お医者さんの知恵をみんなの知恵に Open Doctorsお医者さんの知恵をみんなの知恵に Open Doctors

Open Doctorsは病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介。
お医者さんとの間にある情報の差を解消することで、あなたの意思決定を支援します。

produced by市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会

監修医師 谷口 清州の写真

国立病院機構三重病院 臨床研究部長

谷口 清州

プロフィール

国立病院機構三重病院 臨床研究部長。国立感染症研究所客員研究員。専門は小児感染症学、感染症疫学で、2003年にはSARSコロナウイルスの世界流行の対策を経験。三重大学医学部小児科学教室、ガーナ国野口記念医学研究所、国立三重病院小児科、国立感染症研究所感染症情報センター、WHO感染症対策部などを経て2013年より現職。

略歴

1984年三重大学医学部卒業後、同大学小児科学教室入局。その後関連病院の小児科勤務を経て、
1996年国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。
2000年世界保健機関(WHO)
2002年国立感染症研究所感染症情報センター室長
2013年より現職。

国立病院機構 三重病院

谷口 清州先生の記事を読む

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】冬に向けてどうなる?流行・収束の見通しは?

これから先、特に冬になると、風邪やインフルエンザなどの感染症が流行します。そのころ、新型コロナの流行はどうなっているのでしょうか?そのなかで、どのような心構えが必要になってくるのでしょうか。国立病院機構三重病院の谷口清州医師に聞きました。コロナ問題は一挙に解決しないコロナが今後どうなるかは誰にもわかりません。少なくとも言えることは、このウイルスはかなり人類に適応しており、共存関係に近づきつつあるということです。今もどこかで無症状の人がウイルスを保持しているわけですから、今後も散発的に患者は発生しますし、もしも人から人への感染が容易な密接した状況であれば、クラスタとなって多くの患者が出るかも知れません。多くの識者が指摘しているように、「冬になったらまた大きく流行する」のは想像に難くありません。インフルエンザも同時に流行するとすれば、症状から診断することが非常に難しくなりますので、地域での診療や院内感染対策に課題が生じます。また、インフルエンザウイルスについては、「気温が高くなると飛沫粒子中のウイルスの安定性が落ちるので、感染伝播効率も落ちると」いう動物実験の報告もありますので、暑くなると少し流行が緩和されるという可能性はあります。しかし、これまでところ熱帯地域でも流行はありますので、正直なところ、どうなるかはわかりません。ハーバード大学では、このような外出自粛を伴うロックダウン状態が断続的に2022年まで続くという論文が発表されました。一挙に解決するというより、今の非日常がだんだん常態化してくると考えたほうがいいと私は思います。「司令塔」はきちんと情報発信を現在、コロナに関する情報は非常に錯綜しています。本当は厚生労働省や国立感染症研究所がオーソリティ(豊富な知識と信頼性)をもって、きちっとワンボイスで情報を伝えていくべきだと思います。それができていないから、いろいろな方がさまざまなことをお話しされ、余計に情報が混乱するのでしょう。健康危機管理でもっとも大切なことは、英語で言うところのCommand & Control System(コマンドアンドコントロールシステム:指揮・統制システム)、すなわち、科学的な基盤に基づいて迅速に明確な対策決定と実行のできる司令塔機能です。今後も日本政府からのしっかりした情報発信が、ますます大切になると思います。そうでなければ、私たちは、今後も情報の信頼性を確認しながら、取捨選択をしなければならなくなってきます。まとめコロナがどうなるかは誰にもわからない。「今の非日常がだんだん常態化してくる」という心構えが必要。本来であれば、コロナの情報は国がしっかり出すべき。我々は情報を鵜呑みにせず、信頼性の評価を。

谷口 清州

2020.6.11

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】検査の基準があいまいな日本では、患者数の増減を比較できないってホント?

