。
今すぐできる対策は?
現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、下記の2点になります。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。
・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。
武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、風邪・インフルエンザが流行する季節でもありますから、以下のような通常の感染症対策を続けることが大切です。
・手洗い
・「咳エチケット」を守る
・マスクを着用する
・むやみに人ごみに出かけない
「咳エチケット」と「正しい手洗い」とは?
咳やくしゃみの飛沫(ひまつ)による感染を防ぐため、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、服のそでを使って口や鼻をおさえることです。発熱などの自覚症状がなくても、電車や職場、学校など人が集まる場所では必ず実践してください。
■3つの正しい「咳エチケット」
・マスクを着用する(マスクは鼻からあごまで隙間がないように覆いましょう)
・ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う(使ったティッシュはすぐに捨てましょう)
・上着の内側やそでで覆う
悪い事例としては、
・せきやくしゃみを手でおさえる(その手でさわったドアノブや電車のつり革などにウイルスが付着し、他人に病気を移す可能性があります)
・せきやくしゃみをするとき何もしない(病原体を含む飛沫が飛んで他人に病気を移すことがあります)
■正しい手洗いの仕方
・流水で手を洗います。
・石けんなどを使って指から手の甲、手首まで洗います(30秒間は洗いましょう)。
・2回洗うとより効果的です。
・十分に流水で洗い流して清潔なタオルやペーパータオルなどで拭き取ります。
流水で手洗いできない場合は、アルコールが含まれた速乾性の手指消毒剤で代用できます。
感染の対策としては、インフルエンザに対する対策と同様で、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。
新型コロナウイルス感染症の疑いがあるときは?
武漢に滞在歴があり、日本に入国後2週間以内に発熱や気道症状が出た場合、新型コロナウイルス感染症の疑いがあります。厚生労働省は、住んでいる地域の保健所に連絡をした上で、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけています。その際、武漢に滞在していたことを申告してください。また、不要な外出を避け、「咳エチケット」を守るようにしてください。
現在までのところ、無症候性(症状がない)感染例や軽症例の感染性についてはよくわかっておりませんので、武漢に渡航歴のある人と接触したあと、発熱や気道症状が出た場合も、上記同様にすみやかに医療機関を受診してください。
新型コロナウイルス感染症が重症化すると肺炎になります。65歳以上の高齢者、あるいは心臓や肝臓に病気を持つ人、糖尿病患者などは命にかかわることがあります。しかし、まだ肺炎の発症や死亡のリスクについてはまだわかっていないことも多くあります。ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。
新型コロナウイルスに関するコールセンター
編集部追記(1月29日):1月28日、厚生労働省が新型コロナウイルスに関するコールセンターを設置しました。・厚生労働省の電話相談窓口: 03-3595-2285
・受付時間:9時00分~21時00分(週末や祝日を含め、毎日午前9時~午後9時まで対応)
【解説】コロナウイルスとは?
コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。
国立病院機構三重病院 臨床研究部長
国立病院機構三重病院 臨床研究部長。国立感染症研究所客員研究員。専門は小児感染症学、感染症疫学で、2003年にはSARSコロナウイルスの世界流行の対策を経験。三重大学医学部小児科学教室、ガーナ国野口記念医学研究所、国立三重病院小児科、国立感染症研究所感染症情報センター、WHO感染症対策部などを経て2013年より現職。