肺炎
最終更新日:2018.5.28
基本情報
症例集
肺炎とは

高齢者においては、ものを飲み込む力が弱くなることにより、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクも高くなる。
肺炎にかかってしまったときには、単なる感染症と思わずに、体をしっかり休めて静養することが必要である。
肺炎の統計データ
・日本人の死因の約10%(第3位)を占める疾患である。・高齢になるほど患者数は多くなる傾向にある。
肺炎の症状
熱、咳、痰、だるさ、脱水症状など。肺炎の検査
(1)問診・診察(2)体温・血圧などの測定
(3)血液検査・尿検査・培養検査
(4)画像検査
検査の説明
(1)問診・診察患者本人の症状についてはもちろん、周りに同じような症状の人がいないか、他の病気の治療で感染症にかかりやすくなる薬を使っていないかなどについても聞く。
(2)体温・血圧などの測定
どれくらいの重症度なのかを探るために行う。
(3)血液検査・尿検査・培養検査
血液検査では、炎症反応を示す数値が上がっていないか、脱水状態になっていないかなどを調べる。
そのほか、肺炎球菌・レジオネラ・マイコプラズマという3つの病原菌に関しては、尿とのどの検査を行えば迅速に結果が得られるため、同時に行われることも多い。
症状が重いときには痰を培養して、体に細菌やカビがすみついていないかどうかを調べることもある。
(4)画像検査
まずはエックス線(レントゲン)撮影を行い、肺にあやしい影があったときにはCT(コンピューター断層撮影装置)検査を行い、より詳しく肺の状態を調べる。
肺炎の治療
(1)抗生物質による治療(2)安静・水分補給
治療の説明
高齢で全身状態が思わしくないときや、脱水で点滴が必要なときなど、重症の場合は入院で治療することになる。(1)抗生物質による治療
治療を開始する際には、ほとんどの場合原因菌がわかっていないので、肺炎の原因として頻度の高いものに効く抗生物質を選ぶことが多い。
ただし、ほかの病気の治療で免疫が弱まっている場合は例外である。
普段はかからないような細菌やカビ・ウイルスに感染し重症化してしまうことがあるので、より多くの病原菌に幅広く効く抗生物質から始めることになる。
治療の過程で、採血検査の結果が思わしくないときや、原因菌が特定できたときには、抗生物質を変更する。
(2)安静・水分補給
肺炎にかかったときは、病原菌と闘うのに体力が使われ、全身のだるさ・脱水症状などで苦しむこともある。
そのようなときは無理をせずに、水分をとって安静にすることが必要である。
入院で肺炎の治療をする場合にも、抗生物質の点滴だけでなく、水分補給のための点滴を入れることがほとんどである。
治療の期間
多くの場合、1~2週間で治療できる。ほかの病気により免疫が弱っているときには、治療期間が長くなることもある。
病気による合併症
肺炎が悪化すると呼吸がうまくできなくなり、体に酸素が取り込めなくなる。自分の力で呼吸ができないときには人工呼吸器を使い、呼吸を補助する必要がある。
治療による合併症
抗生剤により、肝臓や腎臓の機能が低下することがある。合併症を防ぐために
肝臓・腎臓の機能や状態に合わせて、抗生物質の量を調節しながら治療を行う。ただし、機能低下の程度が甚だしくなければ、肺炎の治療を優先させることもある。特に入院で治療が必要な病状のときには定期的に採血検査を行い、治療効果とのバランスを見ながら治療を進める必要がある。
肺炎の治療後
多くの場合、治療が終われば以前と変わらない生活を送ることができるが、重症の肺炎だった場合は、治療後の変化の痕は画像上残ることもあり、肺の機能が落ちてしまうこともある。また、ものを飲み込む力が弱まってしまい、口から食事がとれないと判断された場合には、胃ろうを作ってそこから栄養を流すこともある。
病気の進行を防ぐために
原因によって予防法はさまざまだが、基本的には手洗い・うがいのような、感染予防となる習慣を徹底することである。加えて、ほかの病気の治療により免疫が弱まっている場合は、感染症予防の薬を飲むこともある。
高齢者は飲み込む力が弱くなり、食べ物や口の中の細菌を誤嚥しやすいので、予防のために食事を細かくきざんだり、とろみをつけたりするとよい。
生活の質
多くの場合は、治療前とほぼ同じ生活を送れるようになる。しかし、誤嚥が原因の場合には食事の形態を工夫したり、胃ろうを作ったりしなければならないときもある。これらは特に高齢者に多く見られる。
その他
肺炎は、適切な治療により改善が見込める病気である一方、重症化すると最悪の場合死に至る怖い病気でもある。単なる感染症とあなどることなく、治療としっかり向き合うことが大切である。参考文献
・MSDマニュアル・ハリソン内科学第5版
・平成28年人口動態統計
・平成26年患者調査