症状はないのに…… ステージIAの肺腺がんと診断
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
52歳の女性。持病もなく、風邪などもひかず、健康なほうである。昨年受けた健康診断でも異常はなく、体調にも特に変わりはなかった。受診までの経緯
昨年と同じように健康診断を受けたところ、胸のX線撮影検査で影が見つかり、総合病院を紹介された。昨年受けた健康診断では異常なしと言われていたこともあり、大きな病院に行くのは面倒に思えたが、心配した家族に連れられて受診した。診察・検査
レントゲン写真を見た医師は、血液検査、CT検査を行った。血液検査では「腫瘍マーカー」と呼ばれるCEA、SLXという項目が高値を示していた。また、CT検査では、肺にとげとげとした白い影が確認できた。以上の結果から、肺がんかもしれないので組織を取って検査をしたほうがよいとのこと。
気管からカメラを入れ、肺の組織の一部を採取する検査(生検)を受けた。
診断・治療方針
血液検査とCT検査、そして右肺の末端部から採取された組織の検査結果から、肺腺がん(ステージIA)との診断がついた。幸い、リンパ節やほかの臓器への転移はないそうで、がんの大きさも1cmほどとそこまで大きくはなく、手術で取りきれる可能性が高いということだった。手術を受けるのは怖くて嫌だったが、医師からは「今の段階で手術をすれば予後がいい」と説明があった。さらに、現在の肺がん手術は胸腔鏡補助下手術(胸に小さな穴をあけ、内視鏡や細い器具を使って手術をする方法)が主流であり、1週間もあれば回復できるとのこと。家族にも説得され、手術を受けることにした。
治療の経過
手術日当日は朝ごはんを食べてはいけないとのことで、空腹のまま手術室に向かった。手術は4時間ほどと聞いていた。目を覚ましたらごはんを食べようと思っていたが、起きた直後はやはり傷が痛み、それどころではなかった。痛み止めを使って痛みを抑えながらリハビリを開始し、予定通り1週間で退院できた。退院後は、体の状態の確認と、手術中に切除した組織についての検査結果を聞くために、外来を受診した。病理診断の結果は、手術前に行った生検の結果と同じく腺がんであった。今後の治療について、がんの再発を防ぐために抗がん剤治療を行うことも選択肢の一つではあるが、がんの組織はすべて取り切れているし、サイズも小さかったので、必ずしも抗がん剤治療を受ける必要はないと説明を受けた。家族とも相談し、追加治療は希望せず、経過観察のみとなった。
手術後は、定期的に外来を受診している。半年ごとに外来で診察を受け、2回に1回はCT検査も行っている。手術から3年がたち、再発の兆候が見られなかったことから、経過観察も終了となった。今後は、年に1回は健康診断を受け、胸のX線撮影をするように言われている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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