【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】親が、あるいは子が感染したら?親子が感染したときの病院の対策は?

小さな子どもを持つ親が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)になってしまったらどうすればいいのか、心配になっている方も多いと思います。親が、あるいは子が感染したらどうすればいいのでしょうか?感染症の専門家でもある国立病院機構三重病院の谷口清州医師が解説します。「子どもが感染しにくい」というわけではないまず、これまでの研究では、子どもも大人と同じ確率で感染することがわかっています。つまり、子どもと大人の感染率は同じです。子どもの感染者数が少ないからといって、子どもが感染しにくいわけではありません。また、大人から子どもへの感染率は高いのですが、子どもから大人への感染率は低いです。これらの理由はわかっていません。一方、最近小児では鼻粘膜のウイルス受容体である「ACE2」が少ないという報告があり、これによって子どもは感染しにくいのではないかと議論されています。子どもの感染者が少ないと思われているのは、症状が出にくいのと、軽症者が多いということもあります。ですから、大人が感染したら、当然一緒に住んでいる子どもに感染するリスクがあります。コロナは発症の2日前から感染性があるとされているので、発症した時点ですでに感染している可能性はあります。まだ感染していない場合、それ以上の接触を減らすために離れて住むことができれば感染リスクは低くなりますが、小さなお子さんの場合はそれも難しいでしょう。祖父母が面倒を見ようとしても、お子さんがすでに感染していて潜伏期にあるとすれば、祖父母に感染してしまったらもっと大変なことになってしまいます。誰かに預けるにしても、預かる方も多少なりともリスクがあるわけです。重症化リスクが高くない人で、いざとなったら子どもを預けられる人がいないか、リストアップしておくことも一つの方法です。親が防護服を着て付き添いも親がコロナに感染したときの、お子さんの面倒を誰が見るかについては、いろいろな形の対策を考えていかなければいけません。たとえば、私たちの病院では医療的ケア児をはじめとする在宅療養児の診療を行っていますが、彼らの両親がコロナに感染した場合、レスパイト(一時的な入院)という形でお子さんをお預かりすることも考えています。他の病院でも同じような対策を講じているところはあるでしょう。これについては、日本小児科学会が指針を示しています。両親ともに入院することになった場合、あるいは母子家庭、父子家庭で親御さんが入院しなければいけなくなったときは、児童相談所などが一時保護を行っている地域もあります。事前に調べてみてください。一方、子どもが感染したとき、感染していないご両親の付き添いをどうするかという問題もあります。1歳や2歳の子の場合、親が一緒にいないとどうしようもありません。でも、親がその時点で陰性なら付き添いをすることによってこれから感染するリスクもありますし、子どもは軽症でも親の方が重症化するリスクも高いかも知れません。これは大きなジレンマです。日本小児科学会は、小児が入院した場合について、保護者の同室付き添いが考慮されるという見解を示しています。その理由として、保護者によるケアは小児の精神的な安定につながり、医療従事者の負担も大きく軽減されること、小児に基礎疾患がある場合や乳幼児においては病態を最も理解し急変の徴候を早期に気付くことができるのも保護者であること、保護者が小児の介護を可能な状態であると判断できた場合には、入院する小児の介護者として同室してもらうことには大きな意味があることを挙げています。注意すれば外遊びさせても大丈夫コロナに感染していないお子さんは、全国で休校措置が続いているため、ずっと家にいることになると思います。感染リスクがあると思ってお子さんに外遊びを我慢させている親御さんもいるかもしれませんが、感染しない、感染させないように注意さえしていれば大丈夫です。コロナはヒトからヒトへしかうつらないので、ヒトとの距離が離れていれば感染することはありません。人の少ない大きな公園や、海、山などに行けば、感染することも感染させることもほとんどないと考えられます。よくこのような質問を受けますが、「精神衛生」という言葉もあるように、精神のバランスを保つことも非常に大切です。ただ、地域によっては、遊びに外に出ると白い目で見られてしまうこともあるようです。このウイルスは人との距離をとっていれば感染しないことを、みなさんに理解してほしいですね。隣の家に感染者がいると自分の家族にもうつる、なんてことを言う人もいますが、そんなことはありません。大気の拡散能力は膨大なもので、飛沫はせいぜい2メートルほどしか飛びませんので、隣の家からウイルスが飛んでくる、なんてことはありえないのです。世間の雰囲気が非常に神経質になっていると感じますが、必要な注意を払いながら、子どもを外に遊びに連れていくことは、けっして悪いことではないと思います。まとめ「子どもはコロナに感染しにくい」は間違い。子どもの感染率は大人と変わらない。親が感染したときのシミュレーションをしておくこと。感染しない、させないように注意すれば、外遊びも大丈夫。心のバランスも大事。参考サイト在宅療養児介護者のCOVID-19感染判明時等の支援について - 公益社団法人 日本小児科学会小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制に関する見解 〜入院や付き添いの考え方も含めて〜 - 公益社団法人 日本小児科学会Bi Q , Wu Y , Mei S , et al. Epidemiology and transmission of COVID-19 in 391 cases and 1286 of their close contacts in Shenzhen, China: a retrospective cohort study. Lancet Infect Dis. 2020;S1473-3099(20)30287-5. doi:10.1016/s1473-3099(20)30287-5Wong GW, Li AM, Ng PC, et al. Severe acute respiratory syndrome in children. Pediatr Pulmonol 2003;36:261-266.