脂質異常と脂肪肝が発覚。禁酒と食事制限を開始
最終更新日:2019.10.17
患者プロフィール
47歳の男性。一般企業で、事務職員をしている。「健康によくない」と思っているのでタバコは吸わないが、ビールが大好き。若いころは350ml缶1本で我慢するようにしていたのだが、近頃は仕事のストレスもあり、4本ほど飲んでしまう。
また、夜には居酒屋とラーメン屋をはしごするなど食べ過ぎてしまうことが多く、小太りなのを自覚している。
健康診断では毎回いくつもの項目で基準値を超えているのだが、今まで特に大きな病気をしたことはない。「今すぐ死ぬわけじゃないし、来年は生活改善を頑張ろう……」と思いながら、ここまできてしまった。
受診までの経緯
今回も職場の健康診断で異常値がいくつか見つかった。今までは「要精密検査」と書かれていても、医者に行って怒られるのが嫌なので行かなかったのだが、先日娘に「お父さん、太ったよね」と言われたことをふと思い出した。「47歳だし、そろそろ体に気を使ったほうがいいかもな……」と思い直し、保健指導のために社内の診療室を訪れた。
診察・検査
身長165cmで体重77kg、BMIは約28で「肥満」だと言われた。腹囲は92cmで、これもメタボリックシンドロームの診断基準、「男性腹囲85cm以上」を超えているという。血液検査で特に異常があったのは、血中の脂質についての項目だった。トリグリセリド(TG)、いわゆる中性脂肪は214mg/dL。HDLコレステロール(HDL-C)、いわゆる善玉コレステロールは40mg/dLで、LDLコレステロール(LDL-C)、いわゆる悪玉コレステロールは192mg/dL、となっており、トリグリセリドとLDLコレステロールの値が高いと言われた。
肝臓に関する数値にも問題があり、γ-GTPという肝臓の解毒作用に関係している酵素の値は176U/Lと高くなっていた。肝臓に障害があると血液中に漏れ出てくるというAST(GOT)は32U/L、ALT(GPT)も82U/Lであり、いずれも基準値より高くなっていた。
幸いにも、血圧と血糖値は正常の範囲内で、尿検査でもタンパク・尿糖ともに陰性とされ、問題なかった。
診断・治療方針
脂質に関する異常値が多く、脂質異常症と言われた。これは血液中に余分な脂肪分が出てしまっている状態を指し、脂質異常症を放置すると動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが高くなるのだという。肝機能に関する数値にも異常があり、お酒の飲みすぎに食べすぎもあいまって、脂肪肝が進行している疑いがあるという。脂肪肝を放置すると肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があり、さまざまな生活習慣病のリスクが高まるそうだ。
治療方針としては、いきなり薬を使うのではなく、まずは食生活の改善をすることになった。
具体的には、1日にとる食事の総カロリーを減らし、食べるものをなるべく低脂肪のものにするとともに、野菜を1回の食事につき120~150gほどとる。総カロリーに関しては、身長が165cmであることと、仕事が事務仕事で日中座っていることが多いことから、できれば1日あたり1500kcal程度に抑えるのが理想と言われた。しかし、現状と照らし合わせるといきなりこの目標は難しいだろうということで、まずは1600kcal~1900kcalにおさめるのが目標となった。
生活習慣が原因の脂肪肝については、禁酒して食事・運動習慣を改善すれば、肝臓にたまった中性脂肪が減り、肝機能を回復させることができるのだという。
γ-GTPの値を見ると肝臓が疲れていることもわかったので、お酒も控えることになった。
診断から最初の3カ月間は4週ごとに、それ以降は3カ月ごとに病院に通って、検査を受けることになった。
治療の経過
シメのラーメンをやめるだけでもだいぶカロリーが抑えられると言われたので、まずは外食を減らすことにした。家族の協力を得てなんとか食事の制限をこなしているが、初めの2カ月は脂質の値もあまり下がらず、ただひたすらに食事制限がつらかった。
だが、3カ月目に入ると、だんだんと検査値が下がり始め、治療開始から半年ほどで正常値にまで下げることができた。
医師からは、「これに油断して食生活が戻ると、脂質の値も元に戻ってしまいますよ」とくぎをさされているが、食生活を変えてからはなんだか体も軽い。
現在でもカロリーや食事内容に注意した生活を続けており、「今度はジョギングでも始めようかな」と思っているところである。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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