胃カメラでは明らかな異常なし。追加の検査で診断
カルテ
- 診断
- 胃食道逆流症
- 非びらん性胃食道逆流症
最終更新日:2018.11.27
患者プロフィール
58歳の男性。会社員として忙しく働いており、帰宅はいつも21時過ぎ。帰宅してから夕飯をとるのだが、眠気のあまり食後はそのまま寝床に入ることが習慣になっている。
今までに大きな病気をしたことはないが、数年前に高血圧と診断され、カルシウム拮抗(きっこう)薬と呼ばれる降圧薬を服用している。
受診までの経緯
3年ほど前から、食後に胸やけを感じるようになった。また、夕飯を食べ終えて寝ていると、酸味と苦みのある液体が胃のほうから逆流してくるようになった。
そのせいで夜もよく眠れないので、半年前に近所のクリニックを受診。
胃酸の分泌を抑制する酸分泌抑制薬のなかでも、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方してもらった。
それからは欠かさずに薬を飲んでいたのだが、最近は症状を全く感じなくなったため、薬がちょうどなくなった1週間前を機に飲むのをやめていた。
しかし数日前から、以前と同じような胸やけや液体の逆流を感じるようになったため、久しぶりにクリニックを受診した。
診察・検査
診察室に入り、「胃の薬がなくなったので飲むのをやめていたら、胸やけが気になります。あと、酸っぱいような苦いような液体が胃から戻ってきます」と医師に伝えた。胃液が逆流するという症状、そしてプロトンポンプ阻害薬を飲んでいればその症状は起こらないという点から、逆流性食道炎が疑わしいとのことだった。実際にカメラで食道や胃の様子を見るため、数日後に胃カメラ検査を行った。
食道の粘膜は赤く腫れていたが、逆流性食道炎で見られるような粘膜のただれや潰瘍は見られず、はっきりと逆流性食道炎とは言えない様子だった。
そこで、24時間pHモニタリングという検査を行うことになった。
これは、センサーの付いた細い管を鼻から胃まで挿入し、胃液の逆流によって食道の中がどのくらい酸性になるかを調べるもので、24時間にわたって計測し続けることになる。
「ずっと鼻に管が入ったままなんて煩わしいな」と思ったが、入浴を控えること以外は、普段通り生活してよいという。
クリニックで管を入れてもらい、その日は帰宅した。
診断・治療方針
24時間pHモニタリングの結果、食道の中の酸性度が高くなる時間が、基準よりも長いことが分かった。これは通常の人よりも胃液が食道に逆流していることを表しており、結局「非びらん性胃食道逆流症」の診断となった。
治療として、処方されたプロトンポンプ阻害薬は自己判断で中止せず、飲み続けるよう指導された。降圧薬として飲んでいるカルシウム拮抗薬についても継続して飲むことになった。
カルシウム拮抗薬は食道下部括約筋(食道の下部にあり、胃から食道への逆流を防ぐための筋肉)の働きを弱くする作用があるというが、以前はプロトンポンプ阻害薬によって症状を抑えることができていたので、飲み合わせには問題なしと判断された。
また、食後すぐに就寝すると胃液が逆流しやすくなるため、なるべく時間を空け、寝るときは上半身を少し高くして寝るようにと言われた。
治療の経過
指導を受けてからは、夕食後に入浴してから寝床に入るなど、すぐに横になるのは避けるようにした。また、敷布団の下に座布団を数枚敷いて、上半身を少し高くして寝るようにしている。
薬も欠かさず飲んでおり、今のところ症状は完全に治まっている。
症状がなくなると治ったような気がしてしまうが、薬をやめる時期は今後医師と相談しながら決めようと思っている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。