お医者さんの知恵をみんなの知恵に Open Doctorsお医者さんの知恵をみんなの知恵に Open Doctors

Open Doctorsは病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介。
お医者さんとの間にある情報の差を解消することで、あなたの意思決定を支援します。

produced by市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会

監修医師 谷口 清州の写真

国立病院機構三重病院 臨床研究部長

谷口 清州

プロフィール

国立病院機構三重病院 臨床研究部長。国立感染症研究所客員研究員。専門は小児感染症学、感染症疫学で、2003年にはSARSコロナウイルスの世界流行の対策を経験。三重大学医学部小児科学教室、ガーナ国野口記念医学研究所、国立三重病院小児科、国立感染症研究所感染症情報センター、WHO感染症対策部などを経て2013年より現職。

略歴

1984年三重大学医学部卒業後、同大学小児科学教室入局。その後関連病院の小児科勤務を経て、
1996年国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。
2000年世界保健機関(WHO)
2002年国立感染症研究所感染症情報センター室長
2013年より現職。

国立病院機構 三重病院

谷口 清州先生の記事を読む

止まらない感染拡大。新型肺炎、今できる対策は?(最終更新:1月27日)

本記事の最終更新日は1月27日ですこの記事の内容は古くなっています。最新情報はこちらの記事でご確認いただけます。新型肺炎の症状、今すぐできる対策は? 感染症専門医が解説(最終更新:1月30日)2019年12月以降、中国内陸部の湖北省武漢市で、新型コロナウイルスによる肺炎患者が相次いでいます。現時点でわかっている情報と対策を整理しました。編集部追記(1月27日):中国の保健当局は、患者の数は中国国内で2744人になったと発表しました。患者のうち重症者は461人にのぼっており、死者は合わせて80人となりました。中国本土以外では、これまでに13の国と地域で57人の感染者が確認されています。現時点で、パンデミック(世界的大流行)を起こす可能性は?今後パンデミック(世界的大流行)に進展するリスクは「持続的・効率的なヒトからヒトへの感染が起こるかどうか」によります。これまでのSARS、MERSでは持続的・効率的な「ヒト-ヒト感染」は起こっておらず、あくまで濃厚接触による限定的な「ヒト-ヒト感染」にとどまっていました。新型コロナウイルスについても、感染性の程度をもう少し詳細に評価することが必要です。現時点では、夫婦間での感染や中国国内の医療従事者の感染が確認されています。これは、「ヒト-ヒト感染」が起こっている可能性を強く示唆しています。しかし、いずれも患者に濃厚接触をした者が発症しているのみであり、現状ではヒトからヒトへの感染性は高くないと考えられます。家庭・病院内での濃厚接触など、特定の状況では感染しうるということを示唆しており、「持続的・効率的な『ヒト-ヒト感染』が起こっている」とは言えない状況です。新型コロナウイルスはどれぐらい危険?また「かかったらどれぐらいの人が亡くなってしまうのか」といった、「ウイルスそのものの怖さ」もまだ詳しくわかっていません。コロナウイルスというものは、もともと軽症で済むものから重症になるものまで幅がとても広いので、おそらく軽症者はもっといると思われますが、SARSコロナウイルスに類似しているとすればこれらの数は限定されるかもしれません。どのくらいの数が感染して、その中でどのくらいが肺炎を起こすか、そのうちのどのくらいが致命的なのかということがわかるまでは、ニュースなどで今後の状況の変化に注意しつつ、以下の対策を取り続けてください。現状、日本国内では地域内の感染伝播はありませんので、国内で暮らされている方々が心配されるようなことはありません。新型肺炎になると、どんな症状が出る?中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱・全身倦怠感・乾いた咳(せき)・入院患者では呼吸困難も多い・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されているこれらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。今すぐできる対策は?現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、・武漢市への渡航歴があって発熱と気道症状(咳やのどの痛みなど)のある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。・武漢市への渡航歴があって、発熱と気道症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。この2点になります。武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。感染の対策としては、現在はインフルエンザや風邪のウイルスも地域に存在していますので、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。【解説】コロナウイルスとは?コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。参考サイト・中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について(第5報) - 厚生労働省・Coronavirus - World Health Organization: WHO・中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策 - NIID 国立感染症研究所・特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.1.27

