高血圧の治療薬をよく飲み忘れる。居間で倒れ搬送
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
73歳の男性。息子夫婦と同居しており、大学生になる孫娘の成長が何よりの楽しみ。高血圧と診断され、近くのクリニックに通っている。薬を処方されているが、本当のところあまり血圧を気にしておらず、よく飲み忘れてしまう。受診までの経緯
居間で孫娘とお茶を飲んでいるときに、急に倒れた。体をぎゅっと伸ばしたまま固まっており、孫娘が呼びかけてもたたいても全く起きない。慌てて119番したところ、15分ほどで救急車が到着。救急隊員がまぶたを開いて目の様子を確認すると、左の黒目が大きくなっており、目が両方とも左に寄っているのが確認できた。孫娘が付き添い、病院へ搬送された。診察・検査
搬送先の病院では、すぐにCT(コンピューター断層撮影装置)検査が行われた。頭の被殻という部分が、出血のため白くなっていると説明された。診断・治療方針
CT検査の結果、頭の中で血管が破れて出血しているのが見つかったとのことで、被殻出血と診断された。出血の量が多いのですぐに手術が必要だと言われ、同意した。「開頭血腫除去術」といって、全身麻酔下で頭を切り開いて脳内の血の塊を取り除く手術が行われた。数時間後、無事に手術は終了。しばらく入院することになった。治療の経過
手術が終わった日は声をかけてもうっすらと目を開ける程度で、呼びかけへの答えはなかった。手術後2日目には意識はだいぶ回復し、言葉による意思疎通ができるようになった。起き上がることはできないようだったが、家族のお見舞いには笑顔を見せていた。医師によると、右半身を自分の意思で動かすことができず、また感覚障害もあるとのことだった。放っておくと関節が硬くなってしまうため、理学療法士とともに手や足の曲げ伸ばしなどのリハビリテーションを行うことになった。1週間ほどすると人の支えがあれば自力で起き上がれるようになり、2週間ほどで右半身も少しだけ自力で動かせるようになった。手術後の経過が良好だったため、医師にリハビリテーション病院を紹介してもらった。リハビリテーション病院では入院中に落ちてしまった筋力を3カ月ほどかけて元に戻し、また細かい作業ができるよう作業療法士とともに食事や入浴、着替えの訓練を行った。退院時には杖をついて自分で歩くことができ、日常生活についても補助具を使えばある程度自力で行うことができるまでに回復した。
退院するときには、「この病気は高血圧の人に起こりやすいので、これからは定期的に医師の診察を受けて、薬をちゃんと飲むように」と改めて説明を受けた。今は、孫娘と息子夫婦に支えられ、入院前とほぼ変わらない生活を送ることができている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。