便に混じる真っ赤な血。痔だと思っていたら……
最終更新日:2018.7.10
70代/男性
大腸がん
患者プロフィール
72歳の男性。数年前から時々、便に真っ赤な血が混じっていたが、痔(じ)からの出血だと思い、病院には行っていなかった。受診までの経緯
最近、便に血が混じる頻度が多くなり、トイレを出たあとも便がまだ残っているような感覚があった。体を動かすと息が切れ、胸が「ドクドク」するような症状も出てきたので、不安に思って近くの病院を受診した。診察・検査
診察では、まぶたの裏側が青白く、軽い貧血かもしれないと言われた。血液検査では、やはり貧血気味ではあったが、そのほかに異常はみられなかった。便に血が混じることがあるということで、下部消化管内視鏡(大腸カメラ)検査を行ったところ、肛門から20㎝ほど入ったところにあるS状結腸に進行がんと思われる腫瘤(しゅりゅう)が発見された。がんの進行によりS状結腸は狭くなっており、その先に内視鏡を進めることができなかった。組織採取を行い、顕微鏡で確認して、大腸がんの確定診断がついた。
転移の有無を調べるために、胸腹部CT(コンピューター断層撮影装置)検査や腹部超音波(エコー)検査を行ったところ、周囲のリンパ節が腫れており転移が疑われたが、肝臓や肺などほかの主要な臓器への転移は見つからなかった。
診断・治療方針
S状結腸がんに対して、手術による治療を行うこととなった。医師からは開腹による手術と腹腔(ふくくう)鏡による手術を提示され、術後の痛みが少なく回復が早いと聞いたので腹腔鏡による手術を希望した。治療の経過
予定通り、腹腔鏡によるS状結腸切除術が行われた。腫れていた周囲のリンパ節まで含めて切除を行った。術後は翌日から水分の摂取を許可され、その後数日で流動食、おかゆが食べられるようになり、順調に回復。術後の食事についての指導を受けて、術後10日目に退院となった。手術後初の外来で、手術により摘出した組織を顕微鏡で観察した病理結果についての説明があった。やはり周囲のリンパ節に2個の転移が発見され、ステージIIIAとのことだった。
術後の再発予防のための抗がん剤治療を進められ迷ったが、ステージIIIの場合は再発の確率が高く、抗がん剤治療によりその可能性を下げられると聞いて、治療を受けることを決心した。
化学療法はカペシタビン(商品名:ゼローダ)という飲み薬の抗がん剤とオキサリプラチンという点滴の抗がん剤を組み合わせて行われた。カペシタビンは1日2回5錠ずつの内服で、2週間内服したあとは1週間の休薬期間がある。オキサリプラチンは3週間に1回、2時間程度の点滴を行うとのことだった。治療は外来通院で行われ、専用の化学療法室で点滴を行い、薬を処方されて帰宅した。
直後から手やのどのしびれが出現したが、1週間ほどで消失した。4~5日目にやや倦怠(けんたい)感があり、食欲も普段の8割くらいに低下したが、数日で改善した。担当医からは4コース(3カ月間)で治療を終了すると説明があった。それ以上化学療法を継続しても再発率に差が出ないうえに、副作用のしびれがどんどん強くなるという説明であった。
同じステージIIIであっても、再発の危険性の度合いによって、3カ月の治療でいい人と、6カ月行う必要がある人とがいるらしい。がんの深さやリンパ節への転移個数によって再発の危険性が異なるとのことだった。
4コース終了後、若干のしびれは残ったものの、3カ月ほど経過したらほとんど気にならなくなった。現在は3カ月に一度外来に通院して、採血やCTなどの検査を受けて再発の有無を確認している。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。