仕事中、右足のくるぶしに激痛。腎臓には尿酸結石
最終更新日:2019.5.15
患者プロフィール
55歳男性。妻と2人暮らし。教師をしており、高校で生物を教えている。部活動が盛んな高校で、顧問として遅くまで高校にいることが多く、労働時間は長め。仕事はやりがいもあり、充実しているが、体力的には少し厳しくなってきたと感じている。
お酒が好きで、ビールは毎日欠かさず飲んでおり、塩辛いつまみもついつい食べ過ぎてしまう。
受診までの経緯
1カ月前、仕事中に突然右足のくるぶしに 激痛が走り、腫れて赤くなった。今まで感じたことのない痛みで、ずっとチクチクするような感じがしていたが、仕事も忙しく病院へ行くことができなかった。1週間くらいして痛みはましになったが、仕事がやや落ち着いてきたので、念のため病院へ行くことにした。
診察・検査
診察では生活習慣について聞かれ、ビールを毎日飲んでいることを伝えると、「くるぶしの痛みは痛風発作の可能性がありますね」と言われた。確認のため尿検査と血液検査をすることになり、結果が出るまで1時間ほど待つことになった。尿検査では、通常はみられないタンパクが尿に出ていて、血液も少し混じっているとのこと。
また血液検査では、尿酸値が8.8mg/dLと高く、またクレアチニンが 1.6mg/dLと高かった。
それぞれの検査結果を総合して、腎臓の機能低下が疑われるという。「腎臓の機能が低下している場合、腎臓の中に石ができていることがあります。血尿も出ているし、念のためにおなかの超音波検査をしてみましょう」と言われ、超音波(エコー)検査を受けたところ、腎臓の腎盂(じんう)という場所に石が見つかった。
診断・治療方針
尿酸値が高いので、診断としては高尿酸血症、1カ月前のくるぶしの痛みはやはり痛風発作(痛風関節炎)だろうとのことだった。プリン体を多く含むビールをよく飲んでいるので、それが大きく影響しているかもしれないと言われた。
治療としては、痛みの発作が起きていないときは尿酸の産生を抑える薬を飲んで、もし発作が起きてしまったら、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という痛み止めの薬を飲むことになった。
また、腎盂に見つかった石は小さいので、石を尿と一緒に外に出すため、水をたくさん飲んで、しばらく様子を見ることになった。医師からは、「1日2L以上を目標に、水を飲んでください」と言われた。
最後に、食事や運動に気をつけて生活するよう念を押され、腎臓の石の様子や尿酸などの値の変化を確認するために、2週間後にまた受診することとなった。
治療の経過
診察を受けてからはビールをやめ、こまめに水を飲むことを心掛けた。夜にお酒を飲むことをやめたことで、朝すっきり目覚められるようになり、心なしか仕事をするのも楽になった気がした。
1週間ほどして、夜、寝ているときに急に左の背中に激痛を感じた。吐き気も伴い、救急車を呼ぶことも考えたが、しばらくすると痛みは消失。翌朝、尿と一緒に黄色の 石が出てきた。
2週間後の診察時にその石を持っていくと、医師が詳しく成分を調べてくれた。結果は、尿酸からできた尿酸結石。痛風の人にはよくみられる結石なのだそうだ。ひとまず石は出てきたので、引き続き尿酸値6.0mg/dL以下を目指して治療を続けることになった。
しばらく薬を飲んでいると、尿酸値は目標値に近くなってきた。ただ、痛みが消えても尿酸値が高い状態が続けばまた痛風発作が起こる可能性があるため、服薬による治療を続けつつ、食事や運動に気をつけた生活を送っている。
その後、発作で足が痛むようなことは起きていない。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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