5月25日、緊急事態宣言が全面解除されました。これらの判断は、毎日新規に報告される患者数のデータをもとに行われています。しかしながら、これらのデータは信頼できるのでしょうか。国立病院機構三重病院の谷口清州医師に聞きました。患者数のカウント方法を決めるのは「症例定義」まず、「患者数が増加した」「減少した」と言うためには、一貫した方法で患者数をカウントしなければなりません。今回のコロナウイルス感染症は、症状の幅が非常に広くて、無症状の方から、風邪症状程度、軽症の肺炎から、人工呼吸が必要な重症肺炎まで様々です。故に、どの範囲の患者さんをカウントするかをきちんと決めて、継続して同じ方法でカウントしていないと比較が出来ないことはあきらかです。どのような人を調査・検査の対象にするか決めるのは「症例定義」です。症例定義とは、「このような症状があったら、病院は患者が新型コロナ感染症であることを疑って、PCR検査を含む必要な対応をしなければならない」という基準のことです。基準を満たした人に対して検査を行うことによって、患者を確定して、カウントしていくのです。シンガポール、台湾、韓国、ドイツなどでは、国が症例定義をしっかりつくっています。重要なのは検査数よりもブレない症例定義と監視体制の強化日本の場合、2020年2月末の時点ではおそらく比較的重症の肺炎がありそうな患者だけを検査していましたが、ここのところ徐々に軽い症例でも検査するようになってきています。症例定義がブレて、広がっているのです。そうすれば、1日の患者数が増えるのは当然です。こういう場合、患者数を減らすための施策を行い、実際に患者数が減っていたとしても、軽い症例をカウントする分だけ患者数は増えるかも知れません。患者数の比較を行おうとすれば、2月末と現在が同じ症例定義でカウントされる必要があるのです。また、ある症状を呈する症例について、東京では検査を断られるのに、ほかの地域では検査してもらうということもあるようです。検査対象となる症例定義が一貫していないと、異なる都道府県間で患者数を比較することも不可能です。途中でブレてしまった日本の症例定義「日本は患者数が少なくて、どこそこの国は多い」という議論や「日本の患者数が少ないのはPCR検査の数が少ないからだ」という言い方もあります。しかし、国によって症例定義が異なれば比較は出来ませんし、症例定義が一定でないと、患者数の増減についても何も言うことはできません。現にほかの国と日本ではPCR検査の対象となる症例は異なっており、そうなれば、検査数や報告される患者数も違ってきます。今やるべきことは、日本国内において、ブレない症例定義をもって持続的に症例数を把握し、患者数が減ったか増えたかを確実に評価することです。幸運にも、今のところ患者数は以前に比べて減少しています。これはみなさんが非常な努力をして自粛生活をしていただいた成果だと思います。しかしながら、終息したわけではなく、今後も散発例やクラスタは起こると思います。大事なことは、患者数が非常に多くなって、再び緊急事態宣言をしなければならないような状況にしないことです。もう一回1カ月間の自粛生活を余儀なくされれば、日本の社会はより大きな影響を受けるでしょう。そうならないためには、新しい感染者が出たら早期に探知して、即座に感染拡大を防止する措置をとることです。火が出たとしても、ボヤの状態で消し止めて、決して大火事にならないようにすることです。これを実現するには、今後は一貫した基準で患者数の増減を評価できるように、かつ早期に新たな患者を発見できるように、明確な症例定義を作成することが必要です。それだけにとどまらず、2重、3重のサーベイランス(※1)体制を敷く必要があります。(※1)サーベイランス:感染症などの病気の発生・流行状況を監視すること。また、それにより、対策方針を決めるためのデータを収集・分析すること。具体的な話をすると、まず第1段階では明瞭な症例定義を作成し、可能な限り早く患者を発見して対策を行います。そうすれば拡大を最小限に抑えられるのですが、この第1段階で患者を見逃した際には、その患者は他のヒトに感染させてクラスタを形成するかも知れません。そこで、第2段階としては、医療機関や施設などで症例定義を満たす患者さんが2例以上出た場合に即座に検査を行います。クラスタが形成されたこの段階で見逃せば、これは地域に広がります。もしそうなってしまった場合に備えて、第3段階として、地域における上気道症状患者の増加を把握して対応に結びつけるのです。このように、可能な限り感染者を早期に見つけて対策を行うために、2重、3重の監視体制を敷いて対策を講じる。そして、死亡者数については超過死亡(※2)で評価するなど、戦略的に流行状況を把握していかないと、流行状況に合わせた対策を取るのは難しくなると思われます。(※2)超過死亡:予測される死亡者数と比較した場合の、増加分の死亡者数。要するに、今回の新型コロナ流行による(想定の)死者数のこと。統計学的な手法で「新型コロナが流行していなかった場合の死亡者数」を出し、実際の死亡者数と比較することにより導き出す。まとめどのような症状の人を調査・検査の対象とするか定めた基準を「症例定義」という。症例定義が一貫していなければ、患者数の増減について議論はできない。今後は、明確で一貫した症例定義を使って流行状況を把握し、2重、3重の監視体制を敷くことが大切になってくる。

谷口 清州

2020.6.9

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】ワクチンはいつできる?治療薬はいつ見つかる?

