細い便に血が付着。ステージIIの診断で人工肛門に
最終更新日:2019.5.16
患者プロフィール
65歳の男性。妻と2人で暮らしている。今までに大きな病気をしたことはない。受診までの経緯
2カ月前から少し便秘気味になり、便が細くなってきた。1週間前からは便に少量の血液が付着するようになり、心配になったため自宅近くの総合病院を受診した。診察・検査
診察室に入り、まずは便に血がついていること、便秘気味で便が細くなってきていることを伝えた。医師に下まぶたの裏をみてもらったが、貧血になっている様子はなさそうだという。医師には「年齢的に大腸がんの可能性もある。一度、大腸カメラを受けてみたほうがいいかもしれません」と言われた。肛門からカメラを入れることには抵抗があったが、「がんの可能性もある」と言われて怖くなり、その日は検査の予約をして帰宅した。
検査の日は2Lの下剤を飲み、腸管をきれいにしてから受診。内視鏡を入れてみると、肛門の縁から5cm奥に、直腸の全周にわたる腫瘍が見つかったため、腫瘍の組織を採取して詳しく調べることになった。
血液検査では、「腫瘍マーカー」とも呼ばれ、胃がんや大腸がんの場合に上昇することがあるCEAという検査値が7.6ng/mLにまで上昇していた。
大腸に造影剤を入れX線撮影を行う注腸造影検査では、直腸の先の部分が狭くなっていることが分かった。
後日、胸部・腹部CT検査を受けたが、リンパ節・肝臓・肺などにがんが転移している様子はみられなかった。
診断・治療方針
診断は大腸がん(直腸がん)であった。がんの進行度分類ではステージIIであり、手術が可能ということであった。しかし、がんが肛門から3cm という近い場所にあるため、腹会陰式直腸切断術 (ふくえいんしきちょくちょうせつだんじゅつ)という手術方式で行うことになった。
この手術では、直腸のがんの部分と肛門の筋肉などを一緒に切除して人工肛門(ストーマ)を作るため、腹部に便をためる袋(パウチ)を装着する必要があるという。肛門から排便することはできなくなり、便は腹部のポケットに流れてたまっていくと説明を受けた。
治療の経過
手術は開腹手術で行われ、4時間を要したが無事に成功。術後は発熱が続き、少し入院期間が延びてしまったが、入院から3週間で退院することができた。
手術を受ける前に、肛門近くには神経や尿管、前立腺などの器官があり、それらを手術で傷つけてしまうと排尿障害や性機能障害が残るかもしれないと説明があった。術後はそれらの障害に不安を感じていたが、特に問題はないようで安心した。
おなかにできたストーマからは、今までのような固まった便が出てくるのかと思ったが、出てくるのは形状の違う少し緑がかったものであり、臭いもそんなに感じない。最初はストーマ装具の交換に手間取ったが、分からないことは看護師に聞くことができたので、退院までには何とか一人で処理できるようになった。退院してからは、何か不都合があればストーマ外来に相談すればよいとのことだった。
今後は、ストーマの自己管理をしながら、がんの再発に注意して定期的に受診することになっている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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