診断にも手術が必要? そのあとは抗がん剤治療へ
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
70歳の女性。酒も飲まずタバコも吸わず、健康であることを自負していた。受診までの経緯
先日人間ドックを受けたところ、CT検査で胸に異常な影があると言われ、総合病院を受診した。診察・検査
息切れや咳(せき)などの自覚症状はなく、聴診でも肺に問題はなさそうだった。考えられる病気がいろいろあるので、まずは血液検査を行うことになった。その結果、肺がんを疑わせるCEAという腫瘍マーカーの値が高く、詳しい検査を行う必要があるということだった。診断・治療方針
診断のためには、CT検査で見られた影の部分を採取して詳しく調べる必要があるという。気管支鏡と呼ばれる内視鏡を使った検査を行うこともあるが、CT画像を見る限りカメラが届きにくい場所に影があるため、手術で影の部分を取り除くほうが現実的ということだった。まだ診断の段階なのに「手術が必要」と言われ不安を覚えたが、仮に気管支鏡で診断がついたとしても、そのあとの治療で手術が必要になることは十分考えられるという説明を受け、家族とも相談して手術を受けることにした。手術は胸腔鏡と呼ばれるカメラを使ったもので、胸に小さな穴をあけて、そこから内視鏡や細い器具を入れて行われるため、体への負担はそこまで大きくないということであった。治療の経過
手術は4時間ほどで終了し、1週間ほどで退院できた。退院後、外来を受診すると診断結果が出ており、肺がん(ステージIIA)と告げられた。医師によると、肺がんの中で最も発症の頻度が高い、肺腺がんであるとのこと。肺がんの中では比較的予後がよい種類だが、ある程度がんのサイズが大きかったので、再発防止のために点滴の抗がん剤治療を行ったほうがよいと言われた。これまで病気知らずの体ではあったが、しっかり治療したいと思い、抗がん剤治療を受けることにした。
2週間後に入院予約を入れてもらい、抗がん剤治療を開始した。毎日点滴を流されるのかと思ったが、抗がん剤を入れるのは治療初日と8日目だけで、それ以外の日は副作用予防の点滴や内服をするだけだった。
起こる可能性があると説明されていた副作用のうち、便秘には苦しめられたものの、下剤を飲むことで改善した。ほかにも、3週間くらいたつと徐々に脱毛が進んできたが、治療が終わればゆっくり元通りになると言われていたので、その言葉を信じて治療を続けた。
治療は、約3週間おきに入院を繰り返し、抗がん剤の点滴が終わればその都度退院することができた。幸い、治療中「一番怖い副作用」と言われていた感染症にはかからず、約4カ月間の治療を無事にやり切ることができた。
再発していないかどうかを調べるために、半年ごとに病院で診察を受け、2回に1回はCT検査を行っている。徐々に髪の毛も生えてきて、半年後には外出するのも嫌ではなくなった。治療後3年がたち、再発の兆候が見られなかったことから、以降は毎年健康診断で画像検査を受けるように言われ、治療していた病院からは卒業となった。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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