新型肺炎の症状、今すぐできる対策は? 感染症専門医が解説(最終更新:1月31日)

本記事の最終更新日は1月31日です1月31日、新型コロナウイルスについてWHO=世界保健機関は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。中国では患者数が9000人を超え、死者は213人となりました。ここでは新型肺炎に関する現時点での情報と、今からでもすぐにできる対策についてまとめています。新型肺炎になるとどんな症状が出るの?中国からの報告によると、新型コロナウイルスに感染・発症した患者には以下のような症状がみられるとのことです。・発熱・全身倦怠感・乾いた咳(せき)・入院患者では呼吸困難も多い・その他、筋肉痛、関節痛、頭痛、下痢なども報告されているこれらの症状は、いわゆる風邪やインフルエンザウイルスなどに感染した時にもみられるものです。のどや鼻のあたりの炎症(上気道炎)だけでは済まず、肺にまで炎症が広がる(肺炎)と、咳や呼吸困難などの症状が全面にでて、時に血痰がでることもあります。今すぐできる対策は?現在、新型コロナウイルスが国内で感染伝播することを防止するのにもっとも重要なのは、下記の2点になります。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、マスクをしたり、咳やくしゃみをティッシュでおさえたりするなどの「咳エチケット」を守ること。・武漢市への渡航歴があって、上記に挙げたような症状がある人は、公共交通機関を使用せずに、医療機関を受診して、きちんと渡航歴を伝えること。武漢市への渡航歴がない人、武漢市への渡航歴があっても発熱と気道症状がない人は、風邪・インフルエンザが流行する季節でもありますから、以下のような通常の感染症対策を続けることが大切です。・手洗い・「咳エチケット」を守る・マスクを着用する・むやみに人ごみに出かけない「咳エチケット」と「正しい手洗い」とは?咳やくしゃみの飛沫(ひまつ)による感染を防ぐため、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、服のそでを使って口や鼻をおさえることです。発熱などの自覚症状がなくても、電車や職場、学校など人が集まる場所では必ず実践してください。■3つの正しい「咳エチケット」・マスクを着用する(マスクは鼻からあごまで隙間がないように覆いましょう)・ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う(使ったティッシュはすぐに捨てましょう)・上着の内側やそでで覆う悪い事例としては、・せきやくしゃみを手でおさえる(その手でさわったドアノブや電車のつり革などにウイルスが付着し、他人に病気を移す可能性があります)・せきやくしゃみをするとき何もしない(病原体を含む飛沫が飛んで他人に病気を移すことがあります)■正しい手洗いの仕方・流水で手を洗います。・石けんなどを使って指から手の甲、手首まで洗います(30秒間は洗いましょう)。・2回洗うとより効果的です。・十分に流水で洗い流して清潔なタオルやペーパータオルなどで拭き取ります。流水で手洗いできない場合は、アルコールが含まれた速乾性の手指消毒剤で代用できます。感染の対策としては、インフルエンザに対する対策と同様で、基本的に手洗いと「咳エチケット」を守ることだと思います。新型コロナウイルス感染症の疑いがあるときは?武漢に滞在歴があり、日本に入国後2週間以内に発熱や気道症状が出た場合、新型コロナウイルス感染症の疑いがあります。厚生労働省は、住んでいる地域の保健所に連絡をした上で、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけています。その際、武漢に滞在していたことを申告してください。また、不要な外出を避け、「咳エチケット」を守るようにしてください。現在までのところ、無症候性(症状がない)感染例や軽症例の感染性についてはよくわかっておりませんので、武漢に渡航歴のある人と接触したあと、発熱や気道症状が出た場合も、上記同様にすみやかに医療機関を受診してください。新型コロナウイルス感染症が重症化すると肺炎になります。65歳以上の高齢者、あるいは心臓や肝臓に病気を持つ人、糖尿病患者などは命にかかわることがあります。しかし、まだ肺炎の発症や死亡のリスクについてはまだわかっていないことも多くあります。ニュースなどで今後の状況の変化に注意してください。新型コロナウイルスに関するコールセンター編集部追記(1月29日):1月28日、厚生労働省が新型コロナウイルスに関するコールセンターを設置しました。・厚生労働省の電話相談窓口: 03-3595-2285・受付時間:9時00分~21時00分(週末や祝日を含め、毎日午前9時~午後9時まで対応)【解説】コロナウイルスとは?コロナウイルスの中でも、これまでにヒトに感染すると判明しているものは、本来はほとんどがいわゆる「風邪症候群」を起こすウイルスです。ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1で、風邪症候群の10~15%(流行期は35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。過去に深刻な流行を起こしたSARSとMERSは、動物のコロナウイルスが人間世界に入ってきたものです。参考サイト・新型コロナウイルスに関するQ&A - 厚生労働省・新型コロナウイルス(2019-nCoV) - NIID 国立感染症研究所・咳エチケット – 厚生労働省・新型コロナウイルスに係る厚生労働省電話相談窓口(コールセンター)の設置について – 厚生労働省・Coronavirus - World Health Organization: WHO・特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

