転倒し背中の骨を骨折。リハビリできず寝たきりに
最終更新日:2018.5.28
80代〜/女性
骨粗しょう症
患者プロフィール
88歳の女性。今までに大きな病歴はない。若い頃に離婚し、現在は一人暮らしをしているが、独立した3人の子どもたちが、頻繁に様子を見にきてくれる。歩行時に杖(つえ)は必要なく、多少物覚えは悪くなったものの、認知症などの症状も見られない。
先日も長女夫婦と次女が来てくれたので、4人でマージャンをやって楽しく過ごした。
受診までの経緯
自宅エレベーターでつまずいて転倒し、腰を強打。ずきずきとうずくような痛みがあり、立ち上がるのも困難だったので救急車を呼んで、病院に搬送された。
診察・検査
意識ははっきりしており、質問に対する受け答えもしっかりしている。エックス線(レントゲン)撮影を行ったところ、胸椎、腰椎に多数の変形があり、新たな骨折の可能性があると判断されたが、座薬で痛みが軽減されたので、どうしても家に帰りたいと伝え、その日は自宅に戻った。しかし、翌日に痛みのため自力で動くことができなくなり、再び救急搬送。
精密検査や治療を行うために入院することになった。入院後にMRI(磁気共鳴画像装置)検査を行ったところ、多数の椎体(ついたい)変形のうち、第12胸椎、第1腰椎が新しい骨折によるもの、ほかの変形した胸椎は古い骨折によるものだと分かった。
診断・治療方針
診断は、骨粗しょう症。骨がスカスカになり、もろくなる病気である。医師からは、検査結果を見る限り、今まで何度も胸や背中の骨がつぶれているはずだが、今回も転んだはずみで背中のあたりの骨が折れてしまっている、と言われた。
治療方針としては、体に合わせたコルセットを作り、それを装着した上で、リハビリを行うことになった。痛みもあるため、コルセットが出来上がるまではベッド上で安静にしていることになった。
年末年始だったこともあり、コルセットの完成が2週間後となってしまった。そこから立ち上がる練習や、歩行のリハビリを開始した。
治療の経過
入院前は杖なしで自立生活をしていたが、あまりにも痛いのでリハビリを頑張る気になれず、歩行訓練が進まない状況が続いた。もともと食事量は少なかったが、さらに食べられる量が減ってしまった。娘たちも毎日のように食事の介助を行い、リハビリを行うように促したが、ほとんど効果がない状況が続いた。
1カ月後、病院スタッフと家族のサポートの効果もなく、ベッドで寝たきりの状態になってしまい、老人ホームに入ることになった。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。