息切れと性器からの出血。皮膚には紫色の斑点が
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
28歳女性。1人暮らし。会社員。仕事は夜遅くまで働いていて、平日は家と会社の往復となっている。休日は、自宅で過ごすことが多い。受診までの経緯
1週間前ほど前から、歩行時に息切れを感じるようになった。また、何度か性器からの不正出血もある。「子宮や卵巣の病気なのでは」と不安になって、自宅近くの産婦人科のクリニックを受診した。クリニックで診察を受けたところ、皮膚は青白く、貧血の症状がみられた。両足に点状の出血と、皮膚が紫色になっている「紫斑(しはん)」を複数確認できた。血液検査では、貧血や、白血球の減少(白血球数2400)、血小板の減少(血小板数1.3万)がみられた。
子宮や卵巣の検査も行ったが、軽い出血がみられるものの特に異常はない。血液疾患が疑われるということで、医師からは「紹介状を書くので大学病院の血液内科を受診するように」と言われた。
診察・検査
血液内科を受診すると、検査結果を踏まえ、「骨髄検査」という検査を受けることになった。これは、腰のあたりにある血液を作っている「骨髄(こつずい)」から骨髄液を抜いて、どのような血球が作られているか調べる検査で、事前に「痛いとおっしゃる患者さんが多いです」と言われたので、覚悟して検査に臨んだ。麻酔の注射はたしかに痛かったものの、そのあとは腰に違和感を覚える程度で、我慢できない痛みではなかった。診断・治療方針
骨髄検査では、白血病細胞という、がん化した未熟な白血球が増殖しており、「急性骨髄性白血病」と診断された。この病気では異常な白血病細胞が増殖してしまうため、正常な赤血球や白血球、血小板がうまく作れなくなり、減少してしまう。なぜ性器から出血したのか気になったので聞いてみたところ、血小板が少ない状況では鼻血や性器出血、消化管出血などあらゆる場所で出血が起こりやすくなっているため、特にめずらしい症状ではないということであった。治療方針としては、まず強力な抗がん剤による化学療法で白血病細胞を一気に減らして、「寛解(かんかい)」という状態にする「寛解導入療法」を行う。白血病細胞がみられなくなり治療が順調に進めば、再発を防ぎ治療の効果を高める「地固め療法」として、さらに抗がん剤治療を行うことになった。
治療の経過
途中退院も含めて5カ月ほど入院し、「寛解導入療法」と「地固め療法」を行った。予防の薬をもらっていたためか、副作用として予想されていた吐き気はほとんど起こらなかった。治療中、2回ほど感染症にかかってしまい抗生物質の点滴を受けなければならなかったことと、副作用として脱毛・便秘などの症状が出てしまったことを除いて、治療は順調に進んだ。治療の結果、白血病細胞は減少傾向となり、「寛解」状態を維持することができていたので治療はいったん終了となり、定期的に通院して再発していないかを確認することになった。幸いにもその後も再発の兆候はなく、治療による副作用も落ち着いている。今後は5年間再発することなく経過すれば、外来通院も卒業になるそうだ。
1人暮らしをしていたが、入院するときに家の賃貸契約を終了し、退院後は実家で暮らしている。入院中に仕事を辞め、しばらくは休養していたが、1年ほど前から白血病患者の支援団体でボランティア活動を始めた。病気になってからは家で過ごすことが多かったが、また社会とつながることで、少しずつ元気がわいてきた。大病を患ったことをきっかけに、今後は医療や福祉の現場で働きたいと思うようになり、資格取得に向けて準備を進めている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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