谷口 清州

2020.1.31

これってインフルエンザ……? 初期症状と、かかった場合の治療方法を解説

毎年冬になると流行するインフルエンザ。「ただの風邪だと思っていたら、インフルエンザだった!」なんてことになったら、子どもやお年寄りであれば症状が重くなるリスクもありますし、ウイルスをまき散らすことにもなりかねません。そこで今回は、風邪とインフルエンザの症状の違いを知り、もしインフルエンザにかかっていた場合はどんな治療が必要なのか、おさらいしましょう。風邪とインフルエンザの違いって何?風邪はさまざまなウイルスによって引き起こされる、基本的に自然治癒傾向のある疾患です。多くは、発熱・のどの痛み・鼻汁・くしゃみ・咳などの症状が中心です。一方、インフルエンザはインフルエンザウイルスにより引き起こされる感染症です。38℃以上の発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・全身倦怠感などの症状が比較的急速に現れます。普通の風邪と同じように、のどの痛み・鼻汁・咳などの症状が見られる場合もありますが、特徴的なのは気道の症状だけではなく、全身的な症状が強いということです。「インフルエンザかも」と思ったら?急激な高熱など「インフルエンザかも」と疑いを感じたとき、症状が強い場合やインフルエンザが重症化するリスクのある場合(注)などは、状況に応じて医療機関を受診しましょう。抗インフルエンザウイルス薬の投与により、発熱期間を1日短縮することと、合併症を減らす効果が認められています。インフルエンザの治療方法医療機関でインフルエンザと診断されたら、以下の2つの治療をおこなうことになります。水分・睡眠を十分にとり、安静にするもともと健康な人にとっては、インフルエンザは風邪と同様に自然治癒する疾患です。水分を十分にとり、しっかり眠って安静に過ごしましょう。症状やリスクに応じて薬の服用も高齢者や幼児、妊婦、持病のある人は、健康な人と比べて症状が重くなりやすい傾向にあります。そういった人々や、発熱・頭痛などの症状が重い人などに対しては、医師が必要と判断した場合に抗インフルエンザウイルス薬や解熱鎮痛薬などの薬が処方されます。薬が処方されたら、その効果を最大限に発揮させるために、用法・用量・服用する日数をきちんと守りましょう。抗インフルエンザウイルス薬のもっとも効果的な服用時期は?インフルエンザウイルスは増殖のスピードが速く、発症後48時間以内にウイルス増殖のピークがおとずれます。したがって、抗インフルエンザウイルス薬は“発症から48時間以内に服用”することが望ましいとされていますが、この期間を過ぎても効果がないわけではありません。適切な時期に服用を開始した場合、発熱期間が通常1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少することが分かっています。処方される主な抗インフルエンザウイルス薬インフルエンザに処方される治療薬は、下記に挙げた抗インフルエンザウイルス薬が代表的なものです。投与する薬は医師が選択しますが、薬の形状や服用回数など、希望があれば伝えておきましょう。タミフル一般名:オセルタミビルリン酸塩。カプセル剤もしくはシロップで、1日2回、5日間投与します。今シーズンからはジェネリック薬(後発薬)も選べるようになりました。リレンザ一般名:ザナミビル水和物。専用の吸入器を用いて吸入し、1日2回、5日間投与します。イナビル一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物。専用の吸入器を用いて吸入し、1回のみ投与。今シーズンから、より吸入しやすいように、使用する際に生理食塩液を加え、ジェット式ネブライザで吸入するタイプも使用可能になりました。ゾフルーザ一般名:バロキサビルマルボキシル。錠剤で、規定量を1回のみ投与します。小児(12歳未満)へのゾフルーザの投与については慎重に日本感染症学会は2019年10月24日、抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」について、「12歳以上については臨床データが乏しく推奨/非推奨は決められない」「12歳未満の小児に対しての投与は慎重に検討するべき」との提言を発表しました。12歳未満の子どもにゾフルーザを投与したところ、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現頻度が高いという報告が上がっているためです。日本感染症学会は以下の提言を行っています。(1)12~19歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。(2)12歳未満の小児:低感受性株(※編集部注:低感受性株=薬の効きにくい耐性ウイルスのこと)の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。(3)免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的な投与は推奨しない。投与が規制されているわけではありませんが、耐性ウイルスにより症状が長引いたり、またその薬の効きにくいウイルスが他の人に移ったりしますので、上記のような提言が出されています。治療薬を服用していなくても現れる?子どもの「異常行動」インフルエンザにかかった際、「急に走り出す」「部屋から飛び出そうとする」などの異常行動が見られる場合があります。これらは、抗インフルエンザウイルス薬を服用しているか否かにかかわらず、発熱から2日以内に見られやすい症状であることが、近年の研究で明らかになっています。また、就学以降の小児・未成年の男性に多く現れることも分かっています。重度の異常行動は、転落事故につながる恐れもあります。小児・未成年者がインフルエンザと診断されたら、事故の危険が少ない場所に寝かせ、少なくとも2日間は1人にしないようにしてください。参考文献・厚生労働省 インフルエンザQ&A・日本感染症学会 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」文:Open Doctors編集部

