胃がん
最終更新日:2018.7.18
胃がんとは

・ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染している
・塩分の多い食事を好む
・野菜や果物をあまり食べない
・喫煙の習慣がある
近年は、胃カメラや造影検査などの検査技術が高くなったことで、がんを早期に発見できるようになった。
内視鏡での治療や手術の技術も向上しており、手術可能と診断された胃がんの治療については、大きく進歩してきたと言えるだろう。
その一方で、手術ができない病状になってしまうと、その治療成績は良くないと言わざるをえない。
胃がん治療は、他のがん治療と異なり飲み薬の抗がん剤を使うことが多く、通院での抗がん剤治療が可能である。
状態のよいときには、治療をしながらでも自分らしい生活を送れるようになってきている。
胃がんの統計データ
・50代以降の患者が多い。・すべてのがんの中で、病気にかかった患者の数は第1位。死亡数は第3位である。
・手術や内視鏡治療ができる胃がんの場合、治療成績は他のがんと同程度である。だが、手術ができない、または再発・転移した胃がんの生存期間は1年前後であり、まだまだよいとは言えないのが現状である。
・肝臓・肺・腹膜などの臓器に転移しやすい。
胃がんの症状
・体重の減少・食欲の減退
・だるさ
・吐き気
・腹部のむかつき
胃がんの検査
(1)血液検査(2)エックス線(レントゲン)検査
(3)CT(コンピューター断層撮影装置)
(4)造影検査
(5)胃カメラ(内視鏡検査)
(6)がん遺伝子(HER2)検査
検査の説明
がんの進行度や治療の効果を見るために、画像検査 (CT・造影検査) や上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査を行うとともに、腫瘍マーカーを測定する。また、どの抗がん剤を使うか決める際には、 がん遺伝子(HER2) が発現しているかどうかを調べる。
胃がんの治療
(1)内視鏡的治療(2)手術
(3)抗がん剤治療
治療の説明
ほかの臓器へ転移しているか否かによって治療法が変わってくる。(1)ほかの臓器に転移していないとき
がんが小さくリンパ転移がない場合は、胃カメラでがんを取り除くことも可能だが、ある程度の大きさになっていたり、リンパ節に転移したりしている場合は手術が必要である。
最近は開腹せず、腹腔(ふくくう)鏡手術ができる場合もあり、昔と比べて体へのダメージが少なくなってきている。
ステージII、IIIの場合は、手術後に飲み薬の抗がん剤による治療を1年ほど行う場合が多い。その後は経過観察を行い、再発すればほかの抗がん剤治療に進むことになる。
(2)ほかの臓器に転移しているとき(=ステージIV「手術ができないがん」)
飲み薬の抗がん剤による抗がん剤治療が主体となるため、薬が飲める間は外来での治療が可能である。点滴治療が必要なときだけ通院すればよいので、それ以外は自由に生活できる。
しかし、転移が進むと腹部に水がたまったり、食べ物が通りにくくなったりして、外来での治療は難しくなる。
その場合、点滴の抗がん剤を使った治療を基本として、必要に応じて痛みを抑える治療を取り入れるなど、がんの進行による苦痛をコントロールしていく必要がある。
食べ物を通りやすくするために、バイパス路を作る手術をすることもある。
治療の期間
胃カメラでの治療を行った場合、すべてのがんを切除できていれば、その後は定期的な外来通院のみとなる。手術をした場合は、続けて飲み薬による抗がん剤治療を1年間行う。その後再発がなければ、外来通院のみとなる。
抗がん剤治療は、3週間や5週間など、それぞれの治療で周期が設定されている。一般的な治療では、その周期を1単位として、経過を見ながら数回繰り返すことになる。
病気による合併症
ほかの臓器への転移により、腹部に水がたまって苦しくなる。胃腸が狭くなって食べ物がうまく通らなくなったり、動きが悪くなったりする。治療による合併症
手術後の副作用として、貧血が挙げられる。赤血球が全身に酸素を運ぶには鉄分やビタミンの一部が必要であり、胃はそれらの吸収を助ける働きをしている。だが、手術により胃を切除すると、鉄分などの吸収がうまくいかず、やがて貧血になることがある。
また、手術で胃を取り除いたことにより、食べ物が胃にたまらず一気に腸に流れ、ダンピング症候群という合併症を起こす場合がある。
症状が出るタイミングによって、早期ダンピングと遅発性ダンピングの2つに分けられる。早期ダンピングでは、食後に腸がグルグルと過剰に動き、下痢になりやすい。
だるくて力が入らなかったり、冷や汗が出たりすることもある。遅発性ダンピングでは、食後2~3時間経過してから、強い空腹や眠気を感じることがある。
抗がん剤治療による副作用としては、脱毛・口内炎・消化器症状(下痢や便秘)・だるさ・吐き気・しびれ・不整脈などが起こることがある。
副作用の程度は、用いる薬剤や体質などによっても変わってくる。
合併症を防ぐために
貧血の症状は、術後すぐではなく2年以上経過してから出てくることが多いので、定期的に受診して血液検査を行う。ダンピング症候群を防ぐには、食事の回数を1日5~6回に分け、少量ずつゆっくり食べるとよい。糖質と水分を減らすのも効果的である。
抗がん剤治療の副作用については、その程度によっては薬の量を変えたり、用いる薬剤を変えたりする必要も出てくるため、変調・不調があれば、医師に必ず伝えるようにする。
胃がんの治療後
内視鏡や手術、その後の飲み薬による抗がん剤治療が一通り終わったあとは、再発がなければいったん治療終了となる。しかし、胃がんは他の臓器に転移してしまうと、治すのが難しくなってしまう病気である。
再発や転移を早期に発見するためにも、予定の外来受診日には必ず診察を受けるようにする。
病気の進行を防ぐために
飲み薬の抗がん剤を飲めなくなったら、受診予定日を待たず即座に病院へ行ったほうがよい。副作用の程度については本人が最もよく把握しているので、小さな変化であっても医師に報告し、治療方針を柔軟に検討していくことが大切である。
生活の質
飲み薬による抗がん剤治療を行っている間は、入院の必要がないことが多く、病気になる前の生活をある程度保つことができることも多い。しかし、病気が進行し腹部全体に広がると、あっという間に全身状態が悪くなることもあり、生活の質(QOL)も低下してしまうのが現状である。
その他
胃がんになっても、飲み薬での治療を続けている間は自由に動けることも多い。また、完全に治せないとしても、症状を抑える治療は日々進歩している。
治療中も自分のやりたいことをかなえる方法がないかどうか、主治医と一緒に考えていくことができる病気である。
参考文献
・MSDマニュアル・ハリソン内科学第5版
・国立がん研究センターがん情報サービス
・胃癌治療ガイドライン第4版