大切な腎臓を守るために覚えておきたい「尿検査」3つのキーワード
最終更新日:2020.12.24

腎臓はなかなか症状が出にくい臓器であり、肝臓とともに「沈黙の臓器」とも言われます。そのため、腎臓の異常をチェックするには、健康診断が欠かせません。
健康診断では、主に尿検査と血液検査で腎臓に異常がないかどうかを調べます。ここでは、尿検査で知っておいたほうがいい3つのキーワード「尿蛋白」「尿糖」「尿潜血」についてご説明します。
尿検査でわかる腎臓の病気とは?
まずは尿検査で出る「尿蛋白(たんぱく)」。これは本来なら腎臓でろ過されないはずのアルブミンというタンパク質が尿の中に混ざってしまっている状態です。
本来ろ過されないタンパク質がろ過されてしまっているということは、腎臓で重要な役割を持つ「糸球体」のろ過機能に異常があることが疑われます(糸球体については前回のコラムを参照してください)。本来ろ過されないのものが、糸球体の網目をかいくぐって尿に混ざってしまっているからです。
つまり、尿蛋白は糸球体の異常を見ているのです。糸球体に異常があれば、糸球体腎炎が疑われます。ただし、腎機能に明らかな異常がない場合でも、運動などにより尿蛋白が検出されてしまう場合があるので、尿検査で異常を指摘された際には精密検査で本当に異常なのかをしっかり調べることが重要です。
次が「尿糖」です。ブドウ糖は粒子が小さいため、糸球体でろ過されてしまいますが、重要な物質なので尿細管で100%再吸収されます。せっかく摂取した栄養を捨ててしまってはもったいないですよね。
しかし、血液中のブドウ糖の値である血糖値が通常の値の2倍を超えると、再吸収しなくてはならないブドウ糖が多すぎて、尿細管での再吸収が追いつかなくなります。そのため、再吸収しきれないブドウ糖が尿に出てしまうのです。尿糖が出ていれば、血液の中のブドウ糖が多い状態ということになり、つまり糖尿病が疑われます。
「尿潜血」は尿に赤血球が混入している場合に陽性になります。これは腎臓だけでなく、尿管や膀胱、尿道からの出血でも起こることがあります。肉眼では尿への血液の混在がわからない場合を尿潜血、肉眼でも見える場合を肉眼的血尿と呼びます。
尿潜血が見られる場合には、糸球体が炎症を起こしているなどの異常が疑われます。肉眼で血尿が認められる場合は、膀胱腫瘍(膀胱がん)、尿路結石などの可能性も考えなければいけません。
なお、女性の場合は月経中に陽性になることがあるなど、明らかな異常がない場合でも尿潜血を認めることがあります。異常が見つかったら放置せず、精密検査で原因をしっかり調べましょう
横浜市立大学 医学部 講師・医学博士
横浜市立大学医学部医学科 循環制御医学教室・講師。
医学博士、日本内科学会 総合内科専門医、日本循環器学会認定 循環器専門医。
大学病院や市中病院での勤務を経て、ラトガース大学留学後、現職。
医学部生・理学部生及び大学院生(修士・博士課程)への講義、実習及び研究指導を行っている。
横浜市立大学医学部・ベストティーチャー個人賞を3年連続受賞(2018年、2019年、2020年)。