谷口 清州

2020.1.8

どのタイミングで打てばいいの?インフルエンザの予防接種の正しい接種法

毎年冬になると猛威を振るうインフルエンザ。今年は季節性インフルエンザの流行の開始が過去10年で最も早いと言われています。厚生労働省の発表によると9月の時点で昨年同時期より患者数が8.7倍となっており、全国の小中学校では学級閉鎖が急増中。早急な対策が必要とされています。インフルエンザの予防手段といえば、もっともポピュラーなのが予防接種。ここでは、予防接種の正しい接種時期や回数、効果などをご紹介します。インフルエンザワクチンの正しい接種時期は「流行前」日本において、インフルエンザは例年12月~4月頃にかけて流行し、1月末~3月上旬にピークを迎えます。予防手段としては、インフルエンザワクチンの接種がポピュラーな方法の1つです。いわゆる予防接種は、「流行前」に行うのが望ましいとされています。理想は10月中、それが難しい場合も12月中旬までに接種しておくのがよいでしょう。今年は、流行期間が前倒しになっている傾向にあります。なるべく早めに予防接種を受けることをおすすめします。一方で、みなさんが早めに受けようとすると、需要の集中とワクチン在庫の偏りが生じて、一時的にワクチンの不足が起こることがあります。予防接種がまだの方は、近くの小児科に電話で在庫の確認をしておきましょう。昨年予防接種を受けたから、今年は必要ない?前年に予防接種をしたからといって、今年もその効果が持続するわけではありません。一般に、ワクチンの効果は6カ月程度たつと落ちてきます。また、流行するインフルエンザウイルスは毎シーズン少しずつ変異しているので、そのシーズンに流行が予想されるウイルスを用いて、インフルエンザワクチンも毎年作り変えられています。そのため、前年に予防接種を受けた方も、今シーズンの予防のためには今年の予防接種が必要です。予防接種をすれば、インフルエンザにはかからないの?予防接種をしたからといって、インフルエンザに絶対かからないわけではありません。しかし、発熱やのどの痛みなど、発病後の症状をやわらげることはわかっています。(*1)じつは、予防接種のもっとも大きな効果は、症状の重症化を防ぐことなのです。予防接種を受けた方がいい人は?とくにインフルエンザの予防接種が推奨されているのは、症状が重症化しやすい以下の方々です。65歳以上の高齢者ワクチンを接種した場合、死亡の危険が5分の1に、入院の危険が約3分の1から2分の1にまで減少することが期待できるとされています。(*2)生後6カ月~5歳未満の乳幼児予防接種をすると、おおむね20~60%の発病防止効果があるとされています。(*1)妊婦や心疾患、免疫不全など合併症リスクが高い方妊娠している方や、慢性心疾患、慢性肺疾患、糖尿病のある方、免疫不全状態にある方などは、インフルエンザによる合併症リスクが高くなっているため、とくに予防接種しておくことが望ましいとされています。(*3)インフルエンザワクチンの効果的な接種回数は?インフルエンザワクチンの適切な接種回数は、年齢によって異なります。13歳以上の方1回接種が原則です。ただし、医師が2回接種を必要と判断した場合はその限りではありません。13歳未満の方日本では2回接種が原則です。1~4週間隔で接種可能ですが、免疫効果を考慮すると4週間あけて接種するのがもっとも効果的と言われています。「任意接種」と「定期接種」の違い予防接種の受け方には以下の2種類があります。任意接種希望者が接種費用を自己負担して受けるものです。定期接種インフルエンザにかかると重症化しやすい方を対象にした、公費(一部自己負担あり)で受けられる予防接種です。対象者は以下のとおりです。(*1)(1)65歳以上の方。(2)60~64歳で、心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当)。(3)60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当)。予防接種が受けられる医療機関については、お住まいの市区町村(保健所・保健センター)、医師会、医療機関、かかりつけ医にお問い合わせください。参考文献(*1)インフルエンザQ&A - 厚生労働省(*2)インフルエンザ(総合ページ)65歳以上の皆様へ - 厚生労働省(*3)重篤化しやすい基礎疾患を有する者等について - 厚生労働省文:Open Doctors編集部

