ふくらはぎに痛み。まぶたには黄色っぽいしこりが
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
37歳の女性。独身の会社員。何事もきっちりやらないと気がすまない性分で、周りからは「マメだね」と言われる。生活習慣も規則正しく、健康には人一倍気を使っている。
受診までの経緯
1年前の職場の健康診断で脂質異常症を指摘されたため、その後は毎日4kmのウォーキングを継続していた。1週前に社内の診療所で血液検査を受けたところ、「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDLコレステロールが245mg/dL(正常値は140mg/dL未満)と、高い値を示していた。この値は1年前の検査から改善していなかったため、その日から脂質異常症のための薬を服用することになった。
3日前からウォーキング中に右ふくらはぎが痛むようになり、心配になって診療所で紹介状をもらい、大きな病院を受診することにした。
診察・検査
身体測定では、身長162cm、体重53kgであった。心臓の音や肺の音に問題はなく、腹部の診察でも異常はなかったが、顔をよく見ると、右のまぶたの上に黄色っぽいしこりのようなものがあった。
また、痛くなっていた右のふくらはぎを手で挟むように持たれると、「痛いっ!」と思わず声が出てしまうほどだった。病院にて再度血液検査を行ったところ、LDLコレステロールは205mg/dLで、依然として高い値であった。
診断・治療方針
ふくらはぎに痛みがあること、まぶたの上のしこり、高いLDLコレステロールの値から、家族性高コレステロール血症という遺伝性の病気の可能性が高いと診断された。この病気には、平均37歳ほどで死亡してしまう重篤なものと、65歳程度まで生存する場合もある比較的軽度のものがあり、今回は検査値の結果から、比較的軽度なほうであろうと言われた。
治療方針としては、今まで通り薬物による治療を継続することになった。右ふくらはぎの痛みについては、高コレステロール血症によって足の動脈硬化が進行しているためであると医師から説明を受けた。
薬物による家族性高コレステロール血症の治療を続けて血中の脂質を抑え、痛むまでは何とか歩いてみる運動療法などをしていく方針となったが、もし効果がなければ手術をする選択肢もある、と言われた。
治療の経過
食事療法や運動療法、薬物療法を根気よく9カ月続けた結果、LDLコレステロールは175mg/dLまで下がった。依然として基準値よりは高いものの、医師からは「治療の効果はあると考えてよい」と言われた。ふくらはぎについては、やはり歩くと痛むものの、痛みが出るまでに歩ける距離は少しずつ伸びており、手術はしばらく必要ではないだろうという結論になった。
薬物による治療をやめれば脂質の血中濃度は元に戻ってしまうため、薬は一生飲むことになるとのことだった。初めの治療から2年が経過したが、脂質の濃度は正常値内に抑えられており、今のところ日常生活に支障はない。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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