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21件の病気解説と174件の症例情報

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2週間前に一過性脳虚血発作。手術で脳梗塞を予防

年齢/性別40代/男性

病名脳梗塞 高血圧

2週間前、急に右の手足が動かなくなり、うまくしゃべることもできなくなった。手足が動き、普通に話せるようになるころには1時間が経過。仕事が忙しく、その後病院には行けていなかった。

鼻にはポリープ。市販の鎮痛薬でアスピリン喘息に

年齢/性別30代/女性

病名喘息

3年前に喘息(ぜんそく)と診断される。先月鼻づまりが気になって耳鼻科を受診したところ、鼻の中に「鼻茸(はなたけ)」というポリープがあると言われた。ポリープが大きくなったら手術が必要だが、まだ小さいということで経過観察となった。

2人目がほしい。妊娠中も吸入ステロイドは継続?

年齢/性別30代/女性

病名喘息

3カ月ほど前から、夜になると咳(せき)がよく出る。その後、冷たい空気を吸ったり、線香の煙を吸ったりするだけで咳が出るようになった。 最近は咳だけにとどまらず、息も苦しくてよく眠れない。そろそろ2人目の子どもがほしいと思っている。

風邪が原因の喘息発作。アレルギー性鼻炎の持病も

年齢/性別40代/女性

病名喘息

25歳のときアレルギー性鼻炎と診断され、花粉の季節だけ抗ヒスタミン剤を服用している。2日前から喉の痛み、鼻水、38.0度の発熱がある。昨日からは咳も出はじめ、ものが飲み込めないほど息が苦しくなってきた。

「被殻」に多量の出血。開頭手術とリハビリが奏功

年齢/性別70代/女性

病名脳出血 高血圧

健康診断は5年に1度くらいしか受けていない。風呂場で倒れているところを娘に発見され、救急車で病院に搬送された。呼びかけに対して目を開けていたが、自分の名前を言うことはできなかった。

発熱と眠れぬほどの咳。マイコプラズマ肺炎だった

年齢/性別20代/男性

病名肺炎

季節の変わり目で、3日前から体調を崩している。熱があり、咳(せき)がひどいため、夜も眠れない。咳をし始めると何回も続き、そのたびに喉(のど)が痛くなる。風邪だろうかと思ったが、不思議と痰(たん)や鼻水は出なかった。

高血圧治療中の被殻出血。手術せず薬物治療で回復

年齢/性別50代/男性

病名脳出血 糖尿病 高血圧

毎日ビール2缶と日本酒1合。タバコは1日1箱。肥満体型で、健康診断では軽度の糖尿病と高血圧と言われ病院に通っているが、よく薬を飲み忘れてしまう。仕事中、突然「頭が痛い」と言いながら倒れ、病院に搬送された。

2カ月続く咳。やめられないタバコと猫背も一因?

年齢/性別70代/女性

病名逆流性食道炎 骨粗しょう症

2カ月前から咳(せき)が出るようになった。痰(たん)はないが、鼻水と鼻づまりが時々ある。 風邪だと思い市販の風邪薬を試したが、症状は改善しなかった。そういえば、最近は胸やけもひどい。

夜間の現場で倒れた。実は数年前から高血圧を放置

年齢/性別50代/男性

病名脳出血 高血圧

夜間、道路舗装の工事中。機材を運ぼうとしたところ、突然現場で倒れた。会社の同僚が名前を呼んでも返事がない。あわてて救急車を要請し、病院へ搬送された。

食道裂孔ヘルニア。胃酸が逆流しやすくなっていた

年齢/性別70代/女性

病名逆流性食道炎 糖尿病

2年ほど前から、脂っこい食事をしたあとに胸やけがするようになった。 この胸やけは、床の雑巾がけや洗濯物を干すときなど、前かがみの姿勢になると余計にひどくなるようだ。