谷口 清州

2019.11.27

濃厚接触による家族内での感染も。医師が語る髄膜炎

前回のコラムでは、日本では珍しい、しかし海外では多数の死者を出している「狂犬病」についてお伝えしました。今回も、国内ではあまり話題にのぼらない「髄膜炎」がテーマです。海外で流行するさまざまな感染症のなかから、谷口先生が髄膜炎を取り上げた理由とは?2020年の東京五輪を控えた今、髄膜炎をめぐる諸問題についても伺います。致死率が高く、ショック状態に陥ると数時間で死亡も━━ 谷口先生は海外に行く前にどんなワクチンを打っていますか?A型肝炎、B型肝炎、破傷風のワクチンは打っています。B型肝炎は医療従事者など血液に触れる可能性のある仕事をしている人はこれまでに接種していると思います。麻疹(はしか)・風疹は自然感染したことがあり、私は十分な抗体を持っていますので打っていません。今は狂犬病感染のリスクのあるところには行かないので打っていませんが、20年前にアフリカに行ったときには狂犬病ワクチンも打っていきました。私は年に4回ほどガーナに行くので、もちろん黄熱病のワクチンは接種しています。また、髄膜炎菌ワクチンも打ちます。アフリカ大陸の西部にあるガーナは「髄膜炎ベルト」と呼ばれる範囲に含まれていまして、流行性脳脊髄膜炎(りゅうこうせいのうせきずいまくえん)の流行地域ですからね。━━ 流行性脳脊髄膜炎というのはどんな病気なのでしょうか?髄膜炎というのは脳の周りにある脳脊髄膜の炎症を指します。膜につつまれている脳にも同時に炎症が起こるので、脳脊髄膜炎と言うのです。この病気を引き起こす病原体にはいろいろありますが、そのうちのひとつである髄膜炎菌は人から人からへ感染するので地域的な流行を起こすことがあります。流行性脳脊髄膜炎と呼ばれており、極めて重症になります。髄膜炎菌が原因なので、髄膜炎菌性髄膜炎とも呼ばれます。原因菌である髄膜炎菌というのは、感染するとヒトの鼻から喉(のど)のあたりにすみつき、飛沫感染によって人から人へ感染します。保菌していても発症する人としない人がいるのですが、何らかの理由でこの菌が血中に入り、増殖して、脳脊髄膜に到達すると、脳脊髄膜炎を発症します。抗菌剤による治療を行っても患者の10~15%は亡くなり、運よく生き残っても10%くらいの人には後遺症が残るという、怖い病気です。━━ そんなに怖い病気なのに、日本で定期予防接種対象に含まれていないのはなぜですか?今の日本では、髄膜炎菌に感染して髄膜炎になる人は年間30人程度だからです。昔は日本でも法定伝染病に指定されており、年間に何千人という方が亡くなっていましたが、今の日本人の保菌率は1%以下です。保菌率が減った理由について、よくわかっていませんが、一般的な衛生状態がよくなったこと、一方では長年国内で抗菌薬が濫用されてきたことと関係しているのではないかという指摘もあります。一方、アメリカやイギリスなどの、日本を除くほとんどの国々は、保菌率が10~20%。10人に1人くらいは菌を持っていることになります。よって、アメリカでは髄膜炎菌ワクチン接種を義務化している州が多いですし、イギリスでも定期接種の対象になっています。寮生活の予定があるなら予防接種の検討を━━ 髄膜炎になるとどんな症状が出るのでしょうか?最初は熱が出て、咳・鼻水・全身倦怠感・頭痛など、風邪のような症状で始まります。やがて血液中に菌が増えると、足や全身の節々がひどく痛み、手足が冷たくなり、紫色の出血斑(しゅっけつはん)が出ます。電撃的なショック状態に陥り、発症してから数時間で亡くなることもあります。以前、宮崎県の高校で、髄膜炎の集団発生がありました。