薬で溶かした脳の血栓。できた原因は心房細動?
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
76歳の男性。妻と2人暮らし。高血圧と心房細動を指摘され、ここ数年近所のクリニックにかかっている。
受診までの経緯
朝食をとったあとお茶を飲んでいたら、突然崩れるように椅子からずり落ちたので、妻が慌てて救急車を呼んだ。救急車が来るまでの間、妻が呼びかけても全く目を開けなかったが、強く揺さぶると辛うじて目を開けるという状態であった。
妻に付き添われ、病院に搬送された。
診察・検査
搬送先の病院では全身状態を見たあと、すぐに頭部CT(コンピューター断層撮影装置)検査が行われた。医師の「手を握れますか」という問いかけに対し、右では握れたが、左では握れなかった。
CT検査の結果、ひとまず頭部に大きな出血は確認されなかった。
医師に「これまで同じような症状はありましたか」と聞かれたので、妻が「ありません」と答えると、「それでは旦那さんはこれまで大きな病気で入院したこと、もしくは高血圧や糖尿病のような病気で病気にかかっていたことはありますか」と聞かれた。
妻が「夫は高血圧と心房細動でずっとクリニックにかかっていました」と伝えると、もしかすると、心房細動で心臓にできた血の塊のようなものが脳の血管を詰まらせてしまったかもしれないとのこと。脳の血管の状態を調べるため、MRI(磁気共鳴画像装置)検査を行うことになった。
診断・治療方針
MRI検査の結果、やはり脳の血管が詰まっており、脳梗塞との診断だった。このとき、倒れてから3時間が経過していた。
医師から妻へ「血栓を溶かす薬がありますが、倒れてから4時間30分までしか使えません。使っていいですね」と確認、1時間かけて薬を投与した。
肝臓や腎臓が悪かったり、ひどく悪い糖尿病だったりすると使えないこともあるのだと説明された。
しばらくして目が覚めたが、そのまま入院することになった。
治療の経過
目が覚めたその日から、毎日リハビリを行った。右足が特に動かしにくかったので、まずは立ち上がる練習から始めなくてはいけなかった。理学療法士と歩行訓練などを行ううちに、少しずつ日常的な動作ができるようになり、おかげで大きな後遺症もなく、2週間ほどで退院できることになった。
6割くらいの人は後遺症が出て、最悪の場合亡くなってしまう場合もあるそうで、本当に良かったと思った。
リハビリ中も献身的に介護してくれた妻からは、今回の原因だったらしい心房細動をしっかり治療するように、くぎをさされた。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。