人気記事

原因は「カチカチの血管」だった? 高血圧のQ&A

病気に対する疑問や不安に、横浜市立大学大学院医学研究科 循環制御医学 主任教授の石川義弘先生が答えてくれる「教えて! 石川先生」。第1回の病気は、「高血圧」です。高血圧を放置すると、心臓や血管などのさまざまな臓器に影響を及ぼすことも。しかし、正しい服薬・食生活の改善・定期的な運動・ストレスの軽減などを心がけ、きちんとコントロールすれば、決して怖い病気ではありません。高血圧とは? 高血圧の基準・原因最高、最低がどのくらいになると、高血圧というのですか?日本高血圧学会では、最高血圧(収縮期血圧)140mmHg以上、最低血圧(拡張期血圧)90mmHg以上を高血圧と定義しています。一般的には、最高が120mmHg、最低が80mmHgを正常な血圧としています。どのようにこの基準が設定されたのでしょうか?これらの基準は、統計結果をもとに設定されています。過去に何万、何十万というたくさんの人の血圧を測り、5年、10年たったとき、「どのくらいの血圧の人」が「病気や合併症を起こしにくいか」を調べたのです。しかし極論すれば、一人ひとりの年齢・性別から生活環境・遺伝子まで、何もかもが違うわけですから、同じ140/90mmHgという値であっても、その人にとっては非常に高かったりするかもしれません。また、将来はこの基準も変わるかもしれません。年をとると血圧が高くなると言われています。年齢と共に血圧が高くなるのは、生理的な加齢現象です。血圧の上昇は、ある意味とても物理的な現象です。年齢と共に血圧が上がるのは、血管が硬くなるからです。ゴムホースを血管、流れる水を血液、ポンプを心臓と仮定します。ゴムホース(血管)が柔らかいうちは、多少ポンプ(心臓)を強く押しても、ゴムホース(血管)は柔軟に広がりますから、血圧がそれほど上がりません。しかし、ゴムホース(血管)は、加齢と共にだんだん硬くなって伸展性がなくなりますから、ポンプ(心臓)を強く押すと、血圧も高くなってしまいます。カチカチに硬くなったホース(血管)に強い力をかけると裂けてしまうこともあります。若いときに血圧が正常だった人でも、年をとれば血圧が高くなる可能性が十分にあるということです。さらに血圧は、物理の法則であるオームの法則*によって規定されます。物理学では、抵抗と電流が大きければ、電圧は上がります。血圧でも、血流量が少なければ血管が縮み、逆に多ければ血圧が上がります。これを調整するのが降圧剤です。*V(電圧)=Ω(抵抗)×R(電流):電圧は、電流が大きくなるほど大きくなり、抵抗が大きくなるほど大きくなる日や時間によって、血圧が高かったり、低かったりすることがあります。140/90mmHgという高血圧の基準は、安静状態で測った値です。ですから、ある時間だけ最高血圧が160mmHg だったからといって、慌てることはありません。私も普段は血圧が低いのですが、運動後に測ると最高血圧が160mmHgを超えることは珍しくありません。緊張したり、ストレスがかかったりしたときにも、血圧は上がります。生きている限り、血圧は上がったり下がったりするものなのです。しかし、1日中ずっと高いとなると、ゴムホース(血管)の中に常にたくさんの水(血液)が流れて、ホースがパンパンになっている状態と同じですから、ゴムホース(血管)が劣化したり、破れたりしてしまう可能性があります。血圧を測るのに最適な時間はありますか?個人差はありますが、血圧というのは寝ているときに低く、目が覚めて起きると高くなるのが一般的です。しかし、寝ているときが高くて、起きているときのほうが低いという人もまれにいます。また、日中の血圧は、活動量に応じて上がったり下がったりします。ですから、24時間血圧計を付けて1日の血圧を測れればよいのですが、実際には難しい。そこで患者さんには「起床時と就寝時の2回、血圧を測ってください」と申し上げています。朝起きて血圧を測るときは、まず膀胱(ぼうこう)を空にして緊張をとり、ベッドの上などにしばらく座って、落ち着いてから測るといいでしょう。大事なことは、血圧を測る時間と条件を、毎日同じにすることです。ミニコラム:その昔、高血圧の人はいなかった? 高血圧は、生活習慣病のひとつです。その原因について思いをめぐらせると、おそらく昔は高血圧の人は今よりも少なかったはずです。例えば、運動不足。江戸時代には、タクシーもなければバスも地下鉄もありませんでしたから、人びとは毎日10キロ、20キロいう距離を歩いていたはずです。ですから運動不足とは無縁でした。しかし、平成に暮らす私たちが、毎日10キロ歩くのは容易なことではありません。1日中パソコンの前に座っていて、数百メートルしか歩かないということも少なくないはずです。人間の祖先と言われるクロマニョン人やネアンデルタール人の時代には、いったい1日何キロ歩いていたのでしょうね。おなかがすいたら木の実をとるために山の中を歩き回り、肉を食べようと思ったら狩りに出掛け、まずはマンモスを探すところからです。しかし今は、スーパーマーケットに出掛ければ、いろいろな種類の肉が並んでいます。運動しなくても、食べたいときにいつでも肉が食べられるわけです。最近は、カップラーメンやインスタント食品も手軽に食べられるようになりました。しかしこれらが出現してからまだ数十年です。この先、50年、100年とこれらの食品を食べ続けたとき人間の血圧がどうなるのかは、現時点ではまだわかりません。血圧を下げる方法、やっぱり基本は塩分制限と運動薬を飲まずに、血圧を下げる方法はありますか?血管は、縮まった状態が続くと硬くなって、血圧が高くなります。つまり、血管がしなやかになれば、血圧を下げることができるというわけです。血管には、自らの拡張・収縮を制御する能力があります。人間が運動すると、筋肉にはたくさんの酸素が必要になって、血管は自ら広がります。つまり、人間が定期的に運動すれば、血管も定期的に自らを広げる練習をすることになります。そして、血管を広げるときには、私たちが血圧を下げるために飲んでいるどの薬よりも優秀で、性能のよいホルモンのような物質を出していることがわかっています。運動することで、何よりも効き目のあるお薬が、自分の体内で、それもただで作れますからね。これ以上安上がりな治療方法はないと思います。しかし、ものすごく血圧が高い人がいきなり運動を始めるのは危険ですから、その場合はまずは降圧剤を飲んで、ある程度まで血圧を下げてから運動することをお勧めします。そこから薬を減らしていくことはよくあります。血圧を下げるためには、どのような運動をすればよいのでしょうか?私の言う運動は、普段の生活のなかで可能な、散歩やウォーキング、ストレッチなどです。患者さんにはよく「できる限りの運動をしてください」と申し上げています。「運動をしなさい」と指摘されたからといって、オリンピック選手のようなハードな運動を始める必要はありません。徐々に体を慣らしていって、疲れすぎない程度の運動量を見つければいいと思います。よく「1万歩歩きましょう」と言われますが、決してすべての人に共通するものではありません。ちなみに、力むような運動ではなくて、適度に「ハーハー」と息をする有酸素運動をお勧めします。塩分の摂取を減らしても血圧が下がらない人がいるそうですね。高血圧に関係する遺伝子は、おそらく何十種類も何百種類もあり、そのなかには塩分が血圧に影響するかどうかについての遺伝子があるでしょう。その遺伝子を持っている人もいれば、持っていない人もいるでしょうから、塩を制限することによって血圧が下がる人もいれば、あまり下がらない人もいる、ということになります。しかし「血圧を下げたいなら塩分を控えなさい」と言われます遺伝子の話はさておき、それが患者さんにできる簡単な治療法だからです。例えば、漬物の味を見ないで最初からしょうゆをかける人なら、しょうゆをかけるのを止めるだけで、けっこう塩分を控えることができます。「漬物を食べない」は難しいけれど、しょうゆをかけるのを我慢することならできませんか?「しょうゆを絶対使ってはいけない」「みそ汁を飲むな」とい言われたらつらいかもしれませんが、減塩しょうゆや減塩みそに変えることなら、少し努力すれば、できる範囲なのではないでしょうか?ミニコラム:古代ローマ人や戦国武将にとって「塩は貴重品」給料をさす「サラリー」の語源は「ソルト」。実は、塩のことなのです。古代ローマでは、給料替わりに当時貴重だった塩を配っていたからだそうです。今の日本人の塩分摂取量は1日10gと言われていますが、古代ローマ人が1日に摂取する塩の量はせいぜい1日3~4g。これは量にして、われわれの半分以下です。おそらく、古代ローマ人は塩分のとりすぎで高血圧になりたくても、それだけの塩を手に入れることはできなかったと考えられます。日本の戦国時代には、「敵に塩を送る」という故事の語源となった、上杉謙信の塩送りという逸話が残っています。今川家により塩を止められた武田信玄の窮状を見かねて、上杉謙信が塩を送ったというものです。人びとの命を守るために、塩がいかに貴重だったのかを表す逸話です。また、昭和の終わり頃までは、塩は日本専売公社が販売していました。政府が管理すべき重要なものだったのですね。降圧薬による治療は一生続く? 認知症との関連は降圧剤を飲み始めたら、一生飲み続けなければいけないのですか?半分本当ですけれど、半分は間違いですね。血圧が高いということには、それなりに原因があるわけです。つまり、血圧を下げたいなら、体重だったり、食生活だったり、座りっぱなしだったり、ストレスだったり、その人の血圧を上げている原因をなくせばいいんです。そういう意味では、降圧剤を一生飲み続けなくてはいけないというのは間違いですね。太っていることが原因なら「痩せる」、塩分が影響しているなら「塩分を制御する」、いつも座りっぱなしなら「ときどき運動する」、仕事にストレスがあるなら「ストレスのない状態にする」などが、血圧を下げる本来の治療方法です。でも、平成のこの世の中ではできないことも多いかも……。となれば、薬の力を借りて血圧を下げるしかありません。自分が努力できないのであれば、降圧剤をずっと飲み続けるという図式になるのは仕方のないことですね。しかし、ものすごく血圧が高い人がいきなり運動を始めるのは危険ですから、その場合はまずは降圧剤を飲んで、ある程度まで血圧を下げてから運動をすることをお勧めします。なかには、最初から血圧が200を超えているほど高いのに、「薬はきらい、努力で治します」という方もいらっしゃいますが、それは危険です。まずは薬の力を借りて、ある程度まで血圧を落とす。その上で運動やダイエットに取り組んだり、ストレスを減らしたりすれば、薬の量はどんどん減らせますから。そうしているうちに薬を飲まなくても良くなったという方は、私の患者さんのなかにもたくさんいらっしゃいます。降圧剤の副作用で、認知症を引き起こすと話題になりました。血圧が下がりすぎると、脳の血流が落ちて認知症になるという話ですね。普段われわれ人間は、頭を上にして生活していますし、血液も下から上に流れるのは難しいので、降圧剤を服用して血圧が下がることで、脳の血圧も低下します。一般的に認知症の方は脳の血流が低下すると言われていますから、心配するのは無理のないことです。しかし、一概に血圧を下げたからといって、それがすぐに認知症につながるとは、言い切れないと思います。下がりすぎれば薬を減らせばよいだけのことです。むしろ高血圧をしっかりと治療したほうが、脳卒中の予防になるなど、はるかに有用です。これだけ医学が進歩しているのですから、もっと簡単に血圧を下げる方法があるのではないでしょうか?腎臓につながる血管の神経を焼き切るといった、いわゆる外科的な方法があります。何をやっても下がらなかった血圧が、劇的に下がったという話もあります。しかしどの人にも絶対的に効果があるとは言えないでしょう。ある人にはとてもドラマチックに効くけど、ある人には全く効かないということです。他にも、自律神経を刺激して、血圧をコントロールする方法もあります。最近は、血圧が悪者のごとく扱われがちですが、血圧はそもそも生命を維持するために絶対的に必要なものであり、その血圧は、自律神経によって制御されているのです。ですから血圧自体は悪者ではありません。医学の世界に「絶対」はありませんから、この方法・薬だったら「100%治る」などということはありません。むしろいろいろな薬や治療を試して、自分に合った治療法を選んでいくことですね。そういった治療を行うことが、専門医の得意とするところでもあります。インタビュー・文:たなか みえ/イラスト:浅海 司関連記事40歳以上の日本人のほとんどが動脈硬化の危険因子をもっている?タマネギ・赤ワインの効果は? 動脈硬化のQ&A

石川 義弘

2018.5.28

インフルエンザ(前編)A型とB型、何が違う?