4人が入院し、そのうち1人は亡くなっています。亡くなった子は夕方に発熱して、「ちょっと調子が悪い」と言っていただけだったのに翌朝倒れて、その夜に亡くなってしまいました。ちなみに、アメリカやイギリスにおける予防接種の主な目的は、寮生間での流行を防ぐことです。向こうの学生はほとんどが寮生活なので、飛沫感染が懸念されます。海外留学はもちろん、国内であっても、お子さんが寮生活などをされる場合は接種を検討してください。━━ 2020年の東京五輪では、髄膜炎菌のワクチンを義務化する必要はないのでしょうか?髄膜炎菌ワクチンの接種については、今回のオリンピック・パラリンピックでも議論になっています。例えば会場を案内するボランティアなど、海外からの参加者と濃厚に接触する場合には飛沫感染のおそれがありますから。2018年開催の平昌(ピョンチャン)オリンピックではスタッフに全員打ったそうですから、日本も2020年の東京五輪のときは対策を徹底すべきではないか?という議論がずっと続いています。予防接種は渡航者ワクチン外来やトラベルクリニックで━━ 髄膜炎菌のワクチン、日本ではどこで打てるのでしょうか?一定規模の病院ならば打てるようになっていますので、お近くの渡航者ワクチン外来やトラベルクリニックなどを検索してみてください。私が勤務する三重病院には渡航者ワクチン外来があるので接種可能ですが、1本あたり2~3万円ほど費用がかかります。原価が高く使用期限もあるので、予約制にしている病院が多いと思います。受診の際は事前に確認するようにしてください。家族内での感染も。谷口先生が髄膜炎ワクチンに思うことグローバル化が進んだことにより、海外出張に行かれる方も髄膜炎菌のワクチンを打ちに来られます。でも「会社からお金が出ないから打てない」「費用が高すぎるから打てない」と接種をあきらめて帰る方もいて、複雑な気持ちになることがあります。なぜ私がこんなに髄膜炎菌を気にするかと言うと、過去に悲しい事例を目の当たりにしたことがあるからです。1歳のお子さんが髄膜炎菌性髄膜炎で亡くなってしまったということがあり、調査を行ったところ、亡くなったお子さんと同じ型の髄膜炎菌が、ご家族のお一人から見つかりました。この方は海外へ出張されていたようです。もちろん実際のところはわかりませんが、あちらで保菌して、帰国後に家族内で感染したのかもしれません。そういう事例を見ているので、ワクチンで防げるものなら防ぎたい、という気持ちがあるんです。病原体というのはヒトにくっついて移動しますから、旅行や出張に行けば、その土地の感染症を持って帰ってきてしまう危険がある。ワクチンを打つか打たないかというのはリスクマネジメントで、「めったにないことにどれぐらいお金をかけて備えるか」という話になるのですが、自分の健康とともに、周りの人の健康も考えないといけないというのが難しいところです。参考文献(*1)髄膜炎菌性髄膜炎とは - 国立感染症研究所(NIID)(*2)髄膜炎菌性髄膜炎(ファクトシート) - 厚生労働省検疫所(FORTH)(*3)感染症についての情報「髄膜炎菌性髄膜炎」 - 厚生労働省検疫所(FORTH)

谷口 清州

2019.8.1

Open Doctorsは病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介。お医者さんとの間にある情報の差を解消することで、あなたの意思決定を支援します。

produced by
市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会