「早期胃がん」を独断で放置。胃の3分の2を切除
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
46歳の女性。仕事中心の生活で、夜も遅くなることが多く、不規則な生活を続けていた。受診までの経緯
現在から7年前、胃のむかつきを感じて、クリニックを受診。胃カメラ検査をしたところ胃炎と診断されたが、薬による治療で改善した。がんの原因であるピロリ菌が陽性だったため除菌を勧められたが、仕事が忙しく、そのままとなっていた。現在から3年前には、再び胃のむかつきを感じるようになったため、職場の健康診断で胃がん検診を受けてみることに。胃カメラ検査を受けたところ、早期の胃がんと診断された。
開腹手術をせずに、内視鏡で治療できる可能性があるとのことで、治療できる総合病院を紹介された。
また、ピロリ菌が陽性であることを指摘され、胃がんの治療と同時に、ピロリ菌の除菌をしたほうがよいと言われた。
4年前(胃炎・ピロリ菌陽性)との結果の違いに、衝撃を受けて帰宅。
ネットの情報や書店の本などを読みあさると、実にさまざまな情報が載っていた。「がん検診は受けないほうが長生きする」「早期で見つかっても、本当のがんはその時点で転移しているので、治療をしても意味がない……」これらの情報に大変心を動かされた。
心配させたくなかったため母親には連絡せず、紹介された総合病院を受診しないことにした。そして、その後の胃がん検診を受けるのもやめてしまった。
そしてあれから4年。近ごろ、食後に胃のあたりが重苦しく感じられるようになった。市販の胃薬を飲み続けても一向に良くならず、今度は会社の近くの病院を受診した。
診察・検査
医師に胃の不調を伝えたところ、あらためて胃カメラ検査を受けることになった。今までがん検診を受けたことはあるかと問われたが、独断で治療をやめてしまった負い目もあり、本当のことは言えなかった。検査の結果は後日出るということで、次回の来院予約をしてその日は帰宅した。診断・治療方針
後日結果を聞きに行くと、明らかに胃がんとの診断。「やはり自分はがんで、急いで治療したほうがよかったのか。」後悔の念に駆られると同時に、あとどれぐらい生きられるのだろうかという強い不安に襲われた。がんの進行度合いを調べるためにCT検査を受け、その結果を聞くために再度外来を受診した。医師によると、診断は進行胃がんだが、リンパ節転移はがんの近くに限られており、ステージIIBの状態。手術すれば完治の可能性があるとのことだった。
治療の経過
翌月、胃の3分の2を切除する手術を行った。幸い術後の経過は良好で、3週間で退院。傷口はまだ若干痛み、とれる食事の量も減ってしまったが、完治を目指せるというだけで前向きな気持ちになることができた。体力は落ちたが、仕事に復帰することもできた。今回の闘病は、健康に対する認識を大きく変える出来事となった。これからは根拠のない情報に惑わされずに、ほかのがん検診も受けてみようと思っている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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