痛風
最終更新日:2020.3.2







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痛風(高尿酸血症)とは

この病気は、血液中の尿酸の濃度が上がると起こりやすくなるのだが、この尿酸というのは、ビールなどに含まれるプリン体という物質から作られており、多すぎなければ人体にとって特に悪いものではない。しかし、尿酸値が高くなりすぎると、溶けきれなくなった尿酸が関節内で結晶化してしまう。すると、体が関節の中にたまった尿酸結晶を異物と判断し、異物を排除しようとして炎症反応が起こる。この状態を痛風発作といって、関節が腫れ、歩けないほどの激痛が生じる。また、尿酸の高い状態が続くと腎臓を悪くしてしまうので、腎臓の治療も必要になる。
尿酸の濃度が高くなる原因としては、生まれつき尿酸を排出しにくい体質であることや、過食・大量の飲酒・肥満などが挙げられる。生活習慣の改善が必要な、生活習慣病の一つである。
痛風の統計データ
・中年以降の男性に多い。その男女比は20:1と圧倒的である。・痛風で通院している患者は全国に100万人近くいる。
・男性の約25%が痛風の前段階である高尿酸血症(尿酸値が高い状態)であると報告されている。
痛風の症状
関節(足の親指の付け根であることが多い)が腫れて、歩けないほど痛くなる。症状は強くなったり弱くなったりで、一定ではない。
痛風の検査
(1)血液検査(2)画像検査
(3)関節液採取
検査の説明
(1)血液検査尿酸値が基準より高くなっていないか、痛風が進行して腎臓の機能が低下していないかなどを確認する。
(2)画像検査
以前は、ほかの病気の可能性を除外するために、エックス線(レントゲン)撮影を行うことが多かったが、最近では尿酸がたまっている関節が光るという、特殊なCT(コンピューター断層撮影装置)検査も行われるようになってきている。
(3)関節液採取
炎症が起きて腫れている関節に針を刺して液を抜き、尿酸結晶がたまっていないかを調べるための検査を行う。
痛風の治療
(1)生活習慣の改善(2)薬による治療
治療の説明
(1)生活習慣の改善大きく分けて、食事療法、飲酒制限、運動療法の3つがある。
食事療法では、暴飲暴食をやめ、プリン体を多く含む食べ物(魚の干物・動物の内臓・ビールなど)を食べ過ぎないようにする。
高尿酸血症を悪化させる食べ物(炭水化物・肉・魚介類・ショ糖・果糖など)を食べる量を減らすことも重要である。
一方で、尿酸を尿に溶けやすくするために、水分や乳製品は多めにとるようにする。
飲酒制限では、お酒を飲む量を減らすことで、尿酸の排出がスムーズになるようにする。
運動療法では、週3回程度、ウォーキングなどの有酸素運動を継続的に行うことが大事である。
(2)薬による治療
痛風発作が起こりそうなとき、痛風発作が起きている最中、痛風発作が起きていないときで、それぞれ治療法が異なる。
痛風発作が起こりそうなときには、炎症が起こるのを防ぐ働きのあるコルヒチンという薬を服用して、発作を未然に防ぐ。
痛風発作が起きているときには、一時的に痛み止めの薬を使う。
痛風発作が起きていないときには、生活習慣の改善によって尿酸の濃度を下げるが、それでも下がりきらない場合には、プリン体から尿酸が作られることを防ぐ薬(尿酸生成抑制薬)や、尿からの尿酸の排出を促す薬(尿酸排せつ促進薬)を使うことになる。
治療の期間
発作は1週間ほどで治まることがほとんどである。発作が起こっている1週間の間は、痛み止めを服用することになる。そのあとは日々の生活習慣を改めたり、場合により薬を使って尿酸の濃度をコントロールしたりすることが必要になるので、一生付き合っていく必要がある。
病気による合併症
痛風腎といって、腎臓に尿酸の結晶がたまることで、腎機能が低下することがある。また、尿酸の結晶によって尿路結石ができることもある。
治療による合併症
尿酸値を下げる薬の副作用で、まれに腹痛が起こることがある。痛み止めの薬で、胃炎になることもある。
合併症を防ぐために
痛みが治まる期間が必ずあるが、そのときに油断して飲み過ぎたり食べ過ぎたりしないこと。日ごろから暴飲暴食を避け、運動習慣を持つことが合併症予防につながる。
痛み止めの薬は、処方される際に「痛いときだけ飲むように」と指示されることが多い。
1日に服用してもよいとされる回数を守って、飲み過ぎに気を付ける。
痛風の治療後
痛風発作が治まり、生活習慣の改善や飲み薬による治療で尿酸値を低く保(たも)てるようになったら、その状態を維持することが目標となる。知らぬ間に尿酸値が上がって腎臓の機能を低下させてしまう可能性もあるので、「発作が起こらなくなったらそこで治療終了」というわけではなく、治療の効果が出たあとも生活習慣を悪化させないように心がけていく。
病気の進行を防ぐために
何度も言うように、一番大事なのは生活習慣の改善である。特にお酒が原因となって発作を起こす方が多いので、くれぐれもビールの飲み過ぎには気を付けたい。たまには病院で血液検査を受け、尿酸値や腎機能に異常が出ていないかチェックするのも大事である。
生活の質
痛みが治まれば、発作が起こる前と変わらない生活が送れる。その他
痛風発作は、尿酸の濃度が急激に増えたときだけでなく、減ったときにも起こってしまうことが分かっており、治療中にも痛みが出ることがある。その場合は一時的に痛み止めを使うことになるが、痛みが出たからといって治療が効いていないわけではないので、薬とうまく付き合いながら、気長に治療を続けることが大切である。
参考文献
・MSDマニュアル・ハリソン内科学第5版
・2010年国民生活基礎調査
・高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版