息切れの原因は間質性肺炎。ひとまず禁煙を開始
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
66歳の男性。子どもが独立してからは、妻と2人で生活している。会社勤めで、健康診断も定期的に受けていた。
昔からの習慣で、タバコがやめられない。46年間、1日20本ほど吸っている。
受診までの経緯
3年前、会社の定期健診で「両方の肺に炎症が起こっている」と言われていたが、息苦しさなどは感じていなかったので、そのままにしていた。1年前から階段や坂道をのぼるときに息が切れるようになり、うまく肺に空気が入らない感じがしていた。
ここ最近、息切れはさらに悪化しており、心配になって病院を受診した。
診察・検査
医師による診察の結果、肺から異常な音がすると言われ、胸のX線とCT検査をすることになった。喫煙していることを話すと、いろいろな病気のリスクになるため、今すぐやめたほうがよいと言われた。
また、血液検査では、間質性肺炎という病気で高くなりやすいKL-6という項目の数値が780U/mLと上昇していた。
診断・治療方針
胸のX線検査の結果、両方の肺全体に、網目のような白い影が見えた。また、CT検査では、肺が蜂の巣のように白く見える「蜂巣肺(ほうそうはい)」と呼ばれる状態になっていることが判明。
どちらの結果も、肺に炎症が起こっていることを示していた。
息が吸いにくいと感じるのは、肺の壁がかたくなってしまい、息を吸うときにうまく広がることができず、酸素が取り込みにくくなっているからだと説明があった。
この病気は、膠原病(こうげんびょう)、じん肺などが原因となることが多いが、今回はそのどれも当てはまらず、原因も不明である。確定診断には気管支鏡検査なども行わなければならないということだったが、間質性肺炎という種類の肺炎のため、治療が必要ということだった。
この病気に対する有効な治療法は確立されておらず、根本的な治療法はないため、治療はこれ以上の進行を防ぐことが目的になるという。放っておくと酸素を常に吸い続けなければならなくなるかもしれないということで、まずは禁煙を徹底するとともに、ステロイド薬による治療を開始することになった。
治療の経過
1カ月後に再び受診。画像検査上、悪くはなっていないものの、症状は改善していなかった。医師によれば、「治療抵抗性」と言って、推奨される治療を行ったとしても効果が見られないこともあるのだという。
もう少しステロイドの治療を続けて様子を見るが、改善しない場合には、ステロイドに加えて免疫抑制薬を飲むことも考えなければならないと言われた。
その際、症状が安定している「安定期」と悪くなっているときの「増悪期(ぞうあくき)」で薬が変わることもあると説明された。
半年後、やはり症状が続いていたので、新たに免疫抑制剤の内服も開始することになった。
その後は幸いにも治療効果が出てきて、その後5年間現在まで同じ薬の治療で症状をコントロールできている。
今後もいまの治療を続けながら、妻と2人の時間を大切にしていきたいと思っている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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