積極治療は受けないと決意。最期は家族と自宅で
最終更新日:2018.10.16
患者プロフィール
84歳の女性。長男夫婦と孫2人との5人で暮らしている。6カ月前に肺転移を伴う高度進行胃がんの診断を受け、医師からは「手術はせず、抗がん剤を使った化学療法などを行うことになる」と言われた。
だが、年齢や体力などを考えると、副作用の可能性がある抗がん剤治療などは受けたくないというのが正直な気持ちだった。
家族にも「入院はしたくない、自宅で療養したい」と相談すると、「おばあちゃんがそう言うなら」と納得してくれたので、自宅療養を続けている。
受診までの経緯
2週間ほど前から全身がだるい。そのころから徐々に食欲も落ちてきている。今のところ、鎮痛薬の内服と、おかゆなどのやわらかい食事(1日あたり600kcal程度)をとることはできているが、心配した家族に伴われて病院を受診した。
診察・診断
医師からは、「がんによる悪液質が進行しており、余命は1カ月程度と考えられます」と告げられた。悪液質とは、がん細胞が栄養を吸収してしまうことによって身体が衰弱し、体重が減っていくような状態を指すのだという。
治療方針
延命治療の選択肢について医師から説明があった。在宅でも中心静脈栄養(心臓に近い鎖骨下静脈から高カロリーの栄養剤を投与する方法)や経鼻経管栄養(鼻からカテーテルという細い管を胃や小腸まで挿入し、そこから栄養剤を投与する方法)で栄養を摂取することは可能だという。もし病院に通うことができれば点滴での栄養補給も可能だということだった。一度帰宅し、家族で話し合うことになった。
自分としては十分長生きしたつもりだし、やはり「痛い思いや煩わしい思いをしたくない」という気持ちが強い。
家族からは「もう少しだけ長生きしてほしいという気持ちはあるけど、最終的にはおばあちゃんが決めていいんだよ」という言葉をもらい、覚悟が決まった。
3日後、再び家族とともに主治医の元を訪れ、「このまま自然に任せたい」と伝えた。
中心静脈栄養や経鼻経管栄養などの積極的な治療は行わず、引き続き自宅での療養を続けることになった。
その後の経過
はじめのうちは自分でおかゆなどを食べることができたが、徐々に食事量は減り、やがて水分もとれなくなった。自力で起き上がることができなくなり、眠ったり起きたりを繰り返しているうちに呼吸が止まり、心臓の鼓動も止まった。眠るような最期だった。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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