現在、世界中の製薬会社などで開発されているワクチンは120種類以上と報告されています。(5月22日時点)すでに治験を行っているワクチンもあります。しかし、ワクチンや治療薬の開発は容易ではありません。感染症の専門家でもある国立病院機構三重病院の谷口清州医師が解説します。ワクチン開発は一筋縄ではいかない難しいものワクチンは感染する前の健康な人に打つものですから、安全性を確保しなければいけませんし、安全性を確保するには大勢の人で試さなければいけません。たとえばRSウイルスというウイルスは、これまでもワクチン開発が行われてきましたが、まだ有効なワクチンは開発されていません。過去には開発されたワクチンを接種した人がかえって重症化したケースもあります。デングウイルスのワクチンは完成しましたが、デングウイルスは2回目に感染すると重症化する傾向があり、ワクチンを接種することで1回目の感染となり、その後2回目に自然に感染したときに重症化してしまったのです。これが免疫の難しいところで、ただ免疫ができればいいというわけではないし、できた免疫が本当に感染防御に働くのかわからない。何の意味もなさないこともあるし、かえって害をなすこともあります。ワクチンの完成までには、非常に早くて1年はかかると思います。ワクチンの開発は決して簡単なことではありませんが、現在全世界が努力をしているところですので、それまでは自分たちのできることをやって、待つしかありません。アビガンは本当に効くのか?レムデシビルは?新型コロナウイルス感染症患者に投与される薬としてアビガン(一般名:ファビピラビル、抗インフルエンザウイルス薬)が注目を集めています。しかし、現状ではアビガンのような副作用が大きな薬は簡単には使えませんので、重症例や重症になりそうな患者さんに限定して使用しています。そもそもアビガンをはじめとする薬の効果については、ランダム化比較試験を行わないと正しく証明できません。これは新型コロナウイルスに罹患した患者さんを無作為に2つのグループに分けて、それぞれに薬がなんであるかを伝えないで、アビガンとアビガンではない薬をそれぞれ投与し、その効果を比較する試験のことです。現在は介入研究(研究者が対象者に対して研究を意図した介入を加える)ではなく観察研究(診療や経過の成り行きをありのままに観察する)なので、アビガンを投与した人とアビガンを投与していない人をきっちり比較できていません。アメリカではレムデシビル(もともとはエボラ出血熱を治療するために作られていた抗ウイルス薬)という薬を投与したところ、翌日に効果が現れたという論文が出て注目を集めました。最近になってランダム化比較試験が行われ、レムデシビルとプラシーボ(偽薬)の効果に有意な差が認められて、新型コロナウイルス感染症に対する薬物治療として承認されました。これまで、アビガンもレムデシビルもコロナにどれだけ効くか十分にはわかっておらず、新型コロナウイルスに対しての理論的な効果と過去のSARSやMERSへの投与経験から、効果が期待されて使用されてきました。もちろんこれまではいずれも正式には承認されていませんでしたが、重症化して命にかかわる状況で他に治療法がないことから、ご本人やご家族に同意をとってこれらの薬剤を投与していました。アビガンは現在も臨床研究が進行中ですが、他にも複数の研究が行われていますので、今後の研究の進展が待たれます。まとめワクチン開発は容易ではない。早くても1年はかかりそう。治療薬を見つけることも容易ではない。「治療薬があるから大丈夫」とは思わず、感染しないことを考えたほうがよい。参考サイトランダム化比較試験(RCT)- 『健康を決める力』用語集

