降圧薬で治療中。家庭血圧で「早朝高血圧」と判明
最終更新日:2018.11.1
患者プロフィール
42歳男性。妻と娘との3人暮らし。仕事はデスクワーク中心で、あまり運動する習慣はない。若いころは筋肉質で痩せている方だったが、30代後半からおなかが出始めて、すっかり太ってしまった。飲み会も多く、お酒もなかなかやめられない。
それでも特に健康に異常はなかったが、2年前ついに会社の定期健診で高血圧を指摘され、病院を受診するよう勧められた。
病院でみてくれた循環器内科の医師には本態性高血圧と診断された。
本態性高血圧とは、高血圧を引き起こすような特定の病気がないのに高血圧になっている状態を指すそうだ。現在は近所の内科クリニックに通いながら、1日1回朝に血圧を下げる薬を飲んでいる。
受診までの経緯
これまでは外来でしか血圧を測ったことがなく、自宅では測っていなかったが、娘に血圧計をプレゼントされたことをきっかけに自宅での測定を始めた。すると、外来ではずっと130/80mHg前後だった血圧が、家で起床後に測定してみると162/96mmHg前後になっていた。ずっと高い値が続くので心配になり、1カ月に1回薬をもらいに通っている内科クリニックの医師に相談した。
診察・検査
不整脈などはないが、脈拍は毎分88回であり、正常範囲内ではあるものの男性としては速めだった。診察室で測定した血圧は128/78mmHgであった。胸の聴診を行ったが、心臓や肺から異常な音はしなかった。足に浮腫(むくみ)なども見当たらなかった。
診断・治療方針
診察では、心臓や肺に異常があるときに聞こえるような音は確認できなかった。また、心臓がうまく働かなくなると足から心臓へ血が戻りにくくなって浮腫が出ることがあるが、そのような症状もなかった。
そのため特に危険な病気が原因で高血圧になっているわけではないと考え、緊急に薬を増やすなどの治療を行うのではなく、家で測る血圧を1日2回(朝・夜)にして、血圧の変動をより詳しく観察する方針となった。
医師からは、もしかしたら早朝に血圧が急上昇してしまう「早朝高血圧」というタイプかもしれないと言われた。
普通の人であっても、起床時には交感神経の働きで血圧が上昇するのだが、それが度を過ぎる(おおむね25mmHg以上)と心臓や血管を悪くすることがあり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクになるのだという。
ひとまず1カ月間血圧を記録してみて、必要であれば薬を増やしたり、薬を飲むタイミングを変えたりすることになった。
朝は起床後1時間以内で、排尿後かつ朝食・服薬前に測定。
夜は就寝直前に測定し、入浴や飲酒の直後は控えるようにと指導を受け、1カ月間血圧を記録し続けた。
治療の経過
1カ月後、記録した血圧表を見ると、夜の血圧は125/80mmHg前後なのに対し、朝の血圧は160/95mmHg前後とかなり高い値を示していた。朝起きたときの血圧を下げられるよう、薬を飲むタイミングを朝から夜に変えることにした。
医師からはできるだけ味付けの濃い食べ物を避けるとともに、一駅分歩くなどして運動習慣を身につけるよう指導を受けている。
相変わらず会社の上司や取引先との食事が多く、どうしても食生活が乱れがちになってしまうが、朝は一駅前で降りて、会社まで20分ほどかけて歩くことにした。また1カ月後に受診し、様子をみてみることになっている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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