例年1月から3月頃にかけて流行するインフルエンザ。「今期はA型が流行している」とのことですが、そもそもインフルエンザのA型とB型って、何が違うのでしょうか?そんな疑問を解決するべく、感染症の専門家である国立病院機構・三重病院 臨床研究部長の谷口清州先生にお話を伺いました。インフルエンザのウイルスの型・亜型A型とB型の違いについてお話しする前に、まずはウイルスの型(タイプ)と亜型(サブタイプ)についてご説明しましょう。わたしたちがよく耳にするA型、B型などのいわゆる「型」は、インフルエンザウイルスの内部構造によるものです。さらにA型は、「亜型」により細かく分類されていきます。B型はA型に比べて多様性に乏しいので亜型はありませんが、山形系統とビクトリア系統に分類されています。インフルエンザウイルスの表面には、HAタンパク、NAタンパクという2つのスパイク(突起)があり、そのうちHAタンパクのスパイクが喉(のど)の受容体(シアル酸)にくっつくと、インフルエンザに感染します。感染すると、ウイルスは細胞の中でどんどん増えて、最後に細胞から外へ出ていこうとしますが、このときにもHAタンパクは表皮細胞上のシアル酸にくっついてしまい、ウイルスは細胞から離れることができません。それを切り離すのが、NAタンパク。NAタンパクによってHAタンパクとシアル酸の結合が切り離されると、ウイルスは遊離し、次の細胞に感染することができます。このようにして、どんどん気道の中で広がり、インフルエンザのさまざまな症状が出てくるというわけです。NAタンパクを阻害する薬が、皆さんご存じのタミフルやリレンザです。A型インフルエンザウイルスのHAタンパクは16種類、NAタンパクは9種類あるので、H1N1からH16N9まで16×9通りの抗原性の異なる亜型があります。これらすべての亜型はカモなどの水禽類(すいきんるい)の世界に存在しますが、それらがときどき人間の世界に侵入して感染するのです。これまでにH1N1(Aソ連型)やH3N2(A香港型)、H2N2(アジア風邪)が進入、流行したことが知られています。ちなみに、2009年には同じくA型の「H1N1pdm09」が人間界に入っています。当初、メディアでは「豚インフルエンザ」として騒がれたので、覚えておられる方も多いかもしれませんね。ミニコラム:インフルエンザウイルスの「保有動物(リザーバー)」ウイルスは、基本的に生き物に寄生して生存していますから、必ずそのための保有動物(リザーバー)がいます。A型インフルエンザウイルスは水鳥(水禽類)界で循環・維持されているので、このウイルスのリザーバーは水禽類をはじめとする鳥たち、ということになります。そのほかの例を挙げると、サルモネラ菌やカンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O157)などは、有袋類(ゆうたいるい)の動物が保有していますが、ヒトに感染すると食中毒を起こします。このように、もともと動物がもっていた病原体が人間に感染して起こるものを「人獣共通感染症」といいます。例えば、水禽類の鳥は、鳥インフルエンザの原因となるA型インフルエンザウイルスを腸管にもっていますが、症状が現れることはありません。しかし、鶏などの家禽類(かきんるい)や人間の世界に侵入して何代か経ることで、症状が現れるようになるといわれています。人間の腸管内にも、例えばビフィズス菌や大腸菌などのさまざまな細菌が生息していますが、それらは腸の中で共存関係を作っているため、多くの場合、病原性はありません。しかし、共存できない細菌、例えば腸管出血性大腸菌O157などが人間の体内に侵入すると、感染症をもたらすことになります。病原体にしてみれば、自分たちが生存するために人間の体内で増殖しているだけなのでしょうが、結果として感染症状を引き起こしてしまうのです。A型は大きな変異で免疫を逃れ、パンデミックを起こす型や亜型についての話が済んだところで、いよいよA型とB型の違いについてお話ししていくことにしましょう。繰り返しになりますが、A型インフルエンザウイルスには、HAタンパクとNAタンパクの組み合わせにより、144通りの抗原性の異なる亜型があります。A型インフルエンザは、数十年に一度、亜型が変わるという大変異を起こすことが知られています。突然別の亜型ウイルスが出現して、従来の亜型ウイルスにとって代わることがあるのです。もしそれが、人間が接したことのないウイルスだった場合、人間界の誰も免疫をもっていないので、たくさんの人が急速に感染、重症化し、パンデミック(世界的大流行)に陥ります。パンデミックが起こるのは、大きな変異を起こしやすいA型インフルエンザウイルスだけです。今のところ、これら144通りのA型インフルエンザ亜型のうち、人間界でパンデミックを起こしたのは、H1N1(Aソ連型)、H2N2(アジア風邪)、H3N2(A香港型)、H1N1pdm09などに限られています。ちなみに、ソ連型や香港型というのは、最初に流行した地名に由来しており、H1N1pdm09の「pdm」は「パンデミック」、「09」は「2009年」という意味です。また、先ほど「突然出てきた亜型ウイルスが、従来の亜型ウイルスにとって代わることがある」と言いましたが、突然現れたH1N1pdm09が人間界に定着してからは、不思議なことにH1N1(Aソ連型)の流行は見られなくなりました。人間界に適応したB型は、治りかけたころ他人にうつしやすい一方、B型インフルエンザは、50年くらい前に人間の世界に侵入し、今では完全に人間に適応しています。なぜなら、B型インフルエンザウイルスは、通常ヒトにしか感染しないからです。その点がA型と大きく異なります。「A型とB型と何が違うのか?」という質問をときどき受けることがありますが、その症状を見ただけではA型とB型を区別することはできません。しかし、データを読み解いてみると、A型は「熱が出るときに一番ウイルス量が多く」、B型は「症状がおさまってくる後半にウイルスが多い」ことが報告されています。つまり、他人にうつさないように、より注意が必要なのはB型なのです。なぜなら、ちょうど治りかけて、活動を始めるころにウイルス量が多くなるから。「もう治った」と思っていても、周りの人にうつしてしまう可能性が高いということです。ヒトからヒトに感染しなければ自分たちが生きられないことを、ウイルスはわかっているのでしょうか。こうした性質から、B型インフルエンザはよりヒトとの共存に適応したウイルスだといわれます。インフルエンザは根絶できるか? ウイルスたちの生存戦略A型インフルエンザは何十年かに一度大変異を起こすと言いましたが、A型であってもB型であっても、インフルエンザウイルスは毎年小さな変異を起こして、わたしたちの免疫機構を逃れています。だから毎年、たとえワクチンを打ったとしても、インフルエンザにかかる人がいるのです。それだけにとどまらず、彼らは自分が生存するためにヒトの免疫を抑制する遺伝子をもっているので、何度インフルエンザにかかっても、「完璧な免疫」というのはできません。すばやく変異し、ヒトの免疫を抑制し、何度も感染するというのが、インフルエンザウイルスの生存戦略です。わたしたちの免疫機構は、今のところインフルエンザウイルスの生存戦略を超越できるようなものではありません。つまり、人間界からインフルエンザを根絶することはできない、ということです。続く後編ではワクチンや治療薬について取り上げ、そんなインフルエンザとうまく付き合っていくためにはどうすればよいかを考えていきたいと思います。ミニコラム:消えたウイルス「インフルエンザウイルスは根絶できない」と言いましたが、ヒトに感染するもので、今までに人類が根絶に成功したウイルスが1つだけあります。それが天然痘(痘そう)です。紀元前から「死に至る病」と恐れられ、生きながらえても顔にひどい瘢痕(はんこん)が残ってしまう天然痘。このウイルスはワクチンによってすでに根絶され、自然界には存在しません。しかし、実はアメリカやロシア(旧ソ連)の研究施設に、今もウイルスは存在します。もしもそのウイルスが、外部に流出するようなことがあったら……。今や、誰も免疫をもたない天然痘ウイルスは、バイオテロに使われる危険性をも秘めているということです。天然痘は非常に症状が重く死亡者も多い疾患でしたから、当時根絶は「絶対に必要なこと」だったのでしょう。しかし、病気を根絶するということは、免疫をもつ人がいなくなるということ。こうした側面があることも、忘れてはいけないと思います。

