ししついじょうしょう脂質異常症
最終更新日:2020.1.9

脂質異常症は、血液中の脂質が異常値となる状態です。LDL-C(通称:悪玉コレステロール)が多い状態、またはHDL-C(通称:善玉コレステロール)が少ない状態、TG(トリグリセリド/通称:中性脂肪)が多い状態(いずれか、複数) を指します。
血中のコレステロールが多いと血管の壁に脂質が沈着し、血管内は狭く、血流も悪くなります。症状はほとんどないにもかかわらず、放置すると動脈硬化が進み、心臓病(心筋梗塞・狭心症)や脳梗塞などの重大な病気につながります。できるだけ早くから治療を行い、動脈硬化の進行を抑えることが大切です。治療は生活習慣の改善・血中のコレステロール値を改善する薬の内服が基本です。
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脂質異常症の症状
異常があっても、自覚症状が出ることはまれです。
しかし、遺伝性の家族性高コレステロール血症で、特に数値が高い場合には、アキレス腱(けん)や肘(ひじ)に脂肪のこぶができたり、角膜(黒目の部分)にコレステロールが沈着して白っぽい輪ができたりすることもあります。受診のめやす
下記のいずれかに当てはまる場合
LDL-C(通称:悪玉コレステロール)が140mg/dL以上 HDL-C(通称:善玉コレステロール)が40/dL未満 TG(トリグリセリド/通称:中性脂肪)が150mg/dL以上上記のいずれかに当てはまり、家族に30~40代で心臓病や脳卒中になった人がいる場合
遺伝的に家族性高コレステロール血症が疑われる場合
診断に必要な検査
まずは血液検査で異常をキャッチ
症状が出にくい病気のため、血液検査によって偶然発見されることがほとんどです。 食事により検査値が変動するため、検査は空腹時に行う必要があります。問診で医師に伝えてほしいこと
診断や治療には下記のような情報が必要です。
いつから脂質異常症を疑っているか 日ごろの食事の内容 運動しているかどうか 家族に脂質異常症の方がいないか 飲酒・喫煙の習慣があるか ほかに治療中の病気はないか 健康診断や人間ドックは受けているか原因疾患を特定するための検査も
脂質異常の原因としてほかの病気が疑われる場合には、追加の検査をすることがあります。治療の基本は生活改善と薬
食生活を見直して適度な運動を
脂肪分や塩分の制限を中心とした食事内容の改善に加え、適度な運動を取り入れることが大切です。詳しい方法については病院の医師・看護師などにおたずねください。肉の脂身・乳製品を控える 減塩魚や大豆・海藻・野菜・果物を多くとる適正体重の維持1日30分以上の有酸素運動 節酒禁煙飲み薬を併用することも
生活習慣の改善だけでは不十分な場合や、心筋梗塞などを発症するリスクが高い場合は、薬の服用が必要になることもあります。
医師が患者さんに合った薬を処方しますが、服薬の回数やタイミングは患者さんの状態に即して変わります。
くれぐれも自己判断で薬をやめたり減らしたりしないでください。関係する病気も一緒に治療します
ほかの病気やその治療薬が原因で脂質異常症になっている場合には、原因となった病気の治療を行うことで、コレステロール値も改善することがあります。脂質異常症が原因でほかの病気になっている場合には、脂質異常症の治療と併せて治療を開始することもあります。その場合、ほかの科と連携して治療することもあります。脂質異常症との付き合い方
病気の「コントロール」が大切
生活習慣の改善や毎日の服薬により病気をコントロールすることで、治療開始前と変わらない生活を送ることができます。治療にはじっくり取り組もう
生活習慣の改善および服薬による治療は短期間で改善することは少ないため、長い目で見てじっくり治療する必要があります。そのためには、家族のサポートも重要です。日々の運動や食事の内容の重要性をみなで共有しましょう。遺伝性の脂質異常症の場合、基本的には生涯を通じて治療が必要です。治療せず放置すると起こること
重大な病気を発症し命の危険も
脂質異常症を放置し、治療せずにいると、動脈硬化が進行し、さまざまな合併症を引き起こします。脂質異常症の主な合併症としては、
・心臓病(心筋梗塞・狭心症)
・脳梗塞
などが挙げられます。脂質異常症そのものによる症状がなかなか出ないため、その間にさまざまな臓器が悪くなっていることがあります。治療を始める前に、ほかの臓器の状態をしっかりと調べておく必要があります。薬の副作用がないかどうか、治療中も定期的に血液検査などを受け、臓器の状態を定期的に調べることが大切です。治療中に守ってほしいこと
定期的な医療機関への通院を
体調に変化があれば、どんな些細なことであっても伝えてください。薬を自己判断でやめないで
薬は毎日決まった時間に飲みましょう。数値が下がったからといって安心し、生活習慣を元に戻したり、薬を飲むのをやめてしまったりすると、再び血中の脂質濃度が高くなり、新たな病気を生み出してしまうことがあります。並行してほかの持病の治療も
脂質異常症に加えて高血圧や糖尿病などの病気があり、心筋梗塞や狭心症のリスクが高い場合には、それらの病気の治療も並行して行うことが大切です。参考文献
・ハリソン内科学 第5版(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
・動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(日本動脈硬化学会編)
・動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンス - 日本心臓財団
・平成28年 人口動態統計
・平成26年 患者調査
・脂質異常症(高脂血症) - MSDマニュアル(家庭版)あなたの家族や友人にもこの情報を伝えませんか?
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