「被殻」に多量の出血。開頭手術とリハビリが奏功
最終更新日:2019.2.14
患者プロフィール
70歳の女性。夫と2人で暮らしているが、娘が近くに住んでおり、ときどき家事を手伝いに来てくれる。健康診断は5年に1度くらいしか受けていないが、いつも健康診断の結果は良好で、大きな病気をしたことはない。受診までの経緯
ある日、家事を手伝いに来た娘が、風呂場で倒れている母親を発見。どうやら風呂掃除をしている間に意識を失ったらしい。急いで救急車を要請し、病院へ搬送された。診察・検査
搬送先の病院では、呼びかけに対して目を開けていたが、自分の名前を言うことはできなかった。右の腕、手、足などに痛みの刺激を加えても、はらいのけるような動作はみられなかった。息を吸うときに、胸の肋骨(ろっこつ)のあたりがへこむような様子がみられ、いびきをかいているような音も聞こえる。
脈は毎分80回、拍動も安定しており問題なかったが、血圧は230/120mmHgと非常に高くなっていた。次第に意識レベルが低下し、呼びかけに対しても反応が鈍くなってきた。脳の病気が疑われるということで、頭部CT検査を行うこととなった。
診断・治療方針
頭部CT検査では、脳の中の「被殻(ひかく)」という部分に血種(けっしゅ:血のたまり)を認め、脳出血(被殻出血)と診断された。原因としては高血圧が考えられた。意識障害があるため緊急入院となった。まずは、息を吸い込むことができるような姿勢に調節し、血圧を下げる薬と、脳のむくみを防止する薬の投与が開始された。また、頭部CTで確認された血腫が大きかったため、頭蓋骨を外して血腫を取り除く手術(開頭血腫除去術)が行われることになった。
治療の経過
入院同日、全身麻酔により開頭血腫除去術が行われた。幸いにも手術によって一命を取り留め、しばらくすると意識が回復した。血圧の管理と、動かなくなった手足を動かすリハビリテーションが行われたが、右側の腕や手、足には麻痺(まひ)が残った。入院1カ月後には、リハビリテーションを目的とした回復期病床があるリハビリテーション病院へ転院し、さらにリハビリテーションを続けた。3カ月間、積極的にリハビリテーションを続けた結果、歩行や簡単な家事ができるまでに回復した。
退院後は、脳出血の再発を予防するために、高血圧に対して飲み薬による治療を継続している。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。