谷口 清州

2019.2.7

初期症状がでにくい糖尿病。栄養の取りすぎが病気の原因に。

糖尿病と言うと、「太っている人の病気」と思われがちですが、そんなことはありません。よくない生活習慣を続けていれば、誰もが発症しうる身近な病気です。しかし、なぜ糖尿病になるのか、糖尿病を発症するとどんな不都合があるのかなど、詳しく知っている人はあまり多くないのが現実です。石川先生に詳しく解説していただきましょう。糖尿病とは糖尿病って、どんな病気ですか?糖尿病は文字のとおり、「尿に糖が出る病気」です。糖尿病の人の尿は甘いので、ありが寄ってきます。おそらくそんな様子を見て、昔の人が「糖尿病」と名付けたのかもしれません。糖尿病のなかには、膵臓(すいぞう)にあるβ細胞が壊れてインスリンが分泌されなくなってしまう「1型糖尿病」と、いわゆる成人型糖尿病と言われる「2型糖尿病」があります。後者の2型糖尿病は、ほんの数十年前までは「お金持ち病」と言われていました。それだけ糖がとれるのは、お金持ちだけだったのでしょう。なぜ尿に糖が出るのでしょうか?糖は私たちの体にとって大事な成分ですから、本来、尿に流れ出ることはありません。しかし、糖のとりすぎにより、腎臓がコントロールできる量以上の糖が血液中を流れ、結果として尿の中に糖が出てきてしまうのです。糖は体に悪いのでしょうか?糖のとりすぎが体によくないだけで、糖自体は体に悪いものではありません。糖は、生物体・人類にとって最高のエネルギー源です。われわれの体は、糖やグルコース、ブドウ糖などを使って、エネルギー物質であるATP(アデノシン三リン酸)を作っていますから、糖がなければ人間は生きていくことができません。そもそも、糖がなくなってしまうと脳の活動が停止してしまいますから、人間にとっては絶対に必要な成分と言えるでしょう。脳が停止したら、人は死んでしまいますからね。ですから、人間の体には、血糖値がある程度以下にならないよう厳密にコントロールする仕組みも備わっています。糖尿病の原因とインスリン糖尿病とインスリンの関係を教えてください食事をすると血糖値(血液中の糖の濃度)が上がります。インスリンは、この血糖値を一定に保つホルモンで、血液中の糖を筋肉などの組織に取り込む働きがあります。簡単に説明すると、「食事をする⇒血糖値が上がる⇒インスリンが分泌される⇒ブドウ糖が筋肉などの組織に取り込まれる」ということです。本来、インスリンが効かないという人はいませんが、栄養過多や肥満により、取り込まれた糖を蓄えすぎてしまうと、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が高い状態が続きます。この状態を医学用語では「インスリン抵抗性」と呼びます。糖尿病は、栄養の取りすぎや肥満が原因になるということでしょうか?肥満になると、筋肉に取り込まれなかった多量のインスリンが血液中に流れることになります。インスリンは、膵臓の中にある特種なインスリン分泌細胞(β細胞)で作られています。例えば、ある人が健康なときは、この細胞は10のインスリンを出していたとします。しかし、肥満が進んで血糖値が高くなると、10では増えてしまった糖を筋肉に取り込めなくなりますから、膵臓は、20、30というインスリンを作るようになります。ところがそのうちに、β細胞はインスリンを出すことに疲れてしまい、だんだん分泌も落ちてきてしまうのです。肥満のこの人は、30のインスリンを出さなければ糖が筋肉に取り込めない状態なのですが、疲れてしまった膵臓の細胞は疲れて働きが悪くなっていますから、インスリンの分泌が20、10と減り、糖は組織(筋肉)に取り込まれなくなってしまいます。この状態が糖尿病の発症です。どんな検査をすると「糖尿病」であることが分かるのでしょうか?糖尿病の検査には、採血による「空腹時血糖健康診断」、おなかがすいている状態の血糖値を測る方法と、血液検査で過去1~2カ月の平均血糖値である「HbA1c」を測る方法があります。血糖値は、ガムをかんだり、砂糖をなめたり、コーヒーを飲んだりするだけでも変動してしまいますから、過去1カ月の平均血糖値が分かれば、より正確な診断をすることが可能になります。ほかに、砂糖水を飲んだあとの血糖値を測る方法(経口ブドウ糖負荷試験)もあります。ちなみに「HbA1c」というのは、血液中のヘモグロビンと糖が結合したものです。血糖値が高い状態が続くと、体のあちこちに糖が付着し、タンパク質であるヘモグロビンをも変性させてしまうのですね。糖尿病に初期症状はない?糖尿病には初期症状がないと聞きました。多少疲れたり、尿の量が多くなったりすることはありますが、糖尿病の初期の頃には、ほとんど症状はありません。多くの場合、健康診断の結果で、血糖値や「HbA1c」の値が高いと指摘されて気づきます。忙しくて健康診断を受けていなかったら、突然心筋梗塞になって、調べてみたら血糖値が高かったという方も少なくありません。糖尿病になると、糖が体のあちこちに沈着するので、血管も砂糖漬けになり、ボロボロになってしまうのです。血管が砂糖漬け……。やはり、ケーキやおまんじゅうなど甘いものが好きな人は糖尿病になりやすいのでしょうか?基本的には、ケーキを食べても、おにぎりを食べても、私たちの体は、エネルギー物質に変えることができます。だから食べるのはかまいませんが、大切なのは食べ過ぎないことです。一般的には、体重と身長から肥満度を表すBMI(体格指数)による適正体重を保つのがよいとされています。それにプラスして、ご両親が糖尿病であるかなどの遺伝的な背景も考慮する必要があります。ご両親に糖尿病の気がある方があまりよくない生活習慣を続けて太ってしまったら、間違いなく糖尿病を疑うべきでしょう。糖尿病の人は、他の病気になる可能性も高いのですか?糖尿病の人は、血管が砂糖漬けの状態です。すなわち、血管が硬くなったり詰まりやすくなったりするような病気は、おおかた糖尿病に合併すると思って間違いないでしょう。脳の血管なら脳梗塞、心臓なら心筋梗塞、目なら失明など、糖尿病からさまざまな病気が派生します。糖尿病は尿に糖が出てしまう病気ですが、実態は血管病で、全身の血管がだめになってしまうことが問題なのです。とはいえ、どの病気もそう簡単になる病気ではありませんから、1年に1回、必ず健康診断を受けるようにしていれば、心配には及びません。ただし、糖尿病は遺伝性の病気ですから、ご両親のどちらか、または両方が糖尿病だという方は、特に気にかけておく必要がありますね。もし糖尿病になってしまったら?もし糖尿病になってしまったら、どうすればいいのでしょうか?糖尿病は、透析が必要になったり、失明したりというリスクを伴う怖い病気です。しかし、糖尿病の人全員がそうなるわけではありません。糖尿病だと診断されても、しっかり治療を受ければ心配することはありません。糖尿病は治療することで治りますか?適切な治療を受けることに加えて、ご自身の生活習慣を改善していくことによって、なかには糖尿病が治るという方もいらっしゃいます。しかし残念ながら、1型糖尿病の方は、膵臓のインスリンを分泌する細胞がだめになっていますから、治すことはできません。つまり、外からインスリンを補うしか方法はないということです。糖尿病に効く薬はありますか?膵臓を刺激してインスリンの働きを高めたり、効果を促進したりする、さまざまな種類の薬が出ています。つい最近だと、余分な糖をわざと尿に出してしまう薬なんていうのも出てきました。しかし、人間がこれらの薬を飲み始めてまだ数十年です。これらの薬をこれから何十年か飲み続けたときに、どんな副作用があるかというのは、誰にも分かりません。新薬が効くことは間違いないのですが、何十年か飲み続けたときに副作用があるかどうかの証明をするのは、やはり不可能です。となると、やはり一番よいのは、昔ながらの、食事制限と運動ということになります。このふたつは何百万年も前から続いていますので、絶対に副作用がないことは間違いありません。コラム:父も糖尿病だったけど長生きした。だから私も…糖尿病の多くは遺伝します。あるとき私の診察を受けにきた患者さんが言いました。「父も糖尿病ですが、85歳の今も元気です。だから私も大丈夫ですよね。」確かに、この患者さんは、お父さんの糖尿病の遺伝子も、85歳まで生きられる遺伝子も持っています。そして案の定、糖尿病になってしまいました。さて、この方はお父さんと同じ85歳まで生きられるでしょうか?答えは、このままの生活を続けていれば、「NO!」です。なぜなら、お父さんがこの患者さんと同じ年齢を生きた時代と、今、患者さんが暮らすこの時代が違うからです。私は患者さんに言います。「あなたは、あなたと同じ年齢のときにお父さんが食べていたのと同じ食事をしていますか?」「あなたは、あなたと同じ年齢のときにお父さんが歩いていたのと同じ距離を歩いていますか?」おそらくお父さんは、この患者さんほどぜいたくな食事はしていなかったでしょうし、車に乗る回数も少なかったでしょう。例えば今から43年前、お父さんが42歳だった1975(昭和50)年には、コンビニエンスストアのひとつローソンは全国に10店舗のみ。それが2016(平成28)年には、1万3111店舗と、なんと1311倍にまで増えています(ローソンホームページより)。こうして私たちは、食べたいときに、数百メートルも歩かずにコンビニエンスストアに出掛け、食べ物を手に入れることができるようになりました。また、昔は今のように輸入牛肉を安く手に入れることは難しく、豪華なステーキを食べられる回数も少なかったことでしょう。1975(昭和50)年に、1604万4338 台だった自動車の保有台数も、2016(平成28)年には、6083万1892台。およそ4倍に増えています(一般社団法人自動車検査登録情報協会ホームページより)。最近では、近くのスーパーマーケットに出掛けるのも車。通勤、通学にも車を利用する人が増えていますから、お父さんの時代に比べて1日に歩く距離が減ったのは明白です。どう考えても、今の人たちのほうが、健康に悪い生活をしているのは一目瞭然。おいしいものを苦労せずに食べられて、おまけに歩く距離も減ったとなれば、お父さんより明らかに健康に悪い生活を送っていることは間違いありません。おまけに仕事が忙しくて、ストレスに追われる毎日を送っています。つまり、「おいしいものを手軽に食べて」「歩かず」「ストレスフルな」環境にいる患者さんは、糖尿病でも85歳まで生きられるはずなのに、「このままの生活を続けていたら厳しい」ということになってしまいます。とはいえ、平成のこの世の中で、昭和の時代と同じように、食事をして、歩いて……という生活するのは、不可能に近いことです。それでも、少しずつ近づけるように努力をしていただいて、足りない分をお薬で補う。今の平成の時代には、昭和の時代に比べたら、はるかによいお薬がたくさんあります。それを使わない手はありません。一番よいやり方は、若い頃のお父さんと同じ生活習慣に戻す努力をすること。それでも足りない分は、現代のお薬で補う。それが本来のやり方だと私は思っています。平成の美食をして、平成の運動習慣もそのままで、悪くなった分を平成の薬で補う。薬を飲めば、確かに血糖値は落ちるかもしれませんが、人間・生物としては一番好ましくない治療方法だと思います。インタビュー・文:たなか みえ/イラスト:浅海 司

石川 義弘

2018.6.20

インフルエンザが流行中。感染経路・潜伏期間・症状は?

例年12月から3月にかけて流行するインフルエンザ。感染経路、潜伏期間、症状、予防策などについてまとめました。インフルエンザの感染経路・潜伏期間・症状は?インフルエンザは「インフルエンザウイルス」に感染することで起こる病気です。主な感染経路は、咳(せき)やくしゃみの際に口から発生する小さな水滴による飛沫(ひまつ)感染。1~3日間ほどの潜伏期間を経て、38度以上の発熱、頭痛や関節・筋肉痛などの症状が急に現れるのが特徴です。子どもではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人では肺炎を伴うなど、重症化することがあります。(*1)「うつさない、もらわない」3つの予防策インフルエンザウイルスの感染を予防する主な方法として、以下の3つが挙げられます。1つ目は「流行前のワクチン接種」高齢者では死亡の危険が5分の1に、入院の危険が約3分の1から2分の1にまで減少することが期待できるとされています。(*2)2つ目は「手洗い」の励行流水・せっけんによる手洗いは、手や指などについたウイルスを物理的に除去する方法として有効です。アルコール製剤による消毒も効果があります。3つ目は「咳エチケット」を心がけることほかの人に向けて咳などをしない。咳やくしゃみが出るときはマスクをする。手のひらで受け止めたらすぐに手を洗う。飛沫を浴びないようにすれば、感染の機会は大きく減少します。去年も予防接種を受けたから、今年は必要ない?インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行が予想されるウイルスを用いて、毎年作り変えられています。前年にワクチン接種を受けた人でも、改めて接種を検討したほうがよいでしょう。重症化しやすい65歳以上の人などは、定期予防接種の対象となっていますので、希望する方は医師に相談しましょう。ちなみに、インフルエンザウイルスには大きく分けてA型・B型・C型の3つの型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。「インフルエンザワクチンは打っても意味がない」は本当かワクチン接種をすれば絶対にインフルエンザにかからない、というわけではありません。しかし、発病や発病後の重症化を予防することには一定の効果があり、「打っても意味がない」というのは誤解です。最も期待される効果は、重症化の予防。特に基礎疾患のある人や高齢者では重症化する可能性が高いと考えられています。肺炎や脳症などの重い合併症を防ぐためにも、ワクチン接種の意義は大きいと言えるでしょう。抗インフルエンザウイルス薬は、早めの服用が効果的本来、インフルエンザは自然治癒傾向のある疾患ですが、これまでの研究では発症から2日(48時間)以内に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、発熱期間は1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少することが報告されています。(*3)抗インフルエンザ薬には、内服薬のタミフルや吸入薬のリレンザなどがあります。発症から2日以内に服用を開始するのが効果的ですので、慌てることはありませんが、特に乳幼児や基礎疾患のある人などは早めの受診を心がけましょう。薬を飲まなくても注意! 子どもの「異常行動」以前、抗インフルエンザウイルス薬の服用後に、急に走りだす、部屋から飛び出そうとするなどの異常行動が報告されていましたが、最近の調査により必ずしも抗インフルエンザウイルス薬を服用していなくても異常行動が現れることが判明しており、服用の有無にかかわらず注意が必要です。小児・未成年がインフルエンザと診断されたら、少なくとも2日間は1人にさせないようにしてください。件数はわずかですが、転落等による死亡事例もあります。参考文献(*1)国立感染症研究所 インフルエンザとは(*2)厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ) 65歳以上の皆様へ(*3)厚生労働省 インフルエンザQ&A文:Open Doctors編集部監修医師:国立病院機構・三重病院 臨床研究部長/谷口 清州