谷口 清州

2020.5.28

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】2009年流行の新型インフルみたいに「軽症なら入院不要」ができないのはどうして?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、軽症の場合であっても、感染が分かったら必ず隔離されることになっています。2009年に流行した新型インフルエンザは「軽症なら入院しなくてもよい」ということになりましたが、今回の新型コロナと何が異なっていたのでしょうか?感染症の専門家でもある国立病院機構三重病院の谷口清州医師が解説します。新型コロナで「軽症なら入院不要」ができない理由今回の新型コロナウイルスの流行では、患者数の増加に伴い医療現場がひっ迫してくると、コロナで陽性と診断されても軽症ならば自宅療養となるケースがありました。コロナは「指定感染症」に認定された疾患なので、法律的には陽性と診断された患者は入院させなければいけません。ただ、病床のキャパシティが足りなくなった場合に、自宅待機(自宅隔離)という選択肢が生まれています。2009年の新型インフルエンザのときも、最初のうちは軽症でも入院させていましたが、患者数が増加するにつれ、ベッドが足りなくなり、そして同時に軽症例が多いことが判明してきたこともあって、軽症では入院させなくなりました。しかしながら、これは迅速診断キットや抗ウイルス薬が普及している、比較的身近なインフルエンザという疾患だったから、というのが一因です。もっとも大きな理由としては、この時の新型インフルエンザであったA/H1N1pdm09に、過去に流行した季節性インフルエンザであるA/H1N1(ソ連型)ウイルスと共通の抗原性があったためで、日本人の多くの人が基礎免疫を有していたからです。平たく言うと、私たちは2009年の新型インフルエンザに対峙したとき、すでによく似たインフルエンザウイルスに対する免疫を持っており、「応用が利く状態であった」ということ。こういうわけで、入院隔離して感染の拡大を防止する必要性に乏しかったのです。しかし、今回の新型コロナに関しては、私たちは共通の抗原性を持つウイルスの基礎免疫を持っていません。しかし、軽症例が多いということは分かってきているので、コロナも今後まん延し、多くの日本人が免疫を持つようになれば、入院措置が必要である「二類感染症」(鳥インフルエンザ、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルスなど)ではなく、普通の感染症に分類されるかもしれません。そうすれば、現在の季節性インフルエンザと同じような対応になっていくでしょう。ただ、今はまだ日本人の何十%もコロナにかかっている状況ではないので、まだその時期ではありません。「軽症であっても感染したら入院必須」は今後も続く?入院には治療と隔離という二つの意味があります。重症なら治療のための入院が必要ですが、軽症であっても周囲への感染を防ぐために隔離しなければいけないので、入院やホテルでの宿泊療養が必要になるのです。今回、病院以外の施設も実際に運用されましたので、かならず来ると言われている第2波、第3波の時は、そのような施設での療養になるでしょう。もちろん、このような施設まで一杯になってくれば、軽症の人は自宅待機(自宅隔離)とせざるを得ない状況になるでしょう。まとめ2009年に流行した新型インフルエンザが「軽症なら入院不要」になったのは、日本人の多くによく似たウイルスへの基礎免疫があったから。今後多くの人が新型コロナの免疫を持つようになれば、普通のインフルエンザのような扱いになるかもしれないが、今はまだその時期ではない。入院には治療と隔離という意味がある。今後はホテルなどの施設で入院療養が増える可能性も。

谷口 清州

2020.5.27

【谷口先生に聞く新型コロナの疑問】実は「軽症」=「症状が軽い」じゃなかった!医師と患者の「軽症」をめぐる誤解とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)になっても、軽症ならば静養していれば治ると言われていますが、実際にはかなり苦しい思いをしている人もいるようです。「軽症なのになぜ?」と思う人もいるかもしれません。これは「軽症」という言葉についての誤解があるからです。感染症の専門家でもある国立病院機構三重病院の谷口清州医師が解説します。医学的な「軽症」は「症状が軽い」という意味ではないみなさんがイメージする「軽症」と、医学の世界で「重症」と区別するときに用いる「軽症」は若干意味合いが異なります。新型コロナウイルス感染症に関して、医学の世界での「軽症」とは「肺炎の症状がなく、呼吸管理・酸素投与の必要がない」という意味であって、「症状が軽い」という意味ではありません。もともと、これら軽症とか重症というのは患者の生命予後(今後生命が維持できるかどうかの予測)または機能予後(病気になった部位の機能が維持できるかどうかの予測)を示す概念です。だから、「軽症だから体は辛くない」というのは誤解です。軽症でも熱が39℃まで上がれば体が辛くなるのは当然です。たとえば、インフルエンザにかかると、全身の倦怠感も強く、非常に体が辛くなります。しかし、肺炎を起こしているわけでもなく、数日経てば治りますから「軽症」とされます。医療現場では「(非常に苦しくても)現時点で命に別状はない」という意味で「軽症」という表現が使われています。ただ、コロナの場合は、感染を広めるリスクがあるので、治療とは別に公衆衛生の観点から、隔離するために軽症でも入院することになります。もちろん発症時は軽症でも、その後重症化するリスクもあるので注意が必要です。まとめ医学的な「軽症」とは「命に別状はない」という意味。症状が軽いとは限らない。コロナの場合は感染を広めないため、重症化に備えるために、軽症であっても医療機関への入院や宿泊施設での療養などの隔離措置がとられることになる。

谷口 清州

2020.5.26

Open Doctorsは病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介。お医者さんとの間にある情報の差を解消することで、あなたの意思決定を支援します。

produced by
市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会