食べてすぐ寝転ぶ……こみ上げる胃液でのどが痛い
最終更新日:2018.11.13
患者プロフィール
54歳の男性、会社員。今までに大きな病気をしたことはなく、健康には自信がある。とは言うものの、ついつい食べ過ぎてしまうことが多く、最近は中年太りが気になっている。
平日の夜、妻の手料理を食べたあとは、ソファに寝転んでテレビを観ていることが多い。
脂っこいもの・辛いものが好きで、串揚げと激辛ラーメンをこよなく愛している。
受診までの経緯
半年前から、週に2回ほど胸やけを自覚していた。特に食後は胸やけが強く、みぞおちのあたりが痛くなり、時に胃もたれのような感覚もあった。生活には支障がないので放置していたが、ここ数週間は食後に横になっていると、酸っぱくて苦みのある液体が胃の方から口の中にこみ上げてくるようになった。その液体のせいでのどがひりひりする。
妻に相談したところ、「一度病院でみてもらったら?」と勧められたので、近所の病院を受診した。
診察・検査
症状のことを医師に話すと、「胸やけは、どんなときに起こりやすいですか?」と聞かれたので、「食後や横になっているときに多いです」と答えた。血液検査を行ったが、異常はなかった。
太り気味なので脂質異常などの病気も気になっていたが、トリグリセリド(中性脂肪)やLDL-コレステロールの値も正常範囲内だった。
「症状から考えると、逆流性食道炎が疑わしい」というのが医師の見解だったので、食道や胃の様子を実際にカメラで見ることになった。
胃カメラ検査の予約をして、その日は帰宅した。
後日、胃カメラ検査を行うと、食道の粘膜が傷ついており、線状のびらん(ただれて、でこぼこになっている様子)や、潰瘍(かいよう)(表層の粘膜が剥がれ、下の組織が見えている様子)が確認できた。一方、胃には異常がなかった。
診断・治療方針
胃カメラ検査の結果を踏まえて、「逆流性食道炎で間違いない」と診断された。これは、食道下部括約(かつやく)筋(食道の下部にあり、胃から食道への逆流を防ぐための筋肉)の機能が低下したり、胃酸の分泌が増えたりしたために起こるもので、食後にこみ上げていた酸っぱくて苦い液体は、逆流した胃酸だと分かった。
胃液が口まで逆流することを、医学的には「呑酸(どんさん)」と呼ぶのだそうだ。
胸やけや胃酸の逆流は、特に横になっているときに感じていたが、これは横になることで胃酸が食道の方に流れやすくなっていたためだった。
また、太っている人は腹腔(ふくくう)内の圧力 (腹圧)が高いため、ますます口の方に逆流しやすくなるとのこと。
さらに、胃酸は辛いものや脂っこいものを食べると特に多く分泌されるという。
治療として、食べ過ぎを控え、食後は横になるのを避けるよう指導された。
また、体重を落とし、腹圧を下げることが症状の改善になると言われた。あわせて、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制剤のなかでも、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる内服薬を処方された。
治療の経過
診断されてからは、食べ過ぎないように食事のペースに気を付け、週に2回はウォーキングをするなど、少しずつ減量に努めている。また、食後は横にならず座って過ごすようにしている。
薬を欠かさず飲んでいることもあってか、ここのところ胸やけなどの症状はない。
処方されるとき、まれにかゆみや下痢などの副作用があると言われていたが、そのような症状もない。
医師からは「症状がなくなっても自己判断で内服をやめたりせず、これからも定期的に通ってくださいね」と言われた。
現在も生活改善に気を配りながら、薬による治療を続けている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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