風邪薬では治らない熱と関節痛。実は肝炎だった
最終更新日:2018.6.12
患者プロフィール
50歳の女性。主婦で、夫と中学生の息子2人の4人家族である。運動はほとんどしない。体型は痩せ型である。お酒は飲まない。
趣味は特になく、一日中家事をしているかテレビをみて過ごしている。
受診までの経緯
2週間前から38度台の熱が出始め、全身の関節が痛くなった。初めはインフルエンザかと思い、病院に行き検査を受けたが、インフルエンザウイルスは検出されなかった。風邪薬をもらって飲んだものの、熱も関節の痛みも治らないまま5日が過ぎた。
もしや関節の病気なのだろうかと思い、家の近くにある整形外科に行ってみた。
そこで血液検査を受けると、肝臓の機能が低下していることが分かった。
精密検査を受けるよう勧められたので、専門の病院で診察を受けることにした。
診察・検査
診察で、白目が黄色くなっていないこと、首のリンパ節が腫れていないことが確認された。次に、腹部をみてもらったが、肝臓が触れるほどは大きくなっていなかった。肝臓の機能が悪くなる原因として、ウイルス感染や食生活の乱れなどが考えられるが、今回のように関節が痛くなる場合には、免疫の異常が原因になっているタイプの可能性もあるという。
その日に受けた血液検査と腹部超音波(エコー)検査の結果からも、やはり免疫の異常が疑わしいとのこと。肝機能の低下を示す数値も相変わらず高いままであった。
CT(コンピューター断層撮影装置)検査では、念のためがんがないか探したが、見つからなかった。診断を確定させるためには、肝生検が必要だと言われた。肝生検とは、肝臓に針を刺して組織の一部を採取し、詳しく調べる検査である。比較的症状が重いので、肝生検はその日に行われ、検査結果は翌日に聞くことになった。
診断・治療方針
翌日、自己免疫性肝炎と診断された。本来は、外敵だけを攻撃するはずの免疫が、自分の肝臓を攻撃してしまうようになる病気だという。50~60歳の女性に多く、原因は不明で、国の難病にも指定されている。
治療は、ステロイド薬の一つであるプレドニゾロンという薬を飲むことだという。もし途中で勝手にやめたりすると、肝硬変という肝臓の大部分が壊れる病気になってしまい、命にも関わると言われた。
治療の経過
医師に言われたとおり、プレドニゾロンを2週間飲み続けた。病院で血液検査を受けたところ、肝機能に関する数値がよくなっていることが確認できた。今後も2週間に1回は受診し、慎重に体の状態を確認しながら治療を続けていく方針となった。
治療を始めて2カ月になるが、毎回の検査で徐々に改善がみられたため、プレドニゾロンを徐々に減らしていくことができている。
※症例は特定の個人の実症例にもとづいたものではなく、医師の経験から起こりうる症例を作成しています。また、本症例作成時点での情報であり、現時点での標準治療や医療機関で行われている最新治療とは異なる場合があります。
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