つらい咳の症状。今からでも遅くはないと禁煙開始
カルテ
- 症状
最終更新日:2018.5.28
患者プロフィール
60歳の男性。20歳のとき、先輩にタバコを勧められ、以来40年間1日20本吸ってきた。仕事が終わったあと家で晩酌をするのが何よりの楽しみで、30年間毎晩、日本酒1合を飲んでいる。運動習慣はないが、通勤時に1日平均5000歩程度は歩いている。受診までの経緯
12月の初めから1カ月間、風邪をひいていないのに咳(せき)が止まらない。妻に「なにか重大な病気なのではないか」と言われて心配になり、近所のクリニックを受診した。診察・検査
医師に症状を伝えると、「今まで咳と一緒に熱が出たことはありますか?」と尋ねられた。熱はなかったと伝えると、呼吸音の聴診や胸の打診をされた。タバコを長年吸い続けたことが原因で気管支の先が腫れていたり、肺が一部壊れたりしているかもしれないと言われた。通勤で電車を利用していることを伝えると、医師から「駅の階段で息が切れるような経験はないですか?」と聞かれた。自分では今まで気にしたことはなかったが、確かに階段の途中で休んだことがあった気がする。
その後、呼吸機能検査(スパイロメトリー)や胸のX線撮影を行った。
診断・治療方針
検査の結果、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)(COPD)と診断された。「咳が続いているのがつらいです」と医師に伝えたところ、気管支を広げる薬と、炎症を抑える薬を処方してもらうことになった。慢性閉塞性肺疾患はタバコが原因で起こることの多い病気らしく、医師からは「今からでもすぐに禁煙しましょう」と言われた。
「年をとってから禁煙しても、そこまで効果はないだろう」と今まで禁煙してこなかったが、「タバコは肺がんのリスクにもなりますから、一緒に禁煙できるよう頑張りましょう」とのこと。今からでも遅くはないと言うので、禁煙に挑戦してみることにした。
毎晩の晩酌は続けてもよいかと尋ねると、今回の病気とアルコールは直接関係していないが、毎晩大量のお酒を飲むことは体によくないので、タバコと一緒に少しずつ減らしていきましょうと言われた。
また、季節柄インフルエンザ感染をきっかけに症状が悪くなることがあるそうなので、インフルエンザワクチンの接種を行うことになった。
治療の経過
受診後から、気管支を広げる薬(β2刺激薬)と炎症を抑える薬(吸入ステロイド)を服用することになった。同じ時期から禁煙を始め、タバコの代わりに市販のニコチン入りガムをかむことにした。アルコールに関しては、日々の習慣にもなっており完全に禁酒することは難しかったが、1日に飲む量をまずは半分に減らすよう心掛けている。
病院にも定期的に通院し、経過を医師に報告。そんな生活を3カ月ほど続けたところ、気が付いたら以前のように咳が出ることはなくなっていた。医師にそれを話すと、「検査結果からも、少しずつ治療の効果が出てきていますよ」と言われた。
今では、ニコチン入りガムをかんでいればタバコを吸わなくてもイライラしなくなり、炎症を抑える薬(吸入ステロイド)は使わなくてもよくなった。咳などのつらい症状も改善され、「お父さんがタバコ臭くなくなった」と家族からの評判も上々である。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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