谷口 清州

2019.1.30

動脈硬化は検査で分かる? 動脈硬化のQ&A

病気に対する疑問や不安に、横浜市立大学大学院医学研究科 循環制御医学 主任教授の石川義弘先生が答えてくれる「教えて! 石川先生」。第2回の病気は「動脈硬化」です。動脈硬化、コレステロールってなに?動脈硬化とは、どんな病気なのでしょうか?動脈硬化は、病的に血管が硬くなることをいいます。酸化して変性したコレステロールがプラーク(塊)となって沈着することで、血管に炎症が起こります。そこがこぶのように膨らみ、最後には血管が詰まってしまうのです。血管が硬くなるだけであればそれほどの問題にはなりませんが、変性したコレステロールがたまって血管をふさいでしまうと血液が流れて行かなくなり、その先の臓器が壊死(えし)してしまいます。脳でそれが起これば脳が脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞ということになります。動脈硬化の原因とされるコレステロールとは、どのような物質なのでしょうか?コレステロールは、実は人間の細胞膜の主要成分で、細胞を守ったり外部の物質やエネルギーを出入りさせたりという重要な働きを支える、生物にとって絶対に必要な物質なのです。さらに、コレステロールは、男性ホルモン・女性ホルモンといった性ホルモンの原料でもあります。体の中にコレステロールがなかったら、われわれは、男であったり女であったりすることはできません。男らしさ、女らしさをうみ出しているのは、コレステロールなのです。どうして、コレステロールは悪者扱いされているのですか?コレステロールそのものが悪いのではなく、コレステロールの素となる脂分をとりすぎることが問題なのです。最近は、脂肪分ゼロの牛乳やヨーグルトも売られていますよね。アメリカでスーパーマーケットに行くと、「コレステロールゼロ」を掲げた食品が山のようにあります。コレステロールには、いわゆる善玉コレステロール(HDL-C)と、悪玉コレステロール(LDL-C)の2種類があります。LDLコレステロールは肝臓に蓄えられたコレステロールを全身に配分する役割、HDLコレステロールは血液中の余分なコレステロールを肝臓に回収する役割を負っています。「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールですが、LDLコレステロールがなければ全身にコレステロールが行き渡りませんから、細胞膜も、性ホルモンも作ることができません。問題なのは、とりすぎることです。どうして、コレステロールは酸化したり変性したりするのでしょうか?酸素がある場所では、当然「モノ」は酸化します。われわれ人間は生命を維持するために、酸素を体の中に取り入れています。酸素に触れたコレステロールは「酸化」、つまりさびてしまいます。さびたコレステロールは形が変わります。これが「変性」です。酸素を使って生きているわれわれ人間は、体の中で酸化や変性といった障害や副作用が起こるのを避けることができないのです。また、二酸化炭素を吐き出すときには、細胞の中にATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー物質がため込まれるのですが、同時に毒をもった酸素、スーパーオキサイドも作られてしまいます。このスーパーオキサイドは活性酸素の一種で、酸化させる力が非常に強いので、コレステロールやたんぱく質・細胞などは、次々と酸化、変性してしまいます。最近、「酸化ストレス」という言葉を耳にすることも増えました。酸化ストレスは、呼吸により体の中に発生した活性酸素が原因です。老化にも、体の構成成分の酸化、変性が深く関わっているといわれています。しかし、もし酸化ストレスを完全になくそうと思うのであれば、呼吸をやめなければなりません。栄養のとりすぎ・ストレス……増える危険因子なぜ「40歳以上の日本人のほとんどが動脈硬化の危険因子をもっている」と言われるのでしょう?多くの人が、コレステロールをはじめとする栄養分をとりすぎるようになったからでしょうね。ここ数十年、肉やチーズなどの乳製品が簡単に手に入るようになったことで、脂分を容易に摂取できるようになりましたから。でも、人類の歴史のなかで、これだけ多くの人類がコレステロールを持て余すようになったのは、ここ数十年の話です。石器時代には、肉を食べようと思ったら狩りに行かなくてはなりませんでした。1カ月の間、毎日狩りに出ても、獲物が捕れるのは何日もなかったという話を聞いたことがあります。日本も数十年前までは毎日の食事にさえ困っていて、こんなに簡単に肉を食べることなどできなかったはずです。石器時代の人も昭和の人も、コレステロールをとろうと思っても、そう簡単にはとれなかったのです。ならば私たちも、脂分などコレステロールそのものをとらなければいいのかというと、そういうわけでもありません。人間の体には糖分からコレステロールを生成する機能がありますから、基本的には食事のカロリー量や摂取する栄養素の量をコントロールすることが必要になります。つまり、いつでも食べ物を手に入れられるようになった私たちは、年齢に関わらず動脈硬化の危険因子をもっているということになります。食生活も生活環境も、明治・大正・昭和の時代に戻ることができれば、動脈硬化の心配をしなくて済むのですがね……。ストレスは、動脈硬化にどのような影響を与えるのでしょうか?ストレスは、人生のスパイスです。よいストレスもあれば悪いストレスもあります。新しい仕事場で新しいプロジェクトが始まって、これまでに経験したことがないくらい勉強したり、話したこともないような人と交渉したりしなくてはならないとします。このようなできごとは強いストレスになるかもしれませんが、うまくいけばとてつもない喜びを感じることもあるでしょう。でも、悪いストレスが続くと、メンタルだけでなく高血圧や動脈硬化、糖尿病と、体にも悪い影響が起こります。大切なことは、そのストレスが自分にとってプラスなのか、マイナスなのかを見極めることです。そう言われると難しく感じるかもしれませんが、実は意外に簡単で、多くの場合、ストレスを感じる時間で判断できます。ストレスにさらされる時間が短ければ体への影響は少ないですし、逆に長い時間ストレスにさらされ続ければ、メンタルにも体にも強いダメージを与えることになります。また、「失恋と厳しい仕事」「離婚と残業が続く仕事」といったように、全く異なったストレスが同時にかかっているかどうかも、ダメージの大きさを判断する基準となります。個人差はありますが、ストレスはうつ病といった心の病だけでなく、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、時には命を奪ってしまう可能性さえあるのです。自分が動脈硬化であると気付くには動脈硬化にいち早く気付くにはどうすればよいですか?初期の動脈硬化に症状はありませんから、なかなか自分では気付きにくいでしょうね。症状はなくても、動脈硬化を起こしやすい危険因子はあります。血圧・コレステロールが高い方、糖尿病の方などが動脈硬化になりやすいことは、間違いありません。「気付いたら血管が詰まっていた」では手遅れですから、危険因子をもっている方は、動脈硬化がどの程度進んでいるかを診断するため定期的に採血し、頸動脈の超音波検査をしたり、脈を測定したりすることをお勧めします。動脈硬化かどうかを調べる検査には、どのようなものがありますか?一つは超音波検査です。動脈の壁が厚くなっていたり、コレステロールがたまって硬くなったプラークができていたりするところが見られます。健康診断や人間ドックのオプションにある頸(けい)動脈の超音波検査がそれに当たります。頸動脈は、体の表面に一番近い太い血管ですから、非常に検査がしやすいのです。また、上向きに寝た状態で、同時に四肢の血圧を測る「血圧脈波測定」という方法もあります。いわゆる「血管年齢」を調べる方法です。運動・服薬で動脈硬化は治せる?動脈硬化を進行させないために、自分でできることはありますか?定期的に運動することで、ある程度、しなやかな血管を取り戻すことはできます。高血圧の治療 Q&A でも触れていますが、もう一度お話ししましょう。血管は、縮まった状態が続くと硬くなって、血圧が上がりますが、血管がしなやかになれば、血圧は下がります。血管は、自らの拡張・収縮を制御する能力を備えていて、血管の先の筋肉で酸素が必要になると、それを感知して、自ら広がりしなやかな状態を作ります。運動をすると、筋肉にはたくさんの酸素が必要になって、血管は自ら広がります。つまり、人間が定期的に運動すれば、血管も定期的に自らを広げる練習をすることになります。そして、血管を広げるときには、私たちが血圧を下げるために飲んでいるどの薬よりも優秀で、性能のよいホルモンのような物質を出していることがわかっています。運動するだけで、治療効果の高いお薬が、自分で、しかもただで作れるわけです。実践しない手はありませんよね。処方された薬を飲めば、動脈硬化は治せるのでしょうか?いったんたまってしまったコレステロールのこぶを薬で除去するのは至難の業です。除去できるとしても、時間がかかります。おそらく世界で一番使われているのは「スタチン」という、LDLコレステロールを作る酵素を阻害する薬です。この薬を飲むと、確かにコレステロール値がグッと下がります。余談ですが、アメリカのトランプ大統領も「スタチン」を飲んでいることを公表しています。「スタチン」を飲むとコレステロール値は下がります。しかし、動脈硬化が進んでしまった理由はコレステロール以外にもあるということを忘れてはいけません。例えば、運動不足の人がたくさん食べてストレスをためれば、さまざまな原因から起こる結果の一つとして動脈硬化が進みます。高血圧や糖尿病でも同じです。すべての原因を見ることなく、コレステロール値が高いということだけを治療しても、他は解決していませんから、われわれの体にとってよいことではありません。コレステロール値が高い人が「スタチン」を飲み続けることはもちろん必要です。しかし、それ以上に大切なのは、その人の食生活や運動、ストレスなども含めて気を付けることです。高血圧と同じですね。動脈硬化に効く?「〇〇健康法」の信頼性タマネギを食べると血液がサラサラになるというのは本当ですか?「紅茶キノコ」から始まって、今までさまざまな「〇〇健康法」が話題になってきました。しかし、医学的に効果があるかどうかはわかりません。一般的には、タマネギだろうと、紅茶キノコだろうと、酢コンブだろうと、100人に食べさせれば、4、5人「よく効く」という人がいてもおかしくありません。でも、それを健康雑誌で紹介すると、全員に効果があったように受け取られてしまうんですね。タマネギの効果を確かめるなら、何百人、何千人の人の半分は、決められた量のタマネギを食べる。残りの半分の人は一切食べない。それ以外の食生活はすべて同じ、という条件の下で比較する大規模臨床試験を実施しなければ、医学的に証明はできません。毎日1杯のオリーブオイルが動脈硬化の抑制に効果的って本当ですか?「地中海ダイエット」に代表される地中海沿岸地方の食事には、植物性脂肪の油である「オリーブオイル」が多く使われています。脂自体の摂取量は変わらないのに、動物性脂肪を多くとるアメリカ人に比べて、オリーブオイルを主とする地中海沿岸地方の人びとには、動脈硬化や心疾患、肥満の人が少ないというのです。オリーブオイルの摂取以外にも、抗酸化作用の高い赤ワインを飲むことで、動脈硬化を抑えることができるといいます。今から15年ほど前、「フレンチパラドックス」として話題になりましたが、「フランス人は、チーズやバター・肉など動物性の脂を好み、カロリーの高い食事しているにも関わらず、ヨーロッパの他の国に比べて動脈硬化の人が少ない」と報告されています。抗酸化作用が高い赤ワインをたっぷり飲むフランス人は、体の中のコレステロールの酸化が抑えられ、動脈硬化になりにくいというわけです。赤ワインは健康に効果があるということですか?「酒は百薬の長」というように、赤ワインに限らず、少量のお酒はHDLコレステロールを増やすといわれています。量としては、350ccのビール1缶(純アルコール換算で20cc)が1日の目安です。最近は、お酒の値段が極端に安くなり、手軽に飲めてしまうので、飲み過ぎる人も多くなりました。ビールより赤ワインのほうが体によいといわれますが、ビール好きな人に赤ワインを飲めというのも酷な話です。それよりも量を守ることのほうが大切な気がします。インタビュー・文:たなか みえ/イラスト:浅海 司

