のどの渇きと全身のだるさ。診断は1型糖尿病
最終更新日:2018.5.28
0〜14歳/女性
糖尿病
患者プロフィール
12歳の女児。給食は残さず食べ、休み時間は校庭で遊ぶ、活発な少女である。受診までの経緯
2週間前に、風邪のようなのどの痛みと39度の熱が2日間続き、学校を休んだ。1週間前からのどが渇きやすくなり、学校では水筒のお茶が毎日足りなくなる。同じころから全身のだるさを感じるようになり、学校でも以前ほど活発に動けなくなった。心配した家族に連れられ、小児科を受診した。
診察・検査
症状をふまえ、血液検査と尿検査を行った。血液検査では空腹時血糖394mg/dL(正常値は空腹時で70~109mg/dL)、直近1カ月の血糖値が高かったかどうかを表すHbA1cは7.6%で、どちらも高かった。また尿検査では糖が3+となっており、これらの結果は糖尿病の診断基準を満たしているのだという。
ケトン体は3+であった。これはおそらく、糖尿病によりブドウ糖をエネルギーとしてうまく使えなくなり、代わりに脂肪を燃焼してエネルギーを得ようとした結果、その際にできるケトン体という物質が尿中に出たからだと説明された。ケトン体は酸性であるため、血液が正常よりも酸性に傾き、それによってだるさ、吐き気、腹痛などの症状が出てくることがあるという。
診断・治療方針
空腹時血糖とHbA1cが共に高かったことから、糖尿病と診断された。12歳という若さであることに加え、3食バランスよく食べ、健康的な生活をしていても糖尿病になったということで、1型糖尿病が疑われると言われた。これはインスリン(血糖値を下げるホルモン)を出す機能を持つ細胞が破壊されてしまうことが原因で起こる糖尿病で、年齢に関係なく発症するのだという。また、尿検査でケトン体が出ていることから、糖尿病ケトアシドーシスと診断された。全身のだるさはこれが原因だと考えられる。
治療としては、入院の上でまず輸液を行い、血糖値を下げるためにインスリン治療を行う方針となった。
治療の経過
インスリン治療によって急激に血糖値が下がりすぎないか、血液中に溶けているカリウムなどの値が変化しないかをこまめに見ながら治療を続けた。3時間後、カリウムが下がりすぎてしまった。これによりすぐに症状が現れるわけではないが、力が入りにくくなったり、不整脈の原因になったりするという。
カリウムを含む輸液に変更すると値は安定した。
その後の検査で、やはり1型糖尿病と判明。退院後は毎日自分で血糖値を測り、インスリンを注射しながら学校に通っている。
注射で血糖のコントロールはできているので、今までと同じように友達と同じ給食を食べ、休み時間には校庭に出て遊んでいる。
ただし、ドッジボールやサッカーなどの激しい運動をすると低血糖になってしまうことがあるので、ブドウ糖のあめは肌身離さず持ち歩くようにしている
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。