夜間の現場で倒れた。実は数年前から高血圧を放置
最終更新日:2019.1.15
患者プロフィール
58歳の男性。建設会社で現場監督をしている。多忙のため、食生活は乱れ、睡眠時間も不規則になりがちである。
昔から体は丈夫で健康自慢、病院にはほとんど行ったことがない。
数年前から会社の健康診断で高血圧を指摘されていたが、気にとめていなかった。
受診までの経緯
夜間、道路舗装の工事中。機材を運ぼうとしたところ、突然現場で倒れた。会社の同僚が名前を呼んでも返事がない。あわてて救急車を要請し、病院へ搬送された。
診察・検査
搬送先の病院にて、呼びかければ目を開けるが返事はせず、すぐに目を閉じてしまうような状態であった。右側の顔面、腕、手のひら、足に対して痛みの刺激を加えるが、ピクリとも動かない。
血圧は230/120mmHgと非常に高かった。
意識障害の原因を精査するため、すぐさま頭部CT(コンピューター断層撮影装置)検査を行うことになった。
診断・治療方針
CT検査では、脳の「被殻」と「視床」という部位に出血がみられ、脳内の出血が脳組織を破って脳室(脳内の「脳脊髄(せきずい)液」という液体があるところ)まで流れ出てしまっている状態であることが判明。この状態は「脳室内穿破(のうしつないせんぱ」」と呼ばれ、出血している部位から「被殻出血、視床出血に伴う脳室内穿破」と診断された。
緊急入院し、同日「脳室ドレナージ」という治療を行うことになった。
これは、頭頂部から脳脊髄液のある空間まで管をいれて血液と脳脊髄液を含む液体を抜き出し、頭の中の圧力を下げる治療である。
また、挿管して人工呼吸器につないで呼吸を管理し、血圧を下げる薬と脳のむくみを防止する薬を点滴で投与し、注意深く経過を確認していくことになった。
治療の経過
治療を継続して1週間後、頭の中の圧が正常となったところで脳室ドレナージの管を抜くことになった。状態をみながら人工呼吸器を外していくと意識が回復。しかし、顔の右側、右の手足には麻痺(まひ)が残ってしまった。
車いすでの生活となったが、食べ物を飲み込む動作や、手足を使う動作のリハビリテーションを行い、食事や服を着るなどの日常生活に必要な動作は、ある程度独力でできるようになった。
病気の原因となった高血圧を改善するため、これまでの生活習慣を見直し、塩分の多い食事を控えるようになった。
また、血圧を下げる飲み薬を処方され、毎日服用している。今後は定期的に通院し、経過観察を行っていくことになっている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。