石川 義弘

2019.3.14

急増する梅毒。感染経路や症状、検査や治療の方法は?

「梅毒」と聞いてみなさんはどんなことを想像するでしょうか? 「昔の病気でしょ?」「風俗店へ行かなければ大丈夫」そんな風に思っている人が多いかもしれません。しかしこの梅毒、じわじわと感染者数が増えていることをご存じでしょうか? そんな梅毒から身を守るため、感染経路や症状、検査、治療についてまとめました。梅毒の原因は? 主な感染経路は性的接触梅毒とは「梅毒トレポネーマ」という病原菌による感染症です。主な感染経路は性行為など粘膜同士の接触で、性感性症のひとつでもあります。性感染症とは性的接触によって感染する病気のことで、ほかにクラミジアや淋病(りんびょう)などが知られています。また、妊婦が感染すると胎盤を通して胎児に感染し、流産や死産になるおそれがあります。生まれた場合でも、臓器の異常などさまざまな障害を抱えることになります(先天梅毒)。なお、梅毒という病名の由来は、症状に見られる赤い発疹が楊梅(ようばい。ヤマモモの漢名)に似ているからだとも言われています。(*4)第1~4期へじわじわ進行。気になる症状は?梅毒は、感染してすぐには症状が現れません。その経過は第1期から第4期に分けられ、長い月日をかけて徐々に全身を侵していきます。まず、感染から3週間ほどの潜伏期間を経て、感染が起きた箇所にしこりができます。これが第1期で、特に治療をしなくても数週間で症状は消えてしまいます。感染から3カ月ほど経過すると第2期となり、全身に赤い発疹が出たり、性器や肛門の周辺に平らなできものが現れたりします。第2期でも症状だけは再び消えてしまいます。感染から3年ほど経過すると第3期となり、ゴムのような弾力のあるできものが、皮膚や筋肉、骨などにもできます。さらに進むと第4期になり、血管や神経まで侵され歩行が困難になるなど、日常生活にも支障を来す可能性があり、場合によっては死に至ることもあります。早期発見のキーワードは「約4週間」梅毒に感染しているかどうかは、血液検査で分かります。しかし、感染から3週間ほどは抗体検査をしても陽性反応が出ないこともあります。症状が出ても、感染したと思われる日から約4週間経過してから検査を受けるようにしてください。梅毒に感染していた場合、自分のパートナーも感染している可能性があります。必要に応じて、一緒に治療を行うことが重要です。治療は抗菌薬(ペニシリン系)の内服第1期や第2期の場合は、抗菌薬(ペニシリン系)の内服で完治します。梅毒は治療しなくても一時的に症状が消えるという特徴があるので、「もう治った」などと自己判断せず、処方された薬をきっちり飲みきることが大事です。また、一度完治しても感染を繰り返す可能性があります。適切な予防策を取らなければ、再感染の危険は十分にあります。自分もパートナーも守る。梅毒の予防策まずは不特定多数の人との性行為を避けること、そして、性行為の際はコンドームを使用することです。しかし、キスやオーラルセックスなどでも感染する可能性があるため、コンドームだけで100%予防できるわけではありません。皮膚や粘膜に異常が出た場合は性的な接触を控え、早めに泌尿器科や婦人科を受診しましょう。参考文献(*1)性感染症報告数 – 厚生労働省(*2)梅毒患者の増加で注意喚起 – 日医on-line(*3)感染症発生動向調査で届出られた梅毒の概要(*4)梅毒に関するQ&A – 厚生労働省文:Open Doctors編集部監修医師:横浜市立大学教授・医学博士/石川 義弘

石川 義弘

2019.1.30

痛風ってどんな痛み? プリン体が多い食事に注意 痛風のQ&A

病気に対する疑問や不安に、横浜市立大学大学院医学研究科 循環制御医学 主任教授の石川義弘先生が答えてくれる「教えて! 石川先生」。第3回の病気は、「痛風」です。「風が吹くだけでも痛い」と痛風の患者さんが話しているのを聞いたことがあります。石川先生も「今まで経験したことのないくらい痛いですよ」と言います。平成28(2016)年の国民生活基礎調査によれば、男性の痛風による通院者率(人口千対)は、60代で36.8%、3人に1人が痛風であることがわかります。痛風は「ぜいたく病」と言われることも……?そうですね。日本では「徳川家の歴代将軍も加賀百万石の殿様も、誰ひとりとして痛風になった人はいない」と言われているからでしょうか。よく痛風の患者さんに「名誉ある病気になれて、あなたはなんてラッキーなのでしょう。徳川家康よりもぜいたくな暮らしをされているんですね。」とお話しします。痛風とはどんな病気?DNAの代謝物質である尿酸が体内にたまりすぎてしまうと、さまざまな病気を引き起こします。まず、血液中の尿酸の濃度が高まると、高尿酸血症といわれる状態になります。たまりすぎた尿酸が関節の中で結晶化し、炎症が起きた状態を痛風と言います。一番多い症状は痛風結節といって、特に足の親指の付け根あたりが痛くなります。他にも、腎臓がやられてしまったり、結石のような石になったりするケースもあります。「痛風は痛い」?どのくらいの痛み?あなたが男性なら過去に経験したどんな痛みより痛いですよ。男性である私は経験したことがないけれど、お産くらい痛いとも言われています。足の親指の付け根あたりがパンパンに腫れあがって、患者さんいわく、「風が吹いただけでも痛い」そうです。グルメの国フランスでは、かなり昔から痛風があったようですが、その当時の医学漫画には、やりを持った悪魔が痛風患者の足を突っついている様子が描かれています。キャビア、めんたいこ、白子、あん肝などのいわゆるグルメ食と言われる魚卵や、プリン体が多く含まれるビールは、痛風の原因になります。日本やアジア諸国の食生活がヨーロッパに近づいたということでしょうね。あくまでも食べ過ぎや飲み過ぎがいけないのであって、食べてはいけないということではありませんよ。プリン体0というビールならいくら飲んでも大丈夫?いいえ。プリン体0でも、飲み過ぎれば肝臓や腎臓などの代謝系機能に障害が起きてしまいます。確かに痛風の患者さんにはビール好きの方が多いので、「飲むのならプリン体0の方がいいですよ」とお話ししますが、あくまでも程度問題です。飲み過ぎたらだめですよ。痛風の痛みを忘れるためにお酒を飲んでいるという人もいましたけどね(笑)。痛風になったらどんな治療をする?痛風は、年がら年中痛いわけではなくて、ときどき起きる発作が痛いんですね。その発作が起こると1週間くらいは、痛くて歩けなるようなこともありますが、それ以外のときは症状がありません。ですから、痛風発作を起こさないように、まず食生活を見直すこと。そして、薬を服用して、ある程度まで尿酸値を下げておくことが大切です。痛風によく効く薬はある?確かに最近は、尿酸の排せつを促進したり、尿酸の産生を抑制したりと、さまざまな効能を持つ薬があります。しかし、薬を飲んでいるからといって、あん肝をつまみにビールを飲んでいたら、本末転倒です。ずばり、痛風は治療すれば治る?痛風は、尿酸値をコントロールできれば発症しません。しかし、痛風になりやすい体質の方も少なくありませんから、やはり正しい食生活や生活習慣を心がけることが基本になります。痛風が悪化するとどうなる?なかには、足の関節が変形して、歩けなくなってしまうほどひどい症状の方もいらっしゃいますよ。痛風が他の病気につながることは?例えばですが、梅毒にかかっている患者さんが診察にいらしたとき、どのような検査をすると思いますか? 医師はまず、梅毒にかかっているなら、淋病(りんびょう)やクラミジア、時にはエイズもと、さまざまな性病の可能性を考えます。つまり、この患者さんには、「梅毒にかかるような生活習慣があったのではないか?」と考えるんです。それと同じで、痛風の患者さんを診るときには、「この人は痛風になるような生活習慣なのかな」と考えてみるわけです。もしそうだとしたら、そのうち、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になってもおかしくありません。なかには遺伝が強く関わっているケースもありますが、大体の病気は、表面に現れている症状だけではなくて、原因となる生活習慣にも目を向ける必要があるということです。ぜいたくな生活をしていたら、痛風以外の病気が起きてもおかしくありませんよね(笑)。痛風になるような人は、その生活習慣を見直していかなければ、きっと高血圧にもなるし、糖尿病にもなるし、動脈硬化にもなるでしょう。どんどんつながっていってしまいますよ。ストレスが痛風に影響する?ストレスがかかると、過食に走る人も多いです。過食という生活習慣の結果、痛風につながることもあるかもしれません。決して、ストレスだけが独立して痛風の原因になっているというわけではないと思います。生活習慣は、食べるものであり、仕事の仕方であり、生活のリズムであり、運動習慣でもあります。その昔、家に電灯などなかった頃は、暗くなったら仕事は終わりという人が多かったことでしょう。それがここ数十年間で、当然のように深夜まで残業をするようになってしまいました。こういった生活習慣の変化がストレスとなり、ストレスがまた生活習慣を悪化させ、痛風の発症に関わっているという可能性は、大いにあるでしょうね。参考文献:平成28年国民生活基礎調査インタビュー・文:たなか みえ/イラスト:浅海 司

