不妊治療を希望したところ、糖尿病と診断された
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
32歳の女性。1年前に結婚し、仕事と家庭を両立。充実した生活を送っている。仕事は経理の事務仕事で、職場には電車で30分かけて通勤している。大学入学時の検診で血糖値の異常を指摘されていたが、普段の生活に支障がないため、特に通院はしていなかった。受診までの経緯
結婚して1年、子どもができず不妊が心配になっていた。夫に相談すると、夫も子どもがほしい意思は同じで、お金は自分がなんとかすると言ってくれた。そこで先月、夫婦で不妊外来を受診。ホルモンの値などを調べる血液検査の結果、血糖値に異常がみられたため、「まずは内科を受診したほうがよい」と言われ、糖尿病のクリニックを紹介された。診察・検査
紹介状を先生に見せると、「血液検査と尿検査をして、その結果を見て診察したほうがいい」と言われたため、先に検査を行った。身長と体重を聞かれ、身長は154cm、体重62kgと答えた。今日の食事について聞かれたが、血液検査をされると思って朝食は食べていなかったので、検査をすぐに行うことができた。
尿検査の結果、糖2+で尿にも糖分が出ていた。血液検査の結果、血糖値は208mg/dL、直近1カ月間の血糖値が高かったかどうかを表すというHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は7.8%と、どちらも高かった。
また、紹介されたクリニックには内科のほかに眼科もあったので眼底検査を行ったところ、眼底に点状の出血が見られると言われた。
診断・治療方針
血糖値もHbA1cも両方高いため、糖尿病だと診断された。眼底の出血は糖尿病の進行による合併症であり糖尿病網膜症と呼ばれる。
妊娠すると、この網膜症の症状が悪くなることが多いという。
また、糖尿病の治療を行わず血糖がコントロールできていない状態で妊娠すると、子どもに先天奇形が起こる可能性が高くなってしまうため、今すぐに不妊治療をすることは勧められないと言われた。そこで不妊治療の前に糖尿病の治療を開始した。
糖尿病の治療には食事療法、運動療法、薬物療法がある。
糖尿病網膜症がある場合は、運動療法はやめておいたほうがよいと言われた。薬物治療についても、急に血糖が下がると糖尿病網膜症が悪化する可能性があり、また胎児への影響についても分かっていない部分が多いため、念のためやめておいたほうがいいという。
そのため、食事療法のみで1カ月頑張ってみることにした。
自分の身長から適切な摂取カロリーを計算してもらうと、1500kcal程度だった。
食べ過ぎには注意し、規則正しく1日3食、バランスよく食事するよう指導された。食事内容を毎食写真に撮り、自分なりに記録した。
1カ月後、再度受診。血液検査の結果、血糖値165mg/dL、HbA1cは7.5%だった。わずかに血糖値は下がっているが、HbA1cの目標値は6.4%未満であるため、インスリン治療も開始することになった。インスリン治療を始めるにあたって、糖尿病という病気について理解し、どのように治療していけばよいのかを知るために、またほかの合併症が出てきていないか検査をするために、1週間入院することになった。
治療の経過
入院中は、毎日何度も血糖値を測定した。自分で針を刺すのはこわかったが、だんだん慣れてきた。徐々にインスリンを自分で注射する練習も始まったが、最初は看護師がついていてくれたので、安心して練習できた。
退院後も、毎日インスリン注射を続けた。3カ月後にはインスリンで血糖コントロールできるようになったため、妊娠の許可がおりた。
次は不妊治療を行うため、不妊外来への通院が本格的に始まった。
妊娠すると、網膜症が悪化したり腎臓の機能が低下したりする可能性があるため、1カ月に1回は内科にも通院している。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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