どうみゃくこうか動脈硬化
最終更新日:2020.4.30


動脈硬化とは、血管が硬く・狭くなることであり、血管の壁が硬くなって柔軟性が失われたり血管が狭くなった状態を指します。
命にかかわる病気の背後には動脈硬化が隠れていることもあります。動脈硬化が脳で起これば脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞を引き起こします。
動脈硬化の原因はさまざまですが、生まれたときから動脈硬化は始まっています。動脈硬化の進行を遅らせることが大切なのです。
動脈硬化は「パッと見」ではわかりません。初期は自覚症状が全くない人も多く、知らない間に進行して全身の血管が劣化していきます。そのため、健康診断で動脈硬化のリスクを調べる必要があります。問診・血圧測定・血液検査などを受ければ、動脈硬化を進行させる要因がないかどうか知ることができますし、動脈硬化の進行度合いを調べるために詳しい検査を受けることもできます。
治療の基本は食事療法と運動療法。治療の目標は動脈硬化の進行を遅らせ、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を防ぐことです。
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動脈硬化とは

動脈硬化とは、動脈の壁にコレステロールなどが沈着し、壁が厚くなることで血管が細くなったり、硬くなったりして血液の流れが悪くなる状態のことを言います。
どのような人も加齢とともに自然と動脈硬化は進みます。しかし、動脈硬化によって血管が細くなることが様々な病気の原因となるため、過度の動脈硬化は予防・治療することが重要です。
動脈硬化を進行させるリスクは様々で、加齢や性別(男性の方が進行しやすい)、遺伝など、本人の意思ではコントロールできないものもあります。しかし、動脈硬化から
高血圧や
脂質異常症、
糖尿病などの病気へ進行することを予防したり、治療したりすることは十分可能です。喫煙、肥満、運動不足は動脈硬化の進行リスクとなるため、生活習慣を改善することも大切です。
最初に受診する診療科
・かかりつけ医や、近くの内科を受診してください。動脈硬化の症状
動脈硬化自体に症状はほとんどありません。
症状がないうちに病気が進行すると、脳梗塞・心筋梗塞・狭心症・大動脈瘤・大動脈解離などの病気の原因となり、それらの病気になると、様々な症状を引き起こします。動脈硬化の検査
(1)医師による問診
動脈硬化のリスクがあるかどうかを問診します。
具体的には、生活習慣や喫煙の有無の聴取、身長、体重、血圧の測定などを行います。
(2)血液検査
空腹時血糖値、HBA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロールなどの値を調べます。異常があれば動脈硬化のリスクとなります。
(3)必要に応じて種々の検査を行います。
・頸動脈エコー検査
・ABI検査(足首と上腕の血圧の比を調べ、動脈の狭さや詰まり具合を評価する検査)
・心電図検査
・冠動脈CT
など動脈硬化の治療
動脈硬化は加齢とともに進行しますが、不適切な生活習慣によって悪化するため、生活習慣の改善が重要です。
具体的には、運動療法、食事療法、禁煙や、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などに対する薬物治療があります。
(1) 食事療法
理想体重をもとに適正カロリーを計算し、その値を目安にします。理想体重は身長(m) × 身長(m) × 22 で計算できます。計算した結果に、男性は30kcal、女性は25kcalをかけた値が適正カロリーの目安となります。ただし、この値は個人の活動量などによっても異なるため、かかりつけの医師や看護師、栄養士などに自分の適正カロリーを相談しましょう。
計算の例として、身長170cm = 1.7mの男性の場合、適正体重は1.7 × 1.7 × 22 ≒ 63.6 (kg) となり、適正カロリーは 63.6 × 30 = 1,908 (kcal) となります。
また、病状に応じて、塩分制限や蛋白制限などを行うこともあります。
(2)運動療法
1日20~30分程度のウォーキングやラジオ体操など、自分に合った運動を取り入れます。
ただし、動脈硬化に伴う狭心症や、加齢による関節症など、運動によって悪化しかねない病気もあるため、主治医と相談しながら無理なく続けられるものを選択しましょう。
(3)禁煙
喫煙は動脈硬化に限らず様々な疾患の原因となるので、禁煙は必ず行いましょう。
タバコに含まれるニコチンには強い依存性があるため、自分の力だけでは禁煙できないこともあります。その場合、禁煙外来などを利用する方法もありますので、主治医に相談してください。
(4)薬物療法
上記の生活習慣の改善を続けても糖尿病や高血圧症、脂質異常症が改善しない場合は、薬物療法を併用します。動脈硬化の治療と生活
生活の質の変化
動脈硬化自体では大きな症状が起こることはありませんが、脳梗塞になると片麻痺や言語障害、嚥下障害(うまく飲み込めなくなる)、心筋梗塞や狭心症になれば運動時の息切れ、閉塞性動脈硬化症になれば足のしびれや痛み、さらに足の切断に至ることもあります。治療に要する期間
食事療法や運動療法、禁煙はずっと続けることが望ましいです。
薬物療法は、それぞれの病気が改善すれば減量、中止することができます。治療中に気をつけたいこと
最も大切なことは、理想的な生活習慣を保つことです。
また、薬物療法を行う際には医師の処方通りに正しく服用することが大切です。病気の進行を防ぐために
動脈硬化によって起こる病気は、生活習慣の改善で発症確率を下げることができます。
動脈硬化自体に症状がないからと甘く見ることなく、生活習慣を改善することが重要です。
また、月に1回程度、かかりつけ医の外来を受診して、継続的に治療や指導を受けましょう。その他
・検診を受けた人の20~30%に脂肪肝が発見されると言われています。最近では特に若年層の増加が問題になっています。
・肥満、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧など、メタボリックシンドロームと共通する背景が多いです。合併症
脳梗塞
脳や首の動脈硬化により発症する可能性があります。
突然の半身麻痺やろれつが回らない、ふらつくなどの症状が起こります。命を落とすこともあり、また一命を取り留めても麻痺などの後遺症が生じることが多いです。虚血性心疾患(急性心筋梗塞、狭心症など)
心臓に栄養を届ける冠動脈が動脈硬化を起こすことで発症します。
急性心筋梗塞は突然の胸痛から死に至ることもある病気です。狭心症は運動時の胸痛や息切れなどの症状が出ます。大動脈瘤・大動脈解離
動脈硬化による動脈の壁の脆弱化によって動脈にこぶ(大動脈瘤)ができたり、動脈の壁が破れたり(大動脈解離)する病気です。
大動脈瘤の破裂や大動脈解離は突然の背部痛として発症し、命を落とすこともあります。閉塞性動脈硬化症
太もも(大腿部)からつま先までの血管の動脈硬化が進んだ状態のことをいいます。
歩行時に足の痛みや疲労感が現れる病気で、放置すると足の指が壊死し、失われてしまうこともあります。参考文献
・動脈硬化 - 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
・アテローム性動脈硬化症 - MSDマニュアルプロフェッショナル版あなたの家族や友人にもこの情報を伝えませんか?
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