石川 義弘

2019.3.18

「風邪という病気はない」って本当?

「実は風邪という疾患はない」今回のコラムは、そんな「!」から始まり、改めて「風邪」についてのウソ・ホントに迫る内容となっています。お話ししてくださるのは、感染症の専門家で、国立病院機構・三重病院 臨床研究部長の谷口清州先生です。「風邪は万病の元」と言われるわけ一般的に「風邪をひく」とは、どのような状態を指すのでしょうか?実は、「風邪」という疾患はありません。一般的に私たちが普段「風邪」と呼んでいる疾患は「風邪症候群」というもので、自然治癒傾向があるウイルス性の上気道(※1)炎をまとめてそのように呼んでいます。(※1)上気道:鼻から鼻腔(びくう)、鼻咽腔(びいんくう)・咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)までの呼吸器をいう。通常、医師は、鼻水や喉(のど)の痛み、咳(せき)、発熱といった上気道炎の症状がそろっているかどうか、それらの経過はどうなのかに加え、全身状態をみて風邪(症候群・以下風邪)と診断します。これは先ほど申し上げた通り、ウイルス性の上気道炎ですから、本来は抗菌薬などを使うことなく自然に治癒する疾患です。ですから、自然に治らない場合は風邪ではないということです。風邪と同じような上気道炎の症状をきたす疾患には、マイコプラズマ感染症、麻疹(はしか)などをはじめとして、川崎病や伝染性単核症など多くの疾患があります。初期症状は風邪と区別がつきませんが、徐々にそれぞれの疾患の特徴が出てきて、診断がつくようになります。昔は、これらの病気にかかっても原因が特定できず、風邪がひどくなったように見えたのでしょう。それで「風邪は万病の元」「風邪をこじらせる」などと言われるようになったのかもしれませんね。「風邪」が治らない場合に初めて、別の疾患を疑うわけですね。もちろん、最初が風邪症状であっても、ほかの症状や身体所見によって最初から別の疾患が疑われることもありますが、最初は風邪症状しかなく、全身状態が良好であれば、経過をみて考えていきます。「風邪であれば3日程度で熱は下がる」ということで、小児科には「風邪3日」ということばがあるんです。ですから、発熱が3日以上続く場合には、必ずほかの病気を考えてみます。それぞれの疾患によって経過が違いますから、それをみて診断するということですね。例えば、マイコプラズマ肺炎の場合は、最初は高熱が出て、ほとんど咳は出ません。しかし、2日目、3日目と時間が経過するとともに、だんだん咳が強くなるという特徴があります。マイコプラズマにはマクロライド系の抗菌剤が効果的ですが、自然治癒傾向もありますので、全身状態に応じてこの抗菌薬を使用します。また、患者さんの喉をのぞいてみたときに、扁桃(へんとう)が真っ赤に腫れて、膿(うみ)がつき、軟口蓋(なんこうがい)、いわゆる「のどちんこ」の上のあたりに赤い発疹がいっぱいあれば、溶連菌感染症と診断します。風邪であれば抗菌薬は処方しませんが、この疾患は溶連菌による感染症であり、きちんと治療しないと後遺症を残すことがありますので、必ず抗菌薬による治療を行います。風邪を治す薬はない?風邪のときは抗菌薬を処方しないのですか?ええ。大前提として、抗菌薬は細菌に効果があるのであって、ウイルスが原因の風邪には効きません。効果がない抗菌薬を飲み続けて、アレルギーや肝障害などの副反応が出たり、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう。いわゆる「腸内フローラ」)が乱れて下痢などが起こったりすれば、かえって免疫力が落ち、風邪も治りにくくなります。そのうえ、その人の体内にいる細菌が、投与された抗菌薬に対して耐性を持つようになってしまうリスクがあります。耐性菌が出現すれば、それが新たな感染症の原因になることもありますし、それが地域にまん延すれば、抗菌剤の効かない病原体が増加してしまって、将来「感染症の治療に使う抗菌剤がない」という状況になってしまうことが危惧されます。では「風邪に効く薬」とはどんなものなのでしょうか?世の中で「風邪に効く」と言われている薬の効果は、あくまでも症状の緩和にすぎません。例えば、チペピジンヒベンズ酸塩(商品名アスベリン)という成分の入った咳止め薬を飲めば咳を緩和することができますが、風邪が治ったわけではありませんから、薬の効果が切れればまた咳が出てきます。たとえ薬を飲まなくても、風邪であれば3日ほどでそういった症状は治まってくるでしょう。ただ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)という観点から考えると、症状を抑えることで身体が楽になるのであれば、薬を使うという選択肢もあるかもしれません。重要な会議のときに咳をしていては、周りの人も嫌でしょうし、何より集中できませんからね。ドラッグストアなどで売られている「風邪薬」はどう活用すればよいのでしょうか。ドラッグストアなどで気軽に買える風邪薬は、基本的に症状を抑えるための薬です。ですから、市販薬で症状を抑えているあいだに十分な食事と睡眠をとって、自分の自然治癒力を高めるという考え方を持ちましょう。3日たっても症状が悪化傾向にあればすぐ病院へ風邪をひいたら、どのタイミングでお医者さんに行くのがいいでしょうか。風邪は自然治癒が前提ですから、そんなに心配して病院に駆け込む必要はありません。大切なのは、風邪なのか別の疾患なのかを見極めることです。お医者さんに行く判断の目安となるのは、3日以上高熱が持続するとか、他の症状も含めて悪化傾向にあるときです。5日以上発熱が続くようなら、絶対におかしいと思ってください。市販薬などの対症療法薬を使うかどうかに限らず、症状が悪化傾向にあったり、いつもの風邪と違う症状が出てきたりしたときは、必ず病院に行ってください。咳や鼻水がしばらく続くことはありますが、全身状態が悪くて、発熱が3日以上続くのは要注意です。病院に来てくれた患者さんにも「熱が続くようならほかの疾患や合併症も疑わなくてはなりませんから、そのときはもう一度来院してください」と伝えています。3日過ぎても症状が変わらない、逆にどんどん強くなっていくとなれば、風邪以外の病気を考えておかねばなりません。子どもで高熱が続けば川崎病や伝染性単核症、咳が2週間以上続けば、肺炎や百日咳、成人では肺結核の可能性も考えなければなりません。ミニコラム:感染症専門医の風邪予防と対策感染症の専門医だからといって、私も特別なことをしているわけではありません。インフルエンザや風邪が流行する冬季に患者さんと接するときは、常にマスクをして、手洗いを徹底しています。でも一番大事なのは、日頃から、ビタミンを多く含む食品やヨーグルトなどの乳製品を取り入れつつバランスのよい食事を心掛けたり、適度な運動、睡眠をとったりして、規則正しい日常生活を送ることですね。風邪をひいてしまったら、本来ならゆっくり寝て身体を休めたいところなのですが、そうはいかないこともありますよね。私の場合には、自分の体力で治せるように漢方系の栄養ドリンクを飲んだり、身体を温める作用のある葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)などを使ったりすることもあります。それでも症状が強くてつらいときは、解熱鎮痛剤や咳止めなどの対症薬を飲みつつ、ほかの疾患の可能性を考慮するようにしています。このとき、最も気をつけているのは、もちろん「ほかの人にうつさない」ということです。

