診断はIgA腎症。進行を防ぐため、生活習慣を改善
最終更新日:2018.5.28
30代/男性
慢性腎不全
患者プロフィール
38歳男性。中学校で社会科教師をしている。ぽっちゃりした体型と、日本や世界の歴史をおもしろく語る授業が好評で、生徒たちから慕われている。一方、自分のことには無頓着で、食事はコンビニで済ませてしまうことが多く、運動もあまりしない。
受診までの経緯
これまで何度か健康診断で尿潜血があると言われたことがあったが、仕事が忙しくなかなか病院に行くことができなかった。また、風邪をひいた翌日に尿の色が赤みがかることも何度かあったが、あまり気にとめていなかった。今回、仕事が一段落して時間に余裕ができたこともあり、受診することとなった。
診察・検査
尿検査と血液検査を行った。病院の検査でも尿潜血は陽性であり、血液検査では腎臓の働きを示すクレアチニンという数値が高くなっていることから、腎不全の状態であると言われた。検査の結果からは感染症や膠原(こうげん)病による腎不全は考えにくく、IgAという物質の値が少し高いことからIgA腎症が疑われると説明された。診断を確定し治療をよりよいものにするためには腎生検(針で腎臓の組織の一部を採取する検査)が必要だと言われ、後日検査入院する運びとなった。
医師には、「治療しないまま放置すると、ますます腎臓は悪くなって、取り返しのつかないことになりますよ」と言われた。
入院までのあいだ、塩辛いものや、肉や乳製品などのタンパク質を多く含むもの、ビールなどのプリン体を多く含むものを控えるように言われた。
診断・治療方針
1週間後に入院して腎生検を行い、IgA腎症との診断がついた。幸いにも比較的進行していない状況で、低リスク群と診断された。今すぐ人工透析が必要になるほど腎臓の機能が衰えているわけではないものの、このまま放っておくと徐々に悪くなっていってしまうので、治療は必要ということだった。
まずは、血液をさらさらにする薬と血圧を下げる薬を飲むこととなった。加えて生活習慣の見直しも必要で、健康的な食事とほどよい運動をするように指導をうけた。
治療の経過
医師によれば、「IgA腎症は進行すれば慢性腎不全に至る病気で、完全に治すための治療法は今のところ存在しません。しかし、病気とうまく付き合うことができれば今までと同じ生活ができます。」とのこと。今まで忙しさにかまけてあまり健康に気をつかってこなかったが、これからも教師を続けるために、真剣に治療に取り組もうと決心。コンビニ食をやめて自炊し、週に2日はジムに行くことにした。
その後も、生活習慣を正して内服薬による治療を続けていたので、腎臓の機能の悪化を防ぐことはできている。しかし、悪くなりかけた腎臓の機能を完全に元通りにすることはできず、5年たった今でも定期的に通院しながら治療を続けている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。