谷口 清州

2019.2.18

流行が続く風疹。ワクチンを受けたほうがよい人は

流行が続く風疹。子どもの病気と思われがちですが、患者の多くは30~50代の男性や20~30代の女性。まさしく予防接種を受けていないか、免疫を十分に獲得できていない可能性のある人たちです。(*1)最も注意が必要なのは妊婦の感染で、障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性があります。ですが、風疹はワクチンで予防できる病気です。風疹にかかったことがない人や予防接種を受けたことがない人、特に妊娠を希望する女性やそのパートナーは積極的に抗体検査を受け、十分な免疫がなければ予防接種を受けましょう。感染の自覚ない人も。風疹の感染経路と症状風疹は、せきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)を吸い込むことで感染し、症状が出るまでの潜伏期間は2~3週間です。発熱や発疹、リンパ節の腫れなどが現れます。また、大人が感染すると、子どもよりも重症化することがあります。一方で、症状が出ない感染者も15%~30%程度いると言われています。(*2)つまり、感染者の中には「風疹にかかった」という自覚がない人がおり、知らないうちに家族や職場の同僚などにうつしてしまうことも少なくありません。感染力はインフルエンザの数倍風疹の感染力はインフルエンザの2~4倍あり、1人の感染者から、免疫がない5~7人に感染させる可能性があります。(*3)風疹は「三日ばしか」という別名のとおり症状は軽めですが、まれに脳炎などの合併症が起こることがあり、決して軽視できない疾患です。なお、自然に感染したりワクチン接種をしたりすることで生涯続く免疫が体内につくられるため、その後は風疹に感染することはないとされています。妊娠中の感染で赤ちゃんに障害も妊婦が感染すると、赤ちゃんが難聴・心疾患・白内障などの障害をもって生まれるおそれがあり、これらの障害を先天性風疹症候群(CRS)といいます。妊娠初期ほどその確率は高くなり、妊娠1カ月で50%以上と言われています。(*4)妊娠したら風疹ワクチンは接種できない妊娠中は予防接種を受けられません。最も大切なことは、妊娠前に風疹ワクチンの接種を受け、免疫を獲得しておくことです。妊娠を希望している女性はもちろん、パートナーや家族、職場の同僚といった周囲の人たちも、ぜひ積極的に予防接種を受けてください。生まれた年で予防接種の機会が違うワクチン接種によって95%以上の人が免疫を獲得することができると言われています。2回の接種を受ければ、1回の接種では免疫がつかなかった人にも免疫をつけることができます。1990年(平成2年)4月2日以降に生まれた男女は、2回の予防接種を受ける機会がありましたが、それより年齢が上の人は受けていても1回だけ。十分な免疫がついていなかった場合、感染の可能性があります。1979年(昭和54年)4月1日以前に生まれた男性にいたっては、接種の機会すらありませんでした。(*5)また過去に風疹にかかったと思っていても、「はしか」など別の病気だったのを勘違いしている可能性もあります。記憶があいまいな場合は、採血による抗体検査を受けてみましょう。抗体検査はどこで受けられる?多くの自治体では、先天性風疹症候群(CRS)の予防のために、妊娠を希望する女性を主な対象とした抗体検査を無料で実施しています。検査といっても簡単で、採血検査のみで抗体価が分かります。無料で受けられるかどうか、どのクリニックで受けられるかなどについては、自治体のホームページでご確認ください。参考文献(*1)風疹急増に関する緊急情報:2018年9月26日現在 – NIID 国立感染症研究所(*2)風疹とは– NIID 国立感染症研究所(*3)風しん・先天性風しん症候群とは?|風しんの感染予防の普及・啓発事業|厚生労働省(*4)先天性風疹症候群とは – NIID 国立感染症研究所(*5)風しんについて|厚生労働省文:Open Doctors編集部監修医師:横浜市立大学教授・医学博士/石川 義弘

石川 義弘

2019.1.30

インフルエンザ(後編)抗ウイルス薬・解熱剤は使うべき?

感染症の専門家である谷口清州先生に、身近な感染症についてやさしく解説していただくこのコーナー。前編「【谷口先生の感染症講座】インフルエンザ(前編)A型とB型、何が違う?」では、インフルエンザウイルスの型の違いについてご紹介しました。後編はワクチンや治療薬についてのお話です。インフルエンザにかかる人、かからない人世の中には「ワクチンを打っていないけれど、インフルエンザには全くかからない」という人が確かに存在します。一方、「毎年必ずかかって5日間寝込む」という人もいます。この違いは、それぞれがこれまでに獲得した免疫の内容によるものです。インフルエンザウイルスに対する免疫はピラミッドのように積み重なっていきますから、かかればかかるほど、いろいろなウイルスに対する抗体ができて、かかりにくくなります。となると、毎年インフルエンザにかかる人のほうが、より強固な免疫機構を持っているはずです。それなのに、なぜ毎年のようにインフルエンザに感染してしまうのでしょうか?もちろん、毎年流行するタイプが違うことに加え、ウイルスが少しずつ変異するために「完璧な免疫」を作れないから、ということもありますし、これまでに獲得した免疫が邪魔をして、流行中のウイルスに対して十分な免疫を作れないということもわかっています。また、人間はひとりひとりが違いますので、生まれ持った免疫の反応性、そのときの体調(栄養状態が偏っていたり、睡眠不足だったり)によって、免疫の働きが低下していることもあります。もちろん、流行中のウイルスに接触する機会の多さや、個人の手洗い・マスクなどの予防習慣も影響します。そのほか、「ワクチンを打っても抗体ができにくい人」というのも存在します。ヒトの免疫反応は受け継いだ遺伝子によって大きく異なり、例えば麻疹(ましん、はしか)ワクチンの場合、日本の人口の3%は抗体ができません。つまりこの人たちはワクチンを打っても、麻疹にかかってしまうことになります。インフルエンザウイルスに対しても、同じように個人の反応性の違いというものも想定されており、もともと抗体ができにくいという可能性もあります。インフルエンザワクチンは「ハズレ」でも意味がある?現行のインフルエンザワクチンには、A型とB型それぞれのウイルスで、その年に流行しそうな4種類が入っています。はずれることはもちろんありますが、もしはずれたとしても、その人が持っている抗体で対処できるようなウイルスが流行すれば防御が可能となり、軽症化が期待できます。最近のアメリカのデータによれば、多少流行とマッチしていなくても、ワクチンを打った人は、打たない人に比べて肺炎や心筋梗塞・脳梗塞など、重い合併症のリスクを軽減できるということが報告されています。つまり、「はずれたとしてもワクチンには意味がある」と言ってよいでしょう。抗インフルエンザウイルス薬との付き合い方「インフルエンザに感染したら、病院で抗ウイルス薬をもらって飲んだほうがいいか?」という話題は、感染症関連の学会でもよく議論されます。少なくとも欧米では、本来インフルエンザというのは、健康であれば自然に治る疾患と考えられています。そのため、やたらに薬を使わず、外出を控えて家で寝ていればよいと言われています。これまでのところ、抗ウイルス薬の効果というのは、「使わないときに比べて熱を1日早く下げること」とされています。薬を飲むことによって、3日間続くはずだった熱が、2日で下がるということです。つまり、「薬を飲んだほうがいいか」というのは、この「1日の発熱期間の短縮」をどう考えるかということになります。とはいえ、子どもや高齢者など一定数の人たちには重症化のリスクがあります。アメリカのデータによれば、基礎疾患がなくても、5歳以下の子どもであればインフルエンザ発症による死亡リスクがあると言われていますし、インフルエンザウイルスに対する免疫は、ある程度の年齢になると急激に衰えることも知られています。子どもや高齢者、基礎疾患がある方などに対しては、薬を使うメリットはあると言えるでしょう。一方、薬を使うことによるデメリットもあります。タミフルやリレンザなどを服用すれば熱は2日で下がりますから、お勤めされている人は仕事に出掛けたくなるでしょうし、子どもであれば外で遊びたいと言い出すかもしれません。しかし、熱が下がったからと言って人の多い場所へ出掛けると、ほかの人にうつしてしまう可能性があります。症状が治まってもウイルスはまだ体の中に存在しているからです。また、当然のことながら、抗ウイルス薬を使用することによって薬の効かない耐性ウイルスが出現するおそれがあるということも、頭に入れておくべきでしょう。熱が高いと脳炎・脳症になる? 解熱剤は飲むべきなのか特に子どもがインフルエンザウイルスに感染すると、「熱が高いと脳炎や脳症になるかもしれないから、解熱剤を飲ませたい」とおっしゃる親御さんが多くいらっしゃいます。しかし、「高熱が原因で脳炎や脳症になる」という認識は誤りで、「脳炎・脳症になったから高熱が続く」のです。脳炎というのは、ウイルスが脳細胞に侵入・増殖して、脳の中枢神経に障害が出て、けいれんや意識障害などの神経症状がでることを言います。例えば日本脳炎などのウイルスは脳で増え、脳の中枢をダメにしてしまいますから、体温の調節ができなくなり、42度を超える熱が出ることもあります。「熱が高いと脳炎になる」のではなく、「脳炎になったから熱が高くなる」のです。一方、脳症というのは、脳以外で起きている感染によって、炎症作用や生体機能の調節などに関わる伝達物質が過剰に分泌されることにより、間接的に脳に障害が起こることを指します。この過剰な防御反応により、必要以上の高熱が出るのです。すなわち、脳炎・脳症の原因というのは、発熱していることではなく、その発熱を起こしている疾患や病原体なのです。そもそも、熱が出るのは体の防衛反応です。免疫を活性化して、ウイルスの増殖を抑制するために、免疫機構が自ら発熱を引き起こしているのです。だからといって、子どもが高熱でつらそうにしていても解熱剤を使ってはいけない、ということではありません。解熱剤は病気を治すわけではなく、あくまでも一時的に症状を抑えるだけ。しかしながら、高熱のためにとてもつらい思いをしているとき、あるいは水分や食事がとれないときは、解熱剤で少しでも楽になって水分などが取れれば、それは決して悪いことではないのです。もちろん、お子さん自身が元気なら、熱が38.5度あったとしても無理やり下げる必要はありません。ただし、熱性けいれんを起こしたことがあるとか、発熱が悪影響を及ぼすような疾患がある場合には、この限りではありません。もし、インフルエンザで解熱剤を使う場合、アスピリン製剤を使用するとライ脳症という重篤な神経疾患を引き起こすことがありますので、アスピリンは決して使ってはいけません。通常、解熱剤にはアセトアミノフェン製剤を使用するよう勧告されています。ただし、お子さんの場合は体重によって使用量が異なりますので、以前に処方されたものなどを安易に使用するべきではありません。

谷口 清州

2019.2.1

Open Doctors

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市民・患者のための健康